働き方改革の現状とこれからの働き方とは?振り返りと今後の変化について

最終更新日時:2022/12/13

働き方改革

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労働環境を根本から見直すために推進されている働き方改革。現在も多くの企業が実現に向けて取り組んでいますが、これから私たちの働き方はどのように変化していくのでしょうか。本記事では、そんな働き方改革について、現状やこれからの課題、未来の展望などを詳しく解説していきます。

働き方改革とは?

厚生労働省では、働き方改革について以下のように定義しています。

「働き方改革」は、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。

[引用:厚生労働省「「働き方改革」の実現に向けて」より]

引用文中の「この課題」とは、生産年齢人口の減少や働き手のニーズの多様化を受けて直面している、「投資やイノベーションによる生産性向上」と「就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ること」を指します。

つまり、働き方改革の推進によって、人手不足への対応を図ると同時に、多様な働き方を選択できる社会を目指すということです。

【簡単】働き方改革とは?目的・取り組み背景・内容をわかりやすく解説

働き方改革の目的

働き方改革の目的には、大きく分けて以下の3つがあります。

  • 柔軟な働き方を選択できるようにする
  • 長時間労働をなくし、健康的な生活を送る
  • 雇用形態による格差を是正する

働き方改革によってこれらの目的を達成することで、労働者が健康的に働ける社会を実現し、多くの人材が活躍できる環境を整えることで生産性の向上も目指します。

働き方改革が求められている背景

日本の社会に働き方改革が求められている背景には以下の3つがあります。

  • 少子高齢化による労働人口の減少
  • 長時間労働
  • 労働生産性の低さ

総務省統計局の労働力調査によると、2021年平均の労働力人口は前年比8万人減の6,860万人でした。また15~64 歳の労働力人口は2021 年平均で 5,931 万人と、前年に比べ 15 万人の減少となっており、少子高齢化による労働力人口の減少は大きな社会課題となっています。

こうした中で、企業が労働力を確保するためには女性やシニア人材などの雇用が重要となっていますが、「産休・育休が取得できない」「育休後、働きたくても働く環境がない」など、労働者にとって働きやすい職場環境が整備されているとはいいづらい状況があります。

また人手不足による長時間労働も解決すべき課題の一つに挙げられます。長時間労働による過労死や心身の健康への影響が大きな問題となっています。

さらに、日本は主要先進国の中でも労働生産性が低い傾向にあります。日本生産性本部によると、2020年の時間当たり労働生産性はOECD加盟国のなかで38ヵ国中23位でした。

国際競争力を高めるために、また限られた人的リソースでこれまでと同様かそれ以上の成果を挙げるために生産性の向上が急務となっています。

これらの背景から、働き方改革によって「多様な人材が継続的に働けるような仕組み」「長時間労働を是正するための取り組み」「生産性向上のための施策」などを実行することが求められています。

[出典:総務省統計局「労働力調査」]

[出典:日本生産性本部「労働生産性の国際比較2021」]

働き方改革の現状

ここまで働き方改革の概要について解説しました。では、働き方改革の現状はどのようになっているのでしょうか。2019年4月から施行されている働き方改革関連法などに触れながら、3つの視点から現状について解説します。

長時間労働の是正

現在、多くの企業が長時間労働を是正するべく施策を実施しています。長時間労働は、従業員の健康と安全に悪影響を与えます。継続して働き続けるには心身の健康の維持が必須となります。

従業員が健康な状態で働くには、適切な労働時間の管理と仕事と家庭の両立(ワークライフバランス)が必要なのです。

政府は働き方改革関連法の施行などを通して、企業に長時間労働の是正を求めています。関連する制度には例えば下記4点があります。

  • 月に残業時間が60時間を超える場合は賃金を割り増しにする
  • 残業時間の上限を設定する
  • 勤務間インターバル制度を促進する
  • 年次有給休暇を5日以上取得する

これらの制度を確実に遵守することで、長時間労働の削減やワークライフバランスの実現が可能になるでしょう。

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働き方改革における長時間労働の是正とは?原因・問題点・対策について

非正規雇用と正規雇用の格差是正

非正規雇用と正規雇用の間では、賃金や待遇に格差があるのが現実です。厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、雇用形態間賃金格差(正社員・正職員を100とした場合)は、男女計67.0、男性69.2、女性72.2 となっています。正規と非正規雇用の間で、ほぼ3割以上の賃金差が存在するということです。

このような雇用形態による格差を是正するために、企業は以下の制度を整えることが求められています。

  • 同一労働同一賃金
  • 復職を支援する制度

雇用形態による格差を是正すると同時に、育児・出産・介護などによる離職を防止するための仕組みや制度を構築することで、多様な人材が離職せずに長期的に活躍できる職場が整備できるのです。

[出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況」]

多様な働き方の実現

企業は人手不足などへの対応のためにも、多様な人材の雇用を進める必要があります。

遠隔地に居住する人や外国人労働者、障害を持つ人など、さまざまな働き手を雇用するダイバーシティ経営は競争力強化の面からも有効とされています。

多様な働き方の実現に関して、企業が推進すべき施策には次のようなものがあります。

  • テレワークやフレックスなど働き方を選択できる
  • 外国人労働者の受け入れ
  • 障がい者の就労支援

労働者が働き方を自由に選択できることで、さまざまな人材の登用につながります。また、多様化する価値観への対応やワークライフバランスの向上などにもつながることから、日本企業が抱える課題を解決するためにも必要な施策といえるのです。

【解説】働き方改革の問題点とは?企業が直面する課題と解決策について

働き方改革に与えたコロナ禍の影響

2020年から感染拡大した新型コロナウイルス感染症は働き方改革に影響を与えました。

ここでは、「リモートワークの増加」と「働き方に対する価値観の変化」という2つの点について解説します。

リモートワークの増加

新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、リモートワークを導入する企業が増加し、通勤時間が削減されて余暇時間が増えた人も多いはずです。

また、在宅勤務だけでなく、ワーケーションを取り入れたりサテライトオフィスで働く人も増えるなど、働き方の選択肢が広がっています。

リモートワーク環境で快適に業務を行うために、企業はクラウドツールやコミュニケーションツールなどのITツールを導入し、業務効率化につなげています。自社に合ったITツールを適切に活用することで労働時間の短縮が実現した企業では、「仕事とプライベートを両立できるようになった」ケースもあるでしょう。

一方で、在宅勤務では逆に仕事と私生活のメリハリが付けづらくなり、労働時間が増えるリスクもあります。また、適切な労務管理ができなかったり、公平な評価ができない場合には社員のモチベーション低下の要因にもなりかねません。

そのため適切なツールの導入はもちろん、社内ルールや仕組みの再構築も求められているのです。

働き方に対する価値観の変化

新型コロナウイルス感染症によって、働き方に対する価値観が変化したという人もいるでしょう。

これまでは定時に出社し、いつも通りの終業時間に仕事を終えて帰宅するという働き方が当たり前でした。しかし、リモートワークにより在宅勤務やワーケーションが可能になったことで、早朝から働いて早めに切り上げたり、休みながら働いたりするといった、これまでにない働き方が可能になりました。

また、テレワークによって移動時間がなくなったことから、空いた時間に副業をしているとう人もいるでしょう。

このように、新型コロナウイルス感染症の影響によって、これまでとは違った働き方を模索する人が増えるなど価値観の多様化が進んでいます。

働き方改革で浮き彫りになったこれからの課題

働き方改革は必ずしも良い方向に働くとは限りません。ここからは、働き方改革で浮き彫りになった課題について解説します。

生産性の低下

働き方改革によって労働時間の短縮を試みた企業は、生産性が低下する可能性が考えられます。これまでと同様の働き方で労働時間をカットするだけだと、処理すべきタスクが完了しなかったり、品質が低下する可能性が考えられます。結果的に、企業の売上にも影響を及ぼすことにもなりかねません。

売上や利益の減少によって人件費カットのためのリストラを実施したら、働き方改革の本来の趣旨に反することになり本末転倒でしょう。同様に、企業業績の悪化で会社が倒産してしまうことも避けなくてはなりません。

働き方改革を実行する際には、労働時間の削減だけではなく、これまでの成果を維持・向上させるための施策も同時に考える必要があるのです。

対応コストの問題

働き方改革によってリモートワークを実施したり、賃金の是正を行ったりした企業もあるでしょう。リモートワークを実施した場合はツールの導入・運用コストが発生し、賃金の是正を行った場合は人件費が引き上げられるのです。

このように、働き方改革は短期的に見ると対応コストが増加することも考えられます。コストの問題に対応できないことが理由で働き方改革を実施できていない企業も存在します。

管理職の負担増加

働き方改革を推進すると、管理職の負担は増加するケースがあります。遠隔地で働くことを可能にした場合、人事評価制度や就業時間の管理などを見直す必要があるからです。

制度や仕組みを見直す際には、管理職の負担が過剰にならないように工夫する必要があります。制度の運用後には、評価や勤怠管理のための時間を軽減できるようなツールを取り入れるなどの対策を考えましょう。

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働き方改革の課題を解決するための今後の対策とは?

ここからは、働き方改革の課題を解決するための対策について解説します。

DXの推進

働き方改革によって労働時間を短縮した場合、売上や利益を保つには業務効率化・生産性の向上が必須です。その際、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が必要です。

DX推進によってツールやITシステムを導入すると、業務効率化につながり時間短縮や特定の場所にとらわれない働きを実現できます。

遠隔地で働く従業員の管理も可能であるため、管理職の負担軽減にもつながります。

働き方改革を成功させるアイデア13選!労働環境改善につなげるポイント

課題の可視化

そもそも、働き方改革によってどのような状況に直面しているのか、自社が抱える課題や問題点を可視化する必要があります。

その際、経営層だけの分析や評価だけでは十分ではない可能性があります。実態を把握するためには現場の声をヒアリングすることが大切です。

現場で働く従業員からヒアリングした後、マネージャークラスや経営層に共有し、対処すべき優先順位や具体策を検討します。

課題解決には人的リソースやコストがかかるので、影響範囲の大きいものや緊急度の高いものを優先的に対処するなど、臨機応変に対応することが重要です。

補助金・助成金の活用

働き方改革を実施する企業は、国や自治体から補助金や助成金を受け取れる可能性があります。

例えば、労働時間短縮や休暇取得を支援する企業には「働き方改革推進支援助成金 (労働時間短縮・年休促進支援コース)」、労働時間の適正化を図ろうとする企業には「働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)」といった補助金を付与しています。

このように、国や自治体では働き方改革の推進をサポートしています。自社の取り組みに当てはまる補助金・助成金を探して、該当するものがあれば積極的に活用しましょう。

【2022年】働き方改革推進支援助成金とは?申請方法やコース内容を解説

働き方改革で変わるこれからの働き方と未来の展望

新型コロナウイルスの感染拡大によって、テレワークを実施する企業が増えたり、労働時間が短縮されるなど働き方改革は大きく進みました。

一方で、感染症の拡大によって、受動的にテレワークを取り入れた企業もあるでしょう。テレワークを導入した企業では、新型コロナウイルスが落ち着いた後には能動的に取り組みを推進する必要があります。

現在さまざまな形で働き方改革を進めている企業は今後も、働きやすい環境・制度を整える施策を継続することが重要です。改革の推進にはITツールの導入や組織変更、社内ルールや制度の改定など、多角的な取り組みが必要になります。この取り組みを成功させるためには、一つずつ確実に施策を実行する継続性が大切です。

そのためには、経営層のコミットメントはもちろん、従業員一人ひとりが働き方を改善しようという意識をもって、日々の業務に取り組む必要があるのです。

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働き方改革の推進で企業がワークライフバランスを整える方法とメリット

働き方改革の現状を把握して今後の対応に活かそう

本記事では、働き方改革の現状とこれからの働き方について解説しました。

まずは働き方改革の現状を把握し、自社が直面している課題を可視化することが大切です。その上で、さまざまな対策を講じて少しずつ改革を進めていく必要があります。

ぜひ本記事を参考にして、働き方改革を推進し、多様な人材が活躍できる職場環境の構築を図っていきましょう。

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