DX推進には不可欠なビジョンとロードマップ策定の重要性について
DXの推進にはビジョンとロードマップ策定が必要不可欠です。本記事では、DX推進におけるビジョン・ロードマップの重要性やそれぞれの策定方法を手順に沿って紹介します。ロードマップ策定で役立つフレームワークも記載しているので参考にしてください。
目次
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
DXとは、Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略語で、デジタル技術を用いることにより、ビジネスや生活が変容することを指します。
現在、DXが注目されている背景として、2018年9月に経済産業省が発表した「DXレポート」において提唱された「2025年の崖」と呼ばれる現象があります。
「2025年の崖」とは、既存システムの問題によって2025年を節目に数多くの日本企業が直面する危機のことをいいます。先述のDXレポートでは「2025年の崖」によって、2025〜2030年の間に、現在の約3倍となる年間最大12兆円ほどの損失が日本経済に生じる可能性を示唆しています。
このような背景から、今後起こり得る日本経済の危機を回避する最重要課題としてDXは注目されています。
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DX推進にビジョンが必要な理由
企業においてDXを推進するためには、DXの「ビジョン」が必要と言われています。DXのビジョンとは、企業の本来あるべき姿であり、DX推進の上で核となるものです。
DXの推進には、経営者を筆頭にして組織全体で変革に取り組む姿勢が大事であり、DXが各部門に偏ることのないよう、事前に組織全体でDXにおける「ビジョン」の策定および共有が必要になります。
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DX推進におけるロードマップの重要性
ビジョンとともに、DXの推進には「ロードマップ」の作成も重要です。
ロードマップを作成することで、組織や従業員が優先して取り組むべきタスクが明確になるだけでなく、タスクに対して効率的なアプローチが可能になります。
ビジョンとロードマップを適切に策定することで、長期的かつ大掛かりな取り組みとなるDX推進の成功率の向上はもちろん、コストの最適化や組織体制な構築を実現することができるのです。
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DX推進のビジョン策定方法
DX推進におけるビジョンの策定は、経営者が主体となって行わなければなりません。DXのビジョンとは、DX推進後の自社における「理想像」とも言えるものです。ここでは、DX推進におけるビジョンの策定方法について解説します。
(1)企業の基本理念を明確にする
DX推進のビジョン策定における第一歩は、企業の基本理念を明確にすることです。企業の基本理念とは、企業の存在意義や価値基準であるとともに、事業を通じて社会に提供する価値のことをいいます。
基本理念を明確にすることは、企業が社会に対して提供したい本質的な価値をより具現化することにつながります。これにより本質的な価値の実現に向けて、組織全体で最善の方法を検討することも可能になります。
(2)自社の強みを抽出する
基本理念が明確になったら、次は自社の強みを抽出しましょう。元からある自社の強みをさらに伸ばすことは、市場での競争率を高める上で最も効率的な方法です。
自社の強みを抽出する上で注意すべきことは、次の2つです。
- 「強み」はサービスや製品に限られたことではない
- 「強み」は一つとは限らない
強みを抽出する際には「他社が真似しにくいことは何か」を明確にすることを意識しましょう。
(3)10年後を想像する
DX推進におけるビジョン策定には、10年後の未来を想像することも大事です。テクノロジーを筆頭に、顧客のニーズや業界などの変化やそれらに伴う新規事業の発足まで模索しましょう。
もちろん10年後の未来を想像することは容易なことではありませんが、10年後から逆算した長期的なビジョンを策定できれば、今取り組むべきことが明確になるだけでなく、組織が進むべき道を誤る可能性を下げることにもつながります。
10年後を想像して策定した長期的ビジョンは、決してひとつに絞る必要はなく、複数のシナリオを持ち合わせることも有効です。
(4)強みとテクノロジーを組み合わせて自社が果たすべき役割を考える
次に、これまでに抽出した「自社の強み」と「テクノロジー」を組み合わせて、社会において自社が果たすべき役割を考えていきましょう。これはつまり「自社の本質的な価値を、社会でどのように提供するのか」というビジョンを描くことと同意です。
しかし、このようなビジョンを描くにあたっては、ビジネスモデルやサービスなどの詳細の決定は困難なため、概念的なものになることが想定されます。現段階においては対局的な理想像で構わないので、顧客との関係性を踏まえた自社のビジネスモデルや組織に至るまでを描き切りましょう。
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(5)わかりやすく言語化する
ここまで作り上げたビジョンを、関係者以外のメンバーや社外のステークホルダーへ正しく伝達するためには、具体的にイメージしやすいビジョンへの言語化が必要です。
ビジョンの言語化においては、わかりやすく簡単で誰でも正しく理解できることはもちろんのこと、経営ビジョンを刷新した場合は、再度経営理念との整合性を確認しましょう。
経営ビジョンと経営理念との間に齟齬がある場合は、現場の混乱を招いたりステークホルダーからの共感が得られなかったりすることが想定されるため、整合性には十分な注意が必要です。
DX推進のロードマップ策定方法
DX推進において戦略の明確化は必要不可欠であり、その鍵となるのがロードマップです。ここでは、DX推進における2通りのロードマップ策定方法について解説します。
(1)ステップに沿って策定する
1つ目のロードマップ策定方法は、ステップに沿って策定する方法です。全6ステップに沿って策定できるため、各フェーズでやるべきことを順序立てることが明確になります。
#1: ビジョンを明確にする
まずはDXの推進にあたって最も大切な「ビジョンを明確にする」ことから始めましょう。DXのゴールとも言える「ビジョン」を明確にすることで、自社におけるDXの活用法が浮き彫りになります。
ビジョンの明確化において大事なことは、経営者をはじめとした一部の意見だけで進めるのではなく、各部門からの意見を積極的に募ることです。それぞれの意見が出そろったら、じっくりと時間をかけた上で調整を重ね、誰もが納得するビジョンを策定することが求められます。
#2: 現状分析を行う
ロードマップの策定にあたり、ビジョンの明確化と同じくらい重要になるのが「業務に関する課題の把握」です。これは、競合のリサーチや社内アンケートの実施などを通じて、業務における現状分析を行うことの重要性を表しています。
現状分析なくして、明確なロードマップの策定は不可能です。
#3: 自社の強みを考える
この段階では「業務における現状分析」だけではなく、自社における競合優位性やアピールポイントなどの強みについてもしっかりと考え、言語化することも重要です。
自社の強みを言語化することで、DXの推進によって解決すべき課題が明確になり、さらに組織全体で自社における強みを強化・拡大が伴えば、業務の効率化や他社との差別化の実現により近づけます。
#4: KPIの設定
ロードマップが正しく機能しているかを確認するためには、KPI(重要業績評価指標)の設定が欠かせません。
KPIの設定にあたっては、一目見ればだれもが現状を把握できるよう可視化することが必要になります。また、KPIの可視化においては「短期・中期・長期」などの各段階における計画に合致した明確な数字の設定が求められます。
ロードマップの確認には、段階ごとに達成すべき計画数値を正確に見極め、適切なKPIの設定が必要不可欠になります。
#5: システム等のデジタル化を進める
レガシーシステムやアナログで行っている業務などのデジタル化は、DX推進において避けて通れないもの。またデジタル化に関しては、適切なデジタルツールの導入の結果、どれだけの業務効率化が図られるのかを明確に数値化することも忘れてはいけません。
なお、このようなデジタル化は全社で一斉に行うのではなく、組織全体が最終的に足並みが揃うような優先順位の振り分けも、ロードマップの役割の一つになります。
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#6: ビジネスモデルをデジタル化する
DX推進のロードマップ策定における最終フェーズは、ビジネスモデルをデジタル化することにあります。ビジネスモデルをデジタル化するには、これまでのロードマップ策定の過程を踏まえた上で、どのような企業価値を生み出せるかを考え出すことが重要になります。
また、ときには企業理念や行動方針などに踏み込んで変革する必要があるため、経営者を筆頭にDX成功を見据えた舵取りが欠かせません。ビジネスモデルをデジタル化することは、ロードマップの策定のゴールであるとともに、企業をDX成功へ導く上で必要不可欠なものです。
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(2)DX加速シナリオに合わせて策定する
2つ目のロードマップ策定方法は、2020年12月に経済産業省が「DXレポート2」の中で提唱した「DX加速シナリオ」に合わせて策定する方法です。「DX加速シナリオ」は段階別に3つに分かれており、社内の状況と照らし合わせることで現状やるべきことが明確になります。
#1: 直ちに取り組むべきアクション
DX加速シナリオに「直ちに取り組むべきアクション」として提唱されているのは、次の2点です。
- DXの認知・理解
- 製品・サービス活用による事業継続・DXのファーストステップ
「直ちに取り組むべきアクション」は、主に事例などの情報収集やツールの導入による業務のデジタル化が該当し、以下4つの具体的なアクションが提示されています。
- 業務のオンライン化
- 業務プロセスのデジタル化
- 従業員の安全・健康管理のデジタル化
- 顧客接点のデジタル化
企業は、上記4つアクションにおける進捗具合を確認した後、企業の「現在地」を明確にすることが求められます。
#2: 短期的対応
DX加速シナリオに「短期的対応」として提唱されているのは、次の3点です。
- DX推進体制の整備
- DX戦略の策定
- DX推進状況
「短期的対応」では、DX推進の体制整備や戦略の策定をします。これらに並行して、DXの推進状況を繰り返し振り返ることで、DX推進を推し進めていきます。
#3: 中長期的対応
DX加速シナリオに「中長期的対応」として提唱されているのは、次の3点です。
- デジタルプラットフォームの形成
- 産業変革のさらなる加速
- DX人材の確保
「中長期対応」ではレガシーシステムからの脱却を図り、デジタルプラットフォームの形成による業務プロセスの標準化を進めていきましょう。また、産業変革についてもさらなる加速を目指し、自社だけでなくパートナー企業なども視野に入れたDX人材を育成・確保しましょう。
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DXロードマップ策定で役立つフレームワーク4選
ここでは、DX推進のロードマップ策定において役立つフレームワーク4つについて解説します。いずれのフレームワークも、企業における課題や特徴の分析が目的となります。
(1)3C分析
3C分析の「3C」とは、以下の3つを指します。
- Customer:顧客
- Company:自社
- Competitor:競合
これら「3C」を分析することで、顧客の心理・行動に対する自社及び他社の戦略を比較できます。これらの分析結果から、自社の強みや現状における課題点が浮き彫りになるため、今後進むべき事業ベクトルが明確になります。
(2)4C分析
3C分析とは異なり、4C分析の「4C」は以下の4つを指し、消費者視点での分析を可能とするフレームワークになります。
- Customer Value:顧客価値
- Customer Cost:顧客の経費・負担
- Convenience:利便性
- Communication:コミュニケーション
4C分析は、現状の顧客(ユーザー)に絞って分析するため、マーケットインでどのような戦略を遂行するかを考えるフレームワークです。一般的に4C分析は、すでに成熟した市場において事業戦略を実行・検討する際に役に立つとされています。
(3)SWOT分析
SWOT分析とは、企業の内部環境および外部環境における「強み・弱み」などを分析することです。またSWOT分析の「SWOT」とは、次の4つを指します。
- Strength:強み
- Weakness:弱み
- Opportunity:機会
- Threat:脅威
SWOT分析をすることで、自社における「伸ばすべき点」や「改善すべき点」を客観的に把握できます。
(4)PEST分析
PEST分析とは、以下4つの外部環境を分析するフレームワークのことを指します。
- Politics:政治
- Econoomics:経済
- Society:社会
- Technology:技術
自社に影響を与える外部環境を露呈・分析することにより、時代に合致した戦略策定を可能にします。
▷DXフレームワークとは?経済産業省が提唱する内容をわかりやすく解説
ロードマップを戦略に変換する「デジタルガバナンス・コード」
大まかなロードマップが策定できたら、経済産業省が公表している「デジタルガバナンス・コード」を参照の上、ロードマップを戦略へ変換することを目指していきましょう。
なお「デジタルガバナンス・コード」とは、企業のDXに関する自主的な取り組みを促すことを目的として、経済産業省が「デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定や公表といった経営者に求められる対応」を取りまとめたものです。
「デジタルガバナンス・コード」は、以下4つの柱で構成されており、これらに沿って考えることによりロードマップからDX戦略へ落とし込めます。
- 経営ビジョンビジネスモデル
- 戦略
- 成果
- ガバナンス
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ビジョンとロードマップを明確に持ってDX推進へ
今回は、DX推進に不可欠なビジョンとロードマップ策定の重要性について解説しました。
DX推進におけるビジョンやロードマップの策定にあたっては、今回紹介した策定のポイントや手順に沿ってロードマップを策定したら終わりではなく、その後も日々変化する状況に対して柔軟な対応が求められます。
従業員一人ひとりが、繰り返しDX成功までの道のりは長く険しいことを心に刻んだ上で、全社を巻き込んでDX推進へのロードマップ策定を目指しましょう。
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