タレントマネジメントの導入事例!成功例・失敗例と得られる効果
人材を最大限活用するために必要とされているタレントマネジメント。しかし、タレントマネジメントがどのように企業で導入され、どのような成果を出しているのか知らない方も多いでしょう。そこで本記事では、タレントマネジメントの導入事例について徹底解説していきます。
目次
タレントマネジメントとは?
タレントマネジメントとは、従業員の経験・スキル・保有資格・過去の実績などを一元管理し、一人ひとりの育成や配置の適材適所を実現する人材マネジメント手法です。
1990年代に米国の大手コンサルティング会社、マッキンゼー&カンパニー社が「War for talent(人材育成競争)」というキーワードを発信したことを受け、2010年前後に日本企業に普及したといわれています。
タレントマネジメントの対象は、雇用形態に関わらずすべての従業員で、目的は、人材のパフォーマンスを最大化して組織全体の成長につなげることです。
▷タレントマネジメントとは?仕事内容や目的・期待効果を紹介
タレントマネジメントが注目されている背景
タレントマネジメントが注目されるようになった大きな要因の1つとして、日本における少子高齢化が挙げられます。
労働人口減少にともない、慢性的な人手不足に悩まされる企業が年々増加しているという現状です。そのため、採用戦略と並行して、従業員一人ひとりのパフォーマンスを向上させる施策が不可欠と考えられるようになりました。
近年の企業の成長戦略においてタレントマネジメントは、現状の課題を打開するひとつの手段として注目を集めています。
タレントマネジメントを導入すると得られる効果
タレントマネジメントを導入することで得られる主な3つの効果について解説します。
生産性の向上
タレントマネジメントが機能すると、組織全体の生産性向上が見込めます。
従業員の適材適所が実現できれば、一人ひとりのスキルや特技が最大限活かされ、各所のパフォーマンスが底上げされるでしょう。
どんな人材にも得意不得意があり、当然ながら得意なことを担当したほうが生産性は向上します。実際に、なかなか成果の上がらない従業員が、配置転換をきっかけにパフォーマンスを大きく向上させた例も珍しくありません。
従業員のモチベーション向上
タレントマネジメントの導入は、従業員のモチベーション向上にも役立ちます。
自身のスキルや経験に合った仕事はやりがいを感じられ、成果も出やすいものです。成果が出ればさらにやりがいを感じ、熱意を持って取り組む従業員が増えるという好循環を生み出せるでしょう。
最適な人材育成の実現
タレントマネジメントは、中長期的な人材育成の最適化にも効果を発揮します。
従業員一人ひとりのスキルにフォーカスするため、それぞれの個性や特性に合わせて教育方針を策定・実行できるからです。タレントマネジメントの過程で、本人も自覚していない強みや魅力を発掘できることもあるでしょう。
入社間もない新人にも活用できるうえ、スピーディーなスキルの習得や上達も見込めます。教育にかかる時間やコストを軽減できることもメリットです。
▷人材育成とは?大切な考え方や目的・具体的な方法を紹介!
タレントマネジメントを導入する際の流れ
タレントマネジメントを導入する上での流れについて解説していきます。
導入目的の共有
タレントマネジメントを導入する際は、関係者だけでなく、全従業員で目的を共有することが重要です。
タレントマネジメントそのものに対する理解や導入目的が共有されていないと、データ収集などの作業が従業員の負担となり、経営層への不信感につながりかねません。
タレントマネジメントとは何か、導入することでどのような効果・成果が得られるのか、一人ひとりに理解してもらうことが成功への第一歩といえるでしょう。
課題の洗い出し
タレントマネジメントを導入するにあたり、人事戦略における課題を明確化しておくことも大切です。
タレントマネジメントは組織が成長するためのツールにすぎず、導入したからといって期待する効果が必ず得られるとは限りません。
経営層やマネジメント層が中心となり、自社の人事戦略の方向性や解決すべき課題を洗い出し、タレントマネジメントでどう解決できるかを検討する必要があります。
▷タレントマネジメントの課題とは?問題点からわかる失敗しないための対策
サービスの選定
タレントマネジメントをサポートするサービスを利用する場合は、自社の目的や状況に合ったものを選びましょう。
タレントマネジメントサービスは多数提供されており、それぞれ特徴や強みが異なるためです。選定にあたっては、以下をチェックすることをおすすめします。
- 自社の課題を解決できる機能を備えているか
- セキュリティ対策はどのように行われているか
- 操作性が良く使いやすいか
- サービス利用中のサポート体制は整っているか
- 費用に見合った効果が得られそうか
多くの機能を有するサービスであっても、自社の状況に合わなかったり、使わない機能が多かったりしたのでは、期待する効果は得られません。
まずは導入目的を定めて、目的が果たせるかどうかを逆算してサービスの選定をすると良いでしょう。
▷【最新版】おすすめのタレントマネジメントシステム15選|失敗しない選び方とメリット
タレントマネジメントの成功事例
実際にタレントマネジメントを導入した企業の中から、4社の成功事例を紹介します。なお「人財」という表現を使用している企業では、記事でもその表現を使っているので、ご承知おきください。
日清食品ホールディングス
日清食品ホールディングスでは、従業員の階層や特性に合わせ、以下のようなさまざまな研修を実施しています。
- 新入従業員研修
- 2年次・3年次の従業員研修
- 新任管理職研修/アウトドア研修
- ライフデザインセミナー
- 自己啓発支援
- 選抜型研修制度
例えば「ライフデザインセミナー」は、50代社員を対象として、自身の人生設計についてのセミナーをオンラインで受講するというものです。ライフプランを組み立てながら、組織の中での自分自身の強みや役割を再確認する役割も果たしています。
「自己啓発支援」は、通信講座やeラーニングでの学び、資格取得などを支援し、規定の費用を負担するという仕組みです。「選抜型研修制度」は、マーケティング・セールス・SCM・生産部門の次世代リーダーの育成や、経営人材の育成を目的としています。
このように、従業員の特性や階層に合わせた細かな研修制度が、日清食品ホールディングスの今日を支えているといえるでしょう。
[出典:日清食品ホールディングス公式「人材育成」]
味の素株式会社
「グローバル人財マネジメントシステム」という名称で実施しているのが、味の素株式会社のタレントマネジメントです。
その一環として人財の発掘・育成を目的とした「人財委員会」を設置し、人財ポートフォリオ・サクセッションプラン・育成プランを細かく策定しています。さらに、これらを骨子として階層別の研修を実施することで、優秀な人財の「適所適財」を実現しました。
さらに、2年に一度「働きがいを実感している従業員の割合80%」を指標とした、エンゲージメントサーベイを実施し、従業員一人ひとりの状況を把握しています。
[出典:味の素株式会社「多様な人財の活躍推進」]
日産自動車株式会社
日産自動車株式会社では、グローバルな組織・人事・文化をベースに、グル―プ全体の人財の最適な配置・活用によるグループ全体のパフォーマンスの最大化を掲げています。
- 中でもタレントマネジメントとして取り組んでいるのが、「人選」「アセスメント」「育成計画」「フォロースルー」を通した人財育成の仕組みによる、日本人リーダーの育成強化です。
会社としての方針・体制・プロセスを公開することで目線を合わせ、グローバルで通用する人財の育成に積極的に取り組んでいます。
[出典:日産自動車株式会社「日本タレントマネジメントの取組」]
ソニー株式会社
ソニー株式会社では、独自の人材理念に基づいたきめ細やかなタレントマネジメントを実施しています。下記は、その一部です。
- ダイバーシティへの取り組み
- 女性の活躍推進
- 障がいのある従業員の活躍推進
- LGBTQ+職場環境の整備
- 従業員一人ひとりのスキルアップ・キャリア開発
- 技術研修
- 経営人材・リーダーの育成
このほかにも多数の取り組みを行っており、そのどれもが企業の成長を支えるものとなっています。
2021年のエンゲージメント調査には90%を超える従業員が参加、エンゲージ指標も80%を超えていることから、従業員の評価も高いと考えて差し支えないでしょう。
[出典:ソニー株式会社「サステナビリティリポート 人材」]
▷タレントマネジメントのメリット・デメリット!導入を検討している人は必見!
タレントマネジメントのよくある失敗事例
タレントマネジメントを実施するうえで押さえておきたい失敗事例の中から、よくある4つを紹介します。
既存の人事制度との連携ができていない
よくある失敗例のひとつは、既存の人事制度とタレントマネジメントがうまく連携できないことです。
従業員一人ひとりの能力や経験を可視化できるため管理はしやすくなりますが、人事制度に反映させなければ従業員はメリットを感じられません。
タレントマネジメントには、従業員の協力も不可欠です。経営層やマネジメント層の業務を円滑にするツールに留めてしまっては、生産性やモチベーションの低下を招きかねないでしょう。
収集したデータを最大限に活用できない
タレントマネジメントを実施する過程で収集したデータを、その後にうまく活用できないという失敗例もよく見られます。
タレントマネジメントでは、目的に沿ったデータを収集・分析したうえで従業員の特性を可視化し、実務に活用するといったプロセスが必要です。また、従業員の変化に応じて、最新データへの更新もしなければなりません。
目的を定めずにデータばかりを収集したのでは、分析や実務への活用は難しいでしょう。そのため、タレントマネジメントの目的、方法や効果を正しく理解して運用することが成功のカギとなります。
▷タレントマネジメントに必要な評価項目!把握すべき情報と目的
従業員がタレントマネジメントの目的を理解できていない
タレントマネジメントでは、データの収集と分析が欠かせません。しかし、従業員が導入の目的を理解していなければ、積極的に協力してもらうことは難しくなるでしょう。
協力を得るためには、導入の目的や効果に加えて、従業員目線でどのようなメリットがあるのかも訴求する必要があります。
いきなり全社で導入をしてしまう
タレントマネジメントは、いきなり全社で導入してしまうと失敗しやすい傾向があります。
なぜなら、膨大なデータの集計や分析に手が回らなくなったり、各所で発生するエラーに対応しきれなくなったりする可能性が高くなるためです。
このような事態を防ぐためにも、まずは小規模な部門に導入し、その成果や効果を見ながら導入範囲を広げていくとよいでしょう。
▷タレントマネジメントの市場規模は?拡大している理由と注目されている背景
タレントマネジメントシステムを導入する際の選び方
導入するタレントマネジメントシステムの選定基準を4つ紹介します。
導入目的にマッチしているか
タレントマネジメントシステムの導入により、自社の目的が果たせるかどうかを確認することがひとつです。システムはあくまでサポートツールで、導入すれば問題を解決できるというわけではありません。
まずは自社の現状や課題、解決すべきことを明確にするところからはじめ、その目的にマッチしたシステムを選定するようにしましょう。
▷タレントマネジメントシステムの基本機能!機能を理解して導入を検討しよう
十分なセキュリティ機能があるか
タレントマネジメントでは、従業員の個人情報を扱います。情報の流出や紛失というリスクを回避するためにも、強固なセキュリティ機能を備えているかどうかをチェックすることが大切です。
従業員にとって扱いやすいか
タレントマネジメントシステムを導入する際は、従業員の扱いやすさや操作性の高さを備えているかも確認しましょう。
どんなに優れたシステムを導入しても、操作性が悪ければ扱う従業員にストレスがかかり、浸透しない可能性があります。利用しながら自身に合ったスタイルにカスタマイズできる機能があると、なお良いでしょう。
ベンダーに導入実績があるか
導入実績が多いベンダーはノウハウが蓄積されており、システムの安定性やトラブルへの対応にも慣れていると考えられます。
公式サイトをチェックし、実績のあるシステムを選んでください。
▷無料で使えるタレントマネジメントシステム5選!選び方と注意点
タレントマネジメントの効果や事例を参考に導入を検討しよう
労働人口の減少による人材不足が叫ばれる昨今、企業の戦略は採用活動から、従業員一人ひとりのパフォーマンス向上にシフトしつつあります。その手法のひとつが、タレントマネジメントです。
導入により適材適所を実現できれば、人材不足に左右されず、企業は成長を遂げられるでしょう。成功事例も参考にしながら、ぜひ導入を検討してみてください。
タレントマネジメントシステムの記事をもっと読む
-
ご相談・ご質問は下記ボタンのフォームからお問い合わせください。
お問い合わせはこちら