テクハラ(テクノロジーハラスメント)とは?具体的な事例や対策法について

最終更新日時:2022/08/07

デジタル化

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「テクハラ」という言葉をご存知でしょうか?本記事では、テクノロジーハラスメントの略である「テクハラ」とは、一体どのような行為が該当するのか、具体的な事例をまじえながらお伝えします。テクハラが起こってしまう原因、さまざまな対策についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

テクハラ(テクノロジーハラスメント)とは?

「テクハラ」とは、テクノロジーハラスメントを略した言葉です。

ITに関する知識が乏しく、パソコンやスマートフォン、最新のツールなどの操作が苦手な人に対しておこなわれる「いじめ」や「嫌がらせ」を表しています

現在、この「テクハラ」への関心が高まりつつあるのですが、一体どのような背景から注目されるようになったのでしょうか?

テクハラが注目された背景

「テクハラ」が注目されるようになった背景には、テレワークが増加したことに伴う業務のIT化など、勤務環境の急激な変化があります。

テレワークの必須機器である、パソコンやスマートフォンなどのIT機器やツールは、それらを苦手意識なく、簡単に操作できる人ばかりではありません。なかには、知識やスキルがなく、すぐに適応するのが難しい人もいるでしょう。

また、テクハラは、主にデジタルネイティブと呼ばれる学生時代からインターネットが存在していた若い世代から、ITに詳しくないアナログ世代の中高年に向けて、おこわれることが多いといわれています。

特に、近年テレワークを導入した企業においては、急ピッチでテレワーク化を進めたというケースも少なくありません。そのため、IT環境への適応に時間を要するアナログ世代への「テクハラ」が増加し、注目されるようになったのだと考えられます。

「わからないから丸投げ」の逆テクハラとは?

「テクハラ」は、ITに関する知見のある人が、「IT知識やスキルの優位性」を利用して嫌がらせを行う行為ですが、実は、その逆のハラスメントもあります。

それが、ITを苦手とする人が、ITを得意とする人に対して行う「逆テクハラ」です。

テクハラが、組織における立場に関係なく起きるハラスメントであるのに対し、この逆テクハラは、主にITに疎い上司が、部下にIT関連の作業を丸投げすることとされています。

また、IT機器やシステムの使い方を覚えようとせず、何度も説明を求めるといったフォローを強いるのも、度を越すようであれば逆テクハラになってしまうでしょう。ここでは、上司が部下の時間を奪い、業務を圧迫しているという認識がないことが、問題の根底にあります。

テクハラが発生する3つの原因

ここでは、組織で「テクハラ」が引き起こしてしまう、3つの原因を具体的にお伝えしていきます。いずれも、ITリテラシーの差や、思い込みによる言動が背景にあるようです。

ITリテラシーの差

ITリテラシーとは、簡単にお伝えするとITに関連した要素を理解する能力と、関連する機器やシステムを操作する能力を意味します。

ITリテラシーは、さらに細分化することができ、テクハラを例にした場合、パソコンやスマートフォンなどIT機器を理解し、使いこなす能力は、ITリテラシーの中でも、「コンピューターリテラシー」と呼ばれています。

コンピューターリテラシーに差があると、テクハラに発展しやすくなります。もちろん個人差はあるものの、一般的には、デジタルネイティブな世代と、ITに疎いアナログ世代の中高年とでは、コンピューターリテラシーの差が顕著になる傾向にあります。

相手も理解できるという思い込み

IT化が進む現在、日々の業務でパソコンやスマートフォンを使用するのはもちろんのこと、データ化された資料やクラウドサービスの活用もまた、必要不可欠といえるでしょう。

しかしながら、ITの知識やスキルには個人差があります。そのため、「これぐらいできて当然だ」という思い込みは、テクハラの温床となってしまいます。

ITが苦手な相手に、「できて当たり前」といった態度で接してしまうのは、相手にとっては、大きなストレスになってしまうことがあるのです。

ITスキルを身につけない人への不満

確かに「覚えようとしない」のであれば、相手にも問題があるといえるでしょう。ただし、新しいIT機器やITツールに対する理解力と実践できるまでのスピードは、そもそもITの知見がある人・ない人で大きく異なります。

その点を考慮せず、前段のような思い込みから「身につけない」と判断してしまうと、積もり積もった不満が、テクハラ行為へとつながってしまうことがあります。

テクハラの具体的な事例

テクハラは、知らず知らずのうちにおこなってしまう場合も少なくありません。ここでは、テクハラの具体的な事例についてお伝えします。

デジタル機器やシステムが使えないことを責める

ITスキルが低く、苦手な社員に対して人格や性格まで否定するような言葉で責めたり、相手に不快な言動や行動をとることがあります。

デジタル機器やシステムが使えないことに対して、取り扱いに関する適切な説明もせずに、「こんなこともできないのか」「もう私がやります」といった相手をつきはなす言動や「業務に必須なスキルです。残業してでも今日中に覚えてください」など、度を越した強要をするケースです。

テクハラは言動だけではありません。あからさまに「大きなため息をつく」行為なども該当するため、注意が必要です。

デジタルスキルがない人に高度な業務を渡す

このケースは、上司から部下へ仕事の指示をする時にありがちです。業務に慣れたフォロー担当のサポートもなく、明らかに社員のスキルの範疇を超えた業務を割り振ることは、テクハラに該当します。

経験のないIT関連業務を割り振ること自体がテクハラなのではありません。「できない」ことがわかっていながら、サポート体制を整えることもなく、業務の負担を強いる点に問題があるのです。

専門的なIT用語を使って話す

相手が「わかっていない」と知りながら、ITの専門用語を多用して話すこともテクハラとなります。リテラシーの差により、伝わらないことがわかった上での専門用語の多用は、「情報を共有する」本来の目的が達成できないことは明らかです。

そのため、話を聞く側からは、「嫌がらせ」と捉えられても仕方がないかもしれません。このようなコミュニケーションにおけるテクハラは、テクハラの加害者においても、もし知識が乏しい分野の話を専門用語で捲し立てられたら?と、逆の立場で考えてみると、そのストレスが理解できるのではないでしょうか。

暗号化したファイルを送る

このケースは、ファイルを添付してメールを送信する際、暗号化して送ることを指します。

もちろんファイルの暗号化は、情報漏洩防止対策などセキュリティ面で必要な対応であることも多く、この行為自体がテクハラとなるわけではありません。

問題なのは、相手が「対応できない」、「対応に困る」とわかっていながら、適切な説明もなく送信することにあります。このような意図のもと送っているのであれば、悪意があると受け取られても仕方がないかもしれません。

テクハラが引き起こす3つの問題

テクハラが発生した場合、どのような問題が引き起こされるでしょうか。具体的に見ていきましょう。

1.被害者の大きなストレスとなる

テクハラは、テクハラ被害者のITへの苦手意識をさらに助長してしまう結果へとつながります。

指導の範疇を超えた指摘の仕方は過度なストレスを生み、自信喪失にもつながってしまうでしょう。萎縮してしまい、質問すらできなくなってしまうかもしれません。そのような状況では、ITへの理解度を高めることはできません。

2.デジタルスキル取得の妨げ

ITに苦手意識を持った状態でテクハラを受けた場合、モチベーションの低下が心配されます。なぜなら「克服しよう」という前向きな気持ちになりづらいからです。苦手だと思い込むことで「ITは難しいものだ」、とさらに感じてしまうでしょう。

社員のITに関するモチベーションの低下は、企業のデジタル化を推進させる上で、深刻な障壁となってしまいます。テクハラ問題は、社員間だけでなく、組織や企業全体としても取り組む必要があります。

3.労災認定や損害賠償請求トラブル

上司によるIT関連業務の押し付けは、テクハラであり、場合によっては、パワハラでもあります。そのため、 テクハラを含むハラスメントの被害によって心身の健康に深刻な影響を及ぼした場合には、労災として認められる可能性もあります。

テクハラは「当人同士」の問題ではなく、社員の使用者である会社側にも「損害賠償責任」が求められることがあるのです。

職場でテクハラや逆テクハラを防ぐ対策

では、テクハラや逆テクハラを発生させないための対策はあるのでしょうか。

ここでは、具体的な対策をご紹介します。

テクハラについて周知する

「テクハラ」や「逆テクハラ」は、そのほとんどが、当人にハラスメントの意識がない中で行われています。そのため、「テクハラ」という概念や、その具体例を周知するだけでも、テクハラ防止には大きな効果があるといえるでしょう。

具体的な方法としては、全社でテクハラを含むハラスメントについての教育機会を設けることや、チームでテクハラ事例を参考に話し合いを行うのも有効です。

誰もが理解できるマニュアルの作成

企業が「テクハラが起こりにくい体制づくり」を推進することも大切です。その一つには、わかりやすいマニュアルの作成・マニュアルによる運用の徹底が挙げられます。

わかりやすいマニュアルが準備されていれば、ITに疎い社員は自発的に調べることができ、ITの得意な社員は、頻繁にサポートやフォローを求められることがなくなります。

またマニュアルの整備は、業務の属人化の防止にもつながるため、担当者のITスキルによる業務の偏りも是正することができます。

従業員のITスキル取得を促進

社員のITスキル向上に対する支援制度の構築も、企業側に求められる取り組みです。具体的には、社員のITスキルの状況に応じた定期的な研修の実施のほか、IT関連資格取得費用の負担、合格への奨励金など、社員のスキルアップを後押しする制度の制定などが挙げられます。

このようなサポートは、社員のITリテラシー向上のモチベーションにもなるでしょう。

テクハラが起きた時の対応方法を決定しておく

テクハラが発覚した場合は、当人間の些細な問題と考えるのではなく、第三者によるヒアリングのほか、必要に応じて産業医のカウンセリングの機会を設けるなど、組織としての適切な対応が求められます。

テクハラが発生した時の対応フローを作成しておくことで、万が一発生した際にも、スムーズな対応ができるでしょう。

テクハラが起きた時に企業がとるべき対処法

もし、社員からテクハラ被害の申告があったとき、どうすればいいのでしょうか?ここでは具体的な対応策についてお伝えしていきます。

相談を受けたら迅速に対応

社員からテクハラについて相談を受けたら、まずはテクハラに関係していない社内の第三者による面談をおこなうことになるでしょう。このときの「第三者」は、人事部の社員であることが一般的です。

ヒアリングでは、主に以下のような事項について、確認していきます。その際、面談の内容は、記録を残すようにしましょう。

  • いつ(月日)
  • どこで(場所)
  • だれに(加害者)
  • 何の仕事をしていた時に?
  • なにをされたか?(実際の発言や行為について)
  • なぜそうなったのか?(時系列の経緯など)

弁護士など専門家への相談を検討

「ハラスメント」の場合、被害者は、その行為に関係のない部署の第三者であっても、「同じ会社の社員」に、また人事部門の社員によるヒアリングに対し、人事評価への影響を心配してしまうこともあるでしょう。

上記のようなケースは、決して珍しくはありません。そのような場合を想定して、相談窓口を設置し、産業医や弁護士など外部の専門家への相談も可能な体制を整えておくと良いでしょう。

テクハラ防止には適切な予防と対策が必須

テクハラは、社員個人のITスキルや、ITリテラシーの違いから発生する思い込みや配慮なさから起こるハラスメントです。

テクハラ防止については、社員一人ひとりの意識改革とともに、企業側の取り組みも重要となります。マニュアルの運用やスキルアップ制度を整えることで、テクハラが起きない・起こさせない環境づくりを推進しましょう。

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