タレントプールとは?事例やメリット・運用方法を簡単に解説
新しい採用の仕組みである「タレントプール」。人手不足や人材難が深刻化する現代社会において、世界的に注目されてるタレントプールですが、具体的にどのような仕組みになっているのでしょうか。本記事では、タレントプールを活用するメリットや運用方法を、事例とあわせて解説します。
・タレントプールとは中長期的な人材確保を目的として、有望な人材の情報を蓄積するデータベースのこと
・慢性的な人材不足やミスマッチの防止などの背景があるため、近年注目を集めている
目次
タレントプールとは?
タレントプールとは、優秀な人材を中長期的に確保していくことを目的として、有望な人材の情報を蓄積するデータベース、または仕組みを指します。
才能や人材を意味する「タレント」と、蓄えることを意味する「プール」を組み合わせた造語であり、別名「人材プール」とも呼ばれています。
タレントプールの対象者に明確な定義はありませんが、以下のような人が主な対象です。
- 過去に内定を辞退した人材
- 過去に自社で就労していた元社員
- SNSやセミナーなどで自社の発信を受け取っている人材
- 自社に興味を持っていて、潜在的に転職を検討している人材
- 基準は満たしていたが、タイミングが合わず採用を見送った人材
このような人材とSNSやセミナーなどで情報発信を行ったり、直接コミュニケーションを取ることにより、双方の理解を深めながら採用につなげていくのが一般的です。
タレントプールが必要になった背景とは?
タレントプールが注目され、必要性が高まった3つの背景を解説します。
人材の獲得が困難になっているため
現在の日本では、多くの企業が人材不足に直面していて、人材の獲得競争が激化しています。少子高齢化が進むにつれて若手人材の獲得は一層困難になり、全体の労働人口も減少の一途をたどる見通しです。
このような環境下で、企業は限られた労働人口のなかで無駄なく効率的に採用活動を行っていくために、タレントプールへの注目が集まるようになりました。
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雇用のミスマッチが発生しているため
雇用に多くのミスマッチが発生していることも、タレントプールが必要とされる背景のひとつです。
入社前に抱いていたイメージと入社後の実態が異なっていることにギャップを感じるケースが多く、それを理由に退職してしまう人は決して少なくありません。
採用活動や入社後の教育には多大なコストがかかるため、人材が定着しなければこれらのコストが無駄になり、企業は大きな損失を被ります。
その点、タレントプールを活用すれば求職者は事前に企業に対する理解を深められ、入社前後のギャップを軽減できると考えられています。
働き方が多様化しているため
政府が提唱した「働き方改革」に後押しされ、人々の働き方が急速に多様化しました。
一昔前は正社員が大半を占めていましたが、それぞれの状況や優先順位に合わせて契約社員・派遣社員・パートタイマー・フリーランスを選択する人が年々増加しています。
このような流動性の高い人材を採用するためには、一人ひとりの状況を把握しながら継続的にアプローチする必要があるでしょう。
タレントプールは、中長期的に関係構築をしながら採用の機会を創出する手法のため、働き方が多様化している現代に適した採用手法として注目を集めています。
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タレントプールを構築するメリット
ここでは、タレントプールを構築する主なメリットを3つ紹介します。
採用に関する費用・手間を削減できる
タレントプールを構築することで、採用に関する費用・手間を削減できるメリットがあります。
求人媒体は時期や費用によって成果が大きく異なり、費用をかけたからといって必ずしも採用に至るとは限りません。人材紹介は採用に至った場合のみ費用が発生するものの、担当者の人件費などの内部コストも含めると、採用するための費用は1人あたり平均100万円ほどとされています。
タレントプールを活用することで求人媒体などにかかる採用費が削減できるうえ、ミスマッチや工数が減れば必然的に内部コストの削減にもつながるでしょう。
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離職の防止につながる
タレントプールの構築・運用は、離職の防止にも効果的です。
従来の採用手法では、企業と求職者の接点は説明会や面接のみのため、双方が少ない情報で採用・入社を判断する必要があり、ミスマッチが発生しやすい状況でした。
一方、タレントプールでは人材と中長期的にコミュニケーションを取っていくため、双方が相手のことをある程度理解した状態で選考に臨めます。その結果、入社後のギャップによって発生していた離職を未然に防止できる可能性があります。
必要な人材を確保できる
タレントプールを活用することで、必要な人材を適切に確保できる可能性が高まります。
運用を続けていくと、母数を増やしつつそれぞれの人柄やスキルなどをよく知ることができます。同時に、人材同士を比較できるようになり、必要な人材のピックアップもしやすくなるでしょう。
また、過去に採用基準を満たしていたものの、さまざまな要因で採用を断念した人材もいるはずです。このような人材をプールしておくことで、新たに採用の必要性が出てきたときに、改めてアプローチすることもできます。
タレントプールを構築するデメリット
タレントプールを構築するうえでのデメリットを見ていきましょう。
アプローチのタイミングが難しい
タレントプールでは、候補者へのアプローチのタイミングが難しいのが難点です。
一般的な採用手法では、求職者は転職したい意思が明確であり、企業側も採用しなければならない状況にあるため、自ずとタイミングは一致しています。
しかし、タレントプールの場合はこちらが採用したいと思ったタイミングで相手も転職したいと思っているとは限らないため、タイミングの見極めが難しいといえます。
データベースの管理に負担がかかる
タレントプールのデータが増えたり、運用期間が長くなるほど、管理に負担がかかることもデメリットです。
運用し始めのころはデータベースに人材を追加していくだけで良いですが、保有するスキルや人材としての優先順位などをグループ分けする必要が出てきます。また、人材の状況も刻々と変化するため、日々情報をアップデートしなければなりません。
期間とやることが明確な従来の採用手法に比べ、タレントプールは管理・運用の手間がかかることは理解しておく必要があります。
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タレントプールを運用する方法
タレントプールを運用する具体的な方法を4つのステップで紹介します。
1.自社に必要な人材の条件を定める
はじめに、自社に必要な人材の条件・要件を定める必要があります。ターゲットを明確にしておかないと、どのような人材をプールし、アプローチすれば良いかがわからなくなってしまうためです。
単に自社が必要な要件を並べるだけではなく、ターゲット人材はどのような経歴で、どのような価値観を持っているかなど、具体的な人物像を設定しましょう。
このペルソナ設定が鮮明であればあるほど、相手に響く効果的なアプローチが可能になります。
2.人材のデータベースを構築する
事前に設定した条件に合う人材をプールして、データベースを構築していきます。プールする人材を見つける方法として、以下のようなものが考えられます。
- セミナーやイベントを開催してリストを集める
- 求人媒体などによる採用活動の応募者
- 採用、転職メディアで登録を募る
- 過去に退職した元社員
- SNSで見つける
プールした人材について、個人情報・過去の経歴・在籍していた企業・資格・スキルなどを記載します。また、その人材との接点や出会ったきっかけなども記載しておくと、アプローチ方法の検討に役立つ情報となるでしょう。
3.採用候補者とコンタクトを取る
データベースに登録した採用候補者と、さまざまな方法を用いて定期的にコンタクトを取りましょう。
コンタクトを取ることで自社の存在をアピールでき、次第に興味を持ってもらえる可能性が高まります。逆に、疎遠になると次第に興味は薄れ、存在を忘れられてしまう恐れがあるため注意が必要です。
直接コンタクトが取れるなら電話・メールなどで近況を聞いてみると良いでしょう。少し離れた相手であれば、SNSやメルマガで情報発信したり、イベントを開催したりして直接会う場を設けるのもおすすめです。
4.データベースリクルーティングを実施する
自社で採用の必要性が出てきた際に、データベースのなかから条件にフィットする人材にアプローチしましょう。
このように、人材のデータベースを構築して関係性を築き、自社の価値観や考え方を啓蒙する採用手法を「データベースリクルーティング」と呼びます。
かつての終身雇用が過去のものとなり、転職が当たり前となった現代において、「良い会社ときっかけがあれば転職したい」と考える転職潜在層は多数存在します。このような人たちと交流を続けて関係ができていれば、アプローチした際の成功率は高まるでしょう。
タレントプールの活用事例
ここからは、タレントプールを活用している5つの企業の事例を紹介します。
株式会社八百鮮
近畿・中部地方で生鮮食品の小売業を営む八百鮮は、タレントプールによって採用が成功しているひとつの事例です。
同社は年間1,000万円もの費用をかけて中途採用を行っていましたが、応募が集まらず求めていた若手人材の獲得に苦戦していました。
そこで、求人情報サイトWantedly・Twitter・YouTube・ブログをメディアミックスし、タレントプールの構築に着手。運用開始からわずか半年で12名の採用に成功したうえ、採用費を300万円まで圧縮することに成功しています。
リスタンダード株式会社
東京都を中心にアスリートのセカンドキャリアをサポートしているリスタンダードは、2019年に新卒採用を開始すると同時に、求人情報サイトWantedlyを導入しています。
同サービスのブログ機能を活用して企業の情報や魅力を発信し、候補者たちとの交流を続けてきました。
その結果、利用開始からわずか3か月で3名の新卒採用に成功し、長期インターンの獲得にもつながっています。さらに、年間採用費は36万円に抑えられたそうです。
株式会社SmartHR
クラウド人事労務ソフトで高いシェアを誇るSmartHRは、タレントプールで大きな成功を収めている企業のひとつです。
同社は年間約200名の採用の7割を人材紹介で賄っていましたが、年々増加する採用必要数に限界を感じてタレントプールを併用することにしました。
さまざまなチャネルでアイディアを一つひとつ形にしていき、結果的に3,700名ものデータベースを構築しています。そのなかで、入社してくれそうな人に焦点をしぼりコンタクトすることで、マッチした人材の採用につながっています。
ゼネラルモーターズ
米国の大手自動車メーカーであるゼネラルモーターズでは、知名度を活かしたタレントプールの運営に成功しています。
自社サイトのキャリアページにタレントプールへの登録画面を設置し、タレントコミュニティへの参加を促しています。
「応募するまでには至らないが同社に興味はある」という人たちの居場所を積極的に設けて情報発信を行い、応募までの関心度を醸成しているそうです。
シェル
英国大手の多国籍エネルギー企業であるシェルでも、自社サイトのキャリアページにタレントプールへの登録画面を設置しています。
登録者は、事前に入力した専門分野に関連するニュースやイベントの案内、キャリアイベントなどの情報を受け取れる仕組みです。
はじめからシェルに興味を持っている人だけでなく、業界関係者の情報収集ツールとして活用したい人も幅広く集められる優れた仕組みといえるでしょう。
タレントプールを活用し優秀・有望な人材を確保しよう
人材不足や少子高齢化の進行、各企業の人材獲得競争の激化などによって、年々難易度を増している採用活動。社会情勢の変化にともない、従来の採用手法とは異なる戦略が求められています。
なかでも、タレントプールは現代の状況や人材のニーズに適した手法として注目されています。概要や活用方法を学び、優秀・有望な人材確保を実現していきましょう。
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