採用DXとは?得られるメリットや事例・おすすめのツールを紹介!
企業の人材確保において採用DXは欠かせない取り組みです。しかし実際には、「採用DXはなにをすればいいの?」「重要性は?」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。本記事では、採用DXの重要性やポイント、おすすめのツールをご紹介していきます。
監修者 福本大一 株式会社kubellパートナー アシスタント事業本部|ユニット長 大学卒業後、toC領域のWEBメディア事業で起業。事業グロースに向けたSEO戦略から営業・運用広告に従事し、約2年間の経営を経て事業譲渡。2021年3月からChatwork株式会社(現:株式会社kubell)に入社し、カスタマーマーケティングやアライアンスを経験した後、メディア事業・運用広告事業の責任者としてミッションを遂行する。現在は、DXソリューション推進部のマネージャーとして新規事業領域のセールス・マーケティング・アライアンス・メディア事業を統括。
目次
採用DXとは?
採用DXとは、採用のデジタルトランスフォーメーションのことです。DX=デジタルトランスフォーメーションについて、経済産業省では以下のように定義しています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること[出典:経済産業省「「DX 推進指標」とそのガイダンス」]
言い換えると、ITを利用してビジネスのルールを変えたり新しい価値を創造したりすることにより、ビジネスを変革することがDXの意義であり目的と言えるでしょう。
例えば、今や動画配信サービスの1つとして、知らない人はいないほどの大手となったNetflixですが、実はDVDレンタルからスタートした会社でした。
しかし、インターネットの普及に伴い、まずはオンラインでのレンタルサービスを展開。その後、スマートフォンなどのモバイル端末が急速に進化したことを受け、いつでも、どこでも好きな時に動画が見られる動画配信というビジネスモデルへとシフトチェンジし、事業を大きく発展させたのです。
もはや「レンタル」という面倒な作業さえも消滅させたことは、まさにレンタルビデオ業界のDXと言えます。
このように、ビジネスのあり方そのものを変えて競争優位を築くことが、DXの本質であり、「販売のためECサイトを作った」「日報をペーパーレス化した」といったことはDXではないのです。
そのように考えると、採用DXとは、ITを利用して採用する側・される側の両方に新たな体験価値を提供し、双方にとって有益な採用活動を実現することであると言えるでしょう。
雇用側は必要な人材をタイムリーに確保でき、求職者側は誰もが希望する仕事に就くことができる、このような理想の形をITによって実現させることが、採用DXの姿のひとつかもしれません。
さらに採用DXは、EX(従業員体験)とCX(候補者体験)の両面から考える必要があります。
▷DXによるビジネスモデルの変革とは?事例から学ぶ成功企業の共通点
▷DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?意味・定義・重要性をわかりやすく解説
EXとは
EX=従業員体験とは、会社(この場合は雇用する側)の従業員が、業務を通じて経験する全てのことを指します。
従業員が「この会社で働いて良かった!」と感じることができていれば、それは離職率の低減や新規人材につながるでしょう。従業員がそのように思うポイントとしては、充実した福利厚生や休暇の取りやすさといったことが挙げられます。
ただし、多くのプラス要素があっても、「新入社員のフォローが全くなくて働きにくい」「社内の人間関係が険悪」「評価基準が明確でなく不公平」といったマイナス要素があれば、従業員の満足度は上がりません。
CXとは
CX=候補者体験とは、採用候補者(求人応募者やヘッドハンティング対象者)が、企業のことを認知してから採用活動が終了するまでの間にその企業との間で経験する全てのことを指します。
具体的には、認知してもらうためのSNSや各種媒体を利用した広報活動、応募の際のやり取り、選考、内定などのプロセスが含まれます。
採用候補者は、自社だけでなく、競合他社にもアプローチしているかもしれません。あるいは、採油担当者とのやり取りや選考過程での印象・体験をSNSで発信することもあるでしょう。
そのため、選考プロセスでの不手際は、企業イメージを悪化させ、有能な人材を採り損ねるだけでなく、応募者自体が減ってしまうリスクもあるのです。
▷DXとUX・CXとの違いとは?関連性や混同しやすい類義語も解説
採用DXの重要性や進めるべき理由
なぜ今、採用DXが重要とされているのでしょうか。
その背景には、ITの進化やコロナウイルスの流行などにより、急速に変化するビジネス環境が挙げられるでしょう。そのため、環境変化に対応できる優秀な人材の確保は、業種・業態を問わず、今やどこの企業においても急務となっています。
そこで、競合に人材を採り負けない採用活動上の工夫として、また採用後確実に戦力化し雇用を持続させる手段として、CX・EX両面からの変革=採用DXが必要とされているのです。
ここからは、採用DXを進める重要性と理由について説明していきます。
- 採用活動にかかる工数の削減
- 内定者の辞退・早期退職防止
- オンライン対応の必要性
- 2025年の崖の問題があるため
1.採用活動にかかる工数の削減
ITによる大きな変化のひとつとして、企業と人材のマッチングが容易になったことが挙げられます。
以前は、求職者は各自の見識や仲介によって企業にエントリーし、企業側は一人ひとりの経歴やスキルセットを履歴書等から人間の目で読み取らなければなりませんでした。そのため、自ずと両者の出会いは非常に工数がかかる割に、ある意味「運任せ」のような性質があったといえます。
しかし、AI技術が進化した現在では、企業は採用条件を求職者は経歴とスキルセットを入力しておけば、膨大な情報の中からAIがマッチングする組み合わせを見つけて双方に提示するという事が可能になりました。
これにより、企業側としては可能性を広げつつ採用工数を削減できるという利点が生まれました。
▷DX人材に必要なスキルや知識とは?育成方法やマインドセットも解説
2.内定者の辞退・早期退職防止
総務省の統計(令和2年)によると、近年、より良い条件の仕事を探すことを理由とする転職者数が増加しつつあります。
このような状況において採用する側は、雇用の「条件」や「処遇」により気を配らなければならないといえます。特に、内定後の辞退は、工数やコストがかかっている分、極力避けたいというのが本音でしょう。
辞退の理由が、社風が合わない、他社の方が好条件だったということであれば、即座に対応することは困難ですが、内定まで時間がかかっている間に他者から内定をもらったという理由であれば、多くの場合、IT化によって改善が可能です。
各候補者の面談後の印象や判断指標との一致状況をシステムで管理して見える化することにより、採用の決断がスピーディに下せるようになるからです。
また、コロナウイルスの影響で直接的な接触が少なくなった昨今、どうしても会社への帰属意識は希薄になります。そのような中で就職後の十分なフォローがないことや複雑すぎる社内システムなどは「働きにくさ」として確実に早期退職につながっていきます。
内定者同士やメンターとのコミュニティの提供、オンボードまでのルートの明確化や業務のマニュアル化は、CX・EXを高め、「こんなはずではなかった」という残念な早期退職の防止につながります。
[出典:総務省「統計トピックスNo.123」]
[出典:エン・ジャパン株式会社「月刊「人事のミカタ」」]
3.オンライン対応の必要性
コロナウイルス感染症拡大をきっかけとして、オンラインでのコミュニケーションの一般化が加速し、今では、あらゆる業務ややり取りのオンライン化がニューノーマルなビジネスの形態となりつつあります。
求職者側も、ワークライフバランスを重要視する傾向がより高くなり、「リモートで仕事が可能かどうか」を選定条件のひとつにしているケースは珍しくなくなりました。
これらの変化は、企業側から見れば「通勤圏内」を条件に人材を探す必要性はなくなり、より広く優秀な人材を確保する可能性が高まったとも言えるのです。
▷DXとテレワークの関係性とは?よくある課題や推進ポイントを解説
4.2025年の崖の問題があるため
2025年の崖とは経済産業省が発表した「DXレポート 〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」内で記載されている複雑化・老朽化した既存システムを利用することによって、2025年以降に最大で12兆円もの経済損失が起きるをされています。
実際にこの問題が起きると各企業はデジタル社会から取り残されてしまうために、会社全体を見つめ直して採用を強化する必要があります。変化している時代に適応するためにも採用基盤を構築した採用DXが急務となっているのです。
採用DXを推進する5つのステップ
採用DXは、マッチングのように何らかのサービスによって実現できることと、オンボードまでのルートの明確化などEXやCXを高めるために自社でできることの2つの視点で考える必要があります。
全体の流れを以下の5つのステップでご説明します。
- 現状のCXを整理して把握する
- 理想のCXを定義・現状の課題を洗い出す
- 課題解決に沿ったデジタルツールを活用する
- EXを整理して課題を抽出する
- EXから試作のPDCAサイクルを回す
1.現状のCXを整理して把握する
まずは候補者がどのようなルートや心理状態をたどって採用あるいは不採用にたどり着くか、現実を追跡します。具体的には、以下のような枠組みで現状確認を行う方法が挙げられます。
- 認知:どのようなメディアから自社の事を知ったか
- 興味:どのようなきっかけで自社に興味を持ったか
- 調査:どうやって自社のことを詳しく知ったか、あるいは調べたか
- 行動:エントリーを後押ししたきっかけは何か、入社を決めた理由は何か
- 共有:同業で転職希望者がいたら、自社を薦めるか
ここで重要なことは、事実ベースで考えるということです。例えば、自分自身で自社の採用プロセスを追体験したり、新入社員にアンケートやインタビューを行ったり、自社にエントリーする架空の人物(=ペルソナ)を設定したりします。
そして、どのタッチポイントでどのような気持ちになったかを細かく列挙していきます。この過程で割り出すことは、候補者がどのようなところに不便を感じるか(=ペイン)ということです。
2.理想のCXを定義・現状の課題を洗い出す
理想的な候補者体験とは何か、ありたい姿とは何か、アイデアをブレインストーミングで出していきます。この段階で実現性に気をつける必要はなく、とにかく思いつくままに洗い出していきましょう。
こうして出たアイデアの中で、ステップ1で割り出したペインの解決策になり得るものは何か、候補者はどんな利益を受けるか、といったことを深掘りしていきます。また、何があれば採用競争に有利になるかについても検討していきます。
3.課題解決に沿ったデジタルツールを活用する
ステップ2で整理された課題が、どのようなツールによって解決されるかを検討し、試行します。
ここでも、まずは小さく、社員が実験台となって入社までの過程を追体験し、本当に当初想定したペインが解消されているか・採用競争の中で優位に立てるか・改善すべき点はないかを検証します。検証によってある程度実証できたら、実際に候補者に向けて展開します。
運用後も、想定したペインが解消されているか、新たなペインが生まれていないか、競争優位性は築けているかについて事前に検証方法を決めておき、定量化できるようにしておくことが重要です。
▷DX推進に役立つツールを一覧で紹介!比較ポイントや導入方法・注意点を解説
4.EXを整理して課題を抽出する
採用した人材の「生産性」と「エンゲージメント」の向上に対する施策も重要となります。
ここでは主に2つの観点が考えられます。ひとつは、社内の稟議や経費精算といった、それ自体は非創造的ながら、社内でヒト・モノ・カネを動かすのに重要な手続きを誰もがすぐにできるようになることです。
もうひとつは、価値が生み出され売上が発生する現場(バリューゾーン)において、社内の「優秀な社員のマインドや行動」を比較的容易に再現できるようになることです。「優秀な社員」には、多角的なデータの蓄積と分析によって、何らかの共通項が見えてくることも少なくありません。
このような分析をITによって実現することで、効率的な「人材育成」が可能になります。また、育成プログラムを受ける側にとっても、このような明確な理論に基づいた教育であれば、モチベーションも上がり、意欲的に取り組むことができるでしょう。
5.EXから試作のPDCAサイクルを回す
データを取ったら、そのデータを使って当初想定していたことが再現できるか、定期的に検証します。つまり、ある種のKPIを追求するようにしたら連動して顧客満足度が上がるか、スキルが定着するか、売上があがるかといった因果関係を見出していくということです。
この試行錯誤がノウハウとして残れば、効率的な人材育成のプログラムとフローが確立されます。また、人材育成に強い会社として認知されることで、候補者から選ばれやすくなるというメリットも得られるでしょう。
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参考にしたい採用DXの事例
採用DXを進めていく上で実際に成功している事例があると、参考にすべきポイントが見つかりスムーズに進む要因となります。ここからは採用DXで参考になる事例を紹介していくのでチェックしてみてください。
一次面接を動画面接に移行した事例
企業側が設定した設問に対しての回答を動画で撮影し、動画を企業に送る形式で採用活動を進めている企業も増えています。録画することによって、双方の時間を削減できて効率的に採用活動を進めることができます。
また、書類だけではわからない応募者の雰囲気や人柄を知ることもできるので、魅力的な人材を取りこぼすことなく選考の通過率もアップしていきます。
採用フローで自社のブランディングを強化した事例
採用活動の中で自社のファンを作っていく意味合いも込め、独自性を追求して採用活動を強化している事例もあります。独自性を出すことによって、マッチング精度を向上させてミスマッチが少なくなります。
また、応募者をファン化させることによって、結果的に途中で離脱するケースも少なくなり余計な採用工数を減らせるのも魅力と言えます。
採用DXに役立つおすすめのツール7選
採用DXの実現に効果的なおすすめのサービスについて、いくつかを簡単にご紹介いたします。
1.ジョブカン採用管理
ジョブカン採用管理は、応募者集めから採用活動の振り返りまでを一元管理し、そこに起こりうる悩み解決のためのツールとして提供されています。
提供元 | 株式会社DONUTS |
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料金プラン |
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導入実績 | シリーズ累計120,000社以上 |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
2.採用係長
採用係長は、採用活動の「できたらいいな」の実現を支援してくれるサービスです。機能が豊富で、多くの料金プランが用意されている点が特徴と言えるでしょう。
提供元 | 株式会社ネットオン |
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料金プラン | ※いずれも1年契約の場合
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導入実績 | 46,787事業所が利用中(2020年4月現在) |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
3.engage
engageは、転職プラットフォーマーのエン・ジャパン株式会社が提供するサービスです。求人サイトの作成や検索エンジンとの連携だけでなく、採用後の早期離職を防ぐためのフォローツールが提供されています。
提供元 | エン・ジャパン株式会社 |
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料金プラン |
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導入実績 | 400,000社が導入 |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
4.HARUTAKA
HARUTAKAは、時間と場所にとらわれない新たな採用体験を目指すサービスであり、「動画選考」といった独自の機能を搭載しています。採用活動のオンライン化を後押ししてくれるツールといえるでしょう。
提供元 | 株式会社ZENKIGEN |
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料金プラン | 要問合せ |
導入実績 | 450社 |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
5.不適性検査 スカウター
不適正検査スカウターは、「採ってはいけない人材を見抜く」というユニークな視点から、他社とは一線を画す業界唯一のサービスです。
提供元 | 株式会社スカウター |
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料金プラン | ■初期費用無料 ■月額費用 標準プラン:0円 プライムプラン:2,178円(税込)※年分一括払いのみ ■検査費用(1名あたり) 能力検査:0円、資質検査:800円(税込)、精神分析500円(税込) 定着検査:500円(税込)、マークシート購入費用:600円(税込) |
導入実績 | 12,000社以上 |
機能・特徴 | 4種類の適性検査(能力検査、資質検査、精神分析、定着検査) |
URL | 公式サイト |
6.HRMOS 採用
HRMOS(ハーモス)採用は、転職プラットフォーマー大手のビズリーチが提供する採用活動サポートサービスです。同社が別途提供するシステムとも連携できることが特徴です。
提供元 | 株式会社ビズリーチ |
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料金プラン | 要問合せ |
導入実績 | 累計30,000社(2021年12月末時点) |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
7.TalentClip
TalentClipは、IndeedやGoogleとの自動連携が可能な、求人サイト作成に特化したサービスです。応募が獲得できるノウハウの提供など、応募者の獲得に向けたサポートが得られます。
提供元 | 株式会社広済堂HRソリューションズ |
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料金プラン | HP上に金額情報なし |
導入実績 | 1200社(2020年度累計) |
機能・特徴 |
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URL | 公式サイト |
重要性を理解して正しく採用DXを進める方法を
採用に関するデジタルトランスフォーメーション=採用DXについて解説いたしました。
組織のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるには、DXと自社のビジネスの双方において深い理解のある人材と、それらを叶えるITシステムの導入が必要となります。
採用活動は、「企業が人材を選ぶ場」だけではなく「人材から企業が選ばれる場」でもあります。採用DXにより、CXとEXを高め「選ばれる企業」を目指しましょう。
▷DXの事例集20選!成功事例からわかるDX推進のポイントをわかりやすく解説
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