PDCAの問題点とは?注意すべきデメリットや致命的欠陥について

最終更新日時:2022/08/21

業務効率化・業務改善

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日本の多くの企業で採用されているPDCA。しかし、問題点も数多く指摘されていることをみなさんはご存知でしょうか。本記事では、そんなPDCAの問題点について、致命的欠陥や問題点の解消方法など詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

PDCAとは?

PDCAとは、もともと製造業の品質管理のために提唱された概念です。製造業の品質を高め、業務効率アップを目的としています。

Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)の頭文字を並べたもので、目標達成や問題解決のために有効な考え方です。これら4つの要素を何度も繰り返すことから、PDCAサイクルと言われることもあります。

PDCAサイクルを回していくことで、業務や管理のプロセスを見直し、精度を高めていくことが可能とされているのです。日本では製造業だけでなく、幅広い業界でPDCAが活用されています。

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PDCAの問題点|注意すべき6つのデメリット

日本では業務効率化や品質向上のための方法として定着しているPDCAですが、いくつか気になる問題点が存在します。PDCAのデメリットは、次の6点です。

  1. 圧倒的にスピードが遅い
  2. イノベーションが起こせない
  3. 想定外の事態に対処できない
  4. 手順が形骸化されやすい
  5. 前例主義になってしまう
  6. 過剰品質になりやすい

それぞれ詳しく確認していきましょう。

1.圧倒的にスピードが遅い

PDCAには、一連の流れが完結するまでに時間がかかる側面があります。目標を立てて実行に移し、結果を検証したうえで次のアクションを起こしていく、というのがPDCAです。

それぞれのステップに時間がかかるため、一度のPDCAを完了させるだけでも手間が生じます。特に検証と改善のステップでは、問題点の把握や改善策の検討に時間を必要とする場合も多いでしょう。

企業活動は、競合や市場の動き、トレンド、技術革新といったように、環境の変化との勝負です。スピードの遅いPDCAサイクルでは、激しい環境の変化へ対応するのは困難といえます。

2.イノベーションが起こせない

イノベーションとは、今まで市場になかった新しい商品やサービスを創造することです。技術革新が日ごとに進む現代において、競争優位を保つためのイノベーションは欠かせないものとなっています。

ところが、PDCAは既存の施策や行動を評価し、改善する手法です。前例主義ともいえるPDCAの手法では、新たなアイデアや事業プランを考えることが難しいため、イノベーションの創出は難しいでしょう。

3.想定外の事態に対処できない

現在の世の中は、想定外の出来事によって大きく揺れ動いています。感染症の拡大や戦争、異常気象による自然災害など、経済活動の根本を揺るがす事態が多発し、複合的に影響し合っているのです。

こうした環境下において、企業に求められているのは想定外の事態への対応力です。しかし、計画(Plan)を前提にして行動を起こしていくPDCAは、いわゆる想定内の物事へ対するアプローチ方法といえます。そのため、臨機応変な対応力を身につけるうえでは、PDCA以外のフレームワークで物事を考えていく必要があるのです。

4.手順が形骸化されやすい

PDCAを重視しすぎると、PDCAの実施自体が目的になってしまうことがあります。計画→実行→評価→改善の流れに従って進めさえすれば問題ない、と考えてしまうと「何のためのPDCAか?」という視点が欠けてしまうのです。

また、それぞれのステップが形式化されがちな点にも注意が必要です。たとえば評価がワンパターン化し、深い考察のないまま評価が完了している場合、効果的な改善策を立てることは難しいでしょう。

このように、手順の遵守を第一に進めた結果、PDCAによる効果が薄れていくケースが見受けられます。

5.前例主義になってしまう

PDCAは、過去の実施策や実施結果を分析し、改善案を立てていくアプローチ法です。過去の活動への改善を図る点では、効果の高い手法といえます。ただし、一定の成果を出した方法や施策がある場合、「前例に習おう」という意識が芽生え、前例主義に陥る可能性があるのです。

前例主義は、状況変化の少ない物事に対してであれば、支障なく機能することもあります。しかし、予測不可能な時代(=VUCA時代)とも呼ばれる現代において、前例が通用しなくなるケースは珍しくありません。

PDCAによって前例を意識した考え方が社内に根付くと、市場の動きに対応できない前例主義に陥るリスクがあることを覚えておきましょう。

6.過剰品質になりやすい

PDCAは、サイクルを回すことで継続的な改善を図る方法です。業務品質の向上を追求するのは、間違いではありません。しかし、改善活動には人的リソースや時間が発生します。

改善を意識するあまり、必要以上に人手や時間を費やしてしまうと、過剰品質を招きます。顧客の求める以上の品質を追求する行為は、費用対効果が低く、企業の収益性に影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。

業務効率化や品質改善が目的であるPDCAでは、ときに過剰品質をもたらすケースがあることを念頭に置きましょう。

PDCAの致命的欠陥とは?

ここまで紹介してきたPDCAのデメリットは、対策次第で解決することも不可能ではありません。ただし、PDCAにはその性質上、カバーの難しい致命的欠陥が以下のように存在します。

  • 見直しに限界がある
  • 変化に適応しにくい
  • 柔軟性に欠ける
  • 俊敏性がない

それぞれ詳しく見ていきましょう。

見直しに限界がある

日本で昔から使われてきたPDCAですが、変化の激しい時代にマッチしないという理由から、PDCAの一部を見直して強化しようという試みがあります。具体的には次の3点です。

  • SDCA:作業定着を図る目的で、計画の代わりにStandardization(標準化)を入れたもの
  • PDCA+F:トヨタが実践している、PDCAにF(フォロー)を付け足したもの
  • 高速PDCA:ソフトバンクで活用されている、実行しながら考えていくタイプのPDCA

上記のような改良版PDCAともいえるフレームワークが、なかには企業にマッチし、浸透するケースもあります。しかし、もともとのPDCAがいくつものデメリットを抱えているため、見直し可能な範囲にも限界があり、PDCAとはまったく異なるフレームワークの必要性が高まっているのです。

変化に適応しにくい

現代は、先行きの見通しがつかず未来予測の困難な「VUCA」の時代と言われています。VUCAとは「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:曖昧性」の頭文字をとった言葉です。

この不確実性の高いVUCAの時代において、PDCAはうまく機能しないと言われています。なぜかというと、PDCAは過去の成果や経験に基づいて、次のアクションを考える性質があるためです。物事の変化が激しく、近い将来に何が起こるか予測がつきにくいVUCAの時代において、PDCAの機能するシーンは少なくなっています。

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柔軟性に欠ける

企業活動は、状況によって柔軟な対応を求められることがあります。入念に検討して決定したことが市場の急激な変化により、次の日には誤った判断となりうるのです。

PDCAサイクルを回すことに慣れている組織の中には、計画変更への対応に時間がかかり、外部環境に対して柔軟な対応を取れないケースも多く見受けられます。そうした企業体質が、ときに大きな損失につながる可能性もあるのです。

俊敏性がない

PDCAは、目標や課題に対するアプローチを少しずつ変えていくことで、結果を蓄積しゴールを目指す手法です。市場の動きや技術革新など外部環境の変化が激しい現代において、過去の結果や前提条件を重視するPDCAでは成果を出せない可能性があります。

これからの時代に求められるのは、目の前の課題を素早く把握し、即時対応する力です。コツコツと継続的な改善を目指すPDCAのアプローチでは、どうしても俊敏性に欠けてしまいます。

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PDCAはもう古い?PDCAに代わるOODAとは?

PDCAは、緩やかに変化する環境のなかで、結果を積み重ねながら改善を探るシステムです。そのため、不確実で複雑な変化には対応できません。

対して最近注目されているのが、意思決定とアクションを同時に取れるメソッドであるOODAループです。ここからは、OODAループの概要やPDCAとの違いを確認していきましょう。

OODAループとは?

OODAループは、ウーダループと読み、「Observe(観察)」「Orient(状況把握)」「Decide(意思決定)」「Act (行動)」の4つの英単語の頭文字を並べたものです。アメリカの米国空軍パイロットであった、ジョン・ボイドが提唱した方法です。

刻々と状況が変化する戦闘時の体験をもとに作られたメソッドであるため、状況の即時把握・判断・行動を得意とするアプローチ方法と言われています。

PDCAサイクルとOODAループの大きな違い

PDCAサイクルとOODAループとは、意思決定や行動においてまったく異なるプロセスが生じます。メソッドの目的自体が異なるともいえるでしょう。

PDCAサイクルは、中長期的視点に立って企業の成長や生産性向上を目指し、コツコツと毎日の業務を改善していくのに適したフレームワークです。計画を立ててから行動に移していくやり方であるため、自分たちがコントロールできる物事に対して有効に機能します。

一方OODAループは、周囲の状況を理解するところから始める考え方です。自分が置かれている状況を素早く理解し、方向性を定めたあとは、すぐに意思決定とアクションを取ります。

要するに、「計画と改善」を基本とするPDCAサイクルに対して、OODAは「直面した状況にその都度対応すること」を重視した考え方ということです。

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PDCAを使う場合のポイント|問題点の解消方法

ここまでは、PDCAのデメリットやOODAループについて紹介してきました。新しいメソッドを採用してみようと考えた方もいれば、PDCAを使い続けたいと思った方もいるでしょう。

そこでここからは、PDCAを上手に活用するポイントを3点紹介します。ポイントを押さえて、PDCAの問題点を解消していきましょう。

具体的な数値目標を設定する

PDCAでは、最初のPlan(計画)が成功のカギを握ります。具体的なプランでなければ効果的な行動を起こせず、数値化可能なプランでなければ成果が可視化できないためです。

たとえば、「1日の生産力を可能なかぎり高める」といった漠然としたプランではなく、「1日の生産力を10%アップする」といった具合に、目標には数値を設定します。

具体的な数値目標を定めれば、目標達成に向けたアクションや人員配置も具体的に固めていけます。また、数値であれば効果検証がしやすいため、Check(検証)のプロセスもスムーズに進められるでしょう。

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PDCAを細かいスパンで回す

PDCAサイクルの遅い理由のひとつが、実行段階が長いことです。企業全体でのPDCAでは、1年、半期、四半期というスパンになることが多々あります。上から下までその期間を基準にしてしまうと、改善のスピードが遅くなり、PDCAの効果が十分に発揮できません。

PDCAの効果を最大化するためには、各PDCAの細分化が有効です。大きな目標に対しては小目標・中目標を設定し、短期でひとつのPDCAが回せるよう工夫します。

結果の積み重ねで改善レベルを高めていけるのが、PDCAの強みです。活動や業務をできるだけ分解して細分化し、PDCAサイクルのスピードを高めていきましょう。

評価を体系的に行う

打ち立てたプランに対する結果を測定するのが、Check(検証)の段階です。活動を適切に振り返ることが次の改善へとつながるため、検証フェーズに時間をかける企業も少なくありません。

ただし、検証に時間をかけすぎてしまうと、PDCAサイクルのスピードが鈍化します。そのため、数値で確認できる目標部分は機械的に評価し、できるだけ個人の主観や評価の入る余地を無くしてみるとよいでしょう。

PDCAの問題点を把握してOODAと適切に使い分けていこう

改善アプローチ方法として古くから親しまれてきたPDCAですが、先行きの見えにくいVUCAの時代においては、有効に機能しないシーンも増えています。

PDCAが計画と改善を繰り返すアプローチであるのに対し、OODAは目の前の状況に対して素早い意思決定とアクションを起こすアプローチ方法です。技術革新や市場の変化といった外部環境の動きが激しい現代において、ときにOODAを用いた問題解決が企業には求められています。

PDCAとOODAをシーンごとに使い分けることで、自社の業務体制・管理体制の改善を推し進めていきましょう。

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