ワーケーションとは?メリット・デメリットやテレワークとの違いを解説!

最終更新日時:2023/05/02

テレワーク

ワーケーションとは

最近何かと話題のワーケーションですが、テレワークと混同している人も少なくありません。この記事では、ワーケーションの定義や注目される背景を紹介します。さらにテレワークとの違いやよくある誤解、メリットとデメリットなどを解説していきます。

ワーケーションとは「ワーク」+「バケーション」のこと

ワーケーションとは、英語で仕事を意味する「work/ワーク」と休暇を意味する「vacation/バケーション」を組み合わせた造語を指します。ワーケーションの具体的な意味やテレワークとの違いを1つずつ解説します。

(1)ワーケーションの意味

ワーケーションは、主に地方やリゾート地などで勤務することが考えられており、仕事と休暇の両立を目的としています。ただ、個人が休暇を取れる場所であれば、遠方でなくてもワーケーションは可能です。

ワーケーションはアメリカ発祥の仕組みで、有給休暇の取得率が低いという課題を解決するために始まりました。コロナ禍を受けて働き方が多様化している昨今では、ニューノーマルな働き方として注目を集めています。

(2)ワーケーションとテレワークの違い

ワーケーションは場所にとらわれない働き方として、テレワークと混同されることも少なくありませんが、それぞれの定義は異なります。ワーケーションはリゾート地や帰省先で勤務することによる「仕事と休暇の両立」を目的としています。

それに対し、テレワークは在宅勤務を指すことが多く、「生産性の向上」「仕事と生活の両立」「オフィスコストの削減」などを目的としているのです。このように、ワーケーションとテレワークは勤務する場所や目的が異なります。

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ワーケーションの種類

ワーケーションは大きく分けて休暇型と業務型の2種類があり、その2つでも4つに分類できます。なお、ワーケーションの種類は国土交通省によって定義されています。

種類概要
福利厚生型(休暇型)有給休暇を利用して観光地でテレワークを実施する
地域課題解決型(業務型)地域関係者との交流を通じて地域課題を解決する
合宿型(業務型)環境を変えて職場のメンバーと議論をする
サテライトオフィス型(業務型)サテライトオフィスなどで仕事を行う

ワーケーションが注目される背景

アメリカでは2000年代に発祥したワーケーションですが、2000年代の日本にはそれほど浸透していませんでした。では、日本でもワーケーションが注目された背景には何があるのでしょうか。

(1)有給取得・長期休暇取得の促進

ワーケーションの導入によって、有給取得や長期休暇取得の促進が期待できます。2000年代の日本では有給休暇の取得率が50%を下回ることがほとんどでした。そのため、日本でも長年にわたって「有給消化率の向上」が目指すべき目標として挙げられていたのです。

また、日本人は有給休暇や長期休暇を取得するにあたって「周りに迷惑がかかる」と取得をためらう傾向があります。つまり、従業員が周りを気にすることなく休暇を取れる環境づくりが必要です。

そこで、休暇と仕事を両立できるワーケーションを導入すれば、休暇中の仕事を全て周りに任せることもないため、従業員が休暇を取りやすい環境を整えられるといえます。

[出典:厚生労働省「令和3年就労条件総合調査の概況」]

(2)働き方改革への意識の高まり

近年、日本では働き方改革の意識が高まっており、企業には各個人の事情や生活スタイルに応じた働き方が求められています。働き方改革にはさまざまな方法が考えられますが、ワーケーションもそのひとつです。

そもそも、働き方改革が必要とされている原因には、少子高齢化にともなう労働人口の減少が考えられています。そのため、「少ない労働力で生産性を向上させる」「労働力を増加させる」といった対策を進めなければなりません。

ワーケーションは、働き方改革を実現するための一方法として効果的であると考えられています

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ワーケーションに関するよくある誤解

ワーケーションは「仕事と休暇の両立」を目的としています。しかし、仕事と休暇の両立に矛盾を感じることも多いようで、ワーケーションを誤解している方も少なくありません。

そこで、ワーケーションに関するよくある誤解について1つずつ解説します。

(1)休みなのに働かなければならない

ワーケーションに関する誤解で最も多く考えられるのが、休暇中にも働かなければならないという点です。たとえば、ワーケーションでリゾート地に滞在しているのに、滞在中も仕事の連絡や作業が止まらず休まらないといったことが考えられます。

そのため、休暇先に仕事を一切持ち込みたくない人には向いているといえません。しかし、ワーケーションの目的は仕事と休暇の両立です。

したがって、仕事をしながらも休暇を楽しむことが重要といえます。休暇先での仕事量を予め調整することで、休暇先で休めない問題も解決できるでしょう。

また、ワーケーションは必ずしも利用しなければならない制度ではないため、「効率が悪くなりそう」と感じるのであれば無理に利用する必要はありません。

(2)仕事とプライベートの切り分けができなくなる

ワーケーションでは休暇先で仕事を進めるため、プライベートとの切り替えが難しそうと感じる方も多いようです。休暇中は仕事をせず完全に休みとして過ごしたい方には、ワーケーションは向いていないかもしれません。

ただ、仕事と休暇の切り分けが曖昧でも「効率がよい」「アイデアが生まれやすい」など、人によってはプラスとして捉えられることもあります。

ワーケーションの形は「日帰り旅行」「長期の海外旅行」「同僚との合宿」「帰省」などさまざまです。自分に合った方法でワーケーションを選択することで、生産性の向上を目指せるでしょう。

(3)接客業では取り入れられない

業種によってはワーケーションが不可能である場合があり、「業種によって利用できない人がいるのは不公平だ」という声もあるようです。

しかし、ワーケーションによって休暇時期を分散させたり、休暇先の繁閑の差を埋めたりすることが可能となります。したがって、ワーケーションを取り入れられない業種でも、ワーケーションによる効果を感じることは可能といえるでしょう。

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ワーケーションを取り入れるメリット

ワーケーションを取り入れるメリットについて以下の4点で解説します。

  1. ワークライフバランスが取れるようになる
  2. 生産性やモチベーションの向上
  3. 企業の魅力が増し有能な人材が集まりやすくなる
  4. 会社への満足度・ロイヤリティが高くなる

(1)ワークライフバランスが取れるようになる

ワークライフバランスとは、仕事と生活のバランスを指し、生活には介護や育児などの事情に加え、趣味や学習など仕事以外の時間を取れているのかを見ます。

ワーケーションそのものは仕事と休暇の両立が目的ですが、ワーケーションの導入によって休暇が取りやすくなり、仕事以外の部分に使える時間が増えます。

このように、ワーケーションを取り入れることでワークライフバランスを取りやすい環境が構築されるのです。

(2)生産性やモチベーションの向上

ワーケーションの導入で、これまでは周りを気にして取れなかった休暇が取れるようになるため、従業員もリフレッシュできる機会が増えるでしょう。

また、好きな場所で働けるという部分で、モチベーションアップにもつながります。仕事と休暇の切り替えができれば、適度に休みながら仕事を進められるため、生産性も向上する可能性があります。

ワーケーションをすることで新たな刺激を受け、普段の生活では思いつかないアイデアが生まれるかもしれません。

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(3)企業の魅力が増し有能な人材が集まりやすくなる

近年では転職が当たり前の時代となりつつあります。そのため、就職希望者が自分にとってより条件のよい会社へと移っていくことは珍しくありません。

条件といっても年収や役職だけでなく、福利厚生の充実度や導入されている制度と実績なども含まれます。

つまり、ワーケーションという時代に合わせた働き方を取り入れることが企業の魅力度を向上させ、人材の確保にもつながるのです。

(4)会社への満足度・ロイヤリティが高くなる

ワーケーションは働き方改革の一環としても効果的な手段のひとつです。柔軟な働き方を従業員に提供することは、会社への満足度につながります。

新たな人材の確保も重要ですが、会社への満足度を高め、離職率を低下させることも重要です。また、ワーケーションは日本に浸透しきっているわけではありません。

そのため、ワーケーションの導入は企業の特徴的な施策として注目されると共に、従業員のロイヤリティを高める効果が期待できるでしょう。

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ワーケーションによるデメリットや課題

メリットを解説してきましたが、ワーケーションのデメリットについても以下の4点で解説します。

  1. テレワーク環境整備のコストがかかる
  2. 社員の管理が難しい
  3. 個人情報漏洩などのリスクがある
  4. 仕事とプライベートの線引きができない

(1)テレワーク環境整備のコストがかかる

ワーケーションとテレワークの仕組みは違えど、ワーケーションを実現するにはテレワークの環境整備が必要です。

インターネット環境やWeb会議システムの活用が必須となり、ワーケーションで利用するパソコンやタブレットなどの端末支給、通信費といったコストもかかります。

企業によってどこまでを会社側負担とするのかによっても、テレワークの環境整備にかかるコストは大幅に異なるでしょう。このように、ワーケーションの導入にはテレワークの環境整備が必須となるため、導入にコストがかさみます。

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(2)社員の管理が難しい

社員が様々な旅行先で仕事をするワーケーションでは、勤怠管理や業務の進捗管理などがしにくい傾向があるのもデメリットです。

作業がどの程度進んでいるのか、何時に出勤したのかなど、確認するべきことが非常に多く、確認することによって思わぬ工数がかかってしまうケースもあります。

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(3)個人情報漏洩などのリスクがある

ワーケーションは、働く場所が会社でもなければ会社が指定した場所でもありません。従業員によって休暇先は異なり、それぞれの場所にパソコンや必要な書類などを持ち運ぶことになります。つまり、仕事に関するものを休暇先で紛失すれば、第三者に会社の情報が渡ってしまうのです。

近年、施設や店舗によって自由に使えるWi-Fiを提供している場所が増えてきました。ただ、セキュリティの弱いWi-Fiや不正なWi-Fiに接続してしまうと、接続した端末内の情報が抜き取られる危険性も考えられます。

このように、ワーケーションを導入するには万全なセキュリティ対策も必要となるでしょう。

(4)仕事とプライベートの線引きができない

これは従業員によって異なりますが、どうしても仕事と休暇の切り替えができず「仕事を進められない」や反対に「仕事が終わらず休めなかった」などの問題も考えられます。

特に旅行先では誘惑が多くなるので、仕事に専念できずに業務効率が悪くなってしまうのです。

そのため、ワーケーションを利用するうえで仕事をする日程や時間を決め、その計画を会社側と共有するなど、従業員が仕事と休暇をうまく両立するためのルールを設けることがおすすめです。

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ワーケーションの取り入れ方

実際にワーケーションを取り入れることが決まった場合にどのような手順で進めていけば良いのかについて紹介していきます。

(1)ワーケーションに必要な機材を導入する

ワーケーションでは休暇先でも仕事を進めるため、パソコンやオフィス以外で働く際に必要になるツールなどを準備する必要があります。

万全の準備ができていないと、オフィスと比べて作業効率が大幅に低下してしまい、ワーケーションの意味がなくなってしまうので注意が必要です。

どのようなツールが必要なのか・PCの周辺機器は何が必要なのかなどの確認や購入する際には従業員負担なのか・会社負担なのかを決めておきましょう。

(2)労働時間の管理や勤怠報告のルールを決める

ワーケーションは休暇先で比較的自由に仕事を進めることとなります。従業員が「仕事と休暇の切り替えができない」という問題を防ぐためにも、労働時間の管理や勤怠報告に関するルールを予め決めておくことが重要です。

基本的には勤怠管理ツールを利用することになりますが、ツールの中でも搭載されている機能や特徴が大きく異なります。そのため、自社の社員数や利用したい機能から最適なツールを選びましょう。

(3)ワーケーションについての就業規則を決める

ワーケーションは仕事と休暇を両立する特殊な制度です。そのため、ワーケーションに関する就業規則をいくつか追加する必要があります。主に考えられるものとして以下が挙げられます。

  • 休暇取得単位
  • 申請方法
  • 経費となる内容
  • 可能な業務内容
  • 禁止事項

追加する就業規則は企業によって異なるため、上記に限りません。各企業で自社に合わせた適切な就業規則を追加して、従業員間で不公平感が生まれないようにすることが重要です。

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(4)人事評価制度を見直す

休暇先で仕事を進めるため、仕事の様子を把握することが困難です。しかし、成果を出しているのにワーケーションを利用したという理由で正当な人事評価を受けられないとなれば、制度の利用者が減少するだけでなく会社に対する満足度は下がってしまうでしょう。

したがって、ワーケーションを利用しても正当な人事評価ができるのかを見直し、ワーケーション期間中の成果をどのように把握するのかも決めておくことが重要です。

(5)労災の適用範囲について検討する

ワーケーションは休暇先ということもあり、慣れない場所や気の緩みから事故やケガをする可能性が考えられます。労災はあくまで業務上の事故やケガなどに適用されます。

そのため、休暇先での業務時間や休暇との区別を明確にし、労災の適用範囲を予め決めておくことが必要です。

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ワーケーションを取り入れている企業事例

ワーケーションをすでに取り入れている企業を3つご紹介します。

(1)日本航空

日本航空では有給休暇の取得率向上を目標とし、2017年よりワーケーションを導入しました。リゾート地や地方を休暇先として選択するほか、さまざま経験ができる「合宿型ワーケーション」も開催しています。

導入した2017年のワーケーション利用者は11人でしたが、2020年度までで400人を超えました。ワーケーション利用者を対象に社内で行ったアンケートでも、「モチベーションアップにつながった」という回答が得られているようです。

(2)ユニリーバ・ジャパン

ユニリーバ・ジャパンでは「WAA(ワー)」というワーケーション制度を導入しました。

WAA(ワー)は上司に申請して業務上の支障がなければ、理由を問わず会社以外の場所で仕事ができる

という仕組みです。勤務時間や休憩時間も比較的自由に決めることができ、実施率もほぼ100%という実績を誇っています。

また、「WAA」をもとに「地域 de WAA」という制度を導入しました。「地域 de WAA」は会社と連携した自治体のコワーキングスペースであれば、社員が無料で利用できるというものです。

他にも条件を満たせば宿泊費が無料・割引になったり、保険費用を会社が負担したりするなど、制度の充実度も高いといえます。

[引用:観光庁「「新たな旅のスタイル」ワーケーション & ブレジャー 導入企業事例 ユニリーバ・ジャパン」より]

(3)株式会社野村総合研究所

野村総合研究所では徳島県三好市にサテライトオフィスを設け、2017年よりワーケーションに取り組み始めました。

サテライトオフィスにてワーケーションを行うことで、地方における課題や価値を発見できるのではと考え、また社員のモチベーション維持を目的としても導入されたのです。

野村総合研究所が導入したワーケーションは、約1か月と長期にわたるものや年に3回実施されるキャンプがあります。ワーケーションを利用した社員からは、地元の人との交流をとおして感動や新たな気づきを得られたなどの感想が得られているようです。

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ワーケーションで従業員のモチベーションと生産性の向上へ

テレワークと混同されがちなワーケーションですが、正しく理解して導入することで、従業員のモチベーションアップや生産性向上へとつながります。

また、働き方改革への意識が高まっており、新たな働き方を取り入れることが企業にとって大きなメリットをもたらすでしょう。

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