SaaSのビジネスモデルの特徴とは?その本質と成長戦略に必要な考え方

最終更新日時:2023/01/11

SaaS

近年世界でも急拡大しているSaaS市場。しかし、どのようなビジネスモデルで展開されているのか、ご存知の方は少ないのではないでしょうか。本記事では、そんなSaaSのビジネスモデルについて、特徴やメリットなど詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

SaaSとは?

SaaS(Software as a Service)とは、ベンダーが提供するクラウドサーバー上のソフトウェアをユーザーがインターネットを通じて利用することです。

SaaSには次のようなメリットがあります。

  • サーバーやアプリケーション、データベースなどのシステムをユーザー側で準備する必要がない
  • 個々の端末にソフトウェアをインストールする必要がない
  • 個々の端末でデータを保存する必要がない
  • パソコンだけでなく、モバイル端末に対応していることが多い(マルチデバイス対応)
  • 複数人で同時に利用できる
  • 環境構築にかかる導入コストを抑えられるため、低コストでサービスの利用を開始できる
  • ソフトウェアのアップデートはベンダーが行うため運用管理の負担を抑えられる

上記のように数多くのメリットがある一方で、ユーザーニーズに応じた細かいカスタマイズはできないといったデメリットもあります。

SaaSは、以下のような普段使っているクラウドサービスで提供されています。

  • Google Workspace(メール、カレンダー、チャット、ドライブ、ドキュメント、スプレッドシート、スライドなど)
  • Salesforce
  • Chatwork
  • 弥生会計オンライン

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PaaS・IaaS との違い

クラウドサービスの利用には、以下のような分類があります。

  • SaaS(Software as a Service)
  • PaaS(Platform as a Service)
  • IaaS(Infrastructure as a Service)

SaaSは前述した通り、ベンダーが提供するクラウドサーバー上のソフトウェアをユーザーがインターネットを通じて利用する方法です。

一方、PaaSはクラウド上のプラットフォームを利用するサービスで、IaaSはクラウド上のコンピューティングリソースを利用するサービスです。

SaaSとPaaS、IaaSは、ユーザーの運用・管理範囲(責任範囲)が違います。例えば、SaaSはアプリケーションまでサービス化して提供されるもので、PaaSはアプリケーション開発に必要なミドルウェアまで、IaaSはシステム構築に必要なインフラまでベンダーから提供されます。

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SaaSの歴史

SaaSの歴史は、1998年頃に普及したASP(Application Service Provider)がベースになっています。そもそもASPとは、インターネットを通じてアプリケーションを提供するものです。

ASPおよびSaaSは、いずれもインターネットを通じてアプリケーションを提供するものです。

[引用:総務省 国民のための情報セキュリティサイト「ASP・SaaSとは?」より]

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SaaSビジネスモデルの特徴

SaaSビジネスモデルの特徴は次のとおりです。

  • 長期的な顧客の維持が目標
  • サブスクリプションモデル
  • 膨大なユーザーデータの活用
  • フリーミアム戦略の採用

それぞれ確認していきましょう。

長期的な顧客の維持が目標

SaaSビジネスモデルは、サブスクリプション型のモデルが多く、長期的な顧客の維持が目標として掲げられます。

従来からあったオンプレミス型(インストール型)は、売り切り型のビジネスと呼ばれることもあり多く売ることが目標とされていました。

サブスクリプションモデル

サブスクリプションモデルとは、ユーザーが月額料金あるいは年額料金を支払ってサービスを利用することです。

サービスを利用できる権利(ライセンス)を月あるいは年で区切って販売するモデルともいえます。

SaaSビジネスはサブスクリプションモデルを採用することが多く、継続的に収益を獲得することが重要であるため、長期的な顧客との関係維持が目標とされるのです。

膨大なユーザーデータの活用

SaaSビジネスは、膨大なユーザーデータを取得できるので、そのデータをサービスの改善に活用します。

前述のとおりSaaSビジネスはユーザーの継続利用によって行動や評価といったデータを取得しやすい点が特徴です。

その分、SaaSビジネスでは取得したユーザーデータをもとにサービスを常に改善し続けることが求められます。

フリーミアム戦略の採用

フリーミアム戦略とは、サービスの基本的な機能を無料にする一方で追加機能などのオプションは有料で提供する仕組みです。

また、機能の利用回数や速度などユーザーの利便性にかかわる特性を制限したうえで無料で提供し、制限緩和のためには有料プランへの登録が必要といった仕組みもフリーミアム戦略の一つです。

フリーミアム戦略はユーザーのSaaS利用に対するハードルを下げられ、多くのユーザーを獲得しやすいというメリットがあります。

SaaSビジネスモデルのメリット

SaaSビジネスモデルのメリットは次のとおりです。

  • 収益が安定している
  • 半永久的にブラッシュアップできる
  • 通常顧客と大型顧客の両方を同時に獲得できる
  • 事業を急成長させることができる

それぞれのメリットについて確認していきましょう。

収益が安定している

SaaSビジネスモデルは、一度ユーザーを獲得すると一定額の収益が定期的に得られるというメリットがあります。

もっとも、ユーザーの解約状況によっては収益が安定しない場合もあります。ただし、これまでサービスを利用したことのない新規顧客を獲得するよりも、一度はサービスに興味を持った既存顧客の解約を抑えるほうが容易と考えるのが一般的でしょう。

したがってSaaSビジネスモデルは、売り切り型のビジネスモデルと比べて収益が安定します。

SaaSビジネスにおける重要指標となる主要KPIとは?計算式も解説

半永久的にブラッシュアップできる

SaaSビジネスモデルは、ユーザーに提供するサービスを半永久的にブラッシュアップできることがメリットです。

売り切り型のビジネスモデルの場合、顧客は販売時点の性能や特性を利用し続けることになります。

一方で、SaaSはメンテナンスなどの事情を除けば、ユーザーが利用を継続しながらサービスをブラッシュアップすることが可能です。

通常顧客と大型顧客の両方を同時に獲得できる

SaaSビジネスモデルでは、通常顧客と大型顧客の両方を同時に獲得できます。

例えば、サービスの提供プランを段階的に区分することで個人から大企業まで幅広い顧客を同時に獲得できます。

【SaaS】カスタマーサクセスにおけるオンボーディングとは?必要性や進め方

事業を急成長させることができる

SaaSビジネスモデルは、事業を急成長させることができる点も大きなメリットです。

例えば、マーケティング効率化SaaSを提供する株式会社FLUXは、たった1年間で顧客数が約2.5倍、従業員数は約3倍の95人に拡大するなど、事業・組織ともに急成長を実現しました。

そもそもSaaSの市場規模が拡大しているので、SaaSビジネスモデルは客観的に見て急成長が可能なビジネスモデルと評価できます。

SaaSビジネスモデルのデメリット

メリットの多いSaaSビジネスモデルですが、もちろんデメリットもあります。

  • 資金回収に時間を要する
  • 継続的なアップデートが必須
  • 長期的な顧客サポートが必要

メリットとデメリット双方を把握し、SaaSビジネスモデルの理解につなげましょう。

資金回収に時間を要する

SaaSビジネスモデルは、資金回収に時間がかかります。

例えば製造業など他のビジネスモデルであっても、機械設備などの初期投資が発生するうえに製造・販売にかかるコストがかかるため、同じようなことがいえます。

しかしSaaSビジネスモデルでは、特にその点が意識される傾向にあるようです。SaaSの場合、一般的にサブスクリプションモデルを採用していることから、ユーザーがSaaSを継続的に利用しない限り初期投下資金の回収は見込めません。

また、フリーミアム戦略を採用するSaaSでは、ユーザーはSaaSに魅力や必要性を感じて上位プランに移行しなければ収益は見込めないことになります。

SaaSの構築と提供にはコストが発生するため、この初期コストを回収するためにはより多くのユーザーの獲得と継続利用が求められるでしょう。

継続的なアップデートが必須

SaaSは継続的なアップデートが必須です。

売り切り型のビジネスであれば、表面上は売って終わりという考え方もされます。

しかし、SaaSの場合はユーザーに継続利用をしてもらうことこそが収益源なので、業界のトレンドやユーザーニーズの変化、法改正などにも対応することが必要です。

長期的な顧客サポートが必要

SaaSはユーザーが使いづらいと感じると解約される可能性があるため、長期的な顧客サポートが必要です。

また、競合SaaSが自社よりも優れていると感じられると乗り換えられる可能性もあります。

競合にユーザーが流れてしまわないためにも、高品質な顧客サポートを長期的に推進することが求められます。

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SaaSビジネスモデルで重要な5つのKPI

SaaSビジネスモデルで重要な5つのKPIとして、次のような指標が挙げられます。

  1. ARR
  2. MRR
  3. CAC
  4. LTV
  5. Churn

いずれもSaaSビジネスの特性を把握し、競合他社との比較をするためにも欠かせない指標です。

どのように算出され、どのような意味を持つ指標なのか理解しておきましょう。

1.ARR

ARR(Annual Recurring Revenue)とは、SaaSビジネスで得られる年間経常収益のことです。

MRR(月間経常収益)を12ヶ月分かけることで算出できます。

ARR=MRR×12

2.MRR

MRR(Monthly Recurring Revenue)とは、SaaSビジネスで得られる月間経常収益のことです。

計算式は次のとおりで、ARRと同様にSaaSビジネスの収益性や規模を示します。

MRR=月額料金×ユーザー数

3.CAC

CAC(Customer Acquisition Cost)とは、1ユーザーを獲得するために要したコストのことで、顧客獲得単価のことです。

CAC=ユーザー獲得コスト/新規ユーザー数

4.LTV

LTV(Life Time Value)とは、1ユーザーから生涯を通じて獲得できる収益の平均値のことで、顧客生涯価値と呼ばれる指標です。LTVの計算式はさまざまですが、基本的な式は次のようになります。

LTV=ARPA×平均継続期間

なおARPA(Average Revenue Per Account)とは、1ユーザーから獲得できる収益の平均値です。

5.Churn

Churnとは、失った有料ユーザー数のことです。なお、ある時点の有料ユーザーに占める一定期間のChurnのことをChurn Rate(解約率)と呼びます。

例えば、前月末時点の有料ユーザー数が100で当月1ヶ月間のChurnが5だった場合、Churn Rateは5.0%になります。

SaaSビジネスモデルの成長戦略に必要な考え方

SaaSビジネスの成長戦略に必要な考え方として、次の4つが挙げられます。

  • 戦略的な料金プランの設定
  • 徹底した顧客データの活用
  • 顧客の育成
  • 長期的な視点での資金管理

戦略的な料金プランの設定

SaaSの成長には、戦略的な料金プランの設定が必要です。仮に同様の機能を提供するSaaSがあった場合、ユーザーはより安いプランを選ぶと考えられます。

しかし、料金を安く設定すればユーザーは増えますが収益は上がりません。一方で、料金を高く設定すれば収益は上がると見込まれるものの、ユーザーの獲得が難しくなります。

そのため、SaaSを成長させるためには競合SaaSの料金プランと比較しながら、自社SaaSの強みを生かした料金プランの設定が必要と言えます。

徹底した顧客データの活用

SaaSビジネスの成長には、徹底した顧客データの活用が必要です。

どの業種においても、顧客との関係が重要であることは言うまでもありません。しかしSaaSビジネスは、顧客との継続的な関係こそ収益源であることから、顧客との関係構築の重要性は特に高いといえます。

そのため顧客の悩みやニーズに寄り添うためにも、顧客データを収集し課題解決やサービスの改善に向けて徹底したデータ活用が成長に欠かせない要素といえるでしょう。

顧客の育成

SaaSにおいては、顧客の育成も成長のために欠かせません。顧客の育成というと、見込み客に対して継続的にコミュニケーションを取ることで検討度合い(見込み度合い)を育成して契約につなげるリードナーチャリングがあります。

SaaSにおいてもその意味合いは変わりませんが、無料ユーザーを有料ユーザーに育てることも顧客の育成です。

そのためSaaSの利用を開始したばかりの無料ユーザーがどのような悩みやニーズを持っているのか把握し、ユーザーのSaaS利用価値を向上して成功に導くカスタマーサクセスの考え方が一層求められます。

顧客データの活用をしながら顧客の成功に向けて併走することで、有料ユーザーを増やすことができるでしょう。

長期的な視点での資金管理

SaaSビジネスを成功に導くためには、長期的な視点で資金管理をすることが重要です。SaaSは初期投資が必要で、その初期投資をいつまでに回収するかが課題になります。

そのため、資金調達時にはより具体的にユーザーの獲得と利用継続に向けた戦略を立てておくことが求められるでしょう。

仮に資金調達に成功したとしても、資金計画を立てておかなければ資金繰りに苦しむことにつながりかねません。

SaaSビジネスモデルの本質はカスタマーサクセスへの移行

SaaSビジネスモデルは、従来のビジネスモデルとは異なる特徴が多くあります。

特に大きい特徴といえるのが、売り切り型ではなく、ユーザーに継続的に利用してもらうことが収益につながるという点です。

そのためには、SaaSはユーザーと積極的にコミュニケーションを取り、ユーザーの成功に向けて併走することが求められます。

ぜひこの記事をSaaSビジネスモデルの理解に役立て、よりSaaSを知るきっかけにしてください。

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