自治体でBPOサービスが増加している理由|主な事例からわかるメリット
近年自治体でも活用されているBPOサービス。なぜいま、自治体でBPOサービスの導入が進んでいるのでしょうか。本記事では、自治体がBPOサービスを必要とする理由や、導入事例からみるメリットなどを解説します。
目次
自治体で導入が進むBPOとは?
BPO(ビジネス プロセス アウトソーシング)サービスは、企業の業務を一括して外部に委託できるサービスのことを指します。最近では、多様化した業務の対応や人的リソースの確保の難しさから、地方自治体や行政での導入も見られるようになってきました。
自治体向けのBPOサービスでは、新型コロナウィルスに関連する対応や、各種給付金に関わる業務を委託することができ、さまざまな対応に追われる職員の負担を軽減することが可能になります。
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アウトソーシングとの違い
BPOは、業務プロセスをまるごと外部委託することを指すのに対し、アウトソーシングは限定的な業務領域や一時的な業務の外部委託を行うことを指します。
たとえば、自治体が税務処理全体を外部に委託する場合はBPOですが、給与計算だけを外部に委託する場合はアウトソーシングです。このように、BPOは業務全体の効率化とコスト削減を目的とし、アウトソーシングは特定の業務の効率化と専門知識の活用を目指します。
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自治体向けBPOサービスの市場規模
株式会社矢野経済研究所は、国内の自治体向けBPOサービス市場の調査結果として、2023年度の市場規模が5兆2,127億円に達するという予測を発表しました。
近年自治体では、住民からのニーズの多様化や、職員の減少が課題となっています。このような状況から、民間のノウハウや資本を活用したアウトソーシングが進んでいるのが現状です。
BPOサービス市場の拡大とともに、自治体向けのサービスを提供する企業も増加しつつあります。この動きはさらに加速すると考えられていて、それぞれの環境にあったBPOサービスを導入する自治体が増えていくでしょう。
参照元:株式会社矢野経済研究所「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査を実施(2022年)」
自治体でBPOの活用が増加している理由
自治体でBPOサービスの活用が増加している理由については、「住民によるニーズの多様化」や「人手不足」の2つが主な原因とされています。
住民のニーズが多様化しているため
自治体でBPOの活用が増加している理由のひとつとして、住民のニーズが多様化していることが挙げられます。
たとえば、高齢化社会においては介護サービスや福祉施設の運営が必要です。また、地域振興や観光など、過疎化が進む地域の魅力を引き出すためのプロモーション活動も必要になってくるでしょう。
さらに各種給付金の申請や手続き業務、社会保険の手続きや給付管理、子育て支援の情報提供や相談窓口など、自治体で行われる業務は多岐にわたります。
このような多様なニーズに対応するため、自治体は外部の専門企業へ業務を委託しています。これにより、住民は円滑な手続きやサポートを受けることができ、自治体は人材やリソースの有効活用、効率化を実現することが可能です。BPOはさまざまな分野でのサービス品質向上と効率化に貢献し、住民の利便性と満足度を高める役割を果たしています。
地方自治体で人手不足が深刻化しているため
自治体でBPOの活用が増加しているもうひとつの理由としては、深刻な人手不足の問題です。株式会社日本総合研究所のレポートによると、地方自治体の充足率について2045年には大規模自治体が8割程度、小規模自治体では6〜7割程度まで低下すると発表しています。
現状多くの地方自治体では、職員の高齢化や若者の都市への流出により、必要な業務を遂行するための人材が足りていません。そのため、外部のBPOプロバイダーに業務を委託することで、人手不足を解消し、効率的な業務を遂行する自治体が多くなりました。
行政業務や福祉サービスのアウトソーシングにより、自治体は限られた人的リソースを最適に活用し、重要な業務に集中できるでしょう。
参照元:株式会社日本総合研究所「地方公務員は足りているか―地方自治体の人手不足の現状把握と課題」
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BPOサービスを実際に活用した自治体の導入事例
ここからは、BPOサービスを実際に活用した2つの自治体の導入事例を見ていきましょう。
千葉県白井市
千葉県白井市では、少子高齢化や医療制度改革に伴い、窓口での対応時間が長くなり、スタッフの負担が増加していました。
このような状況の中、BPOサービスを活用して国民健康保険や国民年金、後期高齢者医療に関わる届出などの受付対応、システムへの入力といった業務を外部に委託することに。導入後は保険事業に関するコア業務に注力することができるようになり、業務プロセスの改善につながっています。さらに、委託業者のノウハウを活かすことで、来庁者の待ち時間を1時間から20分程度に縮小することに成功しました。
大分県大分市
大分市役所市民税課では、市民税の税額を決める「当初課税業務」にて100時間を超える時間外勤務が発生。これによりヒューマンエラーの誘発や、臨時の人員確保など、担当職員の負担の大きさが問題になっていたようです。
そこで、BPOサービスを活用し、書類の点検・補記、電話での問い合わせ、データ入力やそれらのチェックなど、一連の作業を委託しました。
その結果、時間外労働は当初の目標である3割減をはるかに上回る5割減となり、有給休暇の取得率も向上。さらに、作業のマニュアル化を実施することで、作業者間での業務のばらつきがなくなり、業務の効率化も実現しています。
自治体の導入事例から見るBPOのメリット
自治体の導入事例から見るBPOのメリットは、下記の3つが挙げられます。
- コア業務に経営資源を集中できる
- 専門的なスキルや知識を獲得できる
- 人件費などのコストを削減できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
コア業務に経営資源を集中できる
自治体がBPOを導入する際のメリットの一つは、コア業務に集中できる点です。例えば、行政業務や福祉サービスなどのノンコア業務(給与計算や給付金の申請業務など)にBPOを活用することで、自治体はコア業務以外にかかる時間とリソースを削減できます。
コア業務に集中できることにより、自治体は効率化と品質向上を実現し、地域の発展と住民の満足度を向上させられるでしょう。
専門的なスキルや知識を獲得できる
もうひとつのメリットは、専門的なスキルや知識を獲得できる点です。たとえば、子育て支援や社会保険手続きなど、専門知識を必要とする業務にBPOを活用することで、その分野の専門家の知見を得られるでしょう。
外部の専門企業は、豊富な経験と最新のノウハウを持っており、高度なスキルを持った専門チームが業務を担当します。外部の専門家からのアドバイスや知識の共有により、自治体の職員がスキルや知識を獲得することも可能です。これにより、自治体の業務レベルと能力向上につながるでしょう。
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人件費などのコストを削減できる
さらに、自治体がBPOを導入する際のメリットとして、人件費などのコスト削減が挙げられるでしょう。たとえば、行政業務や給与計算などの補助業務に外部のBPOを活用することで、人件費や労働コストを削減できます。
外部企業は、効率的なプロセスとスケールメリットを持っており、人材や設備に関するコストを分散することが可能です。これにより、自治体はコスト面でのメリットを享受し、予算の効率的な活用や財政の健全化を図ることができるでしょう。
自治体がBPOサービスの導入で失敗しないためのコツ
ここでは、自治体がBPOサービスを導入する際に、知っておきたいポイントを紹介します。
委託する業務内容の種類を確認する
自治体がBPOサービスを導入する際は、委託する業務内容の種類を確認するようにしましょう。それは、業務内容によって適切なBPOサービスの選定や契約条件の設定が異なるからです。
たとえば、税務処理や個人情報管理など、機密性が高く専門知識を要する業務には、セキュリティ対策や信頼性を重視するサービス企業を選ぶ必要があります。一方で、一般的な事務業務やデータ入力などは、コストや業務の効率性を重視するサービスが適しているでしょう。
業務内容を明確にし、自治体の業務内容に合ったBPOサービス企業を選定することで、サービスの品質が向上し、リスク管理についても適切に行えます。
委託する業務の範囲を適切に定める
自治体がBPOサービスの導入で失敗しないためには、委託する業務の範囲を明確に定めることが重要です。業務範囲の明確化は、業務効率の向上だけでなく、コミュニケーションの円滑化にもつながります。
さらに、サービス企業との契約内容や期待する成果物についても明確になります。また、自治体のコア業務や重要な決定に関わる業務は内部で管理し、BPOプロバイダーには特化した業務を委託することも可能です。
このように、委託する業務を定めることで、業務の品質や効率性を確保し、コントロールや監視が容易になるでしょう。
BPOの導入目的を明確にする
明確な目的がないまま導入を進めると、業務の改善や効率化が達成されない可能性があります。
BPOの導入目的を明確にすることで、自治体は何を達成したいのかを明確化し、その目的に合ったサービス会社や契約条件を選定できるでしょう。たとえば、コスト削減、業務の効率化、専門知識の獲得など、具体的な目的に基づいてBPOを活用することが重要です。
これにより、導入後の評価や成果の測定も容易になります。BPO導入目的の明確化は、失敗を防ぐために不可欠なステップといえるでしょう。
▷BPOのメリット・デメリット|効果や費用・導入時のポイントを紹介
現状の課題を分析・把握する
導入前に現状の課題を正確に把握することで、BPOが解決すべき課題や目標を明確にできます。例えば、業務遅延、品質低下、人材不足などの問題がある場合、それらの具体的な要因や影響を分析することで、BPO導入による解決策や改善点が明確になります。
また、現状の課題を把握することで、BPOサービス会社とのコミュニケーションや契約条件の設定においても適切な方向性を示せるでしょう。
BPOの運用体制を一から見直す
BPO導入による業務の委託やプロセスの変更に伴い、運用体制の再構築が必要になる可能性があります。
BPOの運用体制を見直すことで、業務の効率化や品質管理を確保し、適切な監督とコミュニケーションが行えます。具体的には、役割と責任の明確化、コミュニケーションフローの設計、品質監査やパフォーマンス評価の仕組みの整備などです。
また、BPOサービス企業との連携や報告体制も重要になるでしょう。適切な運用体制の確立は、業務の円滑な進行とリスクの管理につながり、BPO導入の成功を促します。
自治体でのBPOサービス活用の実情を押さえておこう
今回は、自治体でのBPOサービスについて解説しました。
地方自治体では人口減少や高齢化が進行しており、社会保障や医療、介護などの受付業務が増加しています。また、若者や専門的なスキルを持つ人材が都市部へと流出し、人材確保が難しくなっているでしょう。
BPOサービスを活用することで、業務の効率化やコスト削減などのメリットが見込めます。自治体での業務に悩んでいる方は、ぜひBPOサービスを検討してみてください。
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