テレワーク中に労災は適用される?認定条件や注意点を事例も踏まえて解説

2022/6/18 2022/06/18

テレワーク

労災に関する手続き

働き方改革で導入が進むテレワーク。多様な働き方が可能になる一方で、気になるのは自宅などで労働災害に遭った場合の労災適用条件です。本記事では、テレワーク中の労災について、認定条件や注意点などを詳しく解説します。労災が適用される事例と適用されない事例なども合わせて紹介していきます。

テレワークとは?

テレワークとは、パソコンやインターネットを活用して遠隔地から仕事をする業務スタイルです。働き方改革やコロナ禍のリモートワーク推進によって、テレワークを日々の業務に取り入れる企業も増えつつあります。

オフィスに集まって仕事をする従来型の働き方に比べて、テレワークは管理者や上司が従業員一人ひとりの勤務時間や業務態度、仕事の進捗状況をきちんと把握することが難しいといった課題があります。

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労災とは?

労働災害(労災)とは、業務中や通勤中に見舞われた事故などによるケガ、疾病、障害、死亡のことです。

労災は、業務中に適用される「業務労災」と、通勤時や出張時に適用される「通勤労災」の2種類に分けられます。

ここでは、それぞれの労災のケースについて確認し、どのような状況でどのタイプの労災が適用されるのか解説します。

業務労災

業務労災とは、業務中に発生した事故などによるケガ、疾病、障害、死亡のことです。業務中に何かの拍子で身体的なケガを負ったり精神疾患が発症して、会社を休まざるを得なくなった場合には、業務労災が適用されることになります。

ただし、業務上のケガや病気などがすべて業務労災の対象となるわけではありません。仕事とケガとの因果関係、会社が管理する施設の敷地内で起きた事故なのか、事業主の管理・支配下にあったかどうかが、業務労災の認定に際して重要な判断基準となります。

通勤労災

通勤労災とは、会社への通勤途中や取引先へ移動している最中に遭った事故などによるケガ、疾病、障害、死亡のことです。あくまでも会社業務に関連する移動時のみなので、通勤労災が適用される範囲は限定されています。

ただし、直接的には会社業務と関係のない行動だとしても、下記のようなケースでは通勤労災として認定されることもあります。

(1)日用品の購入その他これに準ずる行為

(2)職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為

(3)選挙権の行使その他これに準ずる行為

(4)病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為

[引用:厚生労働省東京労働局「通勤災害について」より]

テレワーク中でも労災は適用できる!2つの認定条件

労災の定義を確認していくと、「近年広がりつつあるテレワークにも労災が適用されるのだろうか」と疑問に感じる方もいるのではないでしょうか。

ここでは、テレワーク中の事故やケガについて、労災の基本的な適用基準を紹介します。ポイントは労災認定の2つの要件である「業務遂行性」と「業務起因性」です。それぞれについて、みていきましょう。

1.業務遂行性

労災かどうかを判断する重要な要件の一つに、「業務遂行性」というものがあります。業務遂行性とは、事故が起きた状況において、事業主が管轄する業務に従事していた状態を指します。

具体的には、以下の3つの基準のうちのいずれかに当てはまれば、業務遂行性が認められます。

  • 事業主の管轄下にあるかどうか
  • 事業主の管理下で業務しているか
  • 事業主が保有する敷地内にいるか

テレワークは事業主の下で業務をしており、事業主の管轄下であることが一般的です。そのため、テレワーク中でも業務中であれば、業務労災と認定されることが多いでしょう。

2.業務起因性

もう一つの要件は「業務起因性」です。前述した業務遂行性を満たしていることを大前提として、事故と業務との関連性をみていきます。

作業中の事故ではなくても、事故と業務の因果関係が認められれば労災認定を受けられます。

例えば、テレワーク中にトイレに立って、戻る時に転んでケガをしたという場合には、業務と事故に因果関係があるといえるので、労災認定される可能性が高いでしょう。

テレワーク中に労災が適用されるための注意点

テレワーク中の労災認定について考える上では、労災申請するために業務時間や場所を正確に把握して、会社との連絡を密に取っていく必要があります。

以下では、テレワーク中の労災申請をするために、注意しておきたい点を紹介します。

業務時間と私的時間を明確に区別する

業務遂行性や業務起因性を正確に判断するためには、業務中の行動について細かく会社に報告して、私的時間との区分けをすることが大切です。

とりわけ、テレワーク時には、業務とプライベートの線引きが曖昧で労災認定が難しいケースもあります。会社が業務との関連性を認めやすくするためにも、業務上の記録を細かくとり、上司やマネージャーなどと密接に連絡を取り合うことが大切です。

業務場所を特定する

業務と私的時間の区分けを明確にして、会社が労災認定をしやすくする工夫として、テレワーク中の業務場所を固定化することも重要です。

例えば、普段とは違う場所での業務中にケガをしてしまった場合、会社は労災だと認めない可能性もあります。普段からテレワークで使う場所を固定して申告しておくことによって、労災認定の判断を受ける時にスムーズになるでしょう。

業務内容を記録する

業務中に発生した事故やケガの原因を会社が調べる際、事故と業務の因果関係がポイントになります。事故が業務中のものなのか、業務起因性の要件を満たすかなどが調査されます。

日頃から社員一人ひとりが業務レポートを細かく記録しておくことで、労災が認められる可能性が高くなります。日報のフォーマットや報告方法などを会社やチームでルール化しておくことが重要です。

会社と密に情報共有する

労災認定を受けるためには、事故が起こったのが業務中であることを会社が認知する必要があります。そのため、常日頃から会社と密に連絡を取り合って、自身の行動パターンやイレギュラーな行動などを共有しておくことが大切です。

近年ではビジネスコミュニケーションツールを活用して、テレワーク中の社員同士のコミュニケーション促進を図りながら業務記録を共有している会社も増えてきています。

漏れのない業務報告を忘れずにおこなって、労災が認定されやすい環境を作っておきましょう。

テレワーク中の労災が適用される事例と適用されない事例

オフィスワークでは労災認定されるような事故やケガでも、テレワーク中には労災認定されにくい事例もあります。ここでは、実際に考えられるテレワークのシチュエーションの中から、労災認定される事例・されない事例について紹介します。

デスクワーク中に生じたケガ

自宅のデスクで業務中にケガをした場合は、労災認定される可能性が高いです。具体的には、椅子から倒れてケガしてしまったりした場合には労災認定されるでしょう。

ただし、判断が難しいのは同じテレワーク中でも、事故の原因が業務に起因するのかが判断しにくい事例についてです。

例えば、自宅のデスクで業務中にホットコーヒーが手にかかって火傷してしまった場合を想定してみましょう。コーヒーを飲む行為は業務自体に関係はないので、労災認定はされないと考えてしまう方もいるでしょう。

しかしこの場合、「コーヒーを飲む」という行為は、水分補給をして業務に集中するために必要なことだとも捉えることができます。そのため、このケースでは会社に業務労災だと認定される可能性が高いでしょう。

一方で昼休み中に料理をしていて、包丁で指を切ってしまったといった場合には、業務起因性の観点から、労災認定が下りない可能性が高いので注意が必要です。

離席中などに生じたケガ

業務から一時退席した際に発生した事故やケガについては、ケースによって労災認定されるかどうかが変わります。

業務外の作業をしている最中にケガをしたり、コンビニに食べ物や飲み物を買いに行ったりしてケガをした場合、業務中のケガと判断されるのは難しいため労災認定も下りない可能性が高いでしょう。

一方、トイレなど生理現象に関わる行為の前後で、転倒などをしてケガを負った場合には業務中の事故として労災認定されるでしょう。

腰痛

長い期間のテレワークで、自分の身体に合わない高さのデスクや椅子を使用して、結果として腰痛を患ってしまった場合は、労災認定されるのでしょうか。

厚生労働省が発表している基準によれば、「災害性の原因による腰痛」と「災害性の原因によらない腰痛」の2つの労災基準があります。

「災害性の原因による腰痛」とは、腰に受けた外傷によって生じる腰痛のほか、外傷はないが、次の具体例のように、突発的で急激な強い力が原因となって筋肉等(筋、筋膜、靭帯など)が損傷して生じた腰痛を含みます。

[引用:厚生労働省「腰痛の労災認定」より]

この中で「次の具体例」として挙げられているのは、例えば重い荷物を運搬する際に急な動きや力を腰に加えたことで、腰痛になってしまうケースです。このことから、同じ姿勢で長時間作業することが多いテレワーク中の腰痛は、「災害性の原因による腰痛」に当てはまらないケースが多いでしょう。

一方で、「災害性の原因によらない腰痛」の場合はどうでしょうか。

「災害性の原因によらない腰痛」とは、日々の業務による腰部への負荷が徐々に作用して発症した腰痛

[引用:厚生労働省「腰痛の労災認定」より]

このタイプの腰痛は重量のあるものを持ち運んだり、不自然な姿勢で3ヶ月以上業務をしたりした場合に限定されます。

よって、テレワークで長時間座っていて腰痛を患ってしまったとしても、「災害性の原因によらない腰痛」に該当しないため、労災認定されるケースは少ないでしょう。

心理的不調

オフィスワークからテレワークへの移行で、環境の変化で従業員がメンタルに不調を抱えてしまった場合は労災認定されるのでしょうか。

厚生労働省が発表している認定基準には、以下のような要件が記載されています。

  • 生死にかかわる、極度の苦痛を伴う、又は永久労働不能となる後遺障害を残す業務上の病気やケガをした場合
  • 業務に関連し、他人を死亡させ、又は生死にかかわる重大なケガを負わせた場合(故意を除く)
  • 強姦や本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクシャルハラスメントを受けた場合
  • 発症直前の1か月におおむね160時間をこえるような時間外労働(又はこれと同程度の例として、3週間におおむね120時間以上)を行った場合

[引用:厚生労働省「心理的負荷による精神障害の認定基準について」より]

労働者の生死に関わるような重篤な病気を負ったり、長時間の時間外労働を強いられたりした場合には、テレワーク中にメンタル不調を抱えると労災認定されます。

ただし、テレワークへの移行によって労働時間や労働環境の変化がみられない場合は、テレワークでメンタルに不調を抱えても労災認定されるハードルは高いといえます。

自宅でのコロナウイルスの感染

自宅でテレワークをしていてコロナウイルスに感染してしまった場合、感染経路が家族や従業員の行動範囲内ならば、会社が感染源ではないと判断されます。そのため、自宅でコロナウイルスに感染しても、労災認定されることはないでしょう。

ただし、感染経路が確定できる範囲において、会社が感染原因だと明確に特定された場合は労災認定されます。

感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災保険給付の対象となること

[引用:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」より]

例えば、テレワーク中に数日間だけ出社した際にコロナウイルスに感染すれば、労災認定が検討されることになるでしょう。

テレワーク中の労働災害を防止するための対策

テレワーク中は、会社が勤務中の様子を把握しにくく、従業員が思いもよらない事故に遭ってしまったり、病気にかかってしまうリスクがあります。

ここでは、テレワーク中の労働災害を未然に防ぐために、企業が取り入れておきたい対策について紹介します。

就業ルールの明確化

オフィスワークからテレワークへ移行するタイミングで、「どのような働き方や規則でテレワークを実施するのか」を明確化しておくことが重要です。

テレワークに関する就業ルールには、基本の就業時間、休憩時間、中抜け、就業場所、連絡方法など決めるべき項目が多岐にわたります。

きちんとルールを定めておかないと不正労働や時間外労働の温床となることも考えられます。また、仮に自宅のみで就業するルールの場合、カフェやコワーキングスペースへの移動中にケガを負った際の労災認定の扱いも変わってきます。

業務効率性を維持しつつ明確なルールを定めて、労災適用に関する問題を抱えない体制づくりを目指しましょう。

長時間労働の防止

テレワークで問題になりがちなのが、就業時間に関してのルールです。特に、テレワークの場合には周りの目がないことから、十分な休憩をとらず長時間働き続ける従業員や、上司に報告せず夜間や休日に稼働する従業員が問題視されています。

従業員満足度を担保しながらテレワークを成功させていくためには、従業員の勤怠管理や業務連絡をスムーズに行えるツールの活用がおすすめです。

具体的には、従業員間の連絡を円滑にするビジネスコミュニケーションツール、勤怠管理ツールの導入も視野に入れてみましょう。

テレワーク中の労災適用についてのおすすめの相談先

テレワーク中に事故に遭ってケガをしたり、病気にかかったりしたら、どこに相談すべきか悩んでしまう方もいるでしょう。ここでは、テレワーク中の労災に関しておすすめの相談先を紹介します。

一般社団法人日本テレワーク協会

一般社団法人日本テレワーク協会は、テレワークに関する独自の調査研究やテレワーク活動の促進を目的に運営されている一般社団法人です。

テレワークに使えるコワーキングスペース、日本各地のワークプレイスなども紹介しており、より利便性の高いテレワーク環境の普及にも努めています。

テレワークに関する質問であれば、随時受け付けているので、労災についての疑問点などを相談してみるのもいいでしょう。

厚労省「テレワーク総合ポータルサイト」などの公的相談先

厚生労働省は、テレワーク専門サイトである「テレワーク総合ポータルサイト」を開設しており、テレワークに悩む方の相談や質問を随時受け付けています。

これからテレワークを導入する予定の企業向けの情報に加え、セミナーやイベント情報なども幅広く掲載されているのが特徴です。テレワークの不明点などについて電話で相談可能です。

またこれ以外にも厚生労働省委託事業の「テレワーク相談センター」、東京都と厚生労働省が取り組む「東京テレワーク推進センター」など、国や自治体が主体となって、企業や個人のテレワークおよび労災の相談に乗ってくれる窓口が複数あります。

テレワーク中の労災適用条件は事前に把握しておこう

業務の様子が把握しにくいテレワークにおいては、労災認定が下りないケースも考えられます。労災認定の手続きを円滑に進めるためには、普段から業務レポートを記録して、プライベートな時間と空間を区別しておくことが大切です。

まずは、テレワーク中の労災を避けるためのルールを整備し、従業員と会社が密に連絡を取り合える環境を作っていきましょう。

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