テレワーク推進によるオフィス需要の変化とは?役割や今後の働き方について

最終更新日時:2022/06/03

テレワーク

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テレワークが進むとオフィスの需要はどのように変化するのでしょうか。本記事では、データから見るオフィス需要の変化やオフィスの役割、オフィスを残すメリット・デメリットを紹介します。今後の働き方についても解説しますので、ぜひご覧ください。

テレワークが推進される背景

IT企業、非IT企業など、業種を問わず急速に拡大した、「テレワーク」という働き方は、今や市民権を得つつあります。

しかし、そもそもテレワークが推進されるようになったのはなぜなのでしょうか。ここでは、その理由や背景について解説します。

ICTの進化と普及

ICT(情報通信技術)は、いわばテレワークを支える基盤とも言える技術です。

例えば、Web会議やクラウドサーバーの活用、ペーパーレス化、各種クラウドサービスは、ICTが進化したことにより実現した仕組みです。つまりICTの進化や普及なくして、テレワークを実行することはできないのです。

人材確保の促進および人材流出の防止

企業はテレワークを導入することで、より多くの人材を確保しやすくなります。

オフィス通勤を前提としないのであれば、求職者の居住地による制限を受けない採用活動が可能になります。日本全国各地から優秀な人材を確保できるのはもちろんのこと、例えば、海外居住者を採用することもできるでしょう。

また、働き盛り世代とも呼ばれる30代〜50代の世代は、結婚・出産・育児・介護といったライフステージの変化が多く訪れる世代でもあります。そのような生活の変化から、働く意思があっても、就労が困難となり、退職を余儀なくされる場合も珍しくありません。

しかし、このようなケースにおいても、テレワークの実施により仕事が続けられることがあり、人材の流出を防ぐことができます。

子育てや介護との両立

近年、柔軟な働き方の推進によるワークライフバランス向上は、以前にも増して、重要視される傾向にあります。

テレワークでは、通勤時間の削減のほか、フレックスタイム制との併用により、より自由度が増し、さらに時間を有効に使うことができるようになります。

例えば、子育てや介護といった家庭の事情を抱えている場合、通院や学校行事などで、日中に用事が入ってしまうことが多々あります。こうした状況にもテレワークであれば、柔軟に対応できるため、仕事に大きな支障をきたすことがありません。

雇用される側は、家族との時間や私生活も大切にしつつ仕事が継続でき、企業は貴重な労働力を失わずに済むのです。

テレワーク推進でオフィス需要はどう変化する?

テレワークが推進されると、オフィスに関連した需要はどのように変化するのでしょうか。

ここでは、コクヨマーケティングが、東京エリアの企業64社を対象に、2020年に実施した「ポストコロナに向けたオフィスや働き方」に関する調査の結果をもとに、3つの観点から需要の変化について解説します。

[出典:コクヨマーケティング「これからのオフィスや働き方に関する調査 -ポストコロナに向けたオフィスや働き方について-」]

(1)オフィス面積

調査によると、オフィス面積に関する回答では、以下のような結果となっています。

  • オフィス面積は維持……56.3%
  • オフィス面積縮小……17.2%
  • オフィス面積拡張……12.5%
  • わからない、検討していない……14.1%

半数以上の企業が「オフィス面積は維持」と回答する一方で、オフィス面積を縮小しようと考えている企業は17.2%に止まっています。

オフィス面積を維持する理由については、「パンデミック前の体制に戻すため」といった、テレワークをあくまで「一時的な措置」としている企業のほか、出社する社員は減ったものの「仕事中のソーシャルディスタンスを確保するため」といった背景も挙げられていました。

ただし、アンケートが実施された2020年は、新型コロナウイルス感染症が数年に渡って影響を及ぼすとは予想できていなかった企業が多かったとも考えられます。

実際に、2021年に実施された別のオフィス需要調査では、調査開始以来初めて「オフィス縮小」の回答が「オフィス拡張」を上回るといった結果がでています。

そのため現状は、オフィス面積の縮小を検討する企業が増加傾向にあるといえるでしょう。

(2)シェアオフィス等の利用

一方、シェアオフィスやサテライトオフィス、コワーキングスペースの利用については、同調査で以下のような回答結果となっています。

  • 導入予定・検討中……26.6%
  • 導入予定なし……65.5%
  • わからない、検討していない……3.1%

こちらは、業務上オフィスや現場に出なければ仕事ができないといった理由から利用を検討していない企業がある一方で、業務はすべてWebで完結するため、そのようなスペースの必要性がないことから導入予定なしする企業も見られました。

しかし、今後テレワークの定着化に向けた取り組みが進むようになれば、自宅での作業環境を十分に整えることができず、サテライトオフィスやコーワーキングスペースの設置を望む社員の声が大きくなることも予想されます。

(3)出社率の設定

コロナ禍では、オフィスへの出社人数を制限する際の指標などに用いられていた「出社率」については、約半数の企業が「出社率を設定している」と回答しています。さらにその数値については、以下のような設定状況となっていました。

  • 出社率41~60%……26.6%
  • 出社率21~40%……14.1%
  • 出社率61~80%……4.7%
  • 出社率81~100%……4.7%

上記から、約4割の企業において、在宅勤務やサテライトオフィスの利用などの独自のルールを取り入れ、社員の出社を半分以下に制限していることがわかります。

テレワーク禍でのオフィスの役割

テレワークが普及していく過程においては、オフィスに求める役割も徐々に変化が見られるようになっています。ここでは、それぞれの役割について解説します。

社員がコミュニケーションを取れる場所

従来のオフィスは、当然ながら仕事をする場であり、コミュニケーションはあくまで業務の合間に自然発生的に生じるものという認識をお持ちの方は多かったのではないでしょうか。

しかし、テレワークでは、そのような何気ない会話は生まれにくくなってしまいます。このコミュニケーションの頻度や質の変化を長期的に見たとき、場合によっては、社員同士の人間関係や信頼関係に影響を及ぼしてしまうこともあるでしょう。

そのため、直接対面する機会が少ない状況の中では、オフィスは「コミュニケーションの場」としての役割が強く求められるようになるのです。

企業のミッション・バリューを伝える場所

オフィスは企業のミッション・バリューを伝える場所でもあります。ミッション・バリューとは、企業の使命や価値観を示した重要な経営指針のことです。また、ミッション・バリューは、全社員に共通する行動指針でもあります。

本来、ミッション・バリューは経営者が、折に触れて度々社員へと伝えるものです。また、企業によっては、日常的に社員の目に触れる場所に掲げられていることも多いのではないでしょうか。しかしながら、テレワークでは、このような指針を意識する機会が減ってしまいます。

定期的なオフィスでのミーティングなどにより、改めてミッション・バリューを認識するきっかけづくりが必要となるのです。

会社への帰属意識を高められる

帰属意識とは、特定の集団に所属しているという意識のことですが、この帰属意識は、社員の会社に貢献したい気持ちや意欲である「社員エンゲージメント」とも密接な関係にあるといわれています。

しかしテレワークでは、日々の業務を一人で行うことが増えるため、どうしても「チームの一員である」という意識が薄れがちです。

そのため、定期的なオフィス出社日を設けることが、社員同士の連帯感や目標達成への共通意識の醸成につながり、社員のモチベーション向上も期待できるのです。

テレワークの時代にオフィスを残すメリット

テレワークの時代にオフィスを残すと以下の3つようなメリットが得られます。

メリットについて理解することで、効果的にオフィス出社を取り入れられるようになります。ここからはそれぞれのメリットについて確認していきましょう。

(1)新たなアイデアを出しやすい

オフラインでのコミュニケーションは、アイデアを積極的に出し合い、かつ新しいサービスや価値観へと発展させる「ブレストミーティング」を効果的におこなうことができます。

一方、オンラインのコミュニケーションでは、リアルタイム性が劣る点や複数人が同時に話してしまうと、聞き取れなくなってしまうといったデメリットがあります。

そのため、オフィスでの活発な意見交換により、新しいアイデアも生まれやすくなるでしょう。

(2)社員が集まれる場所の確保

先にもお伝えした通り、テレワークであっても、定期的なオフィス出社によって得られるメリットは多々あります。

特に、社員同士が顔を合わせることによって得られる効果は、アイデアの創出や業務効率や生産性の向上などが挙げられます。どれも企業が成長を続けていく上で重要な要素となるものといえるでしょう。

(3)住所や電話番号の維持

オフィスを完全に引き払ってしまうと、企業情報として住所や電話番号を使うことができなくなってしまいます。

拠点がなくなってしまうと、書類などの郵便や荷物も受け取れなくなってしまうばかりか、顧客企業との連絡手段や接点の機会が減ってしまうこともあるでしょう。

そのため、住所や電話番号を維持することは企業にとって大きなメリットだと考えられます。

テレワークの時代にオフィスを残すデメリット

テレワーク時代にオフィスを残すと、以下のような3つのデメリットも発生します。

(1)コストの発生

オフィスの維持には、賃貸料、オフィス設備、光熱費など、多くのコストが発生します。

そのため、テレワークの実施により、必要となくなったスペースや設備をいつまでも維持し続けるのは、効率的とはいえません。オフィスを縮小する、シェアオフィスへと移転するといった工夫が必要になります。

(2)感染リスクの上昇

オフィスに出社する機会が増えると、感染リスクが上昇してしまいます。万が一、社内で集団感染が発生してしまった場合には、業務がストップしてしまうこともあるかもしれません。

社員の安全およびBCP対策として、オフィスでは感染対策の徹底が求められることになります。

(3)オフィスへの通勤時間が発生する

特に在宅でのテレワークでは、通勤時間を排除することができるため、これまで通勤にかけていた時間を、ワークライフバランスの向上などに有効に活用することができます。

特に、子育てや介護といった事情を抱える社員においては、通勤時間の確保ができずに、フルタイムでの就労を諦めたり、退職を余儀なくされるケースも少なくありません。

オフィス勤務が、社員の離職を招くこともあるのは、企業にとって大きな痛手であるといえます。

テレワークで今までのオフィスに代わる場所

テレワークが浸透しつつある今、オフィスに代わる新たなワーキングスペースや新しいサービスが登場しています。ここからは、それぞれの特徴についてご紹介します。

(1)シェアオフィス

シェアオフィスとは、オフィススペースや設備を個人や複数の企業で共有するオフィスのことです。シェアオフィスには、初期費用のほか月額の賃料を抑えられるといったコストを抑えられるメリットがあります。

また、シェアオフィス内に自社専用のエリアを設けることができる場合もあり、オフィスの縮小や拡大が容易に行えることも魅力の一つといえるでしょう。ちなみに、シェアオフィスであっても、法人登記の住所として利用が可能です。

(2)サテライトオフィス

サテライトオフィスとは、企業の本社や支社といった拠点とは離れた場所に設けられたオフィスのことです。サテライトオフィスには、通勤や取引先への訪問といった移動時間を縮小し、社員の生産性を向上する目的があります。

また社員は、移動時間を有効に使えることから、通勤のストレスや残業時間などが減り、ワークライフバランスが向上するメリットを得ることができます。

(3)バーチャルオフィス

バーチャルオフィスとは、その言葉通り「仮想のオフィス」であり、完全テレワーク化によりオフィスの実体は必要ないものの、事業で使用する住所を確保したいと考える企業向けに事業用の住所の貸し出しをおこなう新たに登場したサービスです。

​​バーチャルオフィスを契約することで、郵便物の受け取りや固定電話回線の開設が可能となります。

今後もテレワークは続く?働き方の変化について

テレワークは、人材確保やシステム化による業務効率の改善といった側面から、以前より導入が推奨されている働き方です。しかし実情は、世界的なパンデミックを乗り切るための措置として導入した企業が多いのではないでしょうか。

就業やキャリアに関する調査を実施しているJob総研が行なった調査によると、「2022年どんな働き方を希望する?」の質問に対し、テレワークでの働き方を希望する回答は、7割を超える結果になっています。

ところが、2022年1月の「働きはじめ」の勤務形態については、「出社が必須」もしくは「必須ではないが出社」と答えた人の割合が61.1%となっていました。

上記の結果を踏まえると、社員の希望と企業の方針に乖離が生じつつあることがわかります。

ただし、雇用される側の意識の変化は、採用市場における求職者の意識にも通じており、求職者においても柔軟な勤務形態が選択できるかどうかを、就職先選びの必須条件とするケースも増えています。

社員の満足度や人材確保といった課題は、企業の成長にも直結する問題のため、今後は、徐々にテレワークの「定着」に向けた取り組みも広がっていくと考えられるでしょう。

[出典:Job総研「2022年の働き方意識調査」]

変化する働き方に合わせたオフィスを考えることが大切

テレワーク推進によるオフィス需要の変化について解説しました。

ICTの進化、労働人口の減少などの社会的な背景により、今後は、テレワークの実施だけでなく、定着化への取り組みを始める企業も増えてくるでしょう。それに伴い、オフィスの在り方やオフィスに求める役割も徐々に変化しています。

確かに、組織の完全なテレワーク化が達成できれば、従来のオフィスの機能は不要となります。その一方で、テレワークだからこそのオフィスの役割が生まれることも事実です。

自社の課題・目的に合った新しいオフィスの在り方、役割を見直してみてはいかがでしょうか。

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