人材育成に成功した企業の事例10選!共通点や成功例からわかるポイント
人材育成の重要性を把握していても、育成の計画を立てられないケースは少なくありません。そこで今回は、人材育成の成功事例を紹介していきます。あわせて、共通点や成功例からわかるポイントについても解説していきますので、今後の人材育成に役立ててみてください。
目次
人材育成に成功した企業の事例10選
人材育成とは、経営戦略を実現するために必要な人材を育成することです。ここでは、人材育成に成功した10社の事例を紹介します。
株式会社ニトリホールディングス
株式会社ニトリホールディングスは、主にインテリアの卸売業・小売業を中心に展開する企業です。
同社では、「教育こそ最大の福利厚生」と考え、キャリア支援に力を入れています。さまざまな業種や職種を経験した人を、多面的に考えて実行に移せる「スペシャリスト」と定義し、2〜3年で配置転換を行っています。
同社では、配置転換で得られた経験を技術に替えていく教育体系をとり、年間の教育投資金額として社員1人あたり平均26万円をかけている点が特徴です。
また、近年ではニトリ大学を設置し、グローバルな世界でも活躍できる人材の育成に力を入れています。
[出典:厚生労働省「人材育成事例054 株式会社ニトリホールディングス」]
株式会社天野製作所
株式会社天野製作所は、製造業を中心に展開する企業です。
同社では、従業員一人ひとりが素晴らしいモノづくりを成し遂げ、お客様に継続的に支持される対価として夢を実現し、社会に良い影響を与えながら共生していくことを目指しています。
具体的には、新人社員教育では入社後1ヶ月間は各部署を異動させてさまざまな経験を積み、最適な配属先を決定します。ほかにも、新製品開発チーム教育や技能継承教育を実施し、確かな技術を習得できるようさまざまな取り組みが行われている点が特徴です。
また、セル生産の導入も検討しており、従業員の責任感やモチベーションを高め、生産性や品質の向上を図っています。
[出典:厚生労働省「人材育成事例208 株式会社天野製作所」]
熊本製粉株式会社
熊本製粉株式会社は、製粉事業や営業倉庫事業などを展開する企業です。同社では、「人こそが最大の資産であり、最大の経営資源」と位置付け、「自発的人財の育成」に力を入れています。
2014年1月に人材開発部を新設し、「三層(経営層・マネジメント層・社員)+α(人材開発部)育成」を標榜として、若手社員の育成強化やキャリア開発の支援を強化しています。
また、日常の気づきを気軽に提案できる「気づきメモ活動」や、通信教育による自己啓発の支援なども導入して、従業員が能力を十分に発揮しながら輝き続けられる環境づくりを行っている点が特徴です。
[出典:厚生労働省「人材育成事例230 熊本製粉株式会社」]
株式会社朝日相扶製作所
株式会社朝日相扶製作所は、木製高級家具の製造を中心に展開する企業です。
全従業員が「朝日相扶マン」として価値ある思考と行動ができるように、「SOFUMANISM 思考と行動の指針」を発行して、全従業員に配布しています。この指針では経営や管理、製造など幅広い項目を掲載し、全従業員が共通理解を得られるように網羅されている点が特徴です。
ほかにも、職業能力評価基準を策定して全社に共有することで、共通の評価基準に対する理解を深めて、評価基準に対する意識の高さを醸成しています。
[出典:厚生労働省「人材育成事例287 株式会社朝日相扶製作所」]
東北エプソン株式会社
東北エプソン株式会社は、カラーインクジェットプリンタ用ヘッドや半導体の製造・技術開発事業を展開する企業です。同社では多様な人材育成施策を展開し、お客様の価値創造に向けてさまざまな取り組みを行っています。
例えば、新入社員研修では座学だけではなくモノづくり体験も実施し、配属される職種を問わず自社の事業への理解を深めています。また、配属の1年後にはフォローアップ研修で再度招集し、1年間の振り返りや行動宣言の確認、目標管理に対する半年ごとのレビューなどを行い、新入社員の意識を高めている点が特徴です。
新入社員だけではなく、中堅社員や管理職などに対しても研修を実施しているほか、スキル別研修や技能教育など個人の能力を高めるための教育体制も整えています。
[出典:厚生労働省「人材育成事例265 東北エプソン株式会社」]
コニカミノルタ株式会社
コニカミノルタ株式会社は、複合機や電子材料などの開発・製造・販売を行っている企業です。同社では、キャリア開発や能力開発の支援に力を入れています。
具体的には、キャリア開発支援ではCDSシステムやキャリアデザイン研修などを実施し、キャリア開発目標の実現をサポートしている点が特徴です。
能力開発支援では、新入社員育成や技術者育成、技能伝承などを行い、役割・立場の変化に合わせて教育プログラムを実施しています。
また、女性活躍推進や中・高校生への教育支援も実施して、全社的に社会的課題への取り組みも行っています。
[出典:厚生労働省「人材育成事例226 コニカミノルタ株式会社」]
学校法人YIC学院
学校法人YIC学院は、教育・学習支援業を展開しています。教職員の技術・能力の発展が地域貢献につながることをポイントとしている点が特徴です。
全教職員に対し、研修・自己啓発に参加できるよう公平に評価し、能力開発を支援する体制を取り、研修などに参加する際はできる限り勤務体制に配慮するよう心がけています。
また、「コンピテンシーレベルチェックシート(自己評価シート)」「職務能力目標自己申告」「免許・資格・研修届出書」を導入し、自発的な職務能力開発を促しています。
これらをもとに管理者と年4回の定期的な面談を実施して、職務遂行や能力開発などの目標を設定し、目標管理や振り返りなども行っています。
キャリア形成の必要性の啓蒙ができるようキャリア・サポーター養成講座も導入しており、教職員は受講料の自己負担なしで受講が可能です。
[出典:厚生労働省「人材育成事例231 学校法人YIC学院」]
川崎重工業株式会社
川崎重工業株式会社は、航空宇宙事業や造船事業、鉄道車両事業などを展開している企業です。同社では、従業員が安心・安全に自己能力を最大限発揮できるように「多様な働き方への対応」や「女性活躍推進」などを軸にさまざまな施策を行っています。
例えば、社内で広く募集を行い人材の配置・投入を図る「ジョブ・チャレンジ制度」や、従業員自らが他カンパニーへの異動を宣言する「FA制度」などを活用し、従業員は多様な働き方にチャレンジ可能です。
ほかにも、女性の積極採用や女性社員ネットワークを組織して女性活躍を推進し、託児所設置やシッター費用の補助などを通して仕事と家庭の両立もサポートしています。
[出典:厚生労働省「人材育成事例238 川崎重工業株式会社」]
株式会社カズマ
株式会社カズマは、ファッション商品の企画・製造・販売事業を展開する企業です。
同社では、社外研修や資格取得支援制度などを充実させ、キャリア形成支援を行っています。例えば、通信教育の指定講座は受講料を全額補助し、受講者は自己負担なく教育を受けることが可能です。
また、主任や係長、課長などに対して中間管理者教育も実施しています。全社的に継続して支援を行い、リーダーや役職に就く若手社員が育ちました。
[出典:厚生労働省「人材育成事例209 株式会社カズマ」]
株式会社ムジコ・クリエイト
株式会社ムジコ・クリエイトは、教育・学習支援業を展開する企業です。「人の成長こそ、わが社の成長」を人事理念に掲げ、さまざまな支援制度を用意しています。
例えば、成長支援プログラムではキャリアプランシートを記入してもらい、将来の方向性と必要な研修を自ら考えて申請します。その後、シートをもとに上司と個人面談を行い、会社のビジョンと個人のビジョンの一致を図ったのちに、上司が作成する人財育成計画による支援を受けることが可能です。
また、自己啓発支援制度としてセミナー参加費補助や、自主的調査研究や自主的勉強会などに参加する際の費用・時間的な支援も行っています。
人事評価制度についても具体的な基準を設けて、公平な観点で評価している点が特徴です。
[出典:厚生労働省「人材育成事例088 株式会社ムジコ・クリエイト」]
成功事例の共通点からわかる人材育成のポイント
人材育成の成功事例からは、いくつかの共有点があることがわかります。ここからは、成功事例の共通点からわかる人材育成のポイントを3つ紹介します。
目的や目標を明確に設定する
人材育成の成功事例では、明確な目的と目標設定が行われていることが共通点としてあげられます。これにより企業は、自社の将来や求める人材像を把握し、具体的な育成方針を策定できます。
経営陣のビジョンが明確であれば、一貫性のある計画を立てて実行することが可能です。また、明確な目的と目標を立てることは、効果測定や成果の可視化にも役立ちます。
なお、目標は個人の能力に合わせて設定を行いましょう。自分の能力で乗り越えられる目標を設定することで、より自主的に行動に移しやすくなります。
▷人材育成のロードマップとは?作成する目的や運用方法・作り方を解説
自社の制度や仕組みを整える
人材育成における成功事例の共通点は、自社の制度や仕組みの整備です。自社の制度や仕組みが整っていなければ、人材育成の効果は期待できません。
例えば、年功序列などの成果を無視した制度では、若手社員は正当な評価がされていないと感じることもあるでしょう。このような状況では、成長につながる風土が作れず、モチベーションの維持が難しくなります。
そのため、人材育成を成功させるには、自社の理念や環境に合わせた育成ノウハウを確立し、制度や仕組みを整備していくことが重要です。
自発性が高まる取り組みを実施する
人材育成における成功事例の共通点として、自発性を引き出す取り組みを行っていることもあげられます。
成長意欲のある社員に対しては、主体性を促す環境づくりが重要です。そのため、評価制度の見直しや資格取得支援制度の導入など、自発的な学びや成長に応える仕組みを整えることが求められます。
また、書籍購入制度やeラーニングの活用など、学びの機会も提供しましょう。これらの取り組みを社内に周知し、利用されるよう努めることで、社員の自発性が高まり、成長意欲が引き出されるようになります。
▷人材育成に必要なスキル7つのスキル|重要なポイントと課題を解説
効果的に人材育成をする方法
人材育成を効果的に実践するには、どのような方法があるのでしょうか。ここからは、効果的に人材育成をする方法を3つ紹介します。
OJTやOff-JTを活用する
人材育成には、現場における教育指導や社内外の研修が重要です。
OJTは、実務を通じて必要な知識やスキルを習得させるため、上司や先輩の指導が不可欠になります。一方、Off-JTでは社内の集合研修や、外部講師を招いたセミナーなどを活用します。これらを上手く組み合わせることで、より効果的な人材育成を行うことが可能です。
現場での実践を通じて能力を補完し、社内外の研修で幅広い知識や視野を得ることで、社員の成長を促進します。OJTやOff-JTは、短期的な目標を実現したい時に効果的な手法といえるでしょう。
▷OJTとはどういう意味?目的やメリット・研修の効果を高める秘訣をわかりやすく解説
成長につながる制度を導入する
人材育成を成功させるためには、人事評価や目標管理などの成長につながる制度を有効活用しましょう。
人事評価制度は、従業員の能力や業績に基づいて昇進や昇級を行うため、モチベーションの向上に貢献します。評価を振り返ることで自己改善の機会を得て、成長につなげることが可能です。
目標管理制度は個々の目標を設定し、進捗や実行を自己管理する手法です。これは経済学者P・ドラッカーが提唱したマネジメント手法で、MBOと呼ばれることもあります。
この制度のメリットは、社員の自己管理能力や業務遂行力を向上させられる点です。これらの制度を導入することで、明確な目標設定と成果の可視化が可能となり、社員の意欲や能力向上を促進することにつながるでしょう。
▷【図解あり】ドラッカーのマネジメントとは?5つの要素や要約・名言をわかりやすく解説
キャリアデザインを明確にする
キャリアデザインを明確にすることも効果的です。
キャリアパスや給与テーブルの公開により、社員は自身の現状や目指すべき方向を明確に把握できます。明確な目標と報酬のイメージを持つことで、モチベーションが高まるでしょう。
例えば、大同生命保険株式会社では、人材育成用の社内ポータルサイトを開設し、社員のプロフィールをいつでも閲覧できるようにしています。これを通じてほかの社員のキャリアや取り組みを知ることができ、自身のキャリアアップの参考にすることが可能です。
その結果、社員は自己啓発やスキルの向上に積極的に取り組むことができ、キャリアの明確性と成長への意欲が高まります。キャリアデザインの明確化は、社員のモチベーションを向上させ、組織全体の成果につながる重要な要素となるでしょう。
[出典:厚生労働省「グッドキャリア企業アワード2017 大賞受賞 大同生命保険株式会社」]
▷組織マネジメントとは?事例や必要な能力・参考にすべきフレームワークを紹介
人材育成で活用できるフレームワーク
効果的に人材育成を行うには、フレームワークを活用するのがおすすめです。ここからは、人材育成で活用できるフレームワークを5つ紹介します。
SMARTの法則
SMARTの法則は、目標の設定において「具体性」「計量性」「達成可能性」「関連性」「期限」という5つの要素を考慮するフレームワークです。
具体的で明確な目標を設定し、数値や指標で進捗を測定できるようにします。
同時に、目標が現実的かつ達成可能であることを確認し、組織や個人の目的と関連性があることを重視するのが特徴です。さらに、目標には期限を設けてタイムバウンド性を持たせます。
これにより、明確な目標設定と達成可能性の高い目標が実現され、パフォーマンスの向上やエンゲージメントの促進につながるでしょう。
ベーシック法
ベーシック法は、最も基礎的な目標設定のフレームワークです。目標を具体的に設定するために、「目標項目」「達成基準」「期限設定」「達成計画」を作成します。
一つひとつの項目について熟考することによって目標が明確になり、達成可能性を高めることが可能です。
ベーシック法は目標設定の基本となるフレームワークであるため、これまでに目標設定を行ったことがないという人も取り組みやすい方法といえます。
カッツモデル
カッツモデルは、マネジメント層の能力を階層別・スキル別に分類し明示したフレームワークです。
このフレームワークは、「ロワーマネジメント」「ミドルマネジメント」「トップマネジメント」の3つの階層と、「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」の3つのビジネススキルで構成されます。
カッツモデルは、1950年代にロバート・L・カッツ氏によって提唱されたフレームワークで、人材育成や組織開発の指針として広く活用されています。役職ごとに求められるスキルの割合を示すことで、マネジメント層の育成やスキル開発に役立つでしょう。
カークパトリックモデル
カークパトリックモデルは、ドナルド・カークパトリックによって提唱された教育の評価法のフレームワークです。教育や研修の効果を4つの段階で評価し、研修前後の変化を投資効果として測定することを重視しています。
「反応」「学習」「行動」「結果」の4つの段階により、研修の効果を総合的に評価することが可能です。カークパトリックモデルは幅広い分野で活用されますが、特に新入社員研修やリーダーシップ研修などの領域で広く使われています。
カークパトリックモデルは、教育の効果を明確に把握し、研修プログラムの品質向上と効果的な学習を促進するのに役立ちます。
70:20:10フレームワーク
70:20:10フレームワークとは、人が成長するためには「経験が7割」「他者からの薫陶が2割」「研修が1割」という3つの要素が必要であることを表したフレームワークです。「ロミンガーの法則」と呼ばれることもあります。
具体的に、経験とは仕事やプライベートなど、あらゆる場面で得られる経験や課題解決を指し、他者からの薫陶は上司や同僚などからのアドバイスやフォローなどが当てはまります。
研修は、その名の通り社内の研修や外部研修などを指す項目です。
それぞれの数字の割合は異なりますが、成長するためには3つをバランスよく経験することが大切です。例えば、経験が7割必要だからといって経験だけを積ませても、必ず成長できるわけでありません。
そのため、経験・薫陶・研修のバランスをとれるよう施策を打つようにしましょう。
▷マネージャーが参考にすべき目標設定のポイント|具体例やフレームワーク
成功事例を自社の人材育成にも取り入れよう
自社の理念や経営目標を実現できる人材を育成するには、まずはじめに必要な人材像を明確にする必要があります。そして、目的や目標を明確に設定して自社の制度や仕組みも整えましょう。
また、社員の自発性を高めて成長を促すような環境を整備することも重要です。
本記事では、さまざまな企業での人材育成の成功事例を紹介しました。今回紹介したポイントなども参考にして、自社の経営方針に適した人材育成を行いましょう。
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