OJTに向いていない人の特徴|失敗例や向いている人の特徴を解説

2023/07/21 2023/07/21

組織・マネジメント

OJTに向いていない人

多くの企業で取り入れられている「OJT」。OJTとは、上司や先輩が新人社員に業務を介して実践的な指導を行う教育方法ですが、指導者のスキルによっては成果にバラつきが出てしまうこともあります。本記事では、OJTに向いてない人・向いている人の特徴を、失敗例等とあわせて解説します。

OJTとは?

OJT(On the Job Training)とは、職場で実務を通して行う人材教育の手法の1つです。

具体的には、主に直属の上司や先輩社員がトレーナーとなり、新入社員や新しく配属されたメンバーに対して、実際の業務を通じてスキルやノウハウを共有し、必要な業務知識を身につけてもらいます。また、OJTは大人数で行なう座学研修ではなく、現場に即してマンツーマンでフィードバックを繰り返しながら実施するのが一般的です。

基本的には、次のステップで実施されることが多いでしょう。

step1:『Show/やってみせる』
step2:『Tell/説明・解説』
step3:『Do/やらせてみる』
step4:『Check/評価・追加指導』

OJTがうまく機能すると従業員のパフォーマンスが高まり、生産性の向上や企業利益にもつながるため多くの組織で採用されています。

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OJTに向いてない人(指導者)の5つの特徴

トレーナー(指導者)は自分の実務と並行して、トレーニー(訓練を受ける人)の育成にあたらなければなりません。

また、業務に必要な知識やスキルだけでなく、コミュニケーション能力や傾聴力、根気よく見守る忍耐力などが求められる場面も多いことから、OJTの指導者には向いていない資質もあります。

OJTを失敗に終わらせないためにも、「向いていない人」の5つの特徴を詳しくみていきましょう。

否定的な言動が多い人

OJTの場面での否定的な言動とは、トレーニーの課題点、問題点、悪いところを頭ごなしに指摘し発言をすることです。ネガティブな言動が多い人は、トレーニーの人格まで否定してしまうケースも少なくありません。

たとえば、以下のような発言は、業務とは関係なくミスと人格を関連付けた、人間性や性格を否定する発言といえます。

  • 「ケアレスミスが多いのは、あなたの大ざっぱな性格も要因にあるから気をつけて」
  • 「お客様とコミュニケーションを取る際は、根暗な印象を与えないように」

このような言動は、信頼関係を喪失させ、OJTの本来の目的である「即戦力となる人材の育成」が達成できなくなる大きな要因となります。さらには、トレーニーのモチベーションを下げるだけでなく、会社全体への不信感を抱かせてしまう事態にもなりかねません。

トレーナーは業務の改善を目的に、客観性と具体性を持ってトレーニーの成長を促していくことが大切です。

自分自身のやり方を押し付ける人

トレーナーに選出された人は、トレーニーにも、自分のやり方やスタイルを押しつけてしまいがちです。

しかし、トレーナーは仕事のやり方を教えるだけではなく、トレーニーが組織で独り立ちし活躍できる人材となるよう育成していかなければなりません。自分のやり方や自分の基準を優先し、トレーニーから自発的に考える機会を奪ってしまうようでは、トレーナーには向かないと言えるでしょう。

時代にそぐわない育成方法をする人

時代にそぐわないOJTのやり方をする人には、次のような傾向がみられます。

  • 自分と異なる価値観を理解できない
  • 仕事は見て盗め的なマインドが顕在している
  • 自分のやり方がベストだと絶対視している

特に、世代間ギャップや仕事観における価値観の違いを受け入れ難い人は、トレーナーとトレーニー間の信頼関係を築きにくい傾向にあります。また、OJTでは、業務上の細かい注意事項なども伝えながら進めなければなりません。仕事は見て盗めというマインドは、そのような丁寧な情報共有が求められる場面での障壁となってしまいます。

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4.OJT対象者に対する愛情がない人

トレーニーに対して愛情が持てない人には、次のような傾向がみられます。

  • 常にOJTよりも、自分の業務を優先している
  • トレーニーと向き合う姿勢がなく、感情的な発言が多い
  • コミュニケーションが少なく、円滑な人間関係が保てない

トレーナーが自分の業務で手いっぱいで苛立った発言が多ければ、トレーニーは萎縮して業務の確認や質問ができません。業務伝達だけの一方的なコミュニケーションでは、相手を理解するのは難しく、ましてや円滑な人間関係や信頼関係は築けないでしょう。

5.OJT実施の目的を理解できていない人

OJTの目的が理解できていないと上辺だけの手順の伝達となり、着地点が曖昧で有効的な結果はだせません。

OJT実施の目的には、次のようなことが挙げられます。

  • トレーニーのスキルアップや即戦力化
  • トレーナー自身の能力やタレントマネジメント力の向上
  • 人材育成文化の醸成や組織パフォーマンスの向上 

たとえば、目的を『人財育成文化の醸成や組織パフォーマンスの向上』とするOJTがあったとします。もし、トレーナーがこの目的を理解せず、業務知識やスキルの伝達のみに終始してOJTを終えてしまった場合、トレーニーは業務は習得できても、企業理念の理解を深めることはできません。

このように、目的に合わせた柔軟な指導ができない人は、トレーナーには向いていないでしょう。

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OJTに向いている人(指導者)の4つの特徴

トレーナーに向いている人には、共通するモチベーションやマインド、能力や行動パターンなどがあるようです。ここでは、その4つの特徴を紹介します。

ミッション・ビジョンへの理解度が高い人

会社のビジョンや方針を明確に理解しているトレーナーは、OJTの指導者としてやるべきことを単なる「個人のタスク」ではなく、「組織にとって必要なタスク」として捉えられる傾向にあります。

そのため、目の前の業務を覚えてもらうという短期的な目的だけでなく、事業を成長させるための人材育成という中長期的な視点を持って、積極的にOJTに取り組める傾向にあります。その結果、トレーナーとしての本来の役割を全うすることができるのです。

自分自身の振り返りができる人

自分自身の振り返りを定期的に行うことができる人は、トレーナーに向いています。OJTを実施している過程では計画通りにいかないこともでてくるでしょう。その都度トレーニーからフィードバックをもらうなどして、軌道修正をすることが大切です。

そのための手法の一つとして、リフレクションスキルは効果的です。リフレクション(reflection)とは、日本語で内省、反映、熟考といった意味を持つ言葉であり、ビジネスシーンでは業務を一旦離れて、仕事の考え方、進め方などを振り返り内省することを指します。

リフレクションは、早期の改善策の立案に役立つだけでなく、改善点をトレーニーに考えてもらうコミュニケーションを促すうえでも有効となります。

業務遂行力がある人

OJT期間中は、通常業務と育成に関連した業務を並行して遂行しなければなりません。

OJTには、業務教育だけでなく、定期的な面談、進捗確認、困りごとや不安などのヒアリング、人事や上司への報告などのタスクも含まれます。これらを通常の業務を滞らせることなく、責任感を持ってやり遂げる必要があるため、日々、マルチタスクで業務を進められる遂行力が求められるのです。

的確に教える・褒める・叱ることができる

OJTは、『教える』『褒める』『叱る』といった行動なしに推進していくことはできません。この3つを上手に使いわけて、的確にトレーニーへ想いを伝えることができる人がトレーナーに向いています。

そのため、コミュニケーションスキルのほかに、ティーチングやコーチング手法も身につけておくと、トレーニーの特性をより深く理解できるでしょう。

褒める際は、アウトプットした結果ではなく、プロセスを評価するほうがより成長につながるといわれています。叱る際は、間違った考え方や行動などに対して感情を入れずストレートに伝えることが大切です。そして必ずトレーニーのフィードバックも聞いて、双方向のコミュニケーションで終わるよう心がけましょう。

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OJTの失敗例

従業員と組織の連携が不十分なために、OJTを実施してはいるものの、うまくいっていないといった声も聞きます。ここでは、OJTの典型的な失敗例を紹介します。

OJT指導者と人事部との連携がとれていない

新人教育においてOJTが活用されるケースにおいては、業務スキル向上だけでなく、周囲との人間関係の構築や組織に馴染むための支援といった、両方のサポートが求められます。とりわけ後者に関しては、OJTの指導担当者だけでなく、人事部のサポートも必要になるでしょう。

オンボーディングの一環としてのOJTではなく、単に業務上の即戦力化だけを重視し、働くうえで大切な環境づくりを疎かにしてしまうと、短期離職といったリスクも増大してしまうのです。

指導方法・教育方法が定まっていない

OJTの指導方法や教育方法が定まっていないと、トレーナーが身につけてきたやり方で指導していかなければなりません。そのため、トレーナーが習得している知識や能力によって、トレーニーの成長度にバラつきが出てしまいます。

また、組織全体のミッションとしてOJTに取り組んでいないと、プロジェクト全体の役割、目標達成に向けたモチベーションの持ち方までは教育されません。その場しのぎではなく、総体的な研修を行っていくのが望ましいでしょう。

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OJTを成功させる秘訣

OJTを成功させるには、取り組みに対する企業スタンスが大きく影響します。ここでは、その秘訣を具体的に紹介していきます。

指導者だけではなく全社でOJTに取り組む

OJTを成功させる秘訣の一つは、組織全体で人材育成に取り組んでいる姿勢を現すことです。

たとえば、OJTに向けたスローガンを掲げることも効果的でしょう。指導担当だけでなく経営陣、人事部、現場の上司までが共通の意識を持って、中長期的な視点で取り組むことが重要となります。

全社的に人材育成の重要性を理解し、「育成=指導担当のみの仕事」と考えるのではなく、部署全体、ひいては、全社でフォローできる体制を整えましょう。

OJTの意義や目的を明確に定めておく

OJTの意義や目的を明確にしておくのも成功の秘訣です。

たとえば、OJTの目的の一つは「業務を教えること」ではなく、当該業務をトレーニー自身が、「自分で考え、単独で遂行できるようになること」にあります。単に業務手順を伝えることだけではないゴールを明確にし、双方に共有しておくことで、指導者側はもちろん、トレーニーの意欲や姿勢も変わるはずです。

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OJT指導者を育成する

3つめの秘訣は、会社側がトレーナーを育成する体制を構築し、仕組みとして取り入れておくことです。その際、定期的な1on1ミーティングなどでトレーナーの悩みを解消するフォロー体制も組み込んでおきましょう。

具体的な方法としては、研修を実施して基本的な指導の仕方、目的や実施計画・評価基準の立案力などを身につけてもらいます。加えて、OJTの心構えや役割なども理解してもらい、トレーナーのスキルを均一化しておくのが重要です。

トレーナー向けの研修が終了した後もフォローアップの機会を設け、さらなる成長につなげていきましょう。

OJTに「向いてない人」を見極め、適切な体制を整えよう

OJTに向いてない人や向いている人、成功の秘訣などを紹介しました。

ワークスタイルや仕事観が多様化しているビジネス環境においても、OJTは、必要不可欠かつ効果的な人材育成の手段として、多くの企業が実践しています。

その一方、OJTが成功するか否かは、指導担当者の人選はもちろん、組織としての仕組みづくりと全社的な人材育成の意義や目的に対する意識の統一が重要な鍵となります。

OJTを、単なる業務手順の共有といった位置付けにするのではなく、組織の「人財」としての育成の場として捉え、適切な体制づくりを心がけましょう。

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