SaaS企業におけるマーケティング戦略とは?よくある課題と解決策
SaaS企業においても重要となるマーケティングですが、果たしてどのような戦略が有効なのでしょうか。本記事では、SaaS企業におけるマーケティング戦略について、課題や解決策などを詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
SaaSとは?
SaaSとは「Software as a Service」の略で、インターネットを通じてクラウド上にアクセスすることで、ソフトウェアを利用できるサービスのことを指します。
Googleが提供しているGmailやドキュメント、スプレッドシート、AdobeのPhotoshopやPremiere ProなどもSaaSです。
またビジネスシーンでの活用が進んでいる、チャットツール・グループウェア・会計ソフト・SFA/CRM・MAなど、さまざまなサービスがSaaS企業によって提供されています。
SaaSの有料コンテンツはサブスクリプション方式であることが多いという特徴もあります。
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SaaSマーケティングとは
SaaSマーケティングは、SaaSを提供している企業がおこなう施策で、「見込み客にサービスを利用してもらうこと」「既存顧客にサービスを使い続けてもらうこと」が主となる目的です。
SaaSはパッケージソフトのような買い切り型ではないため、実際に収益化するまで時間がかかるという特徴があります。
一方で、使い続けてくれるユーザーを増やしていくことで大きな収益を得ることも可能です。
SaaSのビジネスモデルの特徴
SaaSビジネスを展開するうえでは、顧客に継続して使ってもらえるように関係性を強化することが大切です。
SaaSの解約は容易にできるため、顧客をつなぎとめる施策が重要になります。つまり、SaaSはビジネスモデル上、利益を出すには長期間継続して利用してもらう必要があるのです。
ここではSaaSビジネスにおける料金体系について、主なものを3つ紹介します。
- フリーミアム
- 使用量プライシング
- 定額プライシング
フリーミアム
フリーミアムとはユーザーが基本的な機能を無料(フリー)で使用できるSaaSのことで、GmailやGoogle Driveなどが代表的なサービスです。
さらに高度な機能を使いたい場合には、有料プラン(プレミアム)に切り替えるというビジネスモデルです。
顧客に自社のSaaSを利用してもらうには、まずそのサービスがどのようなものか知ってもらう必要があります。顧客としても使ったことがないものにお金を出すのは抵抗があるかもしれません。
そこでまずお試しとしてフリーで利用してもらい、サービスの内容や使い勝手の良さなどを理解してもらう狙いがあります。
ベンダー側からみれば、顧客に使い勝手を知ってもらった後のほうが有料プランにつなげやすいでしょう。
使用量プライシング
使用量プライシングとは使用するサービス内容によって料金を変動させる仕組みのことで、特定の機能の利用回数や保存できるデータ量などによって課金されるモデルとなっています。
顧客によってSaaSの使い方は異なるので、使用量プライシングなら柔軟に対応することが可能です。
顧客にとっても、使った分で価格が決定するので費用に納得感を持てます。ただし、提供側としては長期的な売上予測が立てづらくなるといった特徴もあります。
定額プライシング
定額プライシングは1ヶ月ごとなど、一定の料金を支払うことで期間内はそのサービスがいくらでも使えるという仕組みのことです。
定額プライシングの場合、どれだけ使っても同じ金額のため、顧客に安心して使い続けてもらえます。提供側としては、ユーザーごとに柔軟に料金設定できない点がデメリットになりえます。
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SaaS企業におけるマーケティングでよくある課題
ここではSaaS企業でよくあるマーケティングの課題を解説します。
SaaSマーケティングの人材不足
SaaSのマーケティングはこれまでのマーケティングとは違う視点・切り口が必要です。
そのため、マーケティング部門の既存の人材をSaaS担当として、そのまま転用できない可能性があります。結果、SaaS企業は人材不足に悩まされがちといえるでしょう。
既存の人材を育成するまでは、知識と経験が豊富な人材を雇い入れなければなりません。その分採用コストが上がる可能性もあるでしょう。
SaaSマーケティングのデータ不足
SaaSマーケティングは比較的歴史の浅い分野のため、多くの企業でデータが不足しています。
ノウハウを確立していくためにも、自社内でデータを蓄積していかなければなりません。
質の高いデータを増やしていくには、各担当者が顧客に対して細かくヒアリングし、記録しましょう。日々の記録の蓄積がデータ不足解消につながるはずです。
SaaS企業におけるマーケティング戦略のゴール
効果的なマーケティングをおこなうために、何を目標にするのか、明確なゴールを決めることが大切です。ここではSaaS企業のマーケティング戦略のゴールについて解説します。
- 顧客の定着化
- LTVの最大化
- リード獲得
顧客の定着化
SaaSビジネスは顧客を定着させることが重要です。顧客の定着化とはサービスを利用中の顧客を離脱させないようにするということです。
市場拡大による競合の増加により、新規ユーザーの獲得はますます難しくなっており、獲得に必要なコストは利益を圧迫します。
利益を最大化するためには、既存顧客の離脱防止策や解約率を下げるマーケティング施策が必須といえるでしょう。
LTVの最大化
SaaSビジネスが成長するためには、中長期的に安定した利益を確保する必要があります。
既存顧客を維持していくことはもちろんですが、既存顧客が自社のサービスにどれだけお金を使ってくれるかも大切です。
つまり、LTVを最大化するための継続的な施策がポイントになります。
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リード獲得
どんな商品でも顧客に認知してもらわなければ購入には至りません。自社のサービスをより理解してもらえるよう、顧客に合わせた情報発信をおこなうことが集客につながります。
例えば、SaaS企業が提供しているサービスに興味関心を持ち始めている見込み客に、どのようなサービスか、具体的に知ってもらうようなアプローチが効果的です。
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SaaS企業のマーケティング手順
Saas企業におけるマーケティングは他の業種でのマーケティングと手法が異なる傾向があります。ここでは、代表的な手順について紹介していくのでそれぞれチェックしてみてください。
マーケティングのゴールを定める
まずは、マーケティングのゴールをどうするか定めましょう。
新規リードを獲得する・既存顧客の育成をする・サービス利用者に長期間利用してもらうなど、目指すゴールによっても行う施策は異なります。
必要に応じて営業部をはじめとした別部署との連携が必要になるケースもあるので、設定したゴールによっては他部署への周知も忘れずに行なっておくと良いでしょう。
ターゲットを明確に定める
ゴールが設定できたらターゲットを明確にしましょう。どの様な人・企業にマーケティング施策を進めるかによって、行動や施策も異なるためです。
BtoB・BtoCに分けて考えるとペルソナ像が明確になり、効果的に施策に取り組むことができます。
施策の立案〜実行をする
マーケティングにおけるゴールとターゲットが明確になったら、施策の立案〜実行を進めましょう。
施策を考案する上では、ターゲットのペルソナを明確にし、どうすればユーザーの行動に変化が生まれる様な施策ができるかを考える必要があります。
効果検証をしてPDCAを回す
マーケティング施策は実行して終わりではなく、定期的に効果検証を実施してPDCAを回していくことが重要です。
PDCAを意識して施策を改善していくことにより、マーケティングの質をブラッシュアップすることができます。
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SaaS企業の多くが実施しているコンテンツマーケティング
SaaSビジネスで利益を出すには、顧客を増やして自社のサービスを使い続けてもらわなければなりません。では企業はどのようなことに取り組めばいいのでしょうか。
一つの重要な施策として、ここではコンテンツマーケティングについて解説します。
- コンテンツSEOによる集客
- ホワイトペーパーの用意
- CMや広告による宣伝
コンテンツSEOによる集客
コンテンツSEOはユーザーの検索意図に合わせて高品質のコンテンツを発信することで、Googleなどの検索エンジンから集客する手法です。
多くのユーザーは検索したときに上位の記事から読みます。そのため、コンテンツSEOを強化すると、上位にくる自社のページを多くのユーザーに見てもらいやすくなります。
多数の見込み客にリーチできれば、それだけ自社サービスへの流入増を期待できるでしょう。
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ホワイトペーパーの用意
ホワイトペーパーはサイトからダウンロード可能な資料のことを指し、自社のサービスを導入すると顧客の課題解決にどう役立つのかを資料を通して伝えられます。リード獲得に結びつけるのが狙いです。
ホワイトペーパーを利用することで、商品紹介だけでなく、顧客に課題解決のために自社のサービスが必要だと認識させることができ、うまく活用すればリードナーチリングを通して、成約にまでつなげられます。
CMや広告による宣伝
ホワイトペーパーやコンテンツSEOよりも多くの人にリーチしやすいのが、CMや広告などを使った宣伝です。
コストはかかりますが、効果的に集客できます。ただし、CMや広告は多くの人にアピールできても、そのなかには自社のサービスと関係ない、興味がない人も含まれているため、最大限に効果を発揮できるわけではありません。
CMや広告はやめると流入が止まることも多いため、短期間で認知度を一気に向上させたい場合に使うとよいでしょう。
メールマガジン
ユーザーに配信するメルマガはリードの獲得やナーチャリングに役立つ効果的なマーケティング手法の一つです。
お役立ち情報やサービス・製品に関する情報を配信することによって、新規リードの興味を高めることができ、新たな顧客へつなげることができます。
また、既存顧客へのアプローチとしても活用できるので、幅広いマーケティングを展開可能です。
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SaaS企業におけるマーケティング課題の解決策
SaaS企業がマーケティングの課題を解決するための施策について解説します。
- 自社内でのデータの確保
- マーケティング部門との綿密な連携
- チーム全体でのノウハウの共有
自社内でのデータの確保
SaaS企業のマーケティングはノウハウが確立していない場合が多いため、自社内でデータを蓄積していかなければなりません。
そのためにはまず、顧客と接して得た情報や課題、解決策などは細かく記録しておきましょう。日々のデータの確保と自社内での共有が、マーケティング課題の解決につながっていきます。
マーケティング部門との綿密な連携
SaaSは営業だけでなく、マーケティング部門との連携も必要です。
マーケティング部門がもっているリードなどの情報を共有し、連携を深めることで全社的なマーケティング戦略の精度が高められるでしょう。
お互いにコミュニケーションがとれるように、定期的にミーティングを開催するなどの取り組みが重要です。
チーム全体でのノウハウの共有
SaaSのマーケティングは個人戦ではなくチーム戦です。SaaSビジネスは1件で得られる収益は少ないため、顧客数を増やしていかなければなりません。
営業一人ひとりがどれだけ優れていても、個人で動いていては利幅が少ないままです。利益を最大化するためにはチーム全体でノウハウを共有していく必要があります。
ナレッジ共有ツールなどを導入するなどして、社内に蓄積されている知識やノウハウを活用できる体制を構築しましょう。
▷SaaSサービスの代表例を14種紹介!導入メリットや注意点を徹底解説!
SaaS企業で重要視されている6つのKPI指標
企業にとってKPIはとても重要な指標ですが、SaaS企業が特に重視すべきKPI指標にはなにがあるのでしょうか。
ここからはSaaS企業で重要視されているKPI指標を6つ解説します。
1.LTV(Life Time Value)
LTVは「顧客生涯価値」といわれる指標で、一人の顧客が自社と取引を開始してから終了するまで、どれくらいの利益をもらしてくれるのかをみることができます。
LTVが高ければ、その顧客は自社のサービスを長期間利用してくれているということです。
SaaSは長く使ってもらうことで利益を出すビジネスモデルなので、LTVは常に注視しなければなりません。
▷LTV分析とは?必要性や計算方法・マーケティングへの活用事例を解説
2.MRR(Monthly Recurring Revenue)
MRRは「月間経常収益」を表す指標であり、毎月の確定収益がどれぐらいあるのかをみることができます。
MRRの伸び率でサービスの成長性が確認でき、効率性や継続率なども評価できるのです。なお、投資家がSaaS企業を分析する際にも、重要な指標とされています。
▷MRRとは?SaaSビジネスの重要KPIとなる理由や計算方法を解説
3.ASP(Average Sales Price)
ASPは一人の新規顧客に対して、平均収益がどれくらい発生しているかを表している指標です。
一人の顧客でどれくらいの利益が確保できているかをみることができます。企業の成長性を測る上で、ASPも外せない大事な指標といえるでしょう。
4.CVR(Conversion Rate)
CVRはアプローチした見込み客のうち、どれくらい有料顧客に移行できたかを表す指標です。
「コンバージョン率」という言葉を聞いたことがある方は多いかもしれません。自社の顧客獲得策がどれだけうまくいってるかを数値として確認することができます。
5.CRR(Customer Retention Rate)
CRRは「顧客維持率」のことで、一定期間内で顧客をどれくらい維持できたかを表す指標です。
CRRが高いほど、自社のサービスを満足して使っている顧客が多いということになるので、サービスの継続性を分析する際にも役立ちます。
6.Churn Rate(チャーンレート)
Churu Rateは「解約率」という意味で、SaaSのビジネスモデルでは最も重要視すべき指標です。
Churn Rateが低ければ低いほど、継続性の高いサービスが提供できているということです。逆に、もし高い水準で推移しているようであれば、サービスの維持が難しくなります。
Churn Rateの一般的な目安は2.0%とされており、この数値を下回るような施策を継続することが大切です。
▷【SaaSの重要KPI】チャーンレートとは?目安の平均値や計算式を解説
▷SaaSビジネスにおける重要指標となる主要KPIとは?計算式も解説
SaaS企業におけるマーケティングの成功事例
SaaS企業の具体的なマーケティングの成功事例として、freeeがあげられます。
freeeは無料で利用できるクラウド会計システムで多くの企業で使われている実績があります。特に個人事業主や中規模法人のシェアが高いことで知られています。
従来の会計ソフトはパソコンにインストールする必要がありましたが、freeeはネット環境があればいつでもどこでもどのデバイスでもアクセスできます。
freeeでは、副業の普及やフリーランス人口の拡大などに目を付け、個人事業主を含む小規模事業者への認知度拡大に注力しました。具体的には広告運用を自社で行い、価格の安さなどを訴求しました。
結果、多くのユーザーにとって、低価格で導入できる会計ソフトとして認知されました。
freeeは経費削減や請求書、決算書の作成などをクラウド上でできるため、作業効率のアップが期待でき、小規模事業者にとっては人件費削減にもつながるとして、評価されています。
働き方改革などでリモート化が一層進むと予測されている中、さらなる成長が期待されているのです。
▷【最新】注目されている日本・海外のSaaS企業一覧|企業の特徴やサービスの詳細
SaaS企業におけるマーケティングは中長期的な視点が必要
本記事では、SaaS企業のマーケティング戦略について、課題や解決策などを解説してきました。
SaaSのマーケティングにはデータやノウハウの蓄積が必要となるので、中長期的な視点が必須です。
売上を最大化させるためにも適切なKPIを設定したうえで、目標を達成するために営業とマーケティングが連携して施策を進めていきましょう。
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