マネージャーが参考にすべき目標設定のポイント|具体例やフレームワーク

最終更新日時:2023/07/14

組織・マネジメント

マネージャーの目標設定

マネジメントにおいて目標設定はさまざまな意味で重要な仕事です。マネージャーになりたての方にとっては何から手を付けるべきか戸惑う仕事でもあります。本記事ではマネジメントにおける目標設定の基本をまとめました。目標設定の重要性や対象、方法、活用できるフレームワークを詳しく解説し、具体例を紹介します。

マネジメントにおいて目標を設定する対象

マネジメントは担当する組織の何らかの成果を最大化する目的でおこないます。その目的(ゴール)を達成するために必要なのが、個別や期間などに立てる目標です。マネジメントの一環として目標を設定するべき対象は、主に「組織」「部下」「自分自身」の3つです。

それぞれ詳しく解説します。

目標設定の対象1:組織

目標を設定する組織の単位はマネージャーの役職によってさまざまです。

  • 経営者⇒企業全体
  • 部長⇒担当部署目
  • プロジェクトマネージャー⇒管轄プロジェクト

組織の目標設定に具体的な例をあげると、企業の経営目標がそれにあたります。ほかにも、システム開発を管轄するプロジェクトリーダーであれば、いつまでに成果物を完成させるかが目標です。また、ヘルプデスクであれば業務効率化による対応時間削減などが目標となるでしょう。

複数の人員が所属する何らかの組織をマネジメントするためには、目標設定が必要です。

目標設定の対象2:部下

マネジメントする組織の目標を達成して成長を促すためにも、個々の部下の目標も設定します。

たとえば、営業部門において目標を営業力の強化とする場合は、部下に向けて個別の数値目標を立てる、何らかの資格取得を目標にするなどといった形です。

マネージャーは組織全体を見通し、誰にどの業務を担当させるべきかを決めることも仕事です。その際に、部下の目標設定も行います。その際には、それぞれの能力や、将来のキャリアプランなども考慮することが必要です。

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目標設定の対象3:自分自身

マネージャーが目標を設定する対象は組織や部下のみではなく、自分自身も該当します。マネージャーの目標は、個人的なものではなく、組織全体がよりよく活動し成果をあげられるよう設定します。

たとえば、営業部のマネージャーであれば「次の四半期の売上を前年比10%増加させる」などといった形です。

組織や部下が目標を達成するには何をするべきか、どのようにサポートするべきかという視点が大切です。

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マネジメントにおける目標設定の重要性

マネジメントにおける目標設定が重要な理由は、主に3つです。それぞれ詳しく解説します。

効率的に目的に到達できる

マネジメントにおいて適切な目標設定は速やかな目的到達のために重要です。

目的までの道程が長いと、そこへたどり着くための道筋があいまいで、考えられる選択肢が多くなります。都度進んでいる道が正しいのか、遠回りしていないかを顧みる必要が出てくるでしょう。目的到達までに時間的・労力的なロスが生じかねません。

目的までに適切な中間地点(=目標)があることで、計画的に物事を進められるようになります。結果、部下それぞれのタスクや役割が明確になるので、自律的な行動が可能となり、迷いなく効率的に目的に到達できるのです。

プロジェクトの進捗状況を確認できる

具体的な目標設定をすれば、それがどの程度達成されているかにより、プロジェクトの進捗状況を確認しやすくなります。その結果「問題が生じていないか」「計画の改善や軌道修正の必要があるか」などを検討できるので、的確な対処が可能です。

たとえば、目標達成状況が今ひとつである場合、部下の人員配置やスケジュール調整、プロジェクト計画の見直しなどの対策を早い段階で講じられます。

目標の設定は進捗管理の可視化において大きな役割を担っているのです。

部下のモチベーションを向上できる

目標設定は組織の部下のモチベーション向上にも寄与します。

目標もなく与えられた仕事をこなす状況では、漫然とした働きとなってしまうので、効率の悪いプロジェクト運営になります。マネージャーが適切な目標を設定することにより、部下には達成したい気持ちが生じやすくなり、モチベーションの向上が見込めるのです。

このとき部下に設定する目標は手が届きそうな内容であることがポイントです。簡単すぎても難易度が高すぎてもモチベーションの低下を招きます。努力や創意工夫が奏功し、目標を達成した経験が、部下のモチベーションを高め、やりがいをもたらすのです。

一度感じられたやりがいは、次の新しい目標に対しても原動力となるので、部下のパフォーマンスの向上に結び付くでしょう。

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具体的な目標設定の方法

目標設定は、一般的に以下のステップを通じておこないます。

  1. 目標設定の種類を定める
  2. 達成したい目標の概要を決める
  3. 目標を達成するために必要な行動を洗い出す
  4. 目標達成の期限を設定する

それぞれのステップについて詳しく解説します。

1.目標設定の種類を定める

目標設定をする際は、まず設定したい方向性によって種類を決めましょう。

具体的に目標には、「発生型目標」と「設定型目標」の2種類に分けられ、それぞれ異なる特徴があります。

発生型目標

発生型目標とは、すでに生じている問題や課題の解決を目的とする目標のことであり、具体的には下記のようなものがあげられます。

  • 残業時間の多さが問題の部署の目標:残業ゼロを目指す
  • 赤字続きのある事業:黒字に戻す

発生型目標は「マイナスからゼロに戻す目標」と表現するとわかりやすいでしょう。すでに問題や課題があるので、正常な状態や基準値に戻すことを目指せばよいので、目標設定が容易にできるのが特徴です。

設定型目標

設定型目標とは、現在の状況をゼロとして自発的にプラスになるように設定する目標のことであり、具体的には下記のようなものがあげられます。

  • 部署全体の営業成績を前年度比較で1.2倍にする
  • 部下の個人目標として、1年間で100件受注を目指す

設定型目標はストレッチ目標とも呼ばれ、解消すべき問題が生じてる発生型目標と異なり、なぜ目標設定する必要があるのかや達成基準が分かりづらい特徴があります。そのため、なぜこの目標を設定するのか、本当に目標を達成できるかなどと組織間で議論する必要があるでしょう。

2.達成したい目標の概要を決める

目標設定の種類を理解して方向性が定まったら、次は具体的に達成したい目標の内容を定めます。

いずれの方法を用いるとしても、以下のようなポイントを押さえて目標設定すると良いでしょう。

  • 肯定的な、明確にわかる文言を用いて設定する
  • 目標の候補には優先順位をつけてよく選定し、集中して取り組める程度の数に絞り込む
  • モチベーションが高まりやすい、重要性や関心の高い内容を選ぶ

3.目標を達成するために必要な行動を洗い出す

目標を設定したら、達成するためにどのような行動を取るべきか考えていきましょう。行動を設定する手順は以下の通りです。

  1. 現状を正しく把握する
  2. 現状と設定した目標とのギャップを認識する
  3. ギャップを埋め手目標に達するためのタスクを洗い出す

行動設定のポイントは、一つの詳細なタスクレベルまで落とし込むことです。

たとえば、「業務効率化で、1日3時間発生している残業時間をゼロにする」という目標を立てたとします。

この際、目標を達成するための行動として設定する内容は「早出に切り替える」では置き換えであり不十分です。「エクセルのマクロ、またはGoogleスプレッドシートのGASを開発して工数を減らす」など具体的に設定するのが大切です。

目標を達成するためにも、適当に計画するのではなく、現在何をするべきかまで落とし込むようにしましょう。

4.目標達成の期限を設定する

目標とそのための行動が決まったら、達成期限を決めましょう。

目標によっては長い期間が必要な場合もあるので、中間目標も定めて四半期から半年、1年程度の短いスパンで区切ることをおすすめします。短く区切ることで、モチベーションを維持でき、経過の振り返りを定期的に確認できます。

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マネジメントにおける目標設定のフレームワーク

ここでは、マネジメントにおいて定評のある目標設定のフレームワーク3つについて詳しく解説します。

ベーシック法

ベーシック法は、下記4つの手順で構成されており、具体的で実現可能な目標が設定できるフレームワークです。

  1. 目標項目:「強化」「改善・解消」「維持・継続」「開発」の4つから選んで設定する。
  2. 達成基準:定量的基準と定性的基準のどちらかを設定する。定量的基準の方が望ましい。
  3. 期限設定:目標の内容や難易度等に合わせて1か月~1年程度の範囲で区切る。
  4. 達成計画:目標項目と達成基準を掘り下げ、タスク化してスケジュールに落とし込む。

ベーシック法は目標設定の基本的方法といわれています。まだ、マネージャーとして目標設定の経験が浅い方は、ベーシック法から基礎を身に付けることをおすすめします。

三点セット法

三点セット法は、ベーシック法をさらに深く掘り下げた目標設定方法で以下の3つの要素で構成されています。

  1. テーマ:達成したい目標そのものを指す。テーマの設定段階では抽象的目標でよい。
  2. 達成レベル:テーマに到達できたかを判断する指標。指標は定量性のあるものを設定するのが理想。
  3. 達成時期:どのようにしてテーマを達成するかのプロセスを指す。具体的な行動計画の設定をする。

三点セット法は、シンプルでシーンを選ばず使いやすいようにカスタマイズされているので、目標設定の方法に迷うようなときには利用するとよいでしょう。

SMARTの法則

ジョージ・ドラン博士が考案した「SMARTの法則」は、以下の5つの要素を考慮にいれて目標を設定するフレームワークです。

SSpecific:具体的誰にでもわかる具体性を持っていること
MMeasurable:測定可能定量的に計測や集計が可能であること
AAchievable:達成可能現実的に達成可能な水準の目標であること
RRelevant:関連性のある組織全体の目的や目標に関連していて意味があること
TTime-bound:時間指定のある明確で適切な期限の設定があること

5つの項目を深く掘り下げることにより、組織や部下の理解が得られやすく、現状の改善や成長につながる目標設定を実現できます。多くの企業で古くから使われているフレームワークです。

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マネジメントにおける目標設定の具体例

ここでは、マネジメントにおける目標設定の具体例について4つの職種別に紹介します。

それぞれの職種に示した表の項目は、以下のような内容を表しています。具体例をみる参考にしてください。

目標設定した目標
基本方針目標に基づいて定める計画の方針
KPI重要業績評価指標と訳される、目標の進捗・達成状況を図るための指標
ルーティン行動目標達成のために設定した行動
評価基準目標達成度合いを評価するための基準

マーケティング

マーケティング部門の場合は、以下のような目標設定の例があげられます。

目標新製品Bの売上を四半期で1,500万円達成
基本方針SNSとメールマーケティングを活用したプロモーション強化
KPISNSのフォロワー数を20%増
メール開封率を30%向上
ルーティン行動週2回のSNS投稿
月1回のメールニュースレター発行
評価達成率120%以上でS、100~119%でA、85~100%でB、75~85%でC、75%未満でD

販売

販売部門の場合、以下のような目標設定の例があげられます。

目標新店舗Cの初月売上を500万円達成
基本方針店舗開設前の広報活動とオープニングセールの実施
KPIオープニングセールの来店客数を1,000人
初月のリピート客数を200人
ルーティン行動店舗開設前のフライヤー配布
SNSでの情報発信
評価達成率120%以上でS、100~119%でA、85~100%でB、75~85%でC、75%未満でD

事務

事務部門の場合、以下のような目標設定の例があげられます。

目標2023年度末までに残業時間を前年度比で20%削減
基本方針ITツールの導入と業務プロセスの見直し
KPI〇月ITツールの導入
△月ITツールの運用開始
ITツールの導入による業務時間の15%短縮
業務プロセスの見直しによる業務時間の5%短縮
ルーティン行動ITツール導入に向けて研修に参加
ITツール導入のための見積取得
ITツールの利用方法の研修会を開く
業務プロセスの定期的な見直し案を月1回、課の職員全員が提出
評価達成率120%以上でS、100~119%でA、85~100%でB、75~85%でC、75%未満でD

営業

営業部門の場合、以下のような目標設定の例があげられます。

目標2023年度末までに売上を前年度比で1,000万円増加
基本方針新規市場への進出と既存顧客からの紹介獲得
KPI新規市場からの売上を600万円
既存顧客からの紹介獲得による売上を400万円
ルーティン行動新規顧客へのアポイントを週に25件とる
既存顧客への月1回のフォローアップ
評価達成率120%以上でS、100~119%でA、85~100%でB、75~85%でC、75%未満でD

目標の重要性を理解し組織の発展のために適切に設定しよう

本記事ではマネジメントにおける目標の対象と重要性、目標設定の方法・フレームワークを解説し、具体例を紹介しました。

組織が発展していくためには、具体的で実現可能な目標設定が重要です。適切な目標は組織や部下を最短距離で効率的に目的達成へと導き、モチベーションを高め、成長を促します。

フレームワークを活用し、組織や部下とすり合わせながら、内容の難易度や期間など、バランスの取れた目標設定をしましょう。

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