DX推進の目的とは?目的が必要な理由と具体例を紹介

最終更新日時:2023/04/05

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DXの目的

DX推進の目的にはどのようなものがあるのでしょうか。本記事では、DXが注目されている背景や目的、メリット・デメリットを紹介します。DXの目的を明確にすることは大切ですが、あくまでDXは手段として捉えた方が良い理由も合わせてご覧ください。

福本大一

監修者 福本大一 Chatwork株式会社 DXソリューション推進部|マネージャー 大学卒業後、toC領域のWEBメディア事業で起業。事業グロースに向けたSEO戦略から営業・運用広告に従事し、約2年間の経営を経て事業譲渡。2021年3月からChatworkに入社し、カスタマーマーケティングやアライアンスを経験した後、メディア事業・運用広告事業の責任者としてミッションを遂行する。現在は、DXソリューション推進部のマネージャーとして新規事業領域のセールス・マーケティング・アライアンス・メディア事業を統括。

DX推進の目的とは?よくある勘違いも解説

DXは「デジタルトランスフォーメーション」と呼ばれ、人々の生活をより良いものへと変革させる概念のことを表します。そんなDXの目的は、ビジネスの変革を迅速に実現できるデジタル企業の実現です。

DXという言葉が浸透してきたことによって、DXを推進する企業も増加傾向にありますが、中には目的を見失ったまま、DX推進に着手してしまっている企業もあるので注意しなければなりません。

デジタル化という目的だけでDXを推進しても、新たな価値の創出が叶わず、単にコストが肥大化しただけの結果となるなど、失敗に終わってしまうことも珍しくはありません。正しい目的を見据えてDXを推進することが必要です。

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DXは目的ではなく「手段」として捉えるべき

DXそのものは、実現したい目的に対する手段です。DXを目的にしてしまうと、ビジネスにおいて達成したいことがあいまいになり、失敗に繋がることになりかねないので注意しなければなりません。

まずは、社内のどんな課題を解決したいのかなどの具体的な「目的(ゴール)」を明確に設定したうえで、DXをどう活用するか検討する必要があります。目的が明確でないと、意味のないデジタルツールを見切り発車的に導入することとなり、その結果、費用だけがかさんでしまうという失敗に陥ってしまいかねません。

まずはDX推進の目的を定め、DX推進の達成度を可視化できるよう数値目標を設定することをおすすめします。

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DX化の目的

DX化においては、適切な目的の設定が不可欠です。目的をどのように導き出すかについては、さまざまな視点から企業活動を分析しなければなりません。全企業共通の内容であることもあれば、職種別の内容になることもあるでしょう。目的を決定することにより、どのように達成すべきか明確にすることが可能です。

ここでは、DX化の目的について解説します。

(1)全企業共通のDXの目的例

全企業共通の目的例として、以下の2つが挙げられます。

  • 企業優位性を上げる
  • 業務を効率化させる

例えば、他の企業と比べた強みをさらに強化することで売上の増加に繋げることができ、業務を効率化させることでコスト削減に繋げることが可能です。

どちらか片方への取り組みでも効果は出るかもしれませんが、両方バランスよく取り組むことでより効果を生み出せます。

#1: 企業優位性を上げる

日本国内においては、既存システムの複雑化やIT人材の不足などの原因により、2025年以降に年に最大12兆円の経済損失が発生する可能性があるとされています。

この危機を乗り越えるためには、企業優位性を上げていくことが不可欠であり、それには企業間の競争力を向上させていかなければなりません。既存ビジネスにデジタルを組み込むことでビジネスモデルや組織そのものに変革を生み出し、新しいことに挑戦することで企業の優位性の向上を実現することが可能です。

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#2: 業務を効率化させる

もう1つの目的として、デジタル技術を用いて業務効率化をすることが挙げられます。

業務効率化によって生産性が向上し、非効率だったリソースを必要なところに充てることも可能です。例えば、これまで紙などのアナログな方法でやっていた業務をデジタル化してしまうことで、作業時間の短縮や人員の削減が実現できます。

非効率だった業務がDX化されることによって、より付加価値が高い業務へのシフトが可能となるのです。

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(2)職種別の目的例

DXには企業ごとの目的とは別に、職種別の目的も検討しなければなりません。より細かく目標を設定することで、DX推進の効果はさらに高まります。

職種別目的の例としては、以下の4つが挙げられます。

  • 顧客コミュニケーションの向上(営業・マーケティング職)
  • 顧客情報・顧客行動の分析を行い、より良いサービス・商品を提供する(開発職)
  • 入力ミスの防止(経理職)
  • リモートワークの実現(人事・総務職)

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

#1: 顧客コミュニケーションの向上(営業・マーケティング職)

営業やマーケティング部でのDXの目的の1つに、「顧客とのコミュニケーションを向上させること」が挙げられます。例えば、WebサイトやSNSなどのプラットフォームにチャットボットを導入し、顧客対応に割いていたリソースを軽減するといったことが可能です。

また、セールスフォースなどの顧客管理システムを導入することで、顧客情報の閲覧が容易にできるようになります。顧客理解度をアップできるため、受注率や顧客満足度の向上に繋げることが可能です。

#2: 顧客情報・顧客行動分析を行いより良いサービス・商品を提供する(開発職)

商品開発部門におけるDXの目的は「より良いサービス・商品の提供」です。サービスの品質を上げるためには、ユーザーの声をしっかりとヒアリング・分析・改善とつなげて考えていくことが重要です。

しかし、これらの作業を人の手で実施すると、重要な意見や数値の抜け漏れや分析ミスが発生してしまいかねません。この点、デジタル技術を活用すれば、抜け漏れが防止できるだけでなく、より精度の高い分析が可能です。

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#3: 入力ミスの防止(人事・経理職)

人事・経理部門におけるDXの目的は「入力ミスの防止」です。決算書や雇用契約・入社手続き書類といった非常に重要なデータを扱うため、入力ミスは大きなリスクです。

システムでの自動入力を推進することで、入力ミスを防ぐことができます。また、入力したデータを処理するワークフローを確立することで、ミスがないかを複数人で確認することも可能です。

#4: リモートワークの実現(人事・経理職)

人事・経理部門におけるDXの目的として、もう1つ「リモートワークの実現」が挙げられます。

働き方改革の推進やコロナ禍において、社会の出社意識は大きく変化してきました。採用活動においても、リモートワークなどの多様な働き方を実現している企業は転職者から見て魅力的に見えるため、より優秀で多様な人材の採用にも役立ちます。

リモートワークではコミュニケーションをいかに取るのかが課題ですが、チャットツールの導入や運用といったデジタル技術の活用で改善することが可能です。

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DXが注目される背景について

世界的なIT技術の進化に伴い、サービスやビジネスモデルを中心に市場がめまぐるしく変化しています。私たちの生活自体もITの恩恵を受けており、スマートフォンなどのIT技術を身近に感じるようになりました。

今後もIT技術は進化すると予想されるため、IT技術を活用したDXを推進することは社会全体の流れとして自然なことです。

ここからは、DXが注目される背景についてより具体的に見ていきましょう。

(1)2025年の崖

DX推進において重要なキーワードに「2025年の崖」があります。「2025年の崖」とは、経済産業省が発表した2018年のDXレポートで使用された言葉であり、2025年を境目に数多くの問題が企業の前に立ちはだかるだろうという予想です。

この予想によると、2025年までに日本企業がデジタル化に取り組まなかった場合は、2025年から2030年にかけて年間最大12兆円という巨額の経済的損失を被る危険性があるとされています。しかし、現状ではDX推進に取り組んでいるのはまだ一部の企業にとどまっており、危機感はぬぐえません。

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(2)DX推進ガイドライン

2025年の崖問題を解決するために、経済産業省は「DX推進ガイドライン」を公表しています。「DX推進のための経営のあり方や仕組み」「DX実現のための基礎になるITシステムの構築」の2つで構成されており、経営者が押さえるべき事項や取り組みの明確化を目的としています。

このガイドラインを参考にすることで、企業はより正しい方向にDXを推進しやすくなると考えられます。

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(3)リモートワークの普及

新型コロナウィルスの影響によって、リモートワークが強く推進されるようになりました。リモートワークの導入により、感染を回避しながらも経済活動が維持できる、多様な働き方に対応できるといった大きなメリットが得られます。

一方、リモートワークでは出社しなくても作業ができる環境作りが必要であり、かつセキュリティの担保といった部分にも注意しなければなりません。こうしたリモートワークという働き方を最大限に活かすためには、社内のデジタル改革といいDX推進が不可欠です。

(4)スマートフォン中心の消費行動

スマートフォンの普及によってユーザーの行動が変化してきているということも、DXが注目される背景の1つです。現在では、あらゆる行動がインターネット上でできるようになっており、企業はユーザーの複雑化したニーズに合わせた戦略を構築できるかが重要になります。

膨大なデータを収集し、整理・分析することで最適なマーケティング・営業活動が実現するため、必要なデジタル改革やシステムの導入などDX推進による施策が今後ますます必要になります。

(5)IT技術の急激な進化

IT技術は日々進歩しており、革新的だといわれたAIも、お掃除ロボットや車の自動運転などの登場によって身近なものになってきています。また、5Gによってネットワーク通信が高速化したことで、AIによるビッグデータの解析も一般的になってきました。これらの技術を活用することで、企業の優位性を高めることが可能です。

反対にIT技術の活用に乗り遅れてしまうと、競合他社や新規参入企業に遅れをとってしまったり、顧客の意識やニーズの変化に適応しきれなくなったりといったデメリットが発生する可能性もあるので注意しなければなりません。

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DX推進で得られる4つのメリット

では、DX推進によりどのようなメリットが得られるのでしょうか。主に以下の4点が挙げられます。

  • 生産性が上がる
  • 新しい商品やサービスを創造できる
  • 古いシステムが抱えるリスクの回避
  • 事業継続計画(BCP)を充実させられる

それぞれのメリットについて見ていきましょう。

(1)生産性が上がる

DX推進によって業務効率化が進めば、生産性の向上に繋がります。人の手が入る余地が多いアナログな業務をデジタル化することによって、業務の生産性や正確性が向上するというわけです。

作業時間の短縮、人件費削減、さらにはヒューマンエラーがなくなるといった効果が期待できるため、企業がDXを推進することには大きなメリットがあります。

また、削減したリソースは別の業務に回すことができるため、従業員はさらに重要度の高い業務に取り組むことができるようになり、結果として企業価値を高めることが可能です。

(2)新しい商品やサービスを創造できる

IT技術を活用した製品やビジネスは続々と登場しており、特にIoTというモノとインターネットを組み合わせた技術は、将来性を秘めています。

例えば、SNSを通して収集した顧客情報のデータを解析・活用することによって、顧客のニーズを捉えることも可能です。

DXの推進により、マーケティングの精度も上げることができるため、顧客が欲しいと考える新しい商品やサービスをより具体化しやすくなります。

(3)古いシステムが抱えるリスクの回避

社内に時代遅れのもの、いわゆる「レガシーシステム」があることは、企業における課題であり、DX推進が遅れてしまう原因でもあります。

古いシステムの問題点として、修正を繰り返した結果、複雑化してしまっていることが挙げられます。また、徐々にシステムがブラックボックス化してしまい、システムの仕様を把握している人が減ってしまう可能性も否定できません。

DX推進にあたり、古くなったシステムは一掃して一貫性のあるシステム構築を行うことで、リスクを回避できます。

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(4)事業継続計画(BCP)を充実させられる

事業継続計画とは、災害やシステム障害などの危機的状況に陥った際に、被害を最小限に抑えて業務をスムーズに継続するための対策を事前に決めておく計画のことです。

DX推進で業務効率化を行い、手順や操作が整理されることで、災害やシステム障害などの不測の事態にも柔軟に対応することができます。

早期に回復して通常業務を再開することは顧客満足度や社会的信用度の向上に繋がるため、DX推進がBCPの充実に一役買ってくれると言えるでしょう。

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DX推進で生じる4つのデメリット

DX推進には、デメリットもあります。デメリットをどの程度軽減できるかによって、DX推進の取り組み方も変わってくるでしょう。

DX推進で生じるデメリットとして、以下の4点が挙げられます。

  • コストがかかる
  • 全社的な協力が必要
  • IT人材を採用・育成・確保する必要がある
  • 効果が出るまで時間がかかる

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

(1)コストがかかる

DXを推進する際には、ITツールなどの導入や拡充が必要になるケースが少なくありません。そして、ITツールの導入には費用が発生します。

そのため、コストに見合った効果が期待できるITツールの導入が不可欠です。また、ITツールは導入したら終わりではなく、その後ITツールを運用していく上でのランニングコストも覚悟しなければなりません。

ただし、コストはかかるものの、効果的な利用ができればコスト以上の大きなリターンが期待できるでしょう。

(2)全社的な協力が必要

企業全体でDX推進を行う場合、状況によっては部署ごとに異なるシステムを統一する必要があります。部署ごとの部分最適ではなく全体としての最適を求めていかなければならないので、社内全体の協力が不可欠です。

部分最適が実現できた際には、その実績やノウハウを社内全体へ転換して社内全体での取り組みを行っていくことが重要となります。こうしたサイクルを繰り返し、企業価値を高めていくことがDX推進において重要です。

(3)IT人材を採用・育成・確保する必要がある

DX推進ができるIT人材は、経営層と現場の両方で不足していると言われています。また、そもそもIT人材が不足しているため、DX推進までリソースを割くことができていないという課題もあるのが現状です。

そのため、外部のIT企業に開発や運用を任せている企業も少なくありません。新しい事業を始める際にシステム開発を外注することで、ビジネス化までのスピード感が失われてしまうというリスクもあるのです。

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(4)効果が出るまで時間がかかる

DX推進は、目に見えた効果が現れるまでに平均で3~5年程度の期間が必要だとされています。また、DX推進のためには、人材・モノ・資金といったリソースの確保が必要です。

加えて、中長期的な視点が必要になるため、体力のある企業でないと難しいという一面があることも否定できません。

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DXの目的を明確にして全社で推進することが重要

IT技術が進化し続けている現代においては、DXを推進していく流れは続くと予想されています。DX推進をするためには、DXについて正しく理解しておかなければなりません。

重要なのは、DXの目的を明確にし、導き出した目的に対して全社体勢で推進することです。デジタル技術を活用したビジネスモデルを生み出すなど、さまざまな方法が考えられます。

2025年の崖はどの企業にも関わってくる深刻な問題です。これを乗り越えるためにも、目的を明確化したうえでDX推進を進めていくことをおすすめします。

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