テレワークがなぜ定着しないのか?失敗する企業が陥る課題と対策

テレワークを導入したものの実践する社員が少なく、なかなか浸透しないというケースがあります。雇用される側にもメリットの多いテレワークですが、なぜ定着しないのでしょうか?本記事では、テレワークが定着しない企業における原因、課題などを解説します。
目次
なぜテレワークの定着は難しいのか?
新型コロナウイルスの影響もあり、テレワークという働き方は、社会に浸透しつつあります。多くの企業が、勤務形態の一つとしてテレワークを導入し、それに伴うデジタル化を推進しているものの、テレワークを「定着」させることについては苦労している企業が多いようです。
また、テレワークをあくまで、パンデミックを乗り切るまでの「一時的な措置」と考えている企業も少なくないでしょう。
ここでは、日本におけるテレワークの状況について解説します。
▷テレワークとはどんな働き方?日本の現状や導入メリットをわかりやすく解説
日本におけるテレワーク導入率の現状
2020年における「従業員規模100名以上」の日本企業のテレワーク導入率は47.5%となっており、2018年の導入率である19.2%にくらべ大きく向上しています。
この大幅な飛躍の背景には、政府の取り組みや啓蒙活動により企業が積極的にテレワークの導入に向けて動き始めていたこと、そのうえで新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大したことが大きく影響しています。
その一方で、従業員数「10〜100人未満」の企業におけるテレワーク導入率は「10,000人以上」の企業の半分以下という結果もでています。つまり中小企業においては、依然としてテレワークの導入が進まず、企業規模による実施状況の違いが浮き彫りとなっているのです。
ちなみに、アメリカにおけるテレワーク導入率は2018年時点ですでに85%となっており、大半の企業がテレワークを導入していることとくらべても、日本におけるテレワークの導入・実施状況は、まだまだ低い水準にあることがおわかりいただけるでしょう。
[出典:総務省「令和2年度通信利用動向調査」]
テレワークには二極化が見られる
パンデミックをきっかけに、テレワークという働き方は多くの企業に導入されました。しかし、企業による導入後のテレワークの扱いは「一時的な措置」と「テレワークの定着化」とで、その取り組みの二極化が進んでいます。
この二極化は、2020年5月の緊急事態宣言下におけるテレワークの実施率が過半数だったのに対し、解除宣言の発出後の7月における実施率は、3割ほどに減少していたという結果からも明らかです。
しかし、テレワークやフレックスタイム制といった柔軟な働き方の実現は、パンデミックのような特殊ともいえる社会状況によらず、ライフスタイルが多様化した現代社会における社員のワークライフバランスの向上につながる重要な取り組みです。
業種によっては、テレワークの実践が難しい職種が存在することは事実ですが、人材不足などの社会的な課題を克服する手段としてもテレワークの導入は有効であり、今後の企業の成長にも大きく影響する可能性があると考えられるでしょう。
[出典:総務省「令和3年度情報通信白書」]
日本企業のテレワークが定着しにくい4つの原因
ここでは、日本企業においてテレワークが定着しにくい原因を4つ解説します。
1.日本の企業はメンバーシップ型
「メンバーシップ型雇用」とは、業務内容や勤務地などを定めずに「総合職」などの名称にて採用活動をおこなう日本企業特有ともいえる雇用システムです。
長期雇用を前提とし、「人に仕事をつける」メンバーシップ型の雇用は、担当する業務経験のない人材が配置されることもあるため、特定の業務における専門的な知識・経験を持つ人材を採用する「ジョブ型雇用」よりも、多くの研修や教育が必要となります。
特にOJTと呼ばれる、実務をしながらおこなうトレーニングは、テレワークでの実践に不便や効率の悪さを感じることが多く、テレワークの導入がしにくいと考えられています。
2.コミュニケーションが減る不安
オフィスで働く場合、上司や同僚、部下など多くの社員と直接コミュニケーションをとることができます。また、同じ空間で働いていれば、仕事の合間に何気ない雑談をする中で、不安なことを相談したり、仕事のアドバイスをもらったりすることもあるのではないでしょうか。
一方、テレワークの場合、基本的には一人で仕事をすることになります。そのため「何気ない会話」の機会が減ってしまうことになります。また、相手の状況が見えないことから、相談がしにくく、不安な悩みを抱えてしまいがちです。
このようなデメリットによる長期的な影響を懸念し、テレワークの定着化に踏み出せない企業も多いようです。
▷テレワーク中のコミュニケーション方法を解説!よくある課題と対策法とは
3.セキュリティ面への不安
テレワークは、上長などの管理職や、周囲の同僚といった「周囲の目」がない環境で業務をすることから、緊張感を失い、情報管理に対する意識や責任感も薄れがちです。
そのような意識の低さから、機密情報の取り扱いが雑になってしまったり、ハッキングやウイルス感染といったトラブルに巻き込まれるリスクが高まることもあります。
テレワーク時の社員の挙動をすべて把握するのは困難であり、そのような状況からセキュリティ面の不安から、テレワークの導入自体を見送る企業も少なくありません。
4.テレワーク環境の未整備
テレワークを実施するには、社員側にもネット環境やPCが必要になります。しかしすべての従業員が業務遂行に十分な接続環境を整えているとは限りません。また、在宅勤務時の光熱費や通信費といった仕事に必要な費用負担の問題もあります。
テレワークを導入するためには、上記の問題を含めたテレワークを快適に実施できる環境を企業が整える必要があります。
しかしながら、日本企業全体におけるテレワーク環境の整備は、以前よりテレワーク導入に取り組んでいた企業を除き、進んでいるとはいえない状況です。
テレワーク定着化を進める企業の課題
ここでは、テレワーク定着化を進める企業が抱える課題について解説します。
1.IT人材の不足
一時的な措置として、必要な人数分のノートパソコンなどを用意し、急遽テレワークを導入した企業は少なくありません。
しかし、テレワークを定着させるとなれば、業務のシステム化や業務フローの大幅な見直しが求められることになります。このような、組織全体のDXに取り組むには、先端IT技術の知見を要したIT人材が必要不可欠です。
しかし、とりわけ非IT分野の企業においては、IT人材を社内で確保できているケースは稀であり、システム化に向けて、何から着手したらよいかすらわからないのが実情といえるのです。
2.従業員同士のコミュニケーション不足
テレワークのデメリットとして挙げられることの多い、「コミュニケーション不足」については、そもそも「非対面」のコミュニケーションに経営層や一定数の社員が否定的であるなど、「企業文化」や「意識」面の課題を抱えている場合もあります。
このようなケースでは、「改善策」といった思考に至らず、デメリットとしての不安や懸念ばかりが大きくなってしまう傾向にあるようです。
3.テレワークをする部署としない部署の不公平感
テレワークの導入にあたっては、テレワーク可能な社員と業務の性質上、どうしても出社が必要となる社員の間の「不公平感」を是正する制度を整える必要もあります。
しかし、社員に対する適切な体制づくりの事前周知もなく、テレワークを導入しやすい部署から実施してしまうと、不満に耐えられなくなるオフィス勤務の社員も出てくるでしょう。
テレワークの定着に向けては、全社における協力体制が必要です。そのため、このような意識の違いは、定着化を阻む要因となってしまいます。
4.デジタル化できない作業が多い
小売業や建設業、医療機関、飲食店など、業務のデジタル化が不可能な領域がある業種は確かにあります。
しかし、上記のような業界においても、特定の担当業務や職種においてテレワークを定着させる可能性やメリットは、必ずといっていいほどあります。
しかしながら、そのような業界では、前述の非対面でのコミュニケーションに否定的な意識であったり、社員間の待遇の不公平さに不満を抱きやすかったりするといった背景から、テレワークの定着に至れないことがあります。
テレワークの定着化を成功させる8つの方法
ここでは、テレワークの定着化を成功させる8つの方法について解説します。
1.社内外でのコミュニケーションを増加
テレワーク時のコミュニケーションについては、明確なルールなどがなく、各社員の裁量によって運用されているケースが多いのではないでしょうか。しかし、テレワーク時のコミュニケーションについては、ある程度のルールを設定しなければ定着しません。
就業時間が決まっているのであれば、定時のオンライン朝礼を習慣にするのもいいですし、上長と部下の1on1を定期的におこなうことも、コミュニケーションの機会だけでなく、不安や悩みを抱え込まないための対策に効果的といえます。
2.業務プロセスや課題の再確認
テレワーク定着化に向けては、以下のような課題を解決する必要があります。
- 快適なテレワーク環境の用意
- 自宅で仕事が困難な社員への対策
- 業務のオンライン化・ペーパーレス化
自社でテレワークを導入するにあたって、見直すべき業務プロセスや環境の課題を再確認することで、より具体的な施策をとることが可能です。
3.数値による定量的な目標の設定
テレワークはオフィスと違い、上司や同僚など周りの目がない環境での業務となります。そのため、社員による自己管理がより重要となるでしょう。
テレワークの導入により、業務効率や生産性が大きく落ち込むようであれば定着も難しくなります。そのため、業務管理や目標管理は、数値による定量的な目標の設定が不可欠です。
目標の定量化により、社員自身も業務の達成・未達成の状況を確認でき、程よい緊張感を持って業務に当たることができます。また、モチベーションも維持しやすくなるため、業務効率が大幅に低下してしまうといったリスク回避にも一定の効果が期待できるでしょう。
4.進捗状況や勤怠状況の可視化
テレワークでは社員の勤務態度や進捗状況を直接確認することはできません。そのためテレワークを定着させるためには進捗状況や勤怠状況を可視化できるようにして、より細かく管理する必要があります。
特に重要なのはスケジュールやタスク、勤怠状況です。これら3つを、システムの活用などにより確実に可視化できる環境を整えておけば、問題なく勤務実態を把握できるでしょう。
5.人材評価システムの見直し
テレワークの定着に向けて、オフィス勤務を前提とした評価基準の見直しも必要となります。また、新たな評価基準の設定にあたっては、「日報」や「目標管理シート」といった、新たな評価方法を取り入れる必要もあるかもしれません。
大切なのは「評価項目の明確化」と「評価方法の統一」を図ることです。この2点に配慮しつつ、環境にあった評価基準と方法を取り入れるようにしましょう。
6.テレワークに対応した就業規則の整備
テレワークを定着させるのであれば、就業規則の変更が必要となることがあります。
就業規則には、主にテレワークの対象となる範囲や、働く場所、就業時間などを記載することになりますが、このような働く上でのルールは、明確にされていなかった場合に、労使間におけるトラブルに発展する場合もあります。
テレワークの導入により、何らかの変更や新しい制度が導入されるようであれば、就業規則の内容に問題がないか確認するようにしてください。
7.テレワーク中における心身のストレスケア
テレワークは一人での作業がほとんどです。そのため、オフィス勤務であったようなコミュニケーションがなくなることに、大きなストレスを感じてしまう社員もいます。
定期的なストレスチェックやオンラインミーティングの設定だけでなく、時には、オフラインで社員同士が顔を合わせる機会をつくるのも効果的です。
テレワークには、一人で集中する時間を作りやすいといったメリットがありますが、このようなメリットが「完全個人主義」といった孤立感につながらないよう、ルールや仕組みによる配慮を怠らないようにしましょう。
8.必要なツールやシステムを導入
テレワークに適したツールやシステムが数多く存在します。導入によってテレワークに関する課題を解決できることも多くあるため、テレワークの定着に課題を感じている場合、ツールやシステムの導入がおすすめです。
しかし注意点もあり、導入の際には何のために導入するのかを明確にし自社の状況にあったツールを選ぶ必要があります。同じ用途で提供されているツールでも、まったく同じということはなくツールごとにそれぞれに特徴があります。
ツール導入の際は、自社の課題解決に必要な機能が備わっているのかしっかり確認しましょう。
テレワークの定着に役立つ助成金について
ここでは、テレワークの定着に役立つ助成金について解説します。
1.人材確保支援助成金(テレワークコース)
テレワークを制度として導入・実施し、労働者の確保や雇用改善が見られた企業に支給される助成金です。
機器等導入助成と目標達成助成の2つにわかれており、機器等導入助成では、テレワーク機器の導入に対して1企業あたり100万円、もしくは、テレワーク実施対象労働者1人あたり20万円のいずれかを上限に、対象となる経費の30%が助成されます。
また、目標達成助成においては、1企業あたり100万円、もしくは、テレワーク実施対象労働者1人あたり20万円のいずれかを上限に、対象となる経費の20%(生産性要件を満たす場合は35%)が助成されるため、最大で200万円の助成を受けることが可能です。
2.各都道府県別の補助金
以下のように各都道府県においても、テレワーク導入や定着に活用できるさまざまな補助金があります。
- 【東京都】テレワーク促進助成金
- 【兵庫県】テレワーク導入支援助成金
- 【京都府】多様な働き方推進事業費補助金(テレワークコース)
- 【北海道】中小企業競争力強化促進事業
- 【栃木県】とちぎテレワーク環境整備導入支援補助金
活用すればテレワーク定着の大きな助けになりますので、ぜひ自社の都道府県の補助金制度も確認してみてください。
※補助金や助成金の募集状況や申請要件については、必ず各公式HPにてご確認ください。
3.中小企業経営強化税制
中小企業の設備投資による企業力の強化や、生産性向上をサポートする制度です。利用することにより、主に以下の税制優遇措置を受けることができます。
- 特別償却(即時償却、全額償却)または税額控除(10%または7%)
この制度は、勤怠管理システムやWeb会議システムなどテレワークに使う機器についても申請が可能なため、節税対策として活用することが可能です。
テレワークに欠かせない役立つ便利ツール4選
ここでは、テレワーク定着には欠かせない便利ツールを4つ紹介します。
1.チャットツール・Chatwork
Chatworkはビジネスチャット国内利用者数No.1(同社HPより)のビジネスチャットです。
チャットやタスク管理、ビデオ通話などテレワークに必要とされる多くの機能が備わっています。また操作も非常にしやすく誰でも簡単に使うことができるため、導入時の混乱を最小限に抑えられるのも魅力です。
提供元 | Chatwork株式会社 |
初期費用 | 無料 |
料金プラン | ・フリープラン:無料 ・ビジネスプラン:550円/月(年間契約)※月間契約時は660円/月 ・エンタープライズプラン:880円/月(年間契約)※月間契約時は1,056円/月 |
導入実績 | ・ビジネスチャット国内利用者数No.1 ・350,000社以上の導入実績 |
機能・特徴 | ・チャットやタスク管理などの多くの機能を搭載 ・シンプルな操作性で誰でも使いやすい ・大企業でも導入できるセキュリティ |
URL | 公式サイト |
2.オンライン会議システム・Zoom
Zoomは、PCやスマホ、タブレットから複数人でビデオ会議ができるオンライン会議システムです。
オンライン会議において最もストレスを感じるのが、接続が安定せず会議が途切れてしまうことです。Zoomは独自の技術により非常に安定した接続が可能で、高品質の映像を音声を確保し、ストレスなくコミュニケーションができます。
1対1はもちろん、最大1,000人までの同時接続が可能なため、大規模な全社会議や社内研修も実施可能です。
提供元 | Zoom Video Communications, Inc. |
初期費用 | 無料 |
料金プラン | ・基本:無料 ・プロ:20,100円/年 ・ビジネス:26,900円/年 ・企業:32,300円/年 |
導入実績 | 20,000社以上(プロプラン以上利用の有償顧客) |
機能・特徴 | ・PCやスマホ、タブレットなど様々な端末から接続可能 ・接続が非常に安定しておりストレスなくコミュニケーションが可能 ・一つのミーティングに最大1,000人まで参加可能 |
URL | 公式サイト |
3.勤怠管理システム・ジンジャー勤怠
ジンジャー勤怠は、リアルタイムで始業や終業の時刻、休憩時間などの管理ができる勤怠管理システムです。PCをはじめスマホ、タブレットでも打刻ができるため、テレワーク導入には非常に役立ちます。
また、労働時間の自動集計や、有給休暇の管理なども可能です。フレックスや裁量労働時間制などさまざまな勤務携帯にも対応しているため、適切に集計が可能です。
また法改正があったとしてもシステムにすぐ反映されるため、労務リスクを抑えた管理も可能になります。
提供元 | jinjer株式会社 |
初期費用 | 100,000円〜 |
料金プラン | 400円~/月(従量課金制) |
導入実績 | シリーズ累計約15,000社 |
機能・特徴 | ・PCやスマホ、タブレットなどで打刻可能 ・自動集計機能が充実 ・法改正にもすぐに対応するため労務リスクを抑えた管理が可能 |
URL | 公式サイト |
4.電子契約システム・ジンジャーサイン
ジンジャーサインはWeb上で契約業務を完結できる電子契約システムです。
契約書の作成をはじめ契約の締結や契約書の管理までの、契約に関わる一連の流れをすべてWeb上で完結できます。
またサポート体制も手厚いため「電子契約の始め方がまったくわからない」という方でも安心して利用可能です。
提供元 | jinjer株式会社 |
初期費用 | 初期費用 50,000円〜 |
料金プラン | ・ライト 10,000円/月 ・ライトプラス 28,000円/月 ・ベーシック 50,000円/月 |
導入実績 | シリーズ累計約15,000社 |
機能・特徴 | ・契約に関わる業務すべてWeb上で完結できる ・ワークフローの柔軟な設定も可能 ・充実のサポート体制 |
URL | 公式サイト |
テレワークの定着に向けて対策やツールの導入を
本記事では、テレワークが定着しない原因や企業が抱える課題などを解説しました。
新型コロナウイルス感染症対策をきっかけに急速に導入が進んだテレワークは、現在のところ「一時的な措置」とするのか、はたまた「恒常的な働き方」へと変えていくのか、企業における対応の二極化が進んでいます。
しかしながら、求職者など雇用される側における「テレワークを望む声」は、今後さらに増大していくことが予想されます。
そのため、テレワークの導入は、人材確保といった経営戦略の観点からも、企業が発展を遂げる上での重要な鍵となるはずです。ここで紹介した成功させるための方法やツールを活用しつつ、テレワークの導入を進めてみてはいかがでしょうか。
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