リテンションの意味とは?メリットや企業の実施例と取り組みを紹介

最終更新日時:2023/09/06

組織・マネジメント

リテンションとは

「リテンション」という言葉の意味をご存知でしょうか。今回は、とくに人事領域におけるリテンションの意味や注目される理由、実施するメリットなどを紹介します。具体的な取り組み例も紹介しますので、ぜひ自社のリテンション施策にお役立てください。

リテンションとは?

リテンションとは、英語で「維持・保持・保留」など、「留める」といった意味合いを持つ言葉です。

ビジネスシーンでは、主にマーケティングや人事の領域において、リテンションという言葉が用いられます。まずは、それぞれの意味を確認しておきましょう。

マーケティングにおける意味

マーケティングにおけるリテンションは、既存の顧客と継続的な関係を維持すること・そのための施策活動などを指します。リテンションマーケティングと呼ばれることもあるでしょう。

具体的には、リピート購入や定期購入を促す、メルマガ配信や会員登録システム、ポイント制度などが挙げられます。

人事領域における意味

人事領域のリテンションとは、人材の流出を防止し、継続的な活躍を促す施策を指します。

主に、給与や手当などの福利厚生「金銭的報酬」と労働環境の改善を始めとした「非金銭的報酬」の2種類に大別することができ、どの施策をリテンションとして位置付けるかは企業によって異なります。

ただし、従業員のエンゲージメントを高めるための施策を意味するケースが多いと言えるでしょう。

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リテンションが注目を集めている理由

ここからは、とりわけ人事領域におけるリテンション施策の注目度が高まっている背景について見ていきましょう。

人材不足や流動性の深刻化

ここ数年、慢性的な人材不足に悩む企業は少なくありません。

その理由は、少子高齢化や能力の不一致といった雇用のミスマッチなどさまざまですが、どの企業においても、既存社員に「自社での長期的な活躍」を望む点は同じでしょう。しかしながら、キャリアアップやワークライフバランスを求めた転職も一般的となった社会においては、企業側にもよりよい環境を整える努力が求められます。

そのような背景から、離職リスクを低減し、仕事や会社へのエンゲージメントを高めるためのリテンションの取り組みが人事領域において注目されているのです。

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生産性向上の実現

労働人口の減少、国際的な競争の激化など、企業を取り巻く環境は年々厳しさを増しつつあります。企業が人や手間、時間などのコスト面で、「より少ないインプット×より多くのアウトプット」の体制を目指すのは、当然の流れと言えるでしょう。

リテンション施策による社員のモチベーション向上は、企業競争を勝ち抜くための重要な取り組みでもあるのです。

企業がリテンションに取り組むメリット

次に、企業がリテンションに取り組む4つのメリットを紹介します。

離職防止による採用コストの削減

人材採用には、採用活動にかかる社内リソースといった内部コストのほか、求人広告の掲載料、人材紹介会社への仲介手数料といった外部コストなど、さまざまなコストが発生します。

リテンションに取り組み、離職を低減することができれば、これらの採用コストを削減することができ、さらには、入社後にかかる育成コストの軽減も見込めます。

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経験豊富な社員によるナレッジの蓄積

企業から人材が流出するということは、その人材が持つスキルやナレッジも失うということになります。

経験豊富な社員による実践的なノウハウやナレッジは、社内に共有することでチーム力の即上げにもつながる、大きな財産となるはずです。リテンションによって定職率が上がり、社員のナレッジやスキルが社内に蓄積されれば、生産性が上がるのはもちろん、業務改善のアイデアなども活発に交わされるようになるでしょう。

長期的な経営や戦略の遂行が可能

長期的な視点をもとにした経営やさまざまな戦略は、人材が安定的に確保されている体制を前提として計画されています。そのため、何らかの原因で離職率が大幅に上昇してしまうなどの事態が生じた場合は、目標を達成するどころか、経営戦略の見直しを要することさえあります。

リテンションによる安定的な人材の確保・定着は、結果的に、長期的な経営戦略の成功にもつながるのです。

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採用競争での他社との差別化

リテンション施策は、大きく分けて、金銭的な報酬の改善、働く環境や労働条件などの非金銭的な報酬の改善の2つの種類に分けられます。

いずれも社員と会社のエンゲージメントを高め、「この会社で働き続けたい」と感じてもらうための制度設計や改善施策となるため、そのような取り組みへの注力や実績は、新卒・中途を問わず、求職者にとって魅力的に見えるはずです。

人材不足が深刻化するビジネス市場においては、採用競争も当然のごとく激化しています。企業の「強み」となる点が増えることは、採用競争を勝ち抜くうえでも重要です。

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リテンションの実施に役立つ施策例

これからリテンションに取り組んでいく場合、具体的にどのような施策を行えばよいのでしょうか。ここではリテンション施策の立案や実施時に役立つ施策例を4つ紹介していきます。ぜひ参考として、お役立てください。

スキルやキャリアに関する支援

従業員のスキルアップ、キャリアアップ支援は、高いリテンション効果が期待できます。

具体的には、社内勉強会や研修などの会社全体あるいは部署単位でのスキルアップ支援のほか、個別のキャリアカウンセリングや業務に関する資格取得費用の補助、書籍購入補助とkった個人に向けた支援策などがあるでしょう。

コミュニケーションの活性化

退職原因となるリスクの排除もリテンション施策における重要なポイントです。

職場での人間関係のストレスや悩みは、常に上位に挙げられる退職理由の一つだと言われています。定期的な1on1ミーティングのほか、部署の垣根を越えた交流ができる社内イベントの開催、雑談タイムの実施など、社内コミュニケーションを活発にするための取り組みも、定職率を上げるための有効なリテンション施策となります。

ワークライフバランスの実現

テレワークやハイブリッドワークといったオフィス出社にこだわらない働き方が社会に浸透したことで、今やテレワーク・リモートワークの選択肢があるかどうかは、就職先を決める重要なファクターとなっています。

さらに仕事観や価値観が多様化したことから、出世やキャリアのみを重視するのではなく、ワークライフバランスを求める傾向は、今後も高まっていくと考えられるでしょう。柔軟なワークスタイルが叶う制度設計は、リテンションのみならず、新規人材確保においても欠かせない取り組みなのです。

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給与や福利厚生などの見直し

適切な給与やインセンティブ制度の構築、福利厚生制度の充実も不可欠です。待遇面の不満や不信感は、多くの場合、離職を決意する決定打となってしまいがちです。

そうならないよう透明性・公平性の高い評価制度のもと、個人の能力や成果に見合った給与や賞与を支払い、昇格など待遇面にも評価を反映します。リテンションにおける金銭的報酬の改善は、社員のモチベーションを向上させる効果が期待できるでしょう。

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リテンション施策に取り組むプロセス

リテンション施策に取り組む際のプロセスについても確認しておきましょう。

ここでは、4ステップに分けて解説します。

自社の離職に関するデータを把握する

まずは自社の離職データを分析します。退職者の所属先・職種・属性・特性・退職理由などの項目を集計・分析し、現状を把握します。近年は、退職者を組織化して経営資源の一つとするアルムナイ制度の一環として、退職者へのヒアリングを行う企業も増えています。

リテンション施策ターゲットを絞り、設定する

次に、「最も辞めてほしくない人材」を具体化して、重要ターゲットに据え、施策を検討していきます。

例えば、子育て世代の社員が育児との両立の難しさを理由に退職に至るケースがあれば、時短勤務やフレックスタイム制、テレワークの実施といった制度の導入は、高いリテンション効果が期待できるはずです。

退職理由の調査は、退職者本人へのヒアリングが最も良い方法ですが、状況によっては難しい場合もあるでしょう。その際は、所属先の同僚などにヒアリングを行うのも一つの手です。

ターゲットに合わせた施策を策定する

ターゲットや主な退職理由などを明らかにした上で、リテンション施策を練ります。

労働環境の見直しや新たな福利厚生制度の策定、新たな人事制度の新設など、リテンション施策は多岐に渡りますが、一律ではなく、ターゲットを絞ることで施策も立てやすくなるはずです。

効果の検証や更なる改善を行う

施策を実行に移した後は、効果検証を行い、さらなる改善を図ります。

社員からの声だけでなく、制度を運用する上でのコストを照らし合わせたうえで費用対効果を見極めましょう。いくら社員から好評であっても、制度を運用する管理コストの負担があまりにも大きいようでは、本末転倒です。再度、リテンション施策の改善を検討しましょう。

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リテンション活動を行う前に知っておきたい離職理由

リテンション活動を行う前に、人事担当者のほか、特に管理職の立場にあるビジネスパーソンであれば、よくある離職理由は把握しておきたいところです。

よくある離職理由を3つ紹介していきます。

業務内容や条件が合わない

入社後の早期離職の理由として多いのが、「入社前のイメージと仕事内容が違う」「残業時間など、実際の労働環境が違う」といったミスマッチです。

特に若手の新入社員は社会人経験も浅く、入社後の具体的なイメージがないままに入社し、理想とのギャップに苦しんで離職してしまうことがよくあります。入社後のフォロー体制を整えるとともに、採用する際は、自社のいい所のみを伝えるのではなく、悪い点も隠さずに伝えるようにしましょう。

人間関係の負担が大きい

職場の人間関係の悪化やストレスを理由に離職に至るケースも少なくありません。

上司とウマが合わない、同僚と衝突してしまうなど、ひと口に人間関係のストレスといっても内容はさまざまです。なかには、ハラスメントの疑いがある行為に重篤なストレスを受けているケースもあるかもしれません。被害を申告できる環境を整えると同時に、そのような場合においては、被害者を加害者から即座に隔離できる体制を整えておくことが重要です。

仕事内容への不満

「仕事にやりがいが感じられない」「雑務ばかりでキャリアップができない」といった仕事内容への不満も、離職の理由として多い傾向にあります。

ただし、やりがいが感じられない理由は人それぞれです。例として、待遇への不満、本人のキャリアパスと業務内容が合致していない、適切な評価がされていないなどが挙げられますが、何が原因なのかで取るべき対応は異なります。まずは1on1などのミーティングにより、本人の意見にしっかりと耳を傾けましょう。

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リテンションの施策を実施している企業の事例

最後にリテンション施策を実施し、人材の維持に成功した企業の事例を3つ紹介します。

サイボウズ株式会社の事例

サイボウズ株式会社では、一時期離職率が28%と高い水準に達したことを機に、人事制度の見直しなどのリテンション施策に乗り出しました。

同社では、介護や育児に限らず、通学や副業などの個人の事情にあわせて、働く場所や時間を自分で決めることのできる人事制度を取り入れています。そのほか、社員が主体となって進めた評価制度や各種働き方の制度の導入などにより、28%あった離職率を、約5年で3%前後まで下げることに成功しています。

株式会社鳥貴族の事例

株式会社鳥貴族が取り組んだリテンションの事例には、「部門間の連携強化」「組織の壁を取り払う」「無断残業NG」といったものが挙げられます。

入社後店舗スタッフに任せきりだった新入社員のフォローアップを人財部と連携して強化する、本社では社長を含む全てのスタッフが大部屋で仕事をする、無断残業、休日出勤の禁止といった取り組みを進め、3年以内の離職率は50%を超えるとも言われる飲食サービス業において、安定した定職率を維持しています。

株式会社レオパレス21の事例

株式会社レオパレス21では、リテンション施策の結果、離職率を業界水準値以下まで下げることに成功しました。

具体的な取り組みとして、研修制度の導入、評価制度の見直しなどが挙げられます。今までコストを割いていなかった研修実施に予算を割くことで従業員のモチベーションとパフォーマンスをアップさせ、評価制度を見直し「限られた時間の中で成果を出した」人を評価する制度に変えました。これらの取り組みにより離職率も低下し、有給取得率も34%から70%へ向上しています。

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リテンションとは人材の流出を防止する取り組み

業界を問わず、多くの企業が人材難の課題を抱えるなか、人材流出を予防するリテンションの取り組みは今後さらに重要度を増していくはずです。

リテンション施策によるメリットの本質は、「この会社でもっと活躍したい」「この会社に長く勤め、貢献したい」という気持ちが、社員一人ひとりに芽生えることにあります。

企業と社員のエンゲージメントが希薄になりがちな現代社会において、企業と社員のエンゲージメントを高められるリテンション施策を効果的に活用し、より強固な組織を目指してみてはいかがでしょうか。

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