アジリティの意味とは?アジリティが高い組織の特徴や高める方法

最終更新日時:2023/09/05

組織・マネジメント

アジリティとは

スポーツ界では既に用いられている、「アジリティ」。近年ではビジネス用語としても活用されているため、耳にしたことのある人も多いのではないでしょうか。本記事では、アジリティの意味やアジリティが高い組織・人材の特徴をアジリティを高める方法とあわせて解説します。

アジリティの意味とは?

アジリティ(Agility)とは、日本語で「敏捷性」を意味する言葉です。スポーツ分野では「素早く適応し、軽快に動く能力」として広く使われている概念ですが、ビジネスシーンにおいては、組織が市場の変化に対して迅速かつ柔軟に対応できる力を指します。

近年、アジリティが注目されている背景には、企業を取り巻く状況の急速な変化があります。現代は「VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)」の時代といわれており、状況が目まぐるしく変転するだけでなく、予測不可能な出来事が起こりがちです。

これからのビジネス環境下で企業が生き残っていくには、どのような事態が発生しても素早く対応できる能力が求められます。アジリティの高い組織を構築し、アジリティの高い人材を育成していくことが、持続的な企業の発展・成長に欠かせないといえるでしょう。

ビジネスにおけるアジリティの定義

ビジネスにおけるアジリティとは、社内外の環境や状況の変化に応じて的確に素早く行動できる能力のことです。市場の急速な変化や顧客ニーズの多様化、競争環境の厳しさといった変動し続けるビジネス環境において、アジリティは企業競争力を左右する重要な要素です。

アジリティの高い行動の具体例としては、新型コロナウイルス感染拡大に伴うリモートワークへの移行やサービスのオンライン化、ビジネスモデルの大幅転換などが挙げられます。

アジリティを高めるには、経営管理や人事だけでなく、各部門・各チームにあるさまざまな課題を素早く解決していかなければなりません。そのためには、社員一人ひとりが問題意識と高い問題解決能力を備えていることが重要となります。

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アジリティとクイックネスの違いとは?

アジリティとクイックネスは、両者とも「素早さ」を指す概念ですが、その特性に違いがあります。クイックネスは単に「早さ」や「迅速さ」を意味する一方で、アジリティは「迅速さ」に加え、「柔軟性」や「適応性」も含んでいるのが特徴です。

つまり、アジリティは組織が変化に対して素早く対応するだけでなく、その変化に適応し、新たな環境で活動し続ける能力をも意味します。これは、変化の激しい現代のビジネス環境において、非常に重要な特性となります。

アジリティを高めるメリット

現代の企業経営や組織運営において、アジリティを高めることは必要不可欠といえますが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

ここでは、アジリティを高めることによって企業や組織が得られるメリットについて解説します。

業務遂行力・業績が向上する

アジリティが高まると、組織全体の判断力と行動力が向上し、素早く適切な決定を下すことが可能です。また、顧客のさまざまなニーズに合わせて、臨機応変な対応ができるようにもなります。その結果、顧客からの評価が上がり、受注の継続や拡大も実現できるでしょう。

さらに、業務遂行のスピードがアップすることにより、確認作業に時間を充てられるため、ミスの削減や予防にもつながります。空いた時間をリフレッシュや自己研鑽などに有効活用すれば、仕事の質や社員個人のスキルの向上も期待できるでしょう。

アジリティの高い組織では、環境や状況の変化に対し素早く適切な判断をする習慣が身につくため、社員自身のリーダーシップや発想力・応用力が鍛えられます。組織全体の生産性や効率性の向上に加え、社員個人の能力も高められるため、結果として企業競争力の向上につながるのです。

知識・ナレッジが蓄積されていく

アジリティを高めることにより、組織内の知識やナレッジが蓄積され、組織の学習能力が向上します。

アジリティの高い組織では、新たな取り組みや試みが活発に行われ、その結果から学び、成長する文化が育ちます。これは、組織の持続的な成長とイノベーションを支える要素であり、組織の競争力を長期的に維持するためには欠かせない要素です。

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アジリティが高い組織・人材の特徴

アジリティの高い組織の構築や人材の育成を推進するためには、環境の整備が必要です。ただやみくもにアジリティだけ高めようとしても、なかなかうまくいきません。

ここでは、どのような状態が「アジリティが高い」といえるのか、アジリティが高い組織や人材に共通してみられる特徴について解説します。

問題解決・判断能力が高い

アジリティが高い組織や人材は、問題解決と判断能力が非常に高いという特徴があります。これは、新しい情報を素早く吸収し、それをもとに適切な決定を下す能力が求められるためです。瞬時に状況を評価し、適切な行動を取ることが可能な人材は、組織のアジリティを高める重要な要素となります。

組織の向かうべき姿が明確でかつ共有されている

アジリティの高い組織では、その目指すべき方向性が明確であり、すべてのメンバーで同じ価値観を共有しています。これにより、各人が自己主導的に動き、迅速な判断と行動が可能となります。

もし急激な変化や不測の事態が起こっても、組織のビジョンや指針に照らし合わせて臨機応変な対応ができるでしょう。組織のビジョンや目標が明示され、それを共有することで、組織全体としての一体感が生まれ、アジリティが向上します。

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市場ニーズの変化に素早く反応している

アジリティの高い組織は、市場ニーズの変化に対して素早く反応します。

社員がそれぞれ情報収集に努め、積極的に社内で情報共有できる環境や土壌があることで、市場環境の変化を即座にキャッチできるようになります。それにより、変化に対応するための新たな戦略を迅速に立案し、実行することが可能となるのです。

この機敏さは、組織の競争力を保つために必要不可欠な要素であり、アジリティの核心的な部分を成しています。

自主性・発想力・理解力が高い社員が多い

アジリティの高い組織では、自主性、発想力、そして理解力を持った社員が多いという特徴があります。各人が自ら考え、行動する能力は、組織全体の問題解決能力や適応能力を向上させます。

特に近年は価値観が多様化していることから、発想の柔軟性や価値観のアップデートはアジリティを高めるうえで必須条件といえます。社会や業界、他社の動向を収集し、自社の置かれている状況を客観的に把握できる人材は、組織内の変化にも臨機応変に対応できるでしょう。

また、社員それぞれに高い決定力や指導力が求められるため、必然的にリーダーシップを効果的に発揮できる人材が集まるのも特徴です。アジリティの高い組織ではリーダーシップ開発にも力を入れているため、より迅速かつ効果的に市場の変化に対応することが可能となります。

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アジリティを高める方法

アジリティを高めるためには、以下のようなアプローチが有効です。

権限を委譲する

アジリティを高めるための一つの手法は、組織の下位レベルに権限を委譲することです。組織として素早く適切に対応していくには、社員個人の敏捷性を高めていかなければなりません。

現場の裁量で進められる範囲が狭いと、何らかの変化や課題に直面したときに、社員は自らの判断で迅速に行動できません。スピード感のある対応ができなければ、顧客からの評価を得られず、機会の損失につながる可能性もあるでしょう。

アジリティの高い組織では、経営層やリーダーは方向性だけを示し、判断や行動は各社員に任せています。また、失敗を許容する風土をつくることで、社員も失敗を恐れずさまざまな仕事に取り組めるようになるため、よりアジリティの高い人材へと成長していけます。

ただし、現場の裁量を高めることは経営上のリスクも伴います。権限委譲を行う際には、その狙いや期待する効果について、社員にしっかりと説明することが大切です。

組織の向かうべき姿を認知させる

アジリティを高めるためには、組織の向かうべき姿をすべての社員に認知させることが大切です。

組織のビジョンや戦略を明確化できていないと、社員の判断や行動が間違った方向に進み、統率が取れない状態になりかねません。

社員が組織のビジョンと戦略に沿った対応をしていくには、経営陣やリーダーが組織としてのビジョンや価値観を示し、共有することが不可欠です。社員はそれらの情報をもとに素早い判断や適切な行動をできるようになります。

また、能力や経験が不足している社員に裁量だけ与えても、アジリティの高い組織を醸成することはできません。組織のアジリティを高めていくには、業務に必要なスキルや情報を浸透させ、社員のスキルアップを後押しする環境を提供することも大切です。

業務工程を見直す

組織のアジリティを高めていくには、状況の変化に合わせて業務プロセスを見直し、無駄な手順の排除や効率化を図ることが重要です。

特に業歴が長い企業では、何十年も前の業務プロセスを維持しているケースが少なくありません。たとえば、紙ベースの申請手続きや手作業の事務処理が残っていたり、業務プロセスに古い仕組みが組み込まれていたりすると、業務改善が妨げられる可能性があります。

意思決定のスピードを上げるには、まずは業務プロセスを可視化し、改善点を見つけやすくしましょう。また、すべての社員が「もっと効率的にできる方法はないか」と探る姿勢を持つと同時に、社員からの改善提案を受け入れる企業文化の醸成が欠かせません。

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職場環境を整備する

アジリティは、新たなアイデアを生み出し、それを実行する自由と自主性を社員が持つことによって生まれます。そのためには、管理者がアジリティの重要性を理解し、アジリティの高い人材を正当に評価する環境や制度を構築することが大切です。

成果を上げた社員を評価する際は、その社員が持つアジリティの高さもあわせて評価するようにしましょう。また、パフォーマンスの高い社員にヒアリングを実施し、どのような判断・行動をしているか分析することも大切です。

アジリティの高い社員をロールモデルにすることで、周囲のメンバーは具体的にどのような姿勢や行動が評価につながるのかを理解できます。その結果、アジリティの高い人材が育成され、組織全体のモチベーションも高まっていくでしょう。

ITツールを活用する

組織のアジリティを高めるためには、情報の一元化や共有に役立つITツールの活用が欠かせません。

たとえば、チャットツールや社内SNS、ファイルの共同編集が可能なシステムなどを導入することで、円滑な情報共有が可能となります。社員全員が最新の情報にアクセスできるほか、メンバー間のコミュニケーションも促進されるため、素早く適切な判断・行動につなげやすくなるでしょう。

また、プロジェクト管理ツールやワークフローシステムを活用し、進捗管理や申請・承認などの業務を効率化することも大切です。リモートワークや時短勤務など働き方が多様化している現代において、アジリティを高めていくには、いつでも・どこでも簡単にアクセスできる環境の整備が不可欠といえます。

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長期的な視野で取り組む

アジリティを高めるためには、短期的な成功を求めるのではなく、組織と人材の持続的な成長と発展に焦点を当てた長期的な視野が必要です。

特に業歴の長い企業や事業規模の大きい企業であれば、すぐに社内の仕組みや体系を変えていくのは現実的ではありません。また、アジリティの高い組織文化の醸成や人材開発にも時間がかかります。

企業競争力を強化し、変化スピードの激しい時代を生き抜くためには、早い段階でアジリティ向上に向けた取り組みを開始することが大切です。

アジリティの重要性を理解し向上に向けた取り組みを推進しよう

市場環境の変化が激しく、不確実性が高まる現代において、組織のアジリティはその生存と成長を左右する重要な要素となっています。これからの時代の企業経営では、アジリティの重要性を理解し、組織全体でその向上に向けた取り組みを推進することが求められます。

組織のアジリティを高めるのには時間がかかり、新たに取り組むべきことも少なくありません。本記事を参考に、アジリティの高い組織づくりに向けて行動していきましょう。

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