海外と日本のタレントマネジメントの違い!注目されるグローバルタレントマネジメント
海外発祥の人材マネジメントの手法「タレントマネジメント」。日本国内においても概念が浸透しはじめ、取り組む企業も年々増加傾向にあります。本記事では、海外と日本のタレントマネジメントの違いを、グローバルタレントマネジメントの概要とあわせて詳しく解説します。
目次
海外でタレントマネジメントが誕生した背景
海外でのタレントマネジメントの誕生は、マッキンゼー・アンド・カンパニーというコンサルティング会社が人材育成の重要性を発信したことがきっかけです。
実は、もともと欧米では「人材確保」に焦点を当てて手法の研究や導入が進められていました。しかし、マッキンゼー・アンド・カンパニーの発信によって、多くの企業が人材育成の重要性を理解したことでタレントマネジメントの考えが広まったのです。
日本でも、2000年代以降から少しずつタレントマネジメントが輸入されてきました。しかし、人材育成や管理に大幅なリソースを割くことは難しく、タレントマネジメントの実現が困難な状況が続きました。
ところが、2010年代以降に人事業務のパフォーマンスを高める技術「HRTech」が誕生し、タレントマネジメントシステムの開発と導入が進められ、今では日本でもタレントマネジメントの考えが広く普及しています。
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日本が抱えるタレントマネジメントの課題とは?
ここからは、日本でタレントマネジメントを運用していくうえでの課題を3つ紹介します。
スキルに合わせた人材配置ができていない
日本の多くの企業は、伝統的な終身雇用や年功序列の考え方が色濃く存在しています。そのため、従業員のスキルや適性よりも、所属年数や経験に基づく人材配置が主流となっている場面が少なくありません。
その結果、最適な職務に配置されず、持っているスキルや知識を十分に活かせない人材が存在しています。この問題は企業の効率や生産性の低下を招くだけではなく、従業員のモチベーション低下や能力の浪費にもつながっています。
従って、スキルベースでの人材配置の重要性が国内企業においても高まってきているのです。
計画的な人材育成ができていない
日本の企業文化には、OJT(On the Job Training)や先輩からの指導といった、現場中心の教育手法が強く根付いています。これにより、組織全体としての統一された教育や育成の方針が欠如し、計画的な人材育成が行われていないという課題が浮き彫りになっています。
現代のビジネス環境では、迅速な変化に対応するための柔軟なスキルセットと知識が求められます。そのため、計画的な人材育成と継続的なスキルアップが、企業の持続的な成長をサポートする鍵といえます。
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人事業務の負担が大きい
人事部門は採用活動、評価制度、福利厚生、労務管理など多岐にわたる業務を担当しています。しかし、多くの企業ではIT化や効率化が進んでいない部分も多く、非効率的な方法での業務が続いているのが実情です。
人事部門の業務負担は増大し、日常のオペレーションに追われる時間が多くなっています。その結果、戦略的な人事施策の検討や実行が難しく、タレントマネジメントの質も低下してしまう可能性が高まります。
海外と日本のタレントマネジメントの違いとは?
海外と日本のタレントマネジメントは、概念自体に違いはありません。しかし、雇用システムには違いがあります。
ここからは、主な違いを3つ紹介します。
雇用方法の違い
日本は長らく「終身雇用」が主流となっており、一度入社すれば引退までその企業に所属するという考えが根付いています。一方、欧米を中心とした海外の企業では、柔軟性が高い雇用形態が一般的です。たとえば、短期契約やプロジェクトベースの雇用、フリーランスとの取引などが多く見られます。
海外と日本の雇用方法の違いは、組織の機動性やスキルの最適化、人材の流動性に影響を及ぼしており、一般的に、海外の雇用方法は「ジョブ型」、日本は「メンバーシップ型」であることが多いです。
ジョブ型
ジョブ型とは、職務内容を明確にして契約を結び、相応しい能力を持つ人材を採用する手法です。欧米を中心とした海外企業では、このジョブ型の雇用が一般的で、キャリアの進路は個人の能力や興味、企業のニーズに応じて柔軟に変わることが許容されています。
ジョブ型は、従業員のモチベーション向上やスキルの多角化、企業の機動性の強化に寄与します。一方、日本の企業では役職や部署に基づくキャリア形成が主流でしたが、最近ではグローバルな競争や多様な働き方の要求に応えるため、ジョブ型導入を検討する企業も増えています。
メンバーシップ型
メンバーシップ型は、従業員が特定の企業や組織に所属することを前提とした雇用形態です。
日本の企業における終身雇用制度や年功序列は、メンバーシップ型の代表的な例といえるでしょう。従業員は企業との長期的な絆や関係を築くことが期待され、忠誠心や所属意識は企業文化の基盤となっています。
メンバーシップ型は組織の安定性や長期的な人材育成に有利ですが、変化のスピードが速い現代ビジネスにおいては、組織の柔軟性や適応性が求められる際に制約となることもあるのです。
欧米の企業では、メンバーシップ型よりもジョブ型が優先される傾向がありますが、背景には文化や労働市場の状況、経営哲学など、さまざまな要因が影響しています。
人材管理方法の違い
日本企業での人材管理方法は、従業員の勤務態度や所属年数、チームへの貢献度など、総合的な要素を評価の基準とする「部署ベース」であることが多いです。そのため、年功序列に基づく昇進や報酬が行われる場合が多く、結果だけではなくプロセスや態度も重視されます。
一方で、海外企業では必要とされる能力が明確であることが多く、階層別に管理できる「ポジションベース」が一般的です。たとえば、中途入社の社員が部長などのリーダーポジションになり、指揮を取ることもあります。
グローバル化の進展や新しい世代の価値観の変化に伴い、日本の企業も結果を重視した評価方法へのシフトが始まっています。
転職事情の違い
日本の企業文化は、長らく終身雇用制度と年功序列が中心であり、転職はリスクとして捉えられる傾向がありました。対照的に、海外ではキャリアの進行において複数の企業を経験することが一般的です。
このような転職事情の違いは、各国・地域の労働市場の特性や文化的背景に深く根ざしており、タレントマネジメントのアプローチに大きな影響を与えています。
タレントマネジメントは人材育成がメインとなるため、日本企業の転職事情から考えると相性が良い手法だといえるでしょう。
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グローバルタレントマネジメントとは?
グローバルタレントマネジメントは、グローバル人材の能力を最大限に活かすための人材マネジメント手法です。多国籍企業や国際的な展開を持つ組織において、各地域の人材を最も効果的に活用するための戦略として注目を浴びています。
従来のタレントマネジメントが主に国内の人材に焦点を当てていたのに対し、グローバルタレントマネジメントは多様な文化や価値観を持つ人材の統合や協働を重視します。近年ではグローバルな視点でのリーダーシップの育成や、異文化間のコミュニケーション能力の強化、多様性を活かす組織文化の形成などのため、グローバルタレントマネジメントが求められているのです。
グローバルタレントマネジメントの必要性
現代の経済は、国や地域の壁を超えて高度に結びついており、企業活動もグローバルに展開されています。グローバル環境の中で競争力を高め、人材を最大限活用するためには、グローバルタレントマネジメントが欠かせません。
異文化間のコミュニケーションの障壁を乗り越え、多様性を強みとして活用することで、組織の革新や成長を促進することが可能です。さらに、優れた人材を世界中から獲得し、適切な位置で活躍させることは企業の競争力向上につながります。
グローバル市場においてリーダーシップを維持・拡大するためには、グローバルな視点での人材管理と育成が不可欠となるのです。
グローバルタレントマネジメントでできること・メリット
グローバルタレントマネジメントを採用することで、どのような成果を得られるのでしょうか。ここからは、できることとメリットを紹介します。
人材配置を最適化できる
多国籍企業や国際的な展開を持つ組織は、異なる国や地域の特性、市場状況、文化的背景を考慮して、適切な人材を配置する必要があります。グローバルタレントマネジメントを活用することで、それぞれの人材のスキル、経験、適性を的確に把握し、企業の戦略や目標に合わせて最適な場所に配置することが可能です。
業務の効率化や生産性の向上はもちろん、従業員のモチベーションや満足度も高まります。特に、異文化間の協働が求められるグローバルなビジネス環境において、正確な人材配置は企業の競争力を大きく左右する要素となるのです。
もちろん、人材が優秀なスキルを発揮するための最適な環境が整備されているかの確認も必要です。
人材を一元管理できる
グローバルタレントマネジメントでは、組織内の人材データを一元的に管理することが可能です。
多国籍企業や広範な地域に展開している組織では、部門や国ごとに異なる人材管理の方法や基準が存在することが一般的です。しかし、グローバルタレントマネジメントの導入により従業員のスキル、経歴、業績などの情報を一か所で確認・分析できます。そのため、人材の配置や育成、評価などの意思決定が迅速かつ効率的に行えます。
さらに、全社規模での戦略的な人材マネジメントの実施も容易となり、組織の戦略や方向性に合致した人材開発ができることも魅力です。一元管理のアプローチは組織の視野を広げ、グローバルな競争環境下での成功に寄与する要素になります。
効率的な人材育成ができる
グローバルタレントマネジメントの枠組みのもとでは、効率的な人材育成が実現可能です。各地域や国の特性を考慮しつつ、全体としての戦略や目的に基づく統一された教育プログラムや研修が提供されるため、従業員のスキルや知識は一貫して向上します。
さらに、グローバル視点を持つリーダーシップや異文化コミュニケーション能力の育成も強化されるため、国際的なビジネス環境での対応力が増します。一元的な人材データ管理のおかげで、各従業員の能力やニーズを正確に把握し、パーソナライズされた育成プランを提供することも容易です。
効果的な人材育成は組織全体の質の向上だけではなく、従業員一人ひとりの成長やキャリアパスの構築もサポートされ、結果的に企業の競争力の強化と持続的な成長が促進されるのです。
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グローバル企業におけるタレントマネジメントの導入事例
ここからは、グローバル企業におけるタレントマネジメントの導入事例を紹介します。
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
医療機器やソリューションの提供を手掛けるGEヘルスケア・ジャパン株式会社は、成長戦略として「インクルージョン&ダイバーシティ」を掲げています。
スキルアップ支援のための独自オンラインラーニングの提供や、リーダーシップの育成など、GEグループ全体の方針を踏まえつつ、日本独自の人材育成やキャリア形成のプログラムが推進されていることが特徴です。
社員にフィードバックがしやすい環境を整備し、成長を促せるように工夫されています。
味の素株式会社
味の素株式会社は、世界36の国・地域で展開するグローバル企業です。独自の「グローバル人財マネジメントシステム」を導入し、次世代の人財育成を行っています。
グローバル人財マネジメントシステムは、「ポジションマネジメント(適所)」と「タレントマネジメント(適財)」の2軸から構成され、基幹ポストと人財を可視化し、分厚く多様な人財層の形成も強化していることが特徴です。
独自の教育プログラムや人材交流を通じて、組織の競争力を高める取り組みを実施しています。
日産自動車株式会社
日産自動車株式会社は、1933年の設立以来、世界中で高い評価を受ける自動車を製造・販売しているグローバルな自動車メーカーです。
独自のタレントマネジメントプログラム「JBLP(Japan Business Leadership Development Program)」を導入し、グローバルなビジネスリーダーを日本から輩出できるように育成・選抜を行っています。
異文化間の協働を強化するための教育プログラムも実施されており、企業の長期的な成長とイノベーションをサポートしています。
▷タレントマネジメントの導入事例!成功例・失敗例と得られる効果
グローバル向けタレントマネジメントシステム
ここからは、グローバル向けのタレントマネジメントシステム3選を紹介します。
カオナビ
カオナビは、約3,000社以上の導入実績を誇るタレントマネジメントシステムです。視覚的な組織図を中心に、社員のスキルやキャリア、評価情報を一元管理できる点が特徴です。
シンプルなユーザーインターフェースと、高度なカスタマイズ機能も魅力の一つ。グローバル展開する企業にとって、異なる地域や部門間の人材情報の共有や協働を促進するための有効なツールとして活用されています。
提供元 | 株式会社カオナビ |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
導入実績 | 約3,000社(2023年3月末時点) |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
Workday
Workdayは、グローバル規模で活用されるクラウドベースの統合ビジネス管理ソフトウェアです。主に人事、経理、財務管理機能を中心とした全体的な経営リソースの最適化をサポートします。
特にタレントマネジメント領域では、リクルートメントからオンボーディング、パフォーマンス管理、キャリアパス設計までの一連の流れをシームレスに管理できるのが特徴です。多言語・多通貨に対応しており、グローバルに展開する企業の複雑な要件も柔軟に対応可能。
高度な分析機能も搭載しており、データベースの人材情報から戦略的な人事判断の参考資料を提供します。
提供元 | Workday, Inc. |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
3.Resily
Resilyは、グローバル企業向けの先進的なタレントマネジメントシステムです。
定期的なOKR共有の共有やタスク管理、進捗共有や達成自信度の計測などの機能により、効率的に人材育成が可能です。さらに、ユーザーフレンドリーなインターフェースを持ち、導入後の運用も容易。
グローバルに展開する企業のタレントマネジメントを効率的に支援する、信頼性の高いシステムとして多くの企業から支持を受けています。
提供元 | Resily株式会社 |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン |
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導入実績 | 170社以上 |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
海外のタレントマネジメントを取り入れて人事管理に活かそう
グローバル市場での競争が激化する中、多様な能力を持つ人材を効果的に活用し、組織の持続的な成長を実現するためには、先進のタレントマネジメント手法の導入が欠かせません。日本企業も、海外の手法やシステムを参考にしながら、自社の文化やニーズに合わせてカスタマイズすることで、人事管理の質を向上させられます。
結果として、企業の競争力を高め、持続的な成功への道を築くための強固な基盤を築くことができるでしょう。
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