ホラクラシー組織とは?メリット・デメリット、ティール組織との違いをわかりやすく解説

2023/10/10 2023/12/11

組織・マネジメント

ホラクラシー組織とは

新しい組織の形として注目される「ホラクラシー組織」。変化の激しい現代社会に対応するために移行する企業が増えていますが、ホラクラシー組織とはどのような組織なのでしょうか。本記事では、ホラクラシー組織とは何か、メリット・デメリットなどをあわせて解説します。

この記事の要約

・ホラクラシー組織では、各社員に裁量と意思決定権割り振られているのが大きな特徴
・主体性や組織の柔軟性の向上、スピーディーな意思決定が実現するなどのメリットが得られる

ホラクラシー組織とは?

ホラクラシー組織は、伝統的な階層型の組織構造とは異なり、役割ベースのアプローチに基づく組織の運営方法を指します。この組織の核心は、社員それぞれの役割と権限を明確にし、それに基づいて決定を下すことで、組織の迅速な対応と進化を促進することです。

各個人が独自の役割を担当し、その役割の範囲内での意思決定権を持つことを特徴としているため、トップダウンの指示に依存することなく、よりスピーディーにタスクを遂行できるのが利点です。このような組織構造は、変化の激しいビジネス環境下での柔軟性を高め、迅速な意思決定を可能にすることから、注目する企業が増えています。

ティール組織との違い

ホラクラシー組織とよく似た概念として「ティール組織」があります。この2つの概念は、伝統的な組織構造に変革をもたらす、新しい組織の考え方として注目されています。

ティール組織は、組織学のスペシャリストであるフレデリック・ラルーの著書「ティール組織(原題:Reinventing Organizations)」で提唱されている組織論に基づいており、組織の進化の最先端を示すものです。この組織は、社長や上司のマイクロマネジメントなしに現場のメンバーが必要に応じて意思決定を行うのが特徴です。

ホラクラシー組織とティール組織の共通点としては、上下関係のないフラットな関係性や自主管理型の組織であることが挙げられます。この2つは異なる概念ではなく、ティール組織のひとつにホラクラシー組織が含まれると考えるとよいでしょう。

ヒエラルキー型組織との違い

ヒエラルキー型組織は、ホラクラシー組織の対極にある概念といえます。両者の大きな違いは、その組織構造と意思決定のプロセスにあります。ヒエラルキー型組織は、伝統的に使用されてきた組織形態で、明確な階層と上下関係が存在するのが特徴です。

意思決定は主に上位の階層で行われ、その指示や方針が下位の階層へと伝達されます。この構造は、大規模な組織での一貫性や秩序を維持するのに有効ですが、変化の速い環境下では迅速な対応が難しいとも言われています。

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ホラクラシー組織のメリットとは

ホラクラシー組織を採用するメリットを3つ紹介します。

社員の主体性向上が期待できる

ホラクラシー組織の特徴の一つとして、各社員が独自の役割を持つことが挙げられます。上司からの指示で動くのではなく、社員はその役割の範囲内での業務を主体的に進めることが求められます。

結果として、社員の自己責任感や自主性が強化され、組織全体の生産性やイノベーションの促進を可能にするでしょう。また、主体的に行動することで、社員の自己成長にもつながると考えられています。

組織の柔軟性が高まる

ホラクラシー組織の採用は、組織の柔軟性を大きく向上させる要因となります。伝統的な階層型組織は固定的な構造が多いのに対し、ホラクラシーでは社員の意見を組織に反映できるため、進化し続ける組織を築くことが可能です。

これにより、組織は変化の激しいビジネス環境や、市場の動向に迅速に対応する能力を持つようになるでしょう。各役割が持つ独立性と自主性は、新しいアイディアにスピーディーに取り組める土壌を形成します。その結果、市場の変化に素早く適応し、新しいビジネスチャンスを効果的に捉えることができます。

意思決定のスピードがあがる

ホラクラシー組織は、フラットな組織であることが特徴です。そのため、従来の上層部を中心とした決定プロセスに比べて、意思決定のスピードが大幅に向上します。各役割が具体的な権限と責任を持っているため、それぞれの領域で迅速かつ効率的に決定を下すことが可能となるでしょう。

また、上司などへの確認作業の手間を省けることで、本来必要な業務に集中できる点は大きなメリットです。スピーディーな意思決定プロセスにより、変化の速いビジネス環境で競争優位を確保することが可能になります。

ストレス軽減が期待できる

ホラクラシー組織を採用するメリットのひとつに、ストレスの軽減が挙げられます。従来の階層的な組織では、上層部からのトップダウンの指示や、明確でない責任範囲による曖昧さが従業員のストレスの原因となることがありました。しかし、ホラクラシー組織では、各役割の責任と権限が明確に定義されているため、このような不明確さに起因するストレスを軽減することが可能です。

それぞれの役割における自主性と権限の明確化は、職員が自身の業務において確固たる自信を持つことにもつながります。その結果、わずらわしい人間関係に巻き込まれることがなくなるだけでなく、メンバーのモチベーション向上にも役立つでしょう。

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ホラクラシー組織のデメリット

ホラクラシー組織には、いくつかのデメリットも存在しますここでは、考えられるデメリットを3つ紹介します。

社内に定着するまでに時間がかかる

ホラクラシー組織の導入は、従来の組織文化や構造とは大きく異なるため、定着するまでに時間と労力が必要となるでしょう。新しい組織モデルへの適応や理解を全社員に求める過程で、混乱や抵抗が生じる可能性があります。

また、役割ベースの運営や独自の意思決定プロセスの習得には、教育や継続的なコミュニケーションが不可欠です。このような要因から、社員数の多い企業ではホラクラシー組織が上手く機能しないことも考えられます。

組織・リスク管理が難しい

ホラクラシー組織は各役割の独立性が高まるため、組織全体としての方向性やリスクの管理が難しくなる可能性があります。メンバーが業務を遂行できているのか、目標達成に向けて正しい方向に進めているのかなどを把握することが難しくなるでしょう。

また、メンバーそれぞれに情報が与えられることによる情報漏えいのリスクも考慮するべきです。社員それぞれが情報管理への意識を高められるような環境づくりが必要となるでしょう。

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社員の負担が大きくなる可能性がある

ホラクラシー組織では、リーダー的な存在がいないため、何かトラブルが起こった際に各社員が対応する必要があります。トラブルの大きさによっては、精神的・肉体的負担が大きくなってしまい、仕事へのモチベーションが低下することも考えられるでしょう。

また、多くの役割を持つ社員にとっては、期待される業績を達成するためのプレッシャーや、役割間の業務調整にともなうストレスを感じる可能性が高まります。組織を取りまとめる中心人物がいないことにより、一部の社員に過度な負担がかかるおそれがある点はデメリットといえるでしょう。

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ホラクラシー組織の企業事例

ホラクラシー組織は、柔軟性と迅速な意思決定を重視する企業において取り入れられています。ここからは、ホラクラシー組織を実践する日本企業の代表的な事例を紹介します。

株式会社アトラエ

株式会社アトラエは、人工知能を利用したビジネスマッチングアプリ「yenta」などを提供する企業です。リーマンショックが起こったタイミングで従来の組織構造からの脱却を目指し、ホラクラシー組織の導入を決定しました。

同社は、個人の役割と責任を明確にし、自律的な業務遂行を促進しています。具体的には、出退勤や服装の自由化などが挙げられ、メンバー同士で行う「360℃評価」を導入しているのも特徴です。さらに、評価にアルゴリズムを導入することで、公平性を保つ仕組みを構築することに成功しました。

株式会社OKAN

株式会社OKANは、法人向けの社食サービスを提供する企業です。2018年にホラクラシー型の組織を導入し、従来のピラミッド型からフラットな組織体制へと変革を行いました。

同社は、組織が拡大する中で、部門間の分断が発生して意思決定のスピードが落ちているという課題を抱えていたそうです。そこで、ホラクラシー型へ移行するために一か月間にわたり全社会議を行い、社員全員が納得したうえでの体制変更を実現しています。

株式会社UPDATA

株式会社UPDATAは、不動産業界向けのWebソリューションを提供しています。2008年からホラクラシー型を取り入れた組織を運営していることから、ホラクラシー組織の先駆者的な存在ともいえるでしょう。同社では、上司と部下という関係だけでなく、雇用する側とされる側という概念も排除しているのが特徴です。そのため、新しい人材を採用する際は3か月間の業務委託契約を実施し、ほかの社員の意見を取り入れた上で判断しています。

さらに、勤務時間や休日、働く場所なども完全に個人に委ねられています。ホラクラシーを導入した結果、社員の業務量が削減され、効率的な働き方を実現できたそうです。

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ホラクラシー組織へ移行する際の注意点

ホラクラシー組織への移行は、組織の文化や構造の大きな変革をともないます。ここでは、ホラクラシー組織に移行する際の注意点を5つ紹介します。

ホラクラシー組織に関する正しい知識を身につける

ホラクラシー組織へ移行する際は、社員全員にホラクラシーについて理解させる必要があります。従来型の組織に慣れている場合、ホラクラシーの概念を理解するのに時間を必要とするでしょう。そのため、実践的な研修やワークショップの導入で具体的な運用方法を習得させることが重要です。

ホラクラシー組織のよくある誤解として「自由に何をしてもいい組織」「管理者がいない」などが挙げられます。しかし、何をやっても許されるということはありません。また、グループ内に進捗管理を担う人材を配置することもあるため、絶対に管理者がいないというわけでもないのです。従来型の組織と比較すると自由度の高いホラクラシーですが、一定のルールが存在することも覚えておきましょう。

責任・役割を明確にする

ホラクラシー組織において、各社員の責任と役割の明確化が成功の鍵となります。社員に役割分担を行う際は、責任についても伝えた上で意思決定を求めることが重要です。

また、チームとしてだけでなく「企業としてどのような組織を目指すのか」「メンバーそれぞれがどのような目標を持ち働くのか」などを明確にする必要があります。このように価値観の共有を行うことで、社員のモチベーションが向上し、それぞれが互いに成長していける環境づくりが可能になるでしょう。

自己管理能力のある社員で組織をつくる

ホラクラシー組織では、社員一人ひとりが独自の役割を持ち、その役割に基づき自主的に行動することが求められます。そのため、自己管理能力のある社員で組織をつくることが重要です。

従来の組織では、上司に言われたことだけをやるという社員ばかりでも大きな問題はありませんでした。しかし、ホラクラシー型の組織では、個人が主体性を持って行動する必要があります。自己管理能力のある社員でなければ適応は難しいため、自社がホラクラシーに適した組織なのか確認しておくとよいでしょう。

積極的に情報を開示する

ホラクラシー組織において、情報の透明性は極めて重要です。各社員が自身の役割を果たし、適切な意思決定を行うためには、必要な情報を迅速かつ正確に取得することが不可欠になります。具体的には、ITツールなどを利用して情報を一元管理するなどの対策が求められるでしょう。また、チームのプロジェクトの進捗状況を全員が把握するためには、情報共有を行う機会を作ることも大切です。

情報を積極的に開示することで、社員間の信頼関係も強化され、効率的な協力の基盤が築かれるでしょう。ただし、個人情報や機密情報の取り扱いには注意が必要です。そのため、情報セキュリティの意識を高められる研修会などを開いて、社員の意識向上を図りましょう。

スモールスタートで始める

ホラクラシー組織への移行は、大きな組織文化の転換をともないます。とくにヒエラルキー型の組織からホラクラシー型に移行する場合、考え方を大きく変える必要があるため、一時的な混乱を招くことが考えられます。

そのため、全体的な移行を一度に試みるのではなく、スモールスタートで始めることが大切です。まずは、部門やチーム単位での実験を行い、その成果や課題を評価することで、組織全体への展開に役立つフィードバックを得られるでしょう。

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ホラクラシー組織が自社の組織形成にマッチするか検討してみよう

ホラクラシー組織は、自律的なグループに決定権を分散させることで、それぞれが能動的に活動できるようになるのが特徴です。導入を検討する際は、まず自社のビジョンや目標、組織文化を明確に理解することが重要になります。従来の組織構造から大きく変革するため、従業員の意識や能力、コミュニケーションのスタイルを考慮することも必要です。

また、組織の大きさや業界、市場環境の変動性も導入の適切性を判断するポイントとなるでしょう。実際に移行を検討する前に、小規模な実験やワークショップを行うこともおすすめです。まずは、自社にホラクラシーがマッチするかを具体的に評価することから始めてみてください。

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