デジタルタトゥーとは?意味や事例・危険性を簡単に解説
「デジタルタトゥー」はSNSやインターネットが普及した昨今において注目されている言葉です。聞いたことはあるものの、どのような意味なのか・どういったリスクがあるのかなど理解できていない人も多いかもしれません。この記事では、デジタルタトゥーの意味や事例をわかりやすく簡単に解説していきます。
監修者 福本大一 株式会社kubellパートナー アシスタント事業本部|ユニット長 大学卒業後、toC領域のWEBメディア事業で起業。事業グロースに向けたSEO戦略から営業・運用広告に従事し、約2年間の経営を経て事業譲渡。2021年3月からChatwork株式会社(現:株式会社kubell)に入社し、カスタマーマーケティングやアライアンスを経験した後、メディア事業・運用広告事業の責任者としてミッションを遂行する。現在は、DXソリューション推進部のマネージャーとして新規事業領域のセールス・マーケティング・アライアンス・メディア事業を統括。
目次
デジタルタトゥーとは?意味を解説
デジタルタトゥーとは、「刺青」の英語表現であるタトゥー(tatto)とデジタルを組み合わせた造語であり、刺青の「簡単に消すことはできない」という性質を、一度インターネット上にあがった情報は半永久的に残ってしまうことに例えた表現として使われています。
そして、このデジタルタトゥーという言葉が社会に広く認知されるようになったのは、メキシコ出身の研究者であるファン・エンリケス氏が、世界的に動画配信されるプレゼンテーションプログラムにおいて取り上げたことがきっかけだと考えられています。
近年では、SNSの普及によって個人による情報発信が一般化したことで、人を不快にさせるような投稿をする人たちがいるのも事実です。
なかには、匿名性を悪用し、誹謗中傷や迷惑行為を繰り返した結果、罪に問われるケースもあり、デジタルタトゥーは、深刻な社会問題にもなっているのです。
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デジタルタトゥーの種類と具体的な事例
一度インターネットに掲載された写真や動画・文章は、簡単に消すことができず、半永久的に残ってしまいます。デジタルタトゥーを大きく分けると下記の6つの種類に分類することができます。
- 個人情報
- 失言
- リベンジポルノ
- 逮捕歴や前科
- 悪ふざけ
- 誹謗中傷・デマ
ここからは、それぞれのデジタルタトゥーについて詳しく解説していきます。
デジタルタトゥーの被害者や加害者にならないためにも、それぞれのデジタルタトゥーにより、どのような被害や影響を受けるのかを知っておきましょう。
(1)個人情報
インターネットは、非常に便利なコミュニケーションを叶えてくれる手段ですが、使い方を間違ってしまうと、深刻なトラブルの引き金にもなってしまいます。
その一つが、個人情報の掲載によるデジタルタトゥーです。普段、頻繁にSNSなどを利用して友人や知人と交流していると、あたかもそこを「プライベートな空間」のように感じてしまうことはないでしょうか。
その結果、インターネットの「公開性」を忘れて、安易に個人を特定できるような情報を掲載してしまうことがあります。そのような情報から、個人の居場所が特定されてしまうことは珍しくありません。
それだけでなく、場合によっては、性別や年齢、職業なども特定されて犯罪や迷惑行為などのトラブルに巻き込まれる可能性があるので注意が必要です。
子どもに関する投稿にも十分に注意
子どもの成長やかわいさを共有したい・記録しておきたいという目的でSNSに投稿している方も多く、子どもの写真をアップすることをシェアレンティングと呼びます。
お子様がいる方は自身の情報だけではなく子どもに関するシェアレンディングにも十分に注意しておく必要があります。
不特定多数の人が子どもの写真をみることができるので、犯罪につながる可能性があるためです。子どもの顔はぼかしておく・アカウントに鍵をかけておくなどの対応をしましょう。
(2)失言
TwitterやInstagramなどのSNSは容易に自由な発言ができることから高い人気を維持しています。しかし、自由度の高さゆえに個人の呟き程度の感覚で投稿した不適切な内容が「炎上」と呼ばれる、大きな話題へと発展するケースも少なくありません。
騒ぎに気づき、当の本人がすぐさま投稿を消したとしても、データを保存していた第三者による拡散により、情報はデジタルタトゥーとして残り続けるのです。
(3)リベンジポルノ
別れた恋人や配偶者への嫌がらせとして、性的な画像や動画をインターネット上にばらまくリベンジポルノもデジタルタトゥーとなって残り、被害者に精神的なダメージを与え続けます。
2014年にはこのような行為を処罰する「リベンジポルノ防止法」が制定されましたが、その被害は増加傾向にあり、5年後の2019年には1,479件と過去最多の被害件数が報告されています。
このようなデジタル機器などを用いた性暴力被害は「デジタル性暴力」とも呼ばれ、実際に性的な画像や動画を撮影するだけでなく、「撮らせて」「画像を送って」などと相手に強要することもデジタル性暴力にあたります。
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(4)逮捕歴や前科
日夜さまざまな犯罪が起き、多くの情報がネットニュースでも報道されていますが、中でも逮捕歴や前科といった記録はのちの人生に大きな影響を与えるデジタルタトゥーとなってしまいます。
逮捕後、不起訴となれば、罪に問われることはありませんが、逮捕時の情報のみが拡散され、一人歩きしてしまうことは珍しくありません。
また、前科についても、罪を償っていれば「忘れられる権利」や「更生を妨げられない利益」を有しているはずです。
しかし、現実にはこれらの権利が正常に機能する可能性は低く、本人はもちろん家族も含めた、その後の生活の障壁となってしまうのです。
(5)悪ふざけ
デジタルタトゥーの中でもSNSが特に深く関係しているのが悪ふざけなどの不適切な言動の投稿です。
このようなSNSを通して、不適切な投稿を繰り返す行為は「バカッター」と呼ばれ、近年では社会問題にもなりつつあります。
コンビニエンスストアの冷凍庫に寝そべったり、売り物のおでんにいたずらをしてみたり、といった、本人は「悪ふざけのつもり」の動画が拡散され、炎上したケースを記憶している人も多いのではないでしょうか。
このような行為は、罪に問われる可能性があり、のちに多額の損害賠償を請求されることもあります。
(6)誹謗中傷・デマ
世間に名前が知られている著名人への誹謗中傷、また、デマ情報の流布といったインターネットの「匿名性」を悪用した行為もデジタルタトゥーの一つです。
当然ですが、匿名であれば、何をしても何を言ってもいいわけではありません。事実、誹謗中傷を受けたことに苦しみ、極端な選択をしてしまう人も存在しています。
たとえ匿名であっても、その行為や発言の責任は自身にあること、誹謗中傷やデマは、デジタルタトゥーとして残り続け、相手の人生に暗い影を落としてしまう危険を持っていることを理解しなければならないのです。
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デジタルタトゥーの危険性や影響について
半永久的に残り続けてしまうデジタルタトゥーは、当人や被害者、その家族にも多くの悪影響を及ぼします。
ここでは具体的に、デジタルタトゥーが被害者や周囲の人にどのような危険を及ぼすのかに焦点を当てて解説します。
就職活動への影響
就職活動の際に、過去の不適切な言動が発覚した場合は、採用結果に影響を与えてしまうことも考えられるでしょう。
人材採用は、企業にとって多くの時間やコストがかかるものです。そのため、企業側ができる限り危険因子を排除しようとするのは当然と言えるでしょう。
そのため、人事担当者が採用候補者の情報を広く収集する段階で、過去のデジタルタトゥーが発覚する可能性は十分にあり得ます。
本人にとっては、仲間内の悪ノリのようなつもりであっても、他人を不快にさせるような行為であれば、採用担当者が悪い印象を抱いてもおかしくはありません。
交際や結婚への影響
デジタルタトゥーの中でもリベンジポルノや逮捕歴・前科などに関する情報は、交際や結婚にも悪影響を与えてしまいます。
もちろん、過去のこととして、気にしないという人もいるでしょう。しかし、いずれにしてもこれらの記録が「ポジティブな要素」として捉えられることは考えにくいはずです。
また、当人同士は良くても、結婚となれば、家族や周囲から反対されてしまう可能性も否めません。デジタルタトゥーがさまざまな場面で、いかにその人の人生の行く手を阻むかを知る一例といえるのではないでしょうか。
家族や周囲に迷惑をかける
デジタルタトゥーは本人だけでなく、その家族にも被害を及ぼすことがあります。
特に誹謗中傷や不適切な行為、リベンジポルノなどの罪に問われることもある行為によるデジタルタトゥーは、本人だけでなく家族や通学先、勤め先までもが特定され、家族や周囲への誹謗中傷へと波及してしまうことも少なくありません。
軽い気持ちで残したデジタルタトゥーであっても、自分のみならず周囲の生活も一変させてしまう可能性があるのです。
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入居審査に影響する可能性がある
アパートやマンションなどの賃貸物件に引っ越す際は、その人が信用できる人物かを判断する入居審査が行われます。
賃貸物件を借りる際には、一般的に実名を伝えることになります。そのため、その際に実名検索をされ、過去の犯罪歴や迷惑行為を行ったことが知られてしまうと入居審査に通りにくくなることも考えられるでしょう。
対応は、不動産会社や賃貸物件の種類によっても異なりますが、入居審査の際に良い印象を与えないことは、確かといえます。
解雇・昇進できない
会社勤めをしている人が、デジタルタトゥーに値する情報を公開してしまうと、事の重大さによっては解雇されたり昇進ができない状況に陥ってしまうことが懸念されます。
近年、増加傾向にあるのが、個人のアカウントで非公開の業務内容について発信をし、問題が明るみになるケースです。
会社が悪質だと判断したときは、法的手続きを取って発信元を特定し、会社の信頼を落としたという観点から損害賠償を請求される可能性もあります。
退学や退職に追い込まれることがある
先にもお伝えした通り、デジタルタトゥーが、新たな迷惑行為や誹謗中傷の引き金となってしまうことは珍しくありません。
例えば、自身のデジタルタトゥーにより、毎日のように通学先や勤務先に迷惑電話やクレーム、嫌がらせなどの迷惑行為が繰り返されることもあります。
もちろんこれらの行為も許されるものではありませんが、その原因が、当人の迷惑行為や不適切な言動にあるのであれば、周囲の理解や協力を得ることは難しくなってしまいます。
その結果、退学や退職を余儀なくされることもあるでしょう。
本人の死後も残る可能性がある
デジタルタトゥーはその人が亡くなってしまった後も残り続ける可能性を秘めています。
本人は、どうせ匿名だからといたずらや悪ふざけのつもりで発信したとしても、それらの内容が他人に不利益を与えるようなものであれば、当人を特定することは可能であることを忘れてはいけません。
そもそも、インターネットはバレなければ何をしてもいい空間ではないのです。たとえ当人がなくなったとしても、デジタルタトゥーは消えないことを、改めて認識する必要があるでしょう。
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デジタルタトゥーで苦しまないために意識すべき5つのこと
本人や周囲の人の人生を大きく狂わせてしまう可能性があるデジタルタトゥー。
デジタルタトゥーで苦しむ人を作らないために、下記の5つを意識するようにしましょう。
- 他人に見られて困る投稿はしない
- アカウントやプロフィールを特定できないようにする
- 位置情報をオフにする
- 価値観は人それぞれであることを認識する
- 個人を特定できる投稿を公開しない
それぞれの意識するべきポイントについて解説をしていきますので、デジタルタトゥーを起こさないためにも必見です。
(1)他人に見られて困る投稿はしない
一番大切なことは、インターネットは不特定多数の人が閲覧する可能性のある空間であることを理解し、投稿の内容が「誰かを不快にさせるものではないか」についてよく考えてから投稿することです。
誰かの不利益となったり、不快にさせたりする内容でないかを冷静に判断してから公開しましょう。
(2)個人が特定されるような情報は掲載しない
SNSのアカウントやプロフィールなどへ本名や個人情報を掲載するのは、リスクが伴うことを意識しおきましょう。誰でも閲覧できる場なので思わぬ経路から個人が特定される可能性があります。
プロフィール情報やこれまでの投稿に個人情報が特定されるリスクがないか、今一度確認しておくようにしましょう。また、アカウントに鍵をかけて限られた人のみが閲覧できるようにしておくのも効果的です。
(3)位置情報をオフにする
写真を撮る際やSNSに投稿を行う際には、スマホの位置情報サービスをオフにしておきましょう。GPS機能が搭載されたスマホやカメラで撮影した際には、撮影と同時に位置情報が記録されてしまうことがあります。
位置情報のみでは、個人情報には該当しないものの、撮影場所が勤務先や学校などであれば、個人が特定されてしまう要素の一つとなるため、注意が必要です。
(4)価値観は人それぞれであることを認識する
インターネット上で自分の考えを発信するときは、異なる価値観の持ち主が見ることも念頭に置いて、一方的な内容にならないよう気をつけましょう。
悪意なく良かれと思っていた内容であっても、価値観の違う第三者を傷つけてしまう可能性があります。「無意識バイアス」と呼ばれる、偏った見方になっていないかを改めて考えてから発信するようにするとよいでしょう。
(5)匿名性を悪用した非常識な行動を取らない
インターネット上での誹謗中傷、デマやフェイクニュースの流布、迷惑行為の投稿など、これらの不適切行為は、そもそも「匿名性」の気の緩みが引き起こしていることも少なくありません。
インターネット上でも、一般の社会と同じように、守るべきマナーや相手への配慮があることを忘れないようにしましょう。
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デジタルタトゥーは削除できる?対処法を解説
一度インターネット上に掲載されたデジタルタトゥーを削除することはできないのでしょうか。
ここでは、デジタルタトゥーを削除する手段、拡散された場合の対処法について解説していきます。
可能な場合は自分で削除
自分で投稿した内容であれば、自分自身にて削除しましょう。ただし、冒頭でも触れているように自分が上げた投稿を削除しても、第三者による拡散を止めることはできません。
また、削除した行為を「なかったこと」にしようとしていると受け取られ、さらなる炎上を招くケースもある点には注意が必要です。
警察に届け出る
第三者の発信によりデジタルタトゥーの被害者となった場合には、警察署で相談に乗ってもらうことも可能です。誹謗中傷やデマ・個人情報の流出などは、大きな問題や被害に発展しかねません。
すべてのケースにおいて、警察が対応をしてくれるとは限りませんが、相談することは可能なので、まずは最寄りの警察署に問い合わせてみましょう。
弁護士に依頼する
デジタルタトゥーを削除したいときに即効性があり、成功率が高いのが弁護士への依頼です。名誉棄損や侮辱罪、そしてプライバシーを侵害するような投稿などに対応してもらえ、迅速さも期待できます。
ただし、弁護士への依頼はどうしても費用がかかってしまいます。費用面が心配な場合は、まずは自治体などの無料法律相談を利用してみるとよいでしょう。
ただし、弁護士に依頼しても今の法律ではすべてのデジタルタトゥーを削除できない可能性があることも事実です。
サイト管理者に削除をお願いする
掲示板や口コミサイトなどの投稿がデジタルタトゥーとなっている場合は、サイト管理者に削除を求めましょう。
多くのサイト管理者は問い合わせ機能を用意しています。ただし、サイト管理者の中には話に掛け合ってくれないケースもあることも知っておきましょう。
専門の業者に頼む
デジタルタトゥーを削除したい場合は専門の業者に頼る方法もあります。多くの専門業者では顧問弁護士と連携を取り、悩みや状況に合わせた対応を行ってくれます。
無料で相談に乗ってくれる専門業者もあるため、不安を感じている人は一度、相談をしてみても良いでしょう。
▷デジタルタトゥーの消し方とは?具体的な事例や後悔しないための知識
デジタルタトゥーの危険性を理解して安易な行動はしない
テレビや新聞が情報メディアの主流であった時代と異なり、現代社会では、誰もがいとも簡単に個人の意見を発信することができます。
それはとても便利である半面、半永久的に残り続けてしまうデジタルタトゥーは、情報化社会の負の遺産ともいえるでしょう。
ネット社会の便利さは、時として危険と隣り合わせであることを忘れず、一人ひとりが責任感と多様な価値観があることを認識した上で、情報に接する必要があるのではないでしょうか。
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