請求書の端数処理は切り捨て・切り上げ?インボイス制度による影響は?

最終更新日時:2023/06/12

請求書発行システム

請求書の端数処理

請求書の作成において、消費税などを計算する際に端数が出ることが多々あります。本記事では、請求書の端数処理について、切り捨てか、切り上げかを説明します。また、インボイス制度による影響やおすすめの請求書作成サービスについても解説しているので、インボイス制度開始前に検討しておきましょう。

請求書の端数処理は切り捨て・切り上げ?

請求書を作成する際、消費税や売上額の計算で端数が出ることがあります。この場合、「どのように端数を処理すればよいのだろう…」と悩む方も多いでしょう。ここではまず、この2点について算出された端数をどう処理すべきかについて解説します。

消費税の端数処理

請求金額の計算をする際、消費税の金額に「752.5円」といった端数が発生することがあります。こういった場合の端数処理の方法としては、「切り捨て」「切り上げ」「四捨五入」の3パターンがあります。

  • 切り捨て:整数部分のみを残し、小数点以下の数字は0とする方法
  • 切り上げ:整数を1増やし、小数点以下の数字を整数に加える方法
  • 四捨五入:小数点以下が5以上の数字であれば整数に1を足し、小数点以下が4以下であれば0とする方法

端数処理の方法には厳密な決まりがないため、上記のうちどの方法を選択しても問題ありません。財務省が発表している「総額表示に関する主な質問」においても、以下のように記載されています。

「税抜価格」に上乗せする消費税相当額に1円未満の端数が生じる場合がありますが、その端数をどのように処理 (切捨て、切上げ、四捨五入など)して「税込価格」を設定するかは、それぞれの事業者のご判断によることとなります。

[引用:財務省「総額表示に関する主な質問」より]

売上額の端数処理

売上金額を計算する際にも消費税のように端数が発生することがあります。ただし、この場合も端数処理の方法については法律上の定めはなく、上記で記載した3パターンのどれを選択しても問題ありません。

請求書以外に発生する端数処理

端数処理が発生するのは、請求書の作成時だけではありません。消費税の申告や納税をする際にも端数処理をする必要があります。

特に、消費税の申告の際には端数処理の計算が複雑になるため、事前に確認し理解を深めておくことが大切です。ここでは、消費税の申告・納税時の消費税のルールや計算方法について解説します。

消費税の申告・納税

消費税の申告・納付時の消費税の端数処理については、国税庁は以下のように定めています。

ケース処理方法
課税標準額の計算時に発生した端数1,000円未満の端数は切り捨て
消費税の計算時に発生した端数1円未満の端数は切り捨て
納付すべき消費税額などの計算時に発生した端数
  • 課税仕入れにかかる消費税額:1円未満の端数は切り捨て
  • 課税標準額に対する消費税額から課税仕入れなどにかかる消費税額などを控除した税額:100円未満の端数は切り捨て
  • 還付金に相当する消費税額:1円未満の端数は切り捨て(ただし、還付金に相当する消費税額が1円未満であるときは1円とする)

[出典:国税庁「No.6371 端数計算」]

消費税の納税額を求める際は、計算中に複数回端数処理をすることになります。その時々で処理する端数の種類により異なりますが、還付金以外は基本的には「切り捨て」であると考えて問題ないでしょう。

【基本】請求書の書き方ガイド! 作り方・記載事項・注意点などまとめ

取引先との端数処理が異なる場合の対処法

取引先と端数処理が異なる場合、取引先と話し合い、事前に端数処理の方法を決めておくのがベストです。しかし実際のところは、どうしても合わせられない場合もあります。

具体的には、どのような場合に端数処理が異なるのでしょうか。それぞれの場合における対処法も紹介するので参考にしてみてください。

月締め請求のケース

自社は取引ごとに請求書を発行しているのに対し、取引先が月単位で請求書を発行している場合は、消費税の端数に誤差が発生する可能性があります。企業の多くは月末締めで請求書を発行するため、この場合には1件ごとの売上金額ではなく、1ヵ月間の売上総額で消費税額を計算します。

そのため、1件ごとに消費税を計算して会計ソフトなどに入力している場合、請求書の消費税額にズレが生じ、入金消込作業の際に「金額不一致」となってしまいます。

したがって、請求時には税抜金額だけでなく「税込金額=総額表示」「消費税額」などもしっかりとチェックし、一致させておくことが大切です。もし、万が一ズレがあれば取引先に相談しましょう。

分割請求のケース

分割請求では、1つの注文に対して複数の請求書を発行します。総合表示した請求書で分割請求すると消費税を逆算するため端数処理の都合上、税抜金額に違いが発生することがあります。

そのため、最終の請求書を発行する時点で、発注書に記載されている税抜金額と、逆算した場合の累計税抜金額が一致するか確認しましょう。もし、ズレが生じた場合には、金額が等しくなるよう端末調整を施さなければなりません。

請求書の訂正方法やルールとは?金額ミスや再発行の対処法について

インボイス制度による端数処理への影響

2023年10月1日からインボイス制度が開始されると、請求書の端数処理は変わるのでしょうか。インボイス制度の導入により請求書作成時のルールはいくつか変更されますが、端数処理にも当然影響があります。

ここではインボイス制度の導入による端数処理について、変更点や注意したいポイントについて解説します。

インボイス制度とは?

インボイス制度による端数処理について解説する前に、そもそもインボイス制度とはどういうものなのでしょうか。

インボイス制度とは、必要事項を追記した請求書を取引先に提出することで、税率と税額を正確に伝えることを目的とした制度です。正式には「適格請求書等保存方式」と呼ばれており、2023年10月1日に開始されます。

これまでは、どのような形式の請求書でも仕入税額控除の対象となっていましたが、インボイス制度導入後は必要事項を記載した適格請求書でなければ仕入税額控除ができなくなります。適格請求書に記載する追記項目は以下の通りです。

  • 登録番号
  • 適用税率
  • 税率ごとに区分した消費税額 など

[出典:国税庁「インボイス制度の概要」]

適格請求書を発行できるのは、課税事業者で、かつ税務署に適格請求書発行事業者として登録申請をし、登録された事業者(適格請求書発行事業者)のみです。登録していない事業者は、従来型の請求書を発行できますが、この場合買手側は当該請求については仕入税額控除を受けられなくなる点には注意が必要です。

なお、課税事業者とは、基本的に売上1,000万円超(設立2年以内の場合は資本金が1,000万円以上)が対象となります。

インボイス制度とは?いつから?変更点や対応すべきことについて解説

請求書の税率ごとに1回ずつ端数処理を行う

インボイス制度では、適格請求書1件につき「税率ごとに1回ずつ」端数処理をするよう義務付けられています。つまり、1つの請求書の合計額に対して1回しか端数処理ができず、今までのように、1つの商品ごとに消費税の端数処理をすることはできなくなります。

また、「税率ごと」というルールも追加されるため、消費税率が8%の合計額と10%の合計額に分けて端数処理を行う必要がある点にも注意が必要です。なお、インボイス制度の詳細は以下の国税庁のパンフレットでも確認できます。

[出典:国税庁「適格請求書等保存方式の概要-インボイス制度の理解のために-」]

品目ごとの端数処理ができなくなる

インボイス制度が開始されるまでは、それぞれの品目ごとに端数処理をすることができます。しかし、インボイス制度開始後は、品目ごとの端数処理ができなくなります。従来通りに計算してしまうと、本来の税額と異なる金額になってしまうため注意しましょう。

なお、請求書を作成する際に、Excelやインストール型の会計ソフトなどのツールを使用していた場合は、インボイス制度に伴い、設定変更が必要になる可能性があります。一方、クラウド型のツールを使用して請求書を作成していた場合は、インボイス制度にも対応できるようになっているケースがほとんどです。

そのため、インボイス制度の開始前に自社の使用している請求書作成ツールの設定を確認しておき、必要な場合は設定を変更しておくなど準備しておくとよいでしょう。

積上げ計算を活用できる

インボイス制度が開始されるまでは、1年間の売上総額に対して消費税を算出する「割戻し計算」で納税額となる税額を計算することができます。

しかし、インボイス制度開始後は、「積上げ計算」で合計の消費税額を計算することも可能になります。積上げ計算は、適格請求書に記載のある消費税額を一つずつ足していき、合計の税額を計算する方法です。

小売店など、一般の消費者向けに販売する会社の場合は、積上げ計算の方が利益が出ることが多いため、「積上げ計算」に変更するケースも増えるでしょう。また、領収金額が少額で領収回数が多い業種では、「積上げ計算」を採用することで割戻し計算よりも消費税額を抑えられる可能性があります。納税額を少なくするためにも、自社に適した計算方法で計算するようにしましょう。

ただし、「仕入税額」について「積上げ計算」が可能なのは、適格請求書発行事業者のみです。また、「売上税額」と「仕入税額」それぞれの計算方法の組み合わせにも以下のとおり制限があるので、計算する際には注意が必要でしょう。

  • 売上税額が「積上げ計算」→仕入税額も「積上げ計算」
  • 仕入税額が「割戻し計算」→売上税額も「割戻し計算」

※これ以外の組み合わせは可能。

【2023年最新】請求書発行システムおすすめ20選比較!選び方も解説

インボイス制度に対応した請求書作成サービス

Excelやオフラインで使用できるソフトなどを使用して請求書を作成している場合、インボイス制度に対応していない、または自分で一から確認・変更しなければならないものも少なくありません。そのため、「自分で計算できる自信がない」といった悩みを抱えている方も多いでしょう。

そういった場合には、インボイス制度の開始前に、請求書作成のツールやサービスの見直しをする必要があります。インボイス制度にも対応可能なおすすめの請求書作成サービスを3つ紹介しますので、参考にしてみてください。

freee

「freee」は、クラウド型の会計ソフトです。知名度が高く、個人事業主から中規模の企業まで幅広く対応しています。毎月の支出管理から確定申告まで一元管理できるのが特徴です。直感的に操作できるデザインで、会計知識のない方でも気軽に利用できます。

また、freeeはクラウド型のため、インボイス制度や法改正にも即座に対応でき、インボイス制度に対応した請求書作成やインボイス登録用書類の作成もできるので安心です。

提供元freee株式会社
初期費用無料
料金プラン

■個人事業主向けプラン

月払い

  • スターター:1,628円(税込)/月
  • スタンダード:2,948円(税込)月
  • プレミアム:年払いのみ

年払い

  • スターター:1,078円(税込)/月、12,936円(税込)/年
  • スタンダード:2,178円(税込)/月、26,136円(税込)/年
  • プレミアム:3,647円(税込)/月、43,780円(税込)/年

■中小企業向けプラン(従業員1名〜20名)

月払い

  • ミニマム:2,948円(税込)/月
  • ベーシック:5,808円(税込)2,680/月
  • プロフェッショナル:52,536円(税込)/月

年払い

  • ミニマム:2,178円(税込)/月、26,136円(税込)/年
  • ベーシック:4,378円(税込)/月、52,536円(税込)/年
  • プロフェッショナル:43,780円(税込)/月、525,360円(税込)/年

※その他、中堅企業〜大企業向けプラン(従業員21名〜)もあり。

導入企業数有料課金事業所数40万以上(※2022年12月末時点)
機能・特徴確定申告書の作成・出力、銀行口座やクレジットカードとの同期、請求書の作成、領収書の写真から仕訳データ自動取得、消費税申告、月次推移/資金繰り/売掛/買掛レポート、メール・チャットサポート、電話サポート、税務調査サポート補償など
URL公式サイト

board

「board」は請求書や見積書の作成はもちろん、営業管理、支払管理、キャッシュフロー予測などバックオフィス業務を一元管理できるサービスです。会計ソフトへの連携が可能なため、簡単に請求書も作成でき、データ入力の手間や打ち込みミスの発生を防止できるのもメリットです。また、書類のデザインが洗練されているのも魅力でしょう。

なお、クラウド型のソフトであるため、インボイス制度やその他の法改正にも瞬時に対応できます。比較的低価格であるため、あまり予算をかけたくないと考えている場合にも導入しやすいでしょう。

提供元ヴェルク株式会社
初期費用無料
料金プラン
  • Personal:1,078円(税込)/月
  • Basic:2,178円(税込)/月
  • Standard:4,378円(税込)/月
  • Premium:6,578円(税込)/月
導入企業数有料導入企業4,500社突破(※2023年04月時点)
機能・特徴見積書や請求書などの作成、書類のメール送信、捺印申請、電子署名、会計ソフト連携、損益管理、データ分析、送付上作成、予算管理、書類デザインが豊富など
URL公式サイト

Money Forward

「Money Forward」は、初心者から上級者までのさまざまなニーズに対応している会計ソフトです。明細データの取得・仕訳・レポートの作成・申告書の必要書類の作成などにつき自動作成できるため、手入力業務を削減でき、作業も正確かつ効率化できます。

また、MoneyForwardの会計ソフトもインボイス制度に対応しています。インボイス制度のパーフェクトガイドも発表しているため、制度内容に関する理解が進んでいない方や不安を感じている方にもおすすめです。

提供元株式会社マネーフォーワード
初期費用要問い合わせ
料金プラン

■無料プラン 

  • 無料(ただし、機能に制限あり)

■月額プラン

  • パーソナルミニ:1,078円(税込)/月
  • パーソナル:1,408円(税込)/月
  • パーソナルプラス:月額プランなし

■年額プラン

  • パーソナルミニ:880円(税込)/月、10,560円(税込)/年
  • パーソナル:1,078円(税込)/月、12,936円(税込)/年
  • パーソナルプラス:3,278円(税込)/月、39,336円(税込)/年
導入企業数シリーズ累計10万社以上(※2022年10月時点)
機能・特徴確定申告書の作成、銀行口座やクレジットカードとの同期、消費税集計機能、消費税申告書の作成、請求書の作成、レポート機能、口座残高照会および帳簿残高との突合、見積・納品・領収・請求書作成、請求書の郵送、郵送やメール送信等の一括操作、各種自動作成機能など
URL公式サイト

請求書の端数処理は企業側で決められる

請求書の端数処理については、「切り上げ」「切り捨て」「四捨五入」のいずれかの方法から企業が自由に選択できますが、勝手に処理してしまうと取引先と金額が合わなくなり、トラブルに発展する恐れがあります。そのため、事前に端数の処理方法について取引先と相談して決めておくようにしましょう。

また、2023年10月1日にはインボイス制度が開始されると、請求書の端数処理についても当然影響が生じますが、インボイス制度が開始されても、端数処理については「切り上げ」「切り捨て」「四捨五入」のいずれかの方法から企業が自由に選択できるという点には変わりはありません。

今回本記事で紹介したおすすめの請求書作成サービスもぜひ参考にして、適切な端数処理ができる体制を整えましょう。

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ビズクロ編集部
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