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デジタル著作権管理(DRM)とは?デジタル時代のコンテンツ保護の仕組み

2022/05/28 2022/05/28

デジタル化

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デジタル著作権管理(DRM)とは一体どのような意味でしょうか。本記事では、デジタル著作権管理(DRM)の解説や重要性、メディア別に見たDRMの種類と仕組みを紹介します。主要な3つの商用DRMも掲載しているので参考にしてください。

デジタル著作権管理(DRM)とは

デジタル著作権管理は、Digital Rights Managementを略してDRMとも呼ばれ、デジタルコンテンツに対して、複製・再生・閲覧・視聴・印刷などを制限・防止するための技術を指します。対象となるデジタルコンテンツは、書籍・映像・音楽・ゲームなど、電子機器で製作されたコンテンツ全般です。

DRMでは、デジタルコンテンツに暗号化を施すことで、コンテンツの利用に条件を設定できます。条件の内容は、期間や回数、閲覧環境や機能制御など、コンテンツに応じてさまざまな条件設定が可能です。

この技術により、コンテンツの不正な共有を防ぎ、著作権者である個人や企業を保護することにつながっています。

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デジタル著作権管理(DRM)の重要性

デジタルコンテンツは、デジタルデータによって記録されているため、何度コピーしても品質が劣化しないという特性があります。

これは時間・労力・金銭をかけることなく、手軽にデータを複製できるメリットにつながる反面、違法コピーも容易に行えてしまうデメリットを抱えています。

特に現在では、インターネットの普及やマシンスペックの進歩によって、全世界に向けたデータ共有が気軽にできるようになったことで、著作権者の意図しない海賊版の流布が問題視されています。

オリジナルデータを違法コピーし、インターネットの世界に流出させることは、法律で認められた範囲を越えたコンテンツの拡散行為であり、著作権者にとってはビジネスの機会損失という大きな損害を被ることにもつながります。

しかし、仮に著作権者の親告によって、海賊版がアップロードされているWebサイトを閉鎖しても、すぐに新たな類似サイトが立ち上がるため、結局は同じ応酬の繰り返しになってしまい、本質的な解決につながりません。

そのような事態から個人や企業の権利を守るためにも、従来の著作権管理とは別のやり方で、権利を本質的に保護・管理するための手法が必要とされ、DRMが注目を浴びるようになりました。

【メディア別】DRMの種類と仕組み

DRMに採用される技術は、コンテンツの配信メディアや記録媒体によって異なります。

ここでは配信メディアの代表格であるテレビ放送から、映像・音楽のストリーミング配信、Blu-ray・DVD・CDなどの記録媒体におけるDRMの種類と仕組みを紹介します。

(1)テレビ

2003年12月に地上デジタルテレビ放送(通称:地デジ)が導入されて以降、テレビ放送はデジタル化しています。このデジタル放送では、著作権保護を目的に特殊なコピーガードがかかっており、視聴者による放送コンテンツのコピーを制限しています。

デジタル放送の録画は、Blu-rayやHDD(ハードディスクドライブ)のレコーダーで行う方法が主流ですが、レコーダーに記録されたコンテンツ情報をダビングやムーブする回数には上限が設けられています。この上限設定が、非正規でのテレビコンテンツの流通を阻止する役割を担っています。

#ムーブの意味

ムーブとは、英語で動きを意味する語句で、デジタル放送においては録画したデータを他の記録メディアに移動することを指します。

ムーブに関連する技術として、デジタル放送にはコピー・ワンスという仕組みが存在します。これは元データを消去しながらコピーするというムーブで、コピーを1世代だけに制限することが可能です。

しかし、コピー・ワンスは1回のムーブしか許可されていないため、ムーブに失敗すればデータが残らないというリスクがありました。

そのため、現在のデジタル放送では、9回のコピーと1回のムーブを可能にするダビング10という運用ルールが採用され、コピー・ワンスの緩和措置が取られています。

(2)Ultra HD Blu-ray・BD・DVD

Ultra HD Blu-ray、Blu-ray Disc、DVDなどの光ディスクには、CSSやAACSというコピーガード技術が付加されています。CSSやAACSのコピーガードの種別は、視聴を制限するアクセスコントロールです。

CSS(Content Scramble System)とは、主にDVDで採用されたコピーガード技術です。マスターキー、ディスクキー、タイトルキーと呼ばれる3つの鍵データの組み合わせにより、映像データを暗号化したうえでディスクに格納しています。

これにより、データをHDDにコピーしても鍵データの存在によってライセンス認証できず、再生できない仕組みとなっていました。

しかし、1999年に暗号が解読され、DeCSSなどのCCSを回避するためのソフトウェアが出回ってからは、CSSの効力は形骸化してしまいます。これを打開するために生まれた技術が、AACSです。

AACS(Advanced Access Content System)は、CSSが破られたことをきっかけに、より強固なコピーガード技術の実装を目的として開発されました。

主な対象はBlu-ray Discです。CSSの技術に加えて、暗号キーが流出するという事態の再発防止策として、あらかじめ流出した暗号キーを無効化する仕組みが組み込まれました。

また、Blu-ray Discの著作権保護には、AACSとは別に「BD+」や「BD-ROM Mark」という技術も採用されています。

BD+は、Blu-rayプレーヤーを利用した著作権保護システムで、AACSが破られた場合でも、新たな保護プログラムを動的に更新できる技術です。これにより、Blu-ray Disc内の不正プログラムを検知し、再生を強制的に停止することができます。

BD-ROM Markは、海賊版の大量生産への対抗措置として採用されたコピーガード技術です。この技術は、コンシューマー側で検出できない特殊な識別子をBD-ROMに埋め込むことで、ディスクの読み出しを制限し、海賊版の量産を防ぐための役割を担っています。

(3)ホームネットワークでの視聴

現在ではニーズの多様化によってホームネットワーク(家庭内LAN)が普及しており、録画した放送コンテンツをテレビ以外の機器(パソコンやモバイル端末など)で視聴できるようになっています。

しかし、データの伝送に使われているネットワーク経路が保護されていなければ、そこからコンテンツが流出してしまうリスクもあります。この対策として、ホームネットワークでの視聴にはDTCP-IPが採用されています。

DTCP-IP(Digital Transmission Content Protection)とは、ホームネットワークに接続している端末に対して、コンテンツの認識・共有を許可する技術です。この技術によって、ホームネットワークに接続している機器であれば台数に関係なく、コンテンツ再生・視聴や、コンテンツのダビングが可能になっています。

また、2012年に発表されたバージョンでは、「DTCP+」という技術が採用されています。DTCP+はインターネットを介してパソコン、スマートフォン、タブレット端末、自動車内のシステムに対して情報を発信することができる技術です。この技術により、外出先での再生・視聴が可能になりました。

(4)HDMIによるコンテンツ伝送

HDMIによるコンテンツの伝送には、HDCPと呼ばれるコピーガード技術が採用されています。

HDCP(High-bandwidth Digital Content Protection system)とは、HDMIの入力側となる映像再生機器(パソコンなど)と、出力側となる表示機器(ディスプレイ)の間で送受信されるデジタル信号を暗号化することで、不正コピーを防止する技術です。データのやり取りを行うには、再生機器・表示機器ともにHDCPの認証をクリアする必要があります。

近年では、HDCPの上位規格としてHDCP 2.2が策定されています。この背景には4Kコンテンツの配信スタートがあり、高解像度の4Kコンテンツを保護するための技術が必要となったことが関係しています。

4Kコンテンツを配信する衛星放送や、インターネットでのストリーミング配信を視聴するためには、同規格に対応した機器が必要です。

(5)CD

音楽コンテンツに利用されるCDでは、SCMSと呼ばれるコピーガード技術が採用されています。

SCMS(Serial Copy Management System)とは、デジタル接続によるコピーを1世代だけに制限する技術です。SCMSの付加対象はCDだけでなく、MD、DAT、DCCなどにも及んでいます。

当時はCDからCD、CDからMDなどへのコピーが一般的であったため、この技術が大量生産の抑止力として機能していました。

しかし、パソコンにCD-Rが搭載されたことでSCMSのコントロールが及ばなくなり、さらにはファイル共有ソフトの台頭によって、音楽データの違法アップロードに歯止めが利かない状態になってしまいます。

事態への対策として、CCCD(Copy Control CD)と呼ばれる技術で違法コピーの防止を試みたものの、CCCDを巡る企業間の意見の食い違いや、音楽アーティストによる音質劣化の指摘、対応機器の少なさによるクレーム発生など、多くの問題を抱えていました。

やがて、レコード会社が少しずつCCCDから撤退していき、ウォークマンやiPodなどのDAP(デジタル・オーディオ・プレーヤー)が普及したことで、CCCDはフェードアウトしていくことになりました。

(6)音楽配信・ダウンロード

ダウンロード型の音楽配信は、1999年に始まりました。以降、音楽を購入するメインスポットは、CDのある店頭から、配信サービスへと少しずつ切り替わっていきます。

当時のDRM技術としては、認証機器のみにデジタルコンテンツの読み取りを許可する「MagicGate」や、音声ファイルの転送を制限する「OpenMG」などをソニーが開発していました。

しかし、世界ではDRMフリーの流れが定着しつつあり、日本も次第にその流れを取り入れることになります。ストリーミング配信が主流となった現在では、ほとんどの配信サービスにおいてDRMがかけられていません。

とはいえ、DRMフリーは音楽ファイルの拡散を無制限に認めるものではありません。あくまでユーザーがストレスなく音楽を楽しむための処置であり、私的利用の範囲を越えた音楽ファイルの共有・販売は違法です。

(7)映像・音楽ストリーミング配信

ストリーミング配信は、映像や音楽などのデジタルコンテンツを気軽に楽しむ画期的な手段として、急速に浸透していきました。

著作権保護の面では、著作権者が危惧している、意図しない海賊版の蔓延を防止するため、ストリーミング配信では利用者側にデータが残らない仕様になっています。また、インターネットの接続を前提とすることで、複合キーでの認証を義務付け、コンテンツの視聴に制限をかけています。

現在では4Kなどの高解像度のデータ配信ができるようになったことで、スマホのデータ制限を気にする利用者が増加したことを背景に、オフライン再生機能を搭載する配信サービスが増えています。この場合はダウンロードしたコンテンツに対して、DRMが施される仕組みになっています。

有名な3種類の商用DRM

現在はプラグインを必要としないHTTP Streamingが確立したため、主要なユーザーデバイスに対して配信する場合は、主に3つのDRM技術を網羅しておく必要があります。ここでは3社のベンダーがそれぞれ提供する商用DRMを解説します。

(1)FairPlay Streaming(Apple)

FairPlay Streamingは、Apple社が開発したDRM技術です。iPhoneやMacなど、Apple製品へのDRM配信に必要とされます。FairPlay Streamingを活用することで、コンテンツの暗号化やキーの交換を通じて、Apple製品への安全なメディア配信ができます。

他の商用DRMと異なるポイントは、資格取得や契約手続きが不要な点です。Apple Developer Programのアカウントを取得すれば、FairPlay Streaming Server SDKのドキュメントに従い、ライセンスサーバーの実装を進めていくことができます。

(2)Widevine(Google)

Widevineは、Google社が開発したDRM技術です。Google社が提供する50億以上のAndroid端末やブラウザ(Chromeなど)をサポートしています。

配信サービスとしては、Amazon Prime Video、Netflix、Spotify、HuluなどがWidevineのDRMを使ってコンテンツ管理を行っています。

WidevineではL1、L2、L3という3段階のセキュリティレベルが存在します。セキュリティ要求に対して、端末がどれほど満たしているかによってレベルを決めるのが特徴です。

レベルによる区別としては、レベルが高いほど高画質の映像を視聴できるなどがあります。コンテンツに求める満足度にも影響してくるため、スマートフォンを購入する判断材料として使われるケースもあります。

(3)PlayReady(Microsoft)

PlayReadyは、Microsoft社が開発したDRM技術です。Windows10からデフォルトブラウザに設定されているMicrosoft Edgeや、Internet Explorer11、Silverlightプラグインなどをサポートしています。

コンテンツの解像度やダウンロード数に制限をかけることができるPlayReadyを使うことで、著作権者はデバイスやOS単位でコンテンツの保護ポリシーを適用できます。

デジタル著作権管理(DRM)の問題点

DRMの問題点は、著作権者とユーザーがそれぞれ持つ権利のバランスを取ることの難しさにあります。

特にCCCDにおいては、著作権者の保護を優先しすぎた結果、レコーダーやパソコンの動作不良を引き起こす、DRMの悪用でCDにトロイの木馬というマルウェアが仕込まれるなどが発覚し、ユーザーの快適なコンテンツ利用に影響を与えるとして大きな問題となりました。

また、産業界も決して一枚岩とはいえず、DRMによる制限が、結果としてユーザーの機会損失につながる可能性を懸念する企業も存在します。映像や音楽など、コンテンツごとの認識に乖離があるのも特徴です。

そのような中で生まれたDRMフリー化は、著作権者とユーザーの双方が納得しやすい術を模索する過程で導き出された、ある種の究極的なかたちであるともいえるでしょう。

デジタル著作権管理(DRM)の今後について

現在はデジタル技術の進歩によって、あらゆるデジタルコンテンツに対して、DRMを付与することができる時代になりました。その反面、インターネットの普及によってユーザーの選択肢が広がり、コンテンツの購入難易度はかつてないほどに上がっているともいえます。

著作権者である個人や企業は、デジタルアセット管理(DAM)を戦略的に取り組むうえで、自分たちの権利を守りながらも、いかにユーザーの権利を侵害せず、利益を高めていくかを考えていくことが重要になるでしょう。

近年はAIなどの自動化技術の進歩も目覚ましいため、DAMの効率化がどこまで進むかにも期待が高まっています。

DRMでデジタルコンテンツの保護を理解しよう

本記事では、DRMの重要性から、それぞれのメディアで利用される技術、主要な商用DRM、DRMの問題点や将来について解説しました。

デジタルコンテンツは高画質化・高音質化により、これまで以上の没入感で顧客体験を高める取り組みが進んでいます。一方で暗号の解読技術も進歩しており、コンテンツデータの流出による著作権者の被害リスクは高まっているといえます。

同じ応酬を繰り返してきた歴史に終止符を打つべく、法律の整備も進んではいるものの、まだ課題は山積みな状態です。

他者の権利を侵害せず、双方が満足度の高い状態をキープするためにも、今後のDRMによる仕組みの高度化が期待されます。

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ビズクロ編集部
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