注目されるDXの本質とは何か?企業が推進すべき理由や背景について
DXは、ビジネスシーンだけでなく人々の生活にも様々な影響を及ぼしています。この先の新しいビジネス社会に適応するためにも、DXの本質を理解しておくことは必要です。本記事では、そんなDXの本質について、推進すべき理由や背景など詳しく解説していきます。
目次
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して、社会にある既存の考え方や業務のあり方、システムにイノベーションをもたらすことです。
最新のデジタル技術を導入するDXによって、「社会における様々な営みに変革が起き、より良い方向に向かっていく」と注目されています。
DXが注目されている背景
DXがビジネスシーンで注目されている背景には、一体何があるのでしょうか。ここでは、特に重要な3つの背景を解説します。
最先端のテクノロジーの登場
DXが注目されている背景には、最先端のテクノロジーが加速度的に開発されている現実があります。
とりわけ、IT分野のテクノロジーは目まぐるしく進歩しています。企業間競争に勝ち抜くためには、最先端のデジタル技術を活用して、変化する顧客ニーズや新たなビジネスモデルに対応しなければなりません。
企業は、AI(人工知能)、IoT、ICT、5Gなど、最新のデジタル技術を取り入れて適切なDXを実施していくことで、業務プロセスの改善による業務効率化や新規ビジネスの創出などにつなげていく必要があるのです。
レガシーシステムの運用にリソースが割かれる現状
あらゆる産業で既存のシステムが老朽化しているという課題が指摘されており、古いシステムに割いているリソースの多さが問題視されています。そのため、DXを契機とした新しいシステムへの転換が求められている背景があるのです。
あらゆる産業において、新たなデジタル技術を利用してこれまでにないビジネス・モデルを展開する新規参入者が登場し、ゲームチェンジが起きつつある。こうした中で、各企業は、競争力維持・強化のために、デジタルトランスフォーメーション(DX:DigitalTransformation)をスピーディーに進めていくことが求められている。[引用:経済産業省「DXレポート~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~」より]
このように、グローバル競争も見据えて、DXでスピード感のあるイノベーションを起こしていくことで、国際競争力のある企業体制を目指す必要性があります。
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多様な働き方が注目される時代に
近年、出社を基本とした業務体制からリモートワークを取り入れた勤務形態まで、多様な働き方が浸透しつつあります。とりわけ、2020年の緊急事態宣言を契機として、リモートワークやハイブリッドワークを導入する企業が増加しました。
都内企業(従業員30人以上)のテレワーク実施率は62.7%。[引用:東京都「テレワーク実施率調査結果」より]
東京都が2022年2月に実施した調査によれば、30人以上の従業員がいる企業のリモートワーク導入率は、62.7%となっています。
このような働き方の多様化が進んでいる状況に対応するためにも、デジタル技術を活用したDX実施の必要性が高まっているのです。
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DXの本質とは?デジタル活用との違いも解説
DXとよく混同されるものとして「デジタル活用」があります。しかし、実際にはDXとデジタル活用は別の意味を持つ言葉です。
ここでは、DXについて掘り下げ、デジタル活用との違いについて紹介します。
デジタル活用とは
デジタル活用とは、業務にデジタルツールなどを取り入れて、部分的な業務改善を図ることを指します。
一方で、DXはデジタル技術を使ったシステム全体の刷新、業務プロセスの改善など、構造そのものを変革していくような、根本的な施策を意味するのです。
飛躍的に上昇したデータ収集量
デジタル化が進展する中、IoTの活用、モバイル端末の普及、コンピューターの処理速度の向上・記憶容量の増加などさまざまな要素が相まって、収集できるデータが爆発的に増加しました。
入手したデータの活用のためには、蓄積と適切な管理、可視化、分析、意思決定などのステップを踏むことになります。その際には膨大な量のデータ処理が必要になるため、AIをはじめとする最先端のデジタル技術の導入が不可欠になるのです。
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技術面から見たDXの本質
技術面から見たDXの本質は、「任せられる仕事はデジタルに任せてしまおう」という社会的な考えの浸透です。デジタル技術の発達によって、蓄積されるデータが膨大になると、人の力ですべての情報を適切に処理することは現実的に不可能です。
また、データ活用によって人が行う業務もより一層複雑化・多様化します。そうなると、入手したデータの利活用にともなう業務負担が増し、ビジネス全体のスピード感も欠くことになります。
「デジタル技術に仕事を任せることで、より多くの業務をこなせるようにしよう」という考え方を取り入れることで、いままで処理できなかった大量のデータを扱うことが可能になり、業務効率・生産性向上が期待できます。
ビジネス面から見たDXの本質
ビジネス面から見ると、DXは新しいビジネス機会を創出する可能性を秘めています。
DXの事例としてよく挙げられる、Netflix、Uber、Spotifyなどは、既存ビジネスを変革させる、破壊的なイノベーションの結果生まれたサービスです。
顧客はこれまでのビジネスモデルで得られなかったサービスを体験できるようになりました。同時に、企業は新しい価値を提供することで、新たな顧客を取り込み、持続的な企業価値向上を達成しました。
DXの本質はデジタル活用ではなくビジネスの変革
DXの本質はビジネスの変革にあります。デジタルツールやシステムによって、業務効率化を果たすことも重要ですが、企業がより永続的に発展するためには、組織体制や業務プロセス、ビジネス構造の抜本的な変革が求められます。
DXによって、今まで発見できなかった顧客ニーズや社会課題を見つけ、デジタルの力で解決策を見いだすことが、社会の発展にも寄与します。つまり、ビジネスの変革は人々の生活をも変革させる力があるということです。
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企業がDXを推進すべき理由やメリット
企業がDXを推進すべき理由やメリットは以下の通りです。
- 作業の手間を省くことができる
- グローバル経済へ適応することができる
- 古い業務体制を一新することができる
- コスト削減や最適化を行い広い範囲で実現できる
1.作業の手間を省くことができる
DXによって、単純業務を効率化したり、ルーチンワークを自動化できます。これによって人手不足の解消が期待できるだけでなく、人的リソースをコア業務に割り当てることも可能です。
たとえば、商談や新規事業開拓などのコア業務に多くのリソースを向けることで、売上拡大や新たなビジネスチャンスの拡大などにもつながります。
効率化や自動化できる部分は積極的にDXを取り入れることで、企業全体の生産性向上も実現できる点は大きなメリットだといえます。
2.グローバル経済へ適応できる
世界的に競争力のある企業は、新しいデジタル技術を駆使して、システムや組織体制の刷新をはかることでイノベーションをもたらしています。こうした先進的な企業と競争していくためにも、日本企業はできるだけ早くDX化を実現する必要があります。
日本企業においては人手不足や生産性の低さなどから国際競争力の低下が指摘されています。DX化による組織の変革や業務プロセスの最適化による生産性向上によって、競争優位性の確保にもつながります。
3.古い業務体制を一新できる
DXを推進することで、会社全体で成長の足かせになっている古い業務体制やシステムを刷新し、非効率な作業を減らすことができます。
膨大なデータの手作業での入力業務や目視での確認など、時間や手間がかかる業務を効率化・自動化させることで、ミス軽減にもつながります。
また、今まで単純業務に携わってきた人材をより創造的な業務ややりがいのある業務に割り当てることもできます。それにより、モチベーションアップによるパフォーマンス向上や離職防止なども期待できるでしょう。
4.コスト削減や最適化を広い範囲で実現できる
デジタル技術の利活用によって、業務にかかる時間・費用・人などが可視化できます。また収集したデータによって、無駄な業務や非効率な業務に対する改善策が打ちやすくなります。
最適な人材配置や改善した業務フローを適用することで、必要以上にかかっていた時間やコストを軽減できるのは企業にとって大きなメリットでしょう。
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DXの推進における日本企業の課題
DXを推進するには、人材やシステム、受け入れ体制を充実させる必要があります。
ここでは、DX推進に関して日本企業が抱える課題についてみていきましょう。課題を知っておくことで、どのような問題点を解消すべきかがわかります。
DXを推進する人材がいない
日本企業がDXを推進する上で障害になるのが、IT技術や知識を持っている人材が不足している現状です。
AI 人材の生産性が 0.7%上昇し、かつ、AI 需要の伸びが「平均」の場合は、2025 年には 8.8 万人、2030 年には 12.4 万人の需給ギャップが生じる。[引用:経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」より]
このように、AI需要の伸びがある程度想定される場合は、将来におけるIT人材の需給関係に、大きなギャップが生まれると予想されています。
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一貫性を持ったシステムが構築できていない
多くの日本企業では、導入されているシステムに一貫性がなく、問題やシステムアップデートが入るたびに、個別の対応が迫られてしまうケースが多いといわれています。
そのため、システムを構築するたびにメンテナンスに費用や時間がかかってしまうという問題点があるのです。DX化を推進することで、システムに一貫性を持たせるような、既存のシステムから新しいシステムへの大転換を図る必要があります。
IT関連の予算を有効活用できていない
日本企業の多くで老朽化したシステムやサービスのメンテナンス費用に、IT予算のうちの8割を使用しているというデータもあります。
DX の推進、すなわち、新しいデジタル技術を導入して、新たなビジネスモデルを創出するためには、IT 投資における「攻めの IT 投資」を重点化する必要がある。しかし、JUAS の「企業 IT 動向調査報告書 2017」によると、我が国企業の IT 関連予算の 80%は現行ビジネスの維持・運営(ラン・ザ・ビジネス)に割り当てられている。さらに、ラン・ザ・ビジネス予算が 90%以上を占める企業も 40%を超えている。[出典:経済産業省「DXレポート~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~」]
このように、既存のシステムの維持にばかり予算をかけてしまった結果、攻めの投資ができないため、企業のDXが進まないという状況にあるのです。
具体的な経営戦略を立案できない
DXに取り組む上で最も重要な視点は、「どんな目的でDXするのか」です。
DX化に取り組んでみたのはいいものの、一体性に欠けるデジタル技術の導入に終わってしまったら意味がありません。
企業の経営者と社員が一体となって、従来の企業体制を根本から改革して、生産性向上などに役立つようなDXの施策が必要です。
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DX時代に求められる人材像
DXの推進が求められる現代のビジネスシーンにおいて、DX化を成功させるポイントの一つが「人材」です。
ここでは、DX推進に必要とされる人材の特徴を解説します。
全体を俯瞰できる人材
DXを推進する上で重要なのは、企業のビジネスを大局的な視点で、部署や部門の隔たりなく、公平に評価できる能力です。
特定の部署や特定の業務をデジタル化するだけでなく、組織全体の業務プロセスやフローなどを変えるためには、ITだけでなく業務にも精通している必要があります。同時に全体を俯瞰してビジネス戦略を描ける人材の登用がポイントです。
また、DXでは部署間の連携が不可欠です。一つの部署や特定の人たちだけでDXを進めていけるわけではありません。キーパーソンを巻き込みながら全社的な取り組みに発展させることが重要です。
将来的な企業の行く末やビジネスの展望を見通して、適切にDXを推進していける能力を持つ人材が理想だといえます。
▷DX推進がイノベーションの鍵になる?阻む壁や必要な人材・組織とは
具体的な行動を行うDX人材
企業に導入するデジタル技術を決めたら、次にそれを適切に導入し、実装していく必要があります。デジタル技術の適用範囲や程度を考え、可能な限り費用対効果が高いDXを推進していける人材が求められるでしょう。
大量のデータを解析・活用できる人材
デジタル技術を導入したら、今度はデジタル技術による生産性の向上率やコストカットの幅など、データを細かく分析して、業務を効率化していける人材が求められます。いわゆるデジタルサイエンティストという職種です。
また、データをもとにした業務改善の提案など、具体的な次のアクションを提案できる人材が必要とされるでしょう。ITの知見はもちろん、業務分野の知識も求められます。
▷DX推進を成功させる組織とは?組織変革のポイントや成功事例を解説
DXの本質を理解して適応力の高い組織への変革を目指す
DXの本質は、デジタル活用による業務効率化にとどまらず、ビジネス全体を変革させることです。
日本企業の多くは、古いシステムを使い続けた結果、新しいデジタル技術に回す予算が無くなり、DX化が思うように進んでいないという現状があります。DX化が進まないと、企業の永続的な発展が困難になるでしょう。
DXの重要性を理解して、組織構造や業務プロセスの変革、さらには革新的なビジネスを生み出して、グローバル競争で優位性を確立できるような組織を作る必要があります。
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