タクシー代は経費精算できるのか?必要な理由や勘定科目の注意点を解説!
ビジネスシーンの移動手段としてあげられるタクシー。目的地まで直接行ける利便性の一方で、経費扱いできるのか疑問に感じている人も多いのではないでしょうか。本記事では、タクシー代は経費精算できるのか、利用が必要な理由や経費精算の勘定項目の注意点とあわせて解説します。
目次
タクシー代は経費精算できる?
業務時間中に使用したタクシー代は、経費として申請することが可能です。ただし、他の経費同様、業務上の必要性や関連性があることが証明されなければ、経費としては認められません。
業務上の必要性や関連性があることが証明された場合は、取引先との飲み会や会食でタクシーを利用しても経費として精算することができるのです。
また、業務中の交通手段としてタクシーを利用する場合と、接待のためにタクシーを利用する場合とでは、勘定科目が異なります。具体的な仕訳の基準については後述しますが、原則としてタクシーの利用目的が「仕事」である場合は、旅費交通費に仕分けられます。
一方で、使用目的が「接待」であれば、接待交際費として仕分けられます。どちらの科目に仕分けるかによって、メリット・デメリットや注意すべき点が異なるため、慎重に仕分けるようにしましょう。いずれの科目に仕分けるとしても、タクシー代は税務調査の対象となりやすい費用です。
そのため、常日頃から経費として正当性があることを証明する書類や記録を残しておくことが大切です。
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タクシー利用の主な理由例
タクシーを日常的な交通手段として使用しているケースはあまり一般的ではありません。
多くの場合、交通状況や天気、目的地までの地理的要因などを勘案して、臨時的にタクシーを利用した方が良いという判断に至った結果、タクシーを利用しています。
ビジネスパーソンがタクシーを利用するシチュエーションとはどのようなものが考えられるでしょうか。以下で詳しく説明していきます。
出張先での移動手段
出張先の地理や公共交通機関について精通していない出張先でのは、タクシーを移動手段とするケースが増える傾向があります。
また、出張中は商談や挨拶などの予定が多く、自ずと移動の機会が増えるのも要因の一つです
出張の多くは、現地取引先企業の拠点の訪問や、関心の高い施設や企業の視察、また現地担当者との対面での商談などを目的として計画・実行されます。
訪問や視察、商談といった物理的接触をともなうスケジュールが1日の大半を占めることで、効率的に目的地へ移動する交通手段が必要となってくるのです。そのため、「出張先の地理に詳しくない」という要因が相まって、タクシーを利用した移動が増えるのです。
営業先への訪問
営業は時間が商談先・営業先によって左右されるため、営業先への訪問においてもタクシーを利用する頻度が増加します。
営業担当者は日中の多くを取引先や顧客の訪問に費やし、1日のスケジュールがアポで隙間なく埋まっていることも珍しくはありません。
次のアポの時間に遅れないためにも、タクシーの利用を選択する機会が増えるのです。
他の理由としては、営業資料や取引先に配るノベルティなど、大きな荷物をともなった営業活動や、悪天候で身だしなみが崩れてしまうことがないようになどの理由が考えられます。
営業担当者には、常に清潔感ある身だしなみを維持することと、取引先への細かい配慮や思いやりが求められます。そのため、雨に濡れたノベルティを相手に渡す、電車内で押し潰された資料を配る、汗を滴らせながら訪問するなどといったことは避けなければなりません。
公共交通機関の遅延
公共交通機関の遅延で、駅のタクシー乗り場に長蛇の列ができる様子は、ニュースでもよく見られる光景です。
首都圏や大阪などの大都市は、公共交通網が整備されており、数分単位で遅れることなく電車に乗ることができます。
その利便性に慣れていることもあり、待ち合わせや仕事の予定に対してあまり時間的な余裕を持たずに移動しているケースが少なくありません。
そのため、公共交通機関が突然運休・遅延してしまうと、すぐにタクシーで移動を開始するという傾向が各都市で散見されます。
取引先主催イベントへの参加
取引先主催イベントへの参加する際の交通手段としてもタクシーはよく選ばれます。
たとえば、懇親会などのパーティ形式のイベントであれば、会社から数名の社員が乗合いで会場に向かうケースはよくあるでしょう。
また、ゴルフコンペなどの野外イベントや郊外の会場でのイベントであれば、会場が駅から離れた場所にあることも多いため、タクシーを利用して会場へ向かいます。
近年はあまり見かけなくなったものの、取引先が招待客に対し、交通費としてタクシーチケットを配布するというケースも考えられます。
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タクシー代の勘定科目
タクシー代の勘定科目は以下のいずれかに仕分けられます。
- 旅費交通費
- 接待交際費
- 渡切交際費
仕分ける際、判断のポイントとなるのは、タクシーを使用した目的が何であるかという点です。ここからは、これら3つの勘定科目について解説していきます。
旅費交通費
旅費交通費ですが、業務中にタクシーを使用した際の勘定科目は、原則旅費交通費として処理します。
タクシー代を旅費交通費に仕分けるにあたっては、以下のような事例があげられます。
- 公共交通機関が遅延し、取引先との約束の時間に遅れそうになったため、タクシーを利用した
- 視察先での移動にタクシーを利用した
- 残業で終電を逃したため、タクシーを利用した
- 訪問先の住所が交通機関だけの利用では時間がかかるため、タクシーを利用した
これらの事例は、すべて業務上必要な「仕事」を目的としたタクシーの利用であるため、全額旅費交通費として経費精算することができ、全額損金扱いにて計上することが可能です。
タクシー代を旅費交際費とする際の仕訳は以下のように行います。
事例 : 視察の際A拠点からB拠点までの移動にタクシーを利用し、代金が2,000円だった場合
借方 | 貸方 | ||
旅費交通費 | 2,000円 | 現金 | 2,000円 |
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接待交際費
接待交際費ですが、タクシーの利用目的が「接待」である場合は、タクシー代は接待交際費として処理されます。接待交際費に該当するタクシーの利用には、以下のような事例が考えられます。
- 取引先を接待するために、接待会場まで取引先の社員と一緒にタクシーで移動した
- 取引先の会社から会場までの送迎のため、タクシーを手配した
- 接待会場から取引先の自宅まで、タクシーに同乗して送迎した
このように、上記事例はすべて「こちらが主導して取引先を接待している」という構図でタクシー代が発生しています。
自社主催の接待のために発生する移動であれば、基本的にはすべて接待交際費に該当します。また、取引先の会社まで迎えに行くためにタクシーを利用した際も、接待交際費です。
ただし、接待の後、帰社して仕事を続けるために接待会場から会社までタクシーを利用した場合は、目的が「接待」ではなく「仕事」であるため、旅費交通費扱いとなります。
渡切交際費
渡切交際費とは、事前に接待費を社員に渡しておいて事後の支払い証明は求めない費用のことを指します。
事前に渡された費用のうち、実際どれだけの額を使ったかを報告する義務がないため、領収書の提出も必要ありません。
ただ、この渡切交際費は使い道が不明な費用であることから、損金としての算入が不可と判断されます。経費として計上するのではなく、社員の給与として損金算入され、社員個人の確定申告においても給与所得としてみなされるのです。
渡切交際費分の額が通常の給与額に上乗せされることで、税務上、当該社員の所得は実際に受け取っている給与額よりも多くなります。
所得が上乗せされた分課税額も多くなるため、企業としては法人税の面で有利となる一方で、社員にとっては所得税や住民税の負担が増大するという、あまりメリットの無い経費なのです。
しかし、社員に対して使い道が自由な金銭を給与以外に渡すことは、ガバナンス上のリスクにもつながるため注意しておきましょう。
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タクシー代の勘定科目の注意点
勘定科目に注意が必要な理由としては、タクシー代は税務調査において指摘されやすい経費であるため、実態と異なる勘定科目で経費精算してしまった場合、追徴課税を命じられる可能性が出てきます。
ここでは、重要性の高い注意点2つについて解説していきます。
- 接待を主催する場合のタクシー代は接待交際費
- 資本金の額によって経費精算方法が変わる
接待を主催する場合のタクシー代は接待交際費
接待を主催する場合のタクシー代は接待交際費です。反対に、取引先が主催の接待にかかるタクシー代は、旅費交通費として計上されます。
出張先での業務遂行を目的とした移動手段としてタクシーを利用したのではなく、接待相手の送迎を目的としてタクシーを利用しているためです。
このように、実態は接待交際費であるにもかかわらず旅費交通費として計上してしまうと、税務署から指摘される可能性が高くなります。そのため、日頃から取引先への訪問履歴や接待の招待状などの証拠を残しておいた方が良いでしょう。
資本金の額によって経費精算方法が変わる
資本金の額によって経費精算方法が変わることにも注意しましょう。タクシー代が該当する「旅費交通費」と「接待交際費」では、損金算入の可不可に大きな違いが生じます。
旅費交通費は全額損金として計上することが可能ですが、接待交際費は会社の規模によって損金としての計上額に上限があります。
資本金が1億円以上の企業においては、接待飲食費の50%にあたる費用以外は接待交際費として損金算入することが認められておらず、飲食代ではないタクシー代は、必然的に全額損金算入が不可ということになります。
しかし、資本金が1億円以下の中小企業においては、損金算入が認められる条件として、以下のいずれかを選ぶことができます。
- 年間800万まで損金算入可能
- 接待飲食費の50%まで損金算入可能
1の「年間800万円」を上限額に選んだ場合、限度額内であればタクシー代も全額損金として計上することができます。
対して、2の「接待飲食費の50%」を上限額とした場合、年間の接待交際費が多い企業ほど損失算入可能額が増えるため、税務上有利になります。
目安としては、年間の接待飲食費が1,600万円を超える場合は、2の条件で対応した方がよいでしょう。2の条件を選んだ場合は、タクシー代は全額損金算入不可となります。
しかし、その分接待飲食費用によって損金額を増やすことができるため、結果的にタクシー代を損金計上するより大きな節税効果が得られるかもしれません。
このように、資本金の規模に左右されるものの、それぞれが自社にあった方法でタクシー代を経費精算することができます。
いずれの方法を選ぶにせよ、日頃からその仕分けを選んだ理由を裏付けることができる、確固たる証拠の準備を怠らず、正しく経費精算処理を行えていることをアピールすることが大切です。
【出典:国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」】
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経費精算の範囲は社内規定によってさまざま
経費精算の範囲は社内規定によってさまざまです。実際は企業によって、タクシー代を経費精算する際の独自の社内規定を設けているケースが少なくありません。
タクシー代は、比較的高頻度で発生する経費であると同時に、仕訳の方法によっては租税回避行為につながる可能性の高い経費です。
そのため、経費精算に関する社内規定の策定は、企業が社内ルールの整備によりガバナンス強化に努めることで、税務調査などのリスクを回避する狙いがあるためだと考えられます。
経費精算に関する社内規定が設けられている場合は、法律上の見解ではなく、社内規定にしたがって経費精算を行わなければなりません。
交通費の精算に関する社内規定として定められていることが多い内容としては、以下のような事例が代表的です。
◆タクシーの利用基準
例1 : 目的地から最寄駅から◯km以上離れている場合は、タクシーの利用を許可する
例2 : タクシー降車時には必ず領収書をもらい、もらい忘れた場合は経費精算は不可とする
◆自家用車利用のルール
例1 : 業務に自家用車を使用する場合は、ガソリン1Lあたり◯円とし、運行記録に基づく走行距離に乗算した額を支給する
◆領収書提出のルール
例1 : バスなどの領収書が発行されない交通費については、交通費精算書を作成する
例2 : 3万円未満の交通費精算については、新幹線または飛行機を利用した場合を除き、領収書の提出は不要とする
定められている社内規定を守らず、不正に経費を搾取したとなると、詐欺罪や横領罪に問われる恐れがあります。
訴訟に至らない場合であっても、懲戒処分は免れないでしょう。
そのような不正トラブルを回避するためにも、社内規定はしっかりと確認・遵守したうえで、正しく経費精算を行うことが大切です。
【出典:e-Gov法令検索「消費税法施行令第49条」】
【出典:e-Gov法令検索「刑法第246条および第253条」】
タクシー代の経費精算は正しい勘定科目で行おう
タクシー代は、業務上のさまざまな場面において頻繁に発生する交通費です。
タクシー代が発生した状況や目的に応じて、適切な勘定科目に仕分けなければ、税務調査や追徴課税対象となるリスクが高まります。
誤った方法で経費計上することを避けるためにも、各勘定科目の特徴やそれぞれの違いをしっかりと理解し、適切に仕分けられるようにしておきましょう。
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