組織変革とは?事例や成功させるプロセス・フレームワークを紹介

2023/11/21 2023/11/21

組織・マネジメント

組織改変とは

時代に合わせて企業が成長し続けるためには、必要に応じた企業変革が重要です。本記事では、組織変革の取り組みについて、成功へ導くプロセスや役立つフレームワークなどを解説します。具体的な事例も紹介するので、実施する際にぜひお役立てください。

組織変革の取り組みとは?

組織変革とは、時代の変化や組織課題に対応するために、組織を変革する取り組みです。組織変革の具体的な施策としては、企業理念や行動指針の見直し、社内システムや労働環境の改善、経営戦略や事業戦略の改変などが挙げられます。

組織変革は、企業の発展を目的に行われます。組織変革を行うことで、生産性やエンゲージメントが向上し、組織全体の成長が期待できるでしょう。

しかしながら、組織変革を実行してもすぐに効果が表れるとは限りません。長期的な姿勢で臨む必要があります。

組織変革が重要な理由

近年は変化が激しい時代と言われています。たとえばAIの発展やグローバル化、それにともなう市場や顧客ニーズの複雑化、働き方や労働環境の多様化など、わずか数年の間で社会は大きく変化しました。

企業を取り巻く環境が大きく変化するなか、企業は従来と同じ経営方法のままで存続することが難しくなっています。これからも長く存続し続ける企業になるためには、外部の変化に応じて組織変革を行い、成長し続ける必要があるのです。

組織変革は、上記のように外部の状況が変化したときに行われる場合が多いです。そのほか、企業が新たな目標を設定したときや、会社の統廃合、人員の増減などによって組織構造が変化する際にも、新体制に適応するために組織改革が行われます。

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組織変革を成功へと導くプロセス・フレームワーク

組織変革にはいくつかのフレームワークが存在します。フレームワークに従って施策を進めることで、組織変革を成功へ導くことができるでしょう。

ここでは、3つのフレームワークを紹介します。それぞれ、詳しく見ていきましょう。

クルト・レヴィンの「組織変革3つのプロセス」

クルト・レヴィンはドイツ出身の心理学者で、「社会心理学の父」とも呼ばれている人物です。レヴィンは組織変革に関する研究を行い、組織が変革するためには「解凍」「変革」「再凍結」という3段階のプロセスを踏む必要性があると唱えました。

「解凍」段階では、従来の固定的な価値観を手放し、新しい文化を形成するための準備を行います。具体的には、現行の組織文化や制度について、「今のやり方では組織が成長できない」という危機感を社内で共有し、「組織を変革しなければいけない」という意識を醸成します。

次に「変革」段階では、実際に新たな組織文化を築いていきます。社員が新しい価値観や仕組みを学び、実行するフェーズです。変革を行う際には、目標や方向性を定めたうえで、誰が・何を・どのようにするのかを具体的に明確化する必要があります。また、施策を実行するたびに効果を検証し、有効な施策を探りましょう。

最後に「再凍結」段階では、新たに完成した文化を社内に定着させます。「変革」段階で効果があった施策を引き続き強化・推進し、最終的に社内で習慣化することで、組織全体の変革が完了します。変革以前の行動に戻ることがないよう、適宜、社員へのサポートも必要です。

ジョン・コッターの「組織変革8つのプロセス」

ジョン・コッターは、ハーバード大学ビジネススクールの名誉教授で、リーダーシップ論の権威として知られています。ジョン・コッターは組織変革には以下の8つのプロセスがあると唱えました。

  1. 社内の危機意識を高める
  2. 変革推進を行うチームを作る
  3. ビジョンと戦略を設定する
  4. ビジョンを社員に周知する
  5. 社員の自発的な行動を促す
  6. 短期的な目標を設定して達成する
  7. さらに変革を推進する
  8. 新しい文化を定着させる

以上の8つのステップに沿って施策を進めることで、組織変革が完了します。

ジョン・コッターのプロセスは、クルト・レヴィンの3段階プロセスよりも、さらに詳細な行動が明示されています。社員の自発的な行動を重要視している点が特徴であり、短期目標の達成を繰り返すことでモチベーションを維持し、組織変革の実現を目指しています。

マッキンゼーの「7つのS」

アメリカの大手コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーは、組織変革のフレームワークとして「7つのS」を確立しました。

「7つのS」とは、Sを頭文字とした、組織を構成する7つの要素を指します。

  • Strategy(戦略)
  • Structure(組織)
  • System(システム)
  • Shared Value(価値観)
  • Skill(スキル)
  • Staff(人材)
  • Style(スタイル)

上記の7つの観点で組織を分析し、改善策を考案します。

7つのSはソフト面とハード面に分類できる点が特徴です。各要素は相互関係にあるため、ソフト面とハード面の両方の側面から変革を進める必要があります。

ハードのS

ハードのSは、Strategy(戦略)、Structure(組織)、System(システム)の3つです。事業戦略や組織構造、福利厚生、業務システムなどが該当します。

ハードのSは、組織の外的要素であり、可視化できる要素です。短期間で変革を完了させやすく、

変革による効果も図りやすいという特徴があります。

ソフトのS

ソフトのSは、Shared Value(価値観)、Skill(スキル)、Staff(人材)、Style(スタイル)の4つです。企業理念や社風、人材育成などが該当します。

ソフトのSは、組織の内的要素であり、社員それぞれの能力やエンゲージメントなどが大きく影響しています。効果の可視化が難しく、施策を実行してから効果を感じるまでには時間がかかるという特徴があります。

組織変革を行う際、ハードのSのほうが着手しやすい傾向にあります。しかしソフト面の課題によって、ハード面に支障が出ている場合もあるものです。たとえば、新しい事業戦略を構築したとしても、社員に遂行スキルがなければ、思うような成果は得られません。

組織変革を実施する際には、ソフトのSとハードのSの相互関係を分析し、両方を改善する必要があります。

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組織変革に取り組むメリット・デメリット

企業が成長するために組織変革は必要であると説明してきました。しかし、組織変革にはメリットとデメリットの両方が存在します。事前に注意すべきポイントをおさえたうえで、組織変革に取り組みましょう。

組織変革のメリット

組織変革を行うことで、組織成長につながる多くのメリットが獲得できます。

たとえば、業務システムを見直すと仕事を効率化でき、生産性の向上に結びつきます。また社員の意識改革を徹底することで、仕事への向き合い方が変わり、エンゲージメントの向上やサービス品質の向上などが期待できるでしょう。社員が働きやすい職場環境が整うと、離職率の低下にもつながります。

上記のように、組織改革を行うことで会社側・社員側ともに、さまざまなメリットが得られます。組織変革の効果を最大化するためには、自社の課題に適した施策を実行することが大切です。

組織変革のデメリット

組織変革を行う際、正しいプロセスで進めなければ、課題が深刻化するリスクがあるため注意が必要です。

たとえば、社員の理解を得ないまま施策を強行してしまうと、社員が不信感を抱いてしまいます。その結果、エンゲージメントが低下し、生産性が低下したり離職者が出たりする可能性も否めません。

人は変化を嫌う生き物であり、組織変革に対して抵抗や不安を感じる社員も少なからずいるでしょう。組織変革を成功させるためには、施策実行の前に社員へ十分に説明し、理解を得る必要があります。

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組織変革に取り組む際のポイント

組織変革に取り組む際は、おさえておくべきポイントが4つあります。それぞれ詳しく解説します。

明確なビジョンを共有する

組織変革を行う際は、まず社員に対して明確なビジョンを共有する必要があります。ビジョンが明確に共有されていれば、会社全体が一丸となって変革に取り組めるでしょう。

組織を変えるためには社員の協力が不可欠です。しかし、なかには組織が変わることに対して不安や反発を抱く社員もいます。「なぜ組織変革が必要なのか」「いま変わらなければどのようなリスクがあるのか」「どのような姿を目指しているのか」などを具体的に示し、理解を得られるまで繰り返し説明しましょう。

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コミュニケーションを取りやすくしておく

組織変革を円滑に行うために、普段からコミュニケーションの取りやすい環境作りを意識しましょう。

組織変革によって、経営戦略や業務システム、働き方などが変わると、社員の負担は一時的に大きくなります。また、変革を進めるなかで問題が発生することもあるでしょう。そのようなとき、コミュニケーションが取りやすい環境であれば、上司が部下の不安を聞いてサポートしたり、迅速に課題を解決できたりすることができます。

組織の体制が変わっても社員が安心して働けるよう、心理的安全性を確保することが大切です。

変革に適した人材をリーダーに任命する

組織変革を成功させるためには、誰をリーダーに任命するかも重要なポイントとなります。組織変革に適した人材をリーダーに任命し、リーダーを中心に施策を進めましょう。

組織変革のリーダーは、施策の実行力はもちろん、部署をまたいだ調整や、社員をサポートする力も求められます。したがって、マネジメントスキルがあることに加え、仲間からの人望がある人材をリーダーに選ぶと良いでしょう。

社員にとって親しみやすい人物がリーダーを務めることで、社員の協力も得やすく、円滑に組織変革を進められます。

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社員が協力しやすくなる制度を導入する

組織変革を促進するためには、社員が施策に協力したくなるような制度を導入することも効果的です。

たとえば、新たな行動指針を浸透させるために、指針にふさわしい行動を評価する評価制度を整えることも有効な手段です。取り組みが評価されることで、モチベーションが高まり、組織改革に対して前向きな気持ちで取り組むことができます。

社員が自主的に組織改革に取り組みたくなる仕組みを構築しましょう。

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組織変革を成功させた3つの事例

ここからは、組織改革に成功した企業の事例を3つ紹介します。成功事例のポイントをおさえ、自社で組織変革を行う際に役立ててください。

楽天グループ株式会社

楽天グループ株式会社では、人事課題の解決を目指して組織改革を行いました。

同社では、適切な人材採用や育成ができておらず、人材流出を引き起こしていました。そこで人材マネジメントシステムを導入。人事データを一元化し、人材配置を最適化しました。また、人材ニーズを明確化したことで、適切な人材採用が可能になったそうです。

社員がそれぞれ最適なポジションに配置されることは、エンゲージメントの向上につながります。社員が成長できる環境の構築も、組織変革の一つの手段といえるでしょう。

日本航空株式会社(JAL)

日本航空株式会社では、2008年のリーマンショックをきっかけに経営が悪化し、2010年には会社更生法を適用する事態となっていました。厳しい状況にあった同社を再建するため、京セラ株式会社の創業者でもある稲盛和夫氏が会長に就任。その後約6年でV字回復を果たし、2016年の営業利益は2,091億円となりました。

稲盛氏が組織変革のために注力したことは、経営陣および社員の徹底的な意識改革です。これまでのトップダウン式の経営方法ではなく、モチベーション研修などによって社員の自主性を高め、活き活きと働ける組織づくりを行いました。さらに、従業員の行動指針となる「JALフィロソフィ」を設定・共有し、組織の求心力を高めました。

株式会社村田製作所

株式会社村田製作所では、2000年代初頭のITバブル崩壊を機に業績が低下し、社内の雰囲気も悪化していたといいます。そこで同社では「組織風土改革委員会」を発足させ、組織変革に挑みました。

委員会発足当初は、なかなか組織が変化せずに苦労したようです。しかしながら、経営陣は現場と粘り強く対話を続けました。また、他社の組織風土も徹底的に研究。根気強い取り組みによって徐々に社員からの共感を得られ、約10年ほどかけて、目標としていた自由な社風を実現できたそうです。

特にソフト面の組織変革は、効果が表れるまでに時間を要します。長期的に取り組むことが、組織変革成功のポイントといえるでしょう。

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適切な組織変革で時代や状況の変化に対応しよう

本記事では組織変革のフレームワークや成功のポイントを解説しました。企業を存続させるためには、時代の変化に応じた組織変革が必要です。ポイントをおさえ、組織変革を成功させましょう。

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