勤怠管理はどの部署の仕事?新社会人のよくある疑問をわかりやすく解説

最終更新日時:2022/11/25

勤怠管理システム

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従業員の労働時間を把握する「勤怠管理」はどの部署の仕事か知っていますか? 勤怠管理は、主に労務が行う企業がほとんどです。新社会人のよくある疑問として、「経理・労務・総務」の違いがわからないというものがあります。この記事では経理、労務、総務それぞれの役割と勤怠管理の重要性を解説します。

勤怠管理はどの部署の仕事?

勤怠管理は労務を担当する部署の仕事です。企業によっては、労務部や労務課を設けていることもありますが、一般的には人事部の仕事に含まれていることが多いでしょう。また、企業規模によっては、総務や経理の担当者が兼任することも珍しくありません。

つまり、企業によって労務を担当する部署が異なるため、勤怠管理は「○○部の仕事」と一概にはいえないのです。新社会人の方は、入社後にどの部署が労務を管理しているかを確認しておく必要があります。

経理・総務・労務部署の違い

企業には、営業やマーケティング、販売などの顧客対応など、顧客と直接または間接的に関わる業務である「フロントオフィス」と呼ばれる部門に対し、「バックオフィス」と呼ばれる経理・総務・労務の業務があります。

バックオフィスは、その名のとおり営業活動を後方から支援するという意味合いがあり企業には欠かせない部門です。しかし、その業務の内容や役割について正しく理解していない人も多くいます。ここでは、経理・総務・労務の違いを確認していきます。

(1)経理とは

経理の仕事は、企業のお金を管理し、経営のサポートをする業務です。業務の内容を詳しく見ていきましょう。

会社のお金の管理

会社のお金の管理は、経理にとって最も大切な業務になります。具体的な内容は下記のとおりです。

  • 毎日の売上管理
  • 仕入れ管理
  • 税金の計算
  • 保険の管理と計算

他にも、従業員の交通費や出張費用、備品の購入費用など、実際に支払いが発生したお金のことだけでなく、資金や予算の管理など、企業のあらゆる「お金にかかわること」を管理しています。

お金の動きの管理や記録は、1日、1ヶ月、3ヶ月、半年、1年という単位で行われ、企業が1年間の収益や費用、負債などを整理して、その年の業績や財務状況を明らかにする「決算」も、経理の大切な仕事のひとつです。

経営陣のサポート

管理・記録したお金の流れを数値化した資料を、経営陣に提示するのも経理の仕事です。その資料をもとにして、経営判断や戦略が立てられるため、経営陣をサポートする役割を果たしています

近年は、このような経営戦略に関わる経理としての役割が、特に注目されるようになってきました。キャリアや立場によっては、意見や提案を求められることもあるでしょう。

(2)労務とは

労務とは、勤怠管理や給与計算、入退社時の社会保険手続きなど、従業員の労働環境を整える管理業務です。

勤怠管理

従業員の就業状況を正確に把握することは、法律によって定められた企業の義務でもあります。そのため企業は、従業員の労働時間、残業時間、有給休暇の取得まで、勤怠に関わる詳細な情報を正確に記録して管理しなくてはなりません。

労働関連の法令に違反した企業には、罰則が科せられることもあるため、正確で厳密な勤怠管理が求められるのです。

給与計算

勤怠管理の情報に基づいて給与計算をするのも、労務の仕事です。法律で定められている所得税や住民税などの税金、社会保険料の徴収を給与計算で行います

企業によっては、各種手当やインセンティブの支給、社員食堂やスポーツジムなどの会社施設の利用費用を給与から天引きしているケースもあるでしょう。これらの計算も経理の業務に含まれます。

社会保険の手続き

従業員の入社・退職時に、社会保険の手続きを行うのも労務の仕事です。

社会保険とは、健康保険の介護保険、雇用保険、労災保険、年金保険の総称として使われてる名称です。手続きに誤りがあると、従業員に不利益を与えてしまうこともあるため、正確性が求められる重要な業務になります。

労働環境の整備

労働時間の管理や給与の計算、社会保険の手続きなど、労務の業務は、従業員が安心して働ける環境を整備することが、大きな役割のひとつとなっています。従業員の健康診断の手配や管理なども行います。

また、労働安全衛生法の改正(2014年6月)により、2015年12月からは、従業員50人以上の企業に年1回のストレスチェックが義務づけられました。これらに関する従業員への通知や専門家の手配の業務も労務の業務となっています。

[参考:厚生労働省「改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度について」]

人事が労務の業務を担うことも

先ほどもお伝えしたように、労務を担う部署は企業によって異なります。一般的には人事部門が業務を担うことが多いですが、従業員数が少ない企業では、総務や経理が兼任することもあるでしょう

人事が労務を担うことが多いのは、従業員の昇進や昇給といった待遇の決定や異動、入社・退職といった人事事項など、給与や保険と親和性の高い業務を担当しているからです。

(3)総務とは

総務とは、企業運営に関わる全般的なサポート業務です。具体的にどんな仕事を行っているのかを確認していきましょう。

企業運営に関わる業務

総務の業務はとても幅が広く、具体的な仕事内容が決まっているわけではありません。そのため企業によって異なることも多いですが、一例として次のような業務があげられます。

  • 備品の管理や手配
  • 施設管理
  • 防災対策
  • 慶弔対応
  • 来客対応

場合によっては、株主総会や社内イベントの企画、運営を任されることもあります。このように企業運営に関わるさまざまな業務を担っているのです。また、規模が小さい企業では、人事や労務の仕事を総務部か担当することもあるでしょう。

従業員全員をサポートし経営陣と現場をつなぐ

総務は従業員と経営陣をつなぐ役割も担っています。例えば経費削減を経営陣が掲げたときに、実際に現場の従業員に落とし込むのは総務の仕事です。具体的にどのように経費を削減するのか、従業員が実践すべきことは何かをまとめて、周知しなくてはなりません。

また、従業員が求める備品や制度などがあれば、必要性を検討した上で、経営陣への提案が必要になります。従業員をサポートし、現場と経営陣とのコミュニケーションを円滑にする重要なポジションといえます。

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勤怠管理を行う3種類の方法

勤怠管理の方法には主に3つの種類があります。それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。

(1)タイムカード管理

これまでの勤怠管理で、最も一般的な方法のひとつが、印字式のタイムカードによる管理です。タイムレコーダーに、専用のタイムカードを入れて出退勤の時間を打刻する方法ですが、低コストで導入でき、誰でも簡単に使えるのがメリットです。

ただし、打刻間違いや漏れが起こることもあります。また、遅刻しそうな従業員の代わりに別の人が打刻するなどの不正も考えられるので注意が必要です。

(2)エクセルを利用しての管理

エクセルを利用する勤怠管理では、従業員が出退勤時に時間を入力し、その記録を上司が承認するのが一般的な流れです。シンプルな表であれば、フォーマットの作成にさほど手間を取られることもなく、計算式を入れておけば集計も自動で行えるので便利です。

また、インターネット上には無料でダウンロードできるテンプレートがいくつも公開されているのでコストをかけずに導入できるでしょう。

しかし、計算式や日々の労働時間は手入力となるためミスや漏れが起こりやすい点に注意が必要です。また、データの改ざんも可能なため、事前に不正を防ぐ仕組みを考えておく必要もあります。

(3)勤怠管理システムを導入して管理

3つの方法のうち、最も正確に効率よく管理できるのが勤怠管理システムです。出退勤時間の打刻はもちろん、残業時間や有給休暇の管理ができ、労働時間も自動で集計してくれます。打刻方法もさまざまで、パソコンやスマートフォンからの打刻、ICカードや指紋認証による打刻などが可能です。

パソコンの電源を入れた時間や使用時間を記録できるシステムもあり、データの改ざんや別の人が代わりに打刻するなどの不正も防止できます。ただし、システムによって異なりますが、導入と運用にはコストが必要です。

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勤怠管理をする必要のある事業場とは?

勤怠管理は、労務管理の中でも、労働関連の法令遵守にも深く関わる、重要性が高い業務です。厚生労働省令では、勤怠管理をする必要のある事業所を次のように定めています。

対象となる事業場は、 労働基準法のうち労働時間に係る規定(労働基準法第4章)が適用される 全ての事業場 です。

[出典:厚生労働省「労働時間の適正な把握 のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」]

労働基準法第4章では、「労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇」について定められているので基本的には、従業員を雇用しているすべての企業に勤怠管理の義務が課せられていることになります

勤怠管理における重要ポイントは3つ

従業員を雇用するすべての企業に義務づけられている勤怠管理について、さらに、その重要性を3つのポイントから確認していきましょう。

重要性1:従業員の就業状況を適正に把握

企業には従業員の就業状況を、適正に把握する義務があります(労働安全衛生法第66条8の3)。適正に把握することで、過度な残業や休日出勤を見直すことができ、適切に有給休暇を取得するなど、従業員にとって働きやすい環境を整えることができるようになります。

また、企業にとっても無駄な残業を減らし、業務の効率化を図るなど、コストの削減につながります。勤怠管理によって従業員の就業状況を把握することは、企業と労働者ともに重要なことなのです。

重要性2:正確な給与計算

給与計算は出退勤の記録に基づいて行われるため、前提となる勤怠管理は正確に行わなければなりません。出退勤の記録が正確でなければ、残業代などの割増賃金の計算ができず、当然、給与も正確に支払われません。従業員と企業の信頼関係にもかかわる問題のため、特に慎重になる必要があります。

また、人件費を正確に管理することは、経営の側面から見ても重要です。経営戦略にも影響を与えるため、正確性が求められます。

重要性3:企業コンプライアンス

上限を超える時間外労働や有給休暇の未消化などは、労働基準法に違反することになり、たとえ過失であったとしても、罰則の対象となり得ます。

また、このような労働基準法に反する労働は、従業員の健康や生活を脅かすものです。労使間での訴訟トラブルに発展するようなことがあれば、企業イメージが悪くなり営業活動にも影響が出てしまうでしょう。適切な勤怠管理は、企業コンプライアンスのためにも重要なのです。

勤怠管理で実際に管理すべき項目とは?

次に、勤怠管理で実際に管理すべき項目を見ていきましょう。

(1)時間外残業や休日出勤などの管理

残業や休日出勤など、時間外労働時間、休日労働時間の管理が必要です。労働時間は、1日8時間・週40時間までと法律によって定められており、これを超える労働は時間外労働時間になります(労働基準法第32条)。

時間外労働に対して企業は、残業代を支払わなければなりません。時間外労働に対する法定割増賃金率は、月60時間以下と60時間超で、その比率が変わるため、その点にも注意が必要です(労働基準法第37条)。

休日出勤の定義は、企業によって異なるので注意が必要です。休日には、労働基準法第35条によって定められた「法定休日」と「法定外休日(企業独自の休日)」の2種類があります。休日出勤が、上記のどちらの休日にあたるのかによって、割増賃金率が変わるケースもあるため、法令や会社のルールをよく理解し、管理しなくてはなりません。

(2)出勤や欠勤の日数管理

企業に義務づけられた勤怠管理は、労働時間や有給休暇の取得日数だけではありません。企業が労働者を雇用した際は、「法定三帳簿」と呼ばれる「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3つの帳簿を作成し、保管しておく義務があります。

このうち「賃金台帳」には、労働時間だけでなく、労働日数についても記載しなくてはなりません。そのため出勤や欠勤の日数も企業が管理すべき項目となっているのです。

特に欠勤は、企業によっては、欠勤の日数分を月額から差し引くルールになっていることもあるでしょう。さらには、人事評価に大きく影響する部分でもあります。客観的な人事評価を実現させるためにも、出勤や欠勤の日数管理は必要です

(3)有給取得日数の管理

年5日の年次有給休暇を従業員に取得させることに関しては、労働基準法第39条7にて、企業の義務とされています。そのため、企業は対象となる従業員の有給休暇取得の時期と日数を管理しなければなりません。

これまで有給休暇の管理に関しては、日数は把握しているものの取得の時期については、曖昧となっていた企業も多くあるはずです。しかし、有給休暇の取得の義務に関しては、取得の時期も基準日(休暇を付与した日)から1年以内と定められています。この取得期限を守らなかった場合も罰則の対象となるので注意しましょう

従業員が自分の有給取得日数を把握していないことも多いので、労務で管理して取得を促す必要があります。また、取得が義務づけられているのは、年次有給休暇から5日間です。アニバーサリー休暇やサマーホリデーなど、会社独自の有給休暇は、この5日間のうちに含まれません。

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新社会人が勤怠管理で注意すべきポイント

新社会人は、企業に所属することそのものが初めてという人も多いはずです。会社のルールがよくわからない状況でも、勤怠管理の一般的な知識については身につけておくと良いでしょう。

(1)自分で労働時間を記録

労働時間の記録は自分でも簡単にで構わないので残しておくと安全と言えるでしょう。身に覚えのない遅刻や欠勤が記録されているなど、万一のときの確認になるためです。

会社の記録に間違いがある場合でも、実際に記録したものがないと証明のしようがありません。特に、勤務先が手書きのタイムカードによる管理など、改ざんが簡単にできてしまう方法で勤怠管理を行っている場合は、自分でも管理表を作っておくなどして、出退勤時間を記録しておくと良いでしょう、

(2)未払い残業代を請求できる

会社には残業代を支払う義務があるため、労働時間を自分で記録しておけば、未払いの残業代が発生した際に請求することができます。残業代は過去3年間までさかのぼって請求できるので、しっかりと記録しておきましょう。

勤怠管理は主に労務部門の仕事で重要な業務

安心して社会で働くためには、勤怠管理について理解を深めておく必要があります。それは、労働者である自分に与えられた権利や環境を正確に把握することにつながるからです。

実際に社会人として働き出すと、給与や休日、残業など、勤怠管理について疑問が出てくることもあります。その際は、労務の業務を担う部門へ相談や問い合わせをしましょう。

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