サードプレイスオフィスとは?メリット・デメリットや6つの種類について解説!
働き方改革などにより注目が集まっているサードプレイスオフィス。導入する企業も増加していますが、果たしてサードプレイスオフィスとは、一体どのようなオフィスなのでしょうか。本記事では、サードプレイスオフィスの意味や導入メリットなどについて、詳しく解説していきます。
目次
サードプレイスオフィスとは?
コロナショック以降、様々な変化が生まれる中で、ニューノーマルな働き方の1つとして挙げられるのが、サードプレイスオフィスの活用です。
ここではサードプレイスおよびサードプレイスオフィスの意味を解説します。
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サードプレイスの意味
サードプレイスは「3つ目の居場所」という意味を持つ言葉です。3という数字からも分かるように、ファーストプレイス(1つ目の居場所)やセカンドプレイス(2つ目の居場所)という言葉も存在します。
それぞれについての特徴をまとめると、下表のようになります。
用語 | 意味・対象 | 主な場所 |
---|---|---|
ファーストプレイス | 最もプライベートな時間を費やす場所 | 自宅 |
セカンドプレイス | 経済活動や学習など、生活の糧を得るための場所 | 職場、学校など |
サードプレイス | 義務感や必要性に縛れず、居心地が良いと感じる場所 | カフェ、コワーキングスペースなど |
サードプレイスオフィスの意味
サードプレイスオフィスとは、自宅や職場の他に、快適に働くことができる3つ目の場所を指します。具体例としては、レンタルオフィス、シェアオフィス、コワーキングスペースなどが挙げられます。
もともとサードプレイスは、アメリカの社会学者であるレイ・オルデンバーグ氏が提唱した概念で、都市の魅力を高めるために必要なものとして捉えられていました。
しかし、近年では働き方の多様化に伴い、オフィスの概念を再定義するための用語としても使われるようになっています。
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サードプレイスオフィスが注目されている背景
サードプレイスオフィスが注目されている背景には、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけとしたテレワークの普及が影響しています。
テレワークは自宅で働くという新たな選択肢を生み出しましたが、一方で障害も生まれました。それは、ワークライフバランスに関わる問題です。ワークライフバランスは仕事と生活を区別し、適切なバランスに調整することで、多様な人生の実現を後押しすることを目的としています。
しかし、テレワークによって自宅が職場化すると、空間の変化がないため、仕事と生活の切り替えがスムーズにできません。「ひとりの時間が取れない」「誘惑に負けてしまう」など、自宅には集中力を妨げる要素が多く、生産性の悪化を招いてしまうリスクがあります。
そのため、スイッチを切り替え、仕事に専念するという意味でも、サードプレイスオフィスの需要が高まっているのです。
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サードプレイスオフィスの6つのタイプ
サードプレイスオフィスには、主に6つのタイプがあります。
1.企業が借りるオフィスとは別のシェアオフィス
1つ目は、企業が既存オフィスとは別に、シェアオフィスを契約するタイプです。もともとはスタートアップやベンチャー企業の利用が中心でしたが、近年では大企業がシェアオフィスを活用するケースも増えています。
シェアオフィスには様々なビジネスパーソンが出入りするため、社内では得られない接点の獲得が期待できるのも、大きなメリットです。
2.個人が借りる自宅近くのシェアオフィス
2つ目は、個人が自主的にシェアオフィスを契約するタイプです。自宅では仕事に集中できない方が、近場のシェアオフィスを契約するケースが多いといわれています。
多くのシェアオフィスでは、インターネット回線だけでなく、複合機やドリンクなども完備しているため、環境を変えて仕事に専念したい方にとって、シェアオフィスは有力候補の1つといえるでしょう。
3.サウナやキャンプ場に併設したシェアオフィス
3つ目は、サウナやキャンプ場などの施設にシェアオフィスが併設されているタイプです。このタイプのメリットは、気分転換できる環境がすぐ近くにあることで、移動時間を抑えつつ、適度にリフレッシュできることにあります。
サウナで体内の老廃物を排出したり、キャンプ場で自然を感じるなど、自宅では味わえない体験を通じて、リラックス効果を得ながら働けることに魅力を感じる方も多いようです。
4.地方に設置したサテライトオフィス
4つ目は、地方にサテライトオフィスを設置するタイプです。
サテライトオフィスとは、企業や団体の本拠地から離れた場所に設置されるオフィスのことで、衛星(サテライト)のような位置に存在するオフィスという意味で命名されています。
サテライトオフィスによる拠点の分散化には、感染症対策、働き方改革の推進、地域活性化、地方人材の獲得などのメリットがあります。
特に日本は都心部に人口が集中しているため、本拠地の他に就業場所の選択肢が生まれることは、従業員の安心感を高めることにもつながるでしょう。
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5.バケーションも兼ねたワーケーション
5つ目は、福利厚生の一環としてワーケーションを導入するタイプです。ワーケーションとは、ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語であり、リゾート地や観光地での休暇を満喫しつつ、その合間に仕事を行うという考え方です。
労働基準法の改正により、有給休暇の取得義務が定められてからは、有給休暇の取得促進やテレワークの有効活用なども兼ねて、ワーケーションを導入する企業が増えています。
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6.会社内に設置したサードプレイス
6つ目は、社内にサードプレイスオフィスを設置するタイプです。コロナ禍でニューノーマルな働き方が浸透したことで、オフィスに対する価値を再定義する必要が出てきており、その選択肢としてオフィスの一部をサードプレイス化する企業が増えています。
デスクの撤去、カフェスペースの設置、娯楽施設の併設などを通じて、働く場所ではなく、アイデアの創出や心理的安全性を確保する場所として、コミュニケーションの活性化を図ることが主な目的です。
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サードプレイスオフィスの導入メリット
サードプレイスオフィスの導入には、主に3つのメリットがあります。
生産性の向上
サードプレイスオフィスでは、仕事に集中して取り組むことができ、結果的に生産性の向上が期待できます。また、オフィスまでの距離が遠い従業員にとっては、サードプレイスオフィスの導入で通勤時間が短縮され、移動に伴う疲労が軽減できるのも大きなメリットです。
これらによってパフォーマンスが改善され、仕事に対してポジティブに取り組むことができるでしょう。
優秀な人材の離職防止
サードプレイスオフィスの導入は、働き方に柔軟性を与えることができます。ファーストプレイス(自宅)、セカンドプレイス(職場)、サードプレイス(シェアオフィスなど)を従業員が主体的に選択できることで、家庭の事情や当日のモチベーションに合わせて柔軟な働き方が実現可能です。
このようにフレキシブルな労働環境を提供することで、雇用の維持が期待できるだけでなく、優秀な人材の獲得にも有利に働くでしょう。
クリエイティブ力の向上
サードプレイスオフィスは、場所や人物をきっかけとした新たな刺激によって、アイデアの創出を促進させる可能性を秘めています。特にアイデアは瞬間的に思い浮かぶものでもあるため、硬直化したマインドを切り替えるサードプレイスオフィスの導入は効果的です。
普段の生活では接点のない人々や環境と触れ合うことで、視野の拡張や気分転換につながり、これまで思いつかなかった斬新なアイデアが生まれやすくなるでしょう。
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サードプレイスオフィスの導入デメリット
サードプレイスオフィスの導入には複数のメリットがある反面、デメリットも存在しています。
情報漏洩のリスクがある
サードプレイスオフィスの活用には、どうしても情報漏洩のリスクが付きまといます。
特に社外のサードプレイスオフィスを活用する場合、必ずしもセキュリティが強固であるとは限りません。
- 会社支給の端末を活用してインターネット接続を行う
- 離席する際はパソコンをロックし、のぞき見を防止する
- 口頭での機密情報の取り扱いに細心の注意を図る
社外の人々が行き来している場所で働く際は、上記の内容に注意し、データや口頭での機密情報の流出を避けることが重要です。
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コミュニケーションが減少する
サードプレイスオフィスは仕事に集中できるメリットがある反面、コミュニケーションが少なくなりやすいのがデメリットです。
働く場所の選択肢が広がると、チームメンバーが一堂に会する機会は減っていきます。従業員の孤独感を強めないためにも、ビジネスチャットや会議ツールなどを活用して、定期的なコミュニケーションを確保することが大切です。
勤務状況の把握が困難になる
働く場所が分散することで、従業員の勤怠状況の把握が難しくなるのもデメリットの1つです。
働き方の自由度が上がる一方で、成果要因が不透明になってしまうことが多いため、評価指標などを整備し、従業員が納得できる管理体制を築くことが求められるでしょう。
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サードプレイスオフィスを導入すべき企業とは?
サードプレイスオフィスは導入することで様々な効果が得られますが、特に導入に向いている企業の特徴を紹介していきます。
従業員満足度を向上させて離職を防ぎたい
サードプレイスオフィスを導入することによって、オフィス以外で働く選択肢ができ、通勤時間が短くなることでストレス削減が見込めます。
削減した通勤時間分はプライベートや家庭の時間に充てられるので従業員満足度も向上するでしょう。また、自宅で働く環境が整えられずテレワークできない人もオフィス以外で仕事ができるようになります。
そのため、従業員の満足度も向上し、離職率の低下にも寄与するでしょう。
生産性や業務効率を向上させたい
サードプレイスオフィスではいつもとは違った環境で仕事ができるため、適度にリフレッシュできて仕事の効率化が望めます。
また、普段関わらない人たちと交流することも多く、新たなアイデアが生まれることもあるでしょう。
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サードプレイスオフィスの導入事例
ここではサードプレイスオフィスの導入事例として、3社の事例をご紹介します。
自然豊かなリラックスできる労働環境を実現
顧客関係管理(CRM)などのソリューションを提供するセールスフォース・ドットコムは、総務省の「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」への参画を通じて、和歌山県の白浜町にサテライトオフィスを構えています。
この総務省の取り組みは、遠隔地でも東京と同じ仕事を実施することを目的としており、「ITの民主化」を推進する同社と親和性が高いものでした。
同社が白浜町にサテライトオフィスを構えた理由は、次の3点です。
- 空港から市街地までのアクセスの良さ
- リゾート地での従業員のモチベーションアップを期待
- 地方自治体による受け入れ体制の充実
サテライトオフィスの設置によって、同社は「業務効率が11%改善」「通勤時間が2時間から10分に短縮」という効果を得て、ワークライフバランスの両立にも役立っています。
また、同社の進出によって、他のIT企業が続々と白浜町にサードプレイスオフィスを構えるようになり、地域活性化にも貢献しました。
部署の垣根を越えた交流で新しい発想を促進
低温物流サービスを展開する株式会社ニチレイロジグループは、生産性の改善の一環として、神奈川県の川崎にサードプレイスオフィスを構えています。
このサードプレイスオフィスは、川崎東扇島地区や東京湾岸地区にある物流センターの従業員に加え、本社部署の従業員が利用できるオフィスです。普段は接点のない従業員の交流による新たなイノベーションの創出も、同社が期待する要素の1つとなっています。
もともと物流センターは貨物を扱う関係上、遠隔地での業務実施は難しいと考えられていました。しかし、同社はペーパーレス化やタブレット端末などの導入によって、事務業務のリモート化が実現できたことで、サードプレイスオフィスの活用に踏み切ります。
結果、事務業務において場所を選ばず、柔軟な働き方を実現しました。その後、同社は大阪府の梅田、神奈川県の横浜にもサードプレイスオフィスを開設し、複数のエリアでの働き方改革を実施しています。
「地方拠点」で生産性向上および地方創生に貢献
人事評価システムを提供する株式会社あしたのチームは、業務効率化を目的に、徳島県三好市や福井県鯖江市にサテライトオフィスを構えています。
同社は本社とサテライトオフィスの役割を定義し、本社では営業活動・サテライトオフィスにはオペレーション業務をメインに置くことで、それぞれのパフォーマンスの最大化を図りました。
また、同社はサテライトオフィスの導入を通じて、地方での人材採用を強化し、地元での採用・育成を行っています。そして、この取り組みが地方の雇用創出に大きく貢献したとして、同社は徳島県地域情報化表彰(e-とくしま表彰)を受賞し、メディア露出などによって企業価値の向上も実現しました。
さらに2020年10月にはリフレッシュ休暇制度を変更し、サテライトオフィスを活用したワーケーションの推進を強化しています。
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サードプレイスオフィスを導入して生産性向上を目指そう
本記事では、サードプレイスオフィスの意味や種類、導入のメリット・デメリットなどを中心にご紹介しました。
近年は「本社とは別にシェアオフィスを契約する」「地方にサテライトオフィスを開設する」「業務フロアの一部をサードプレイス化する」など、オフィスに対する価値を再定義する企業が増えています。
生産性や離職率の改善、新たな雇用の創出、ワークライフバランスの両立など、サードプレイスオフィスの導入メリットは多種多様です。働き方が多様化する時代に適応するためにも、サードプレイスオフィスの導入を検討してみると良いでしょう。
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