日本でテレワークが普及しないのはなぜ?6つの理由と解決方法を解説

記事更新日:2022/06/03

テレワーク

テレワークをする人たち

日本でも浸透しつつあるテレワークですが、海外、特に欧米諸国と比べた場合の普及率は、いまだ低い水準にあるといえます。本記事では日本におけるテレワークの現状と国内外の普及率の違い、テレワークが進まない6つの理由と解決策について詳しく解説していきます。

日本におけるテレワークの現状

日本におけるテレワークは、新型コロナウイルスの影響をきっかけに少しずつ導入され始めているものの、実施率は未だに低い水準で止まっているのが現状です。

総務省の調査結果によると、2020年4月の緊急事態宣言(1回目)の前後でテレワーク実施率を比較してみると、3月の17.6%が5月には56.4%に上昇しています。

その後、5月末ごろに全国における緊急事態宣言が解除されると同時に実施率が低下し、2021年1月に2回目の緊急事態宣言が発令された際の実施率は38.4%に止まっています。

また、日本企業のテレワークの実施状況は、地域や企業規模によっても大きな差があります。

2020年に、ニッセイ基礎研究所が実施した「ニッセイ景況アンケート」の結果によると、テレワークは、とりわけ従業員数が1000名を超える企業や関東に拠点を置く企業においての実施率が高いことがわかっています。

このように、日本企業におけるテレワークの現状は、数年前と比べて少しずつ導入する企業が増えてはいるものの、企業規模や地域による実施率の差は顕著であり、順調に浸透、定着しているとは言い難い状況にあるのです。

[出典:総務省「民間企業におけるテレワークの実施状況」]
[出典:ニッセイ基礎研究所「ニッセイ景況アンケート調査結果-2020年度調査」]

やむなく出社しているケースも多数ある

テレワークの実施率が上がらない背景には、アナログな手段による業務が多く存在していることから、やむなく出社しているケースが多数含まれています。

その理由には、日本独自の習慣ともいえる「ハンコ文化」の影響が大きいといえるでしょう。根強い「ハンコ」文化が、紙媒体を主とした業務からの脱却の障壁となってしまっているのです。

また、経営層や一部の社員が、「対面」でのコミュニケーションにこだわりを持っているために、テレワーク化が進まないといったケースもあるようです。

対面での対応が必要不可欠である医療や美容業界、小売業や飲食店などの業務上致し方ない場合の他にも、上記のような「習慣」や「意識」により、テレワークの導入が進まないことは珍しくないのです。

日本と海外のテレワーク普及率の違い

上記にもあるように、日本のテレワークの実施率は2021年3月時点で38.4%となっています。

それに対し、アメリカのテレワークの実施率は2015年時点で、すでに85%に達しています。この数値からも日本とアメリカでテレワークの導入率に大きな差があるのは一目瞭然です。

日本と海外のテレワークの普及率に、なぜこのような大きな差が生じているのでしょうか。

その理由には、会社への帰属意識や異なるメンバーシップ型の雇用システムといった文化の違い、IT人材の不足によるITへの理解度の低さなどが、例として挙げられます。

日本は、海外に比べて「組織の一員」としての企業への帰属意識が高い傾向にあるといわれています。このような帰属意識が、主に個人での作業時間が増えるテレワークに対するネガティブな印象を生じさせている場合があります。

また、日本特有ともいえるメンバーシップ型の雇用システムは、欧米のジョブ型に比べて、採用後の研修や教育に多くの時間を要することから、テレワークに不便を感じる要因の一つです。

そのほかにも、社内にIT人材と呼ばれる先端ITの知見を持つ人材がいないため、テレワークや業務のシステムによるメリットや必要性への理解が低いといったこともあるでしょう。

さらに、日本における中小企業の割合は、9割を超えると言われており、企業規模によっては、システム化などのコスト面の負担の大きさから、テレワークの推進に踏み切れないことも多いようです。

テレワークに向いている職種・業種は?

テレワークに向いている職種・業種は以下の7つがあります。

  • クリエイティブ職
  • システムエンジニア
  • カスタマーサポート
  • コンサルタント
  • 事務職
  • 管理職
  • 営業職

これらの職種・業種に共通していることは、リモートでも業務・コミュニケーションが可能であることです。テレワークを実施するにはリモートで業務を進められなければなりません。

そして、コミュニケーションもチャットツールやWebビデオツールを用いて行う必要があります。上記の職種・業種はリモートでも業務やコミュニケーションが可能であるためテレワークに向いています。

テレワークに向いていない職種・業種は?

一方で、テレワークに向いていない職種・業種は以下の6つがあります。

  • 生産業
  • 製造業
  • 接客業
  • 販売業
  • 医療業
  • 福祉業

これらの職種・業種は、対面もしくは現場で行う必要があるため、テレワーク化が難しいと考えられます。

近年は、上記業種においても職種によっては、テレワークを実施し、オフィスの縮小を図ったり、テレワークとオフィス勤務のハイブリッドによる勤務形態を実施している企業もあります。ただし、完全なテレワーク化は、依然として困難な業種といえるでしょう。

日本でテレワークが普及しない6つの理由

ここまで、日本は海外に比べてテレワークの導入率が低いということを説明しました。では、なぜ日本はテレワークが進まないのでしょうか。その理由は以下の6つが挙げられます。

  • テレワークが導入できる業種ではない
  • 社員の管理が難しい
  • セキュリティ問題が懸念されている
  • 設備・ツールが整っていない
  • 仕事とプライベートの両立が難しい
  • 古い価値観・風習による導入の妨げ

それぞれについて詳しく解説します。

1.テレワークが導入できる業種ではない

日本のテレワークが進まない理由の一つに、テレワークが導入できる業種ではないことがあります。日本は卸売や小売など現場で業務をする必要がある企業が多くあります。

これらの企業は現場で働く必要があることはもちろん、業務の電子化が進んでいないことも多く、テレワークを導入することが難しいとされています。

また、日本企業の多くは企業規模が1000名以下の中小企業です。テレワークに必要な設備等の導入コストの負担が大きく、テレワークに大きなメリットがないと結論づける企業も多いようです。

2.社員の管理が難しい

従業員が管理者の目の届かないところで作業をすることに対するネガティブな意識もテレワークの導入を妨げる理由の一つです。

テレワークのデメリットとして、「勤怠管理」のハードルの高さが、よく挙げられます。確かに、オフィス勤務と比べて勤怠管理が難しくなる面はありますが、その一方で現在は、多機能な勤怠管理システムが数多く展開されており、テレワークにおける勤怠管理は、「思ったほど困難ではない」のが実情です。

しかし、前述のような企業への帰属意識の高さも影響しているのか、「周囲の目」がないと仕事をサボってしまうのでは?一人では業務の生産性が下がるのでは?といった、管理面における懸念がなかなか払拭しきれない状況にあります。

3.セキュリティ問題が懸念されている

テレワークを導入しない理由には、セキュリティ対策に対する不安も挙げられます。テレワークでは、自宅のほか、カフェなどの不特定多数の人が行き来する場所で仕事をすることもあります。

オフィス以外での仕事の場合、仕事の環境だけでなく、パソコンを持ち歩くことも多くなるため、情報漏洩のリスクが高まります。このように、セキュリティ問題を未然に防ぐためといった理由からテレワークを導入しない企業も存在します。

4.設備・ツールが整っていない

テレワークを導入するには、テレワークを実施できるような設備やツールを整えなければなりません。

テレワークを導入する際、コミュニケーションを取るチャットツールや会議をするオンラインビデオツール、プロジェクトの管理を行うツールなどさまざまなオンラインツールを導入する必要があります。

しかし、導入するには費用や人材などのコストがかかります。このコストを懸念してテレワークを導入できないケースもあります。

5.仕事とプライベートの区別が曖昧になる

自宅でのテレワークの場合、当然ですが、従業員は普段生活している空間で仕事をすることになります。

そのため、仕事中に家事が気になってしまったり、趣味のものが目に入って仕事が手につかなかったりといった理由から集中力が低下してしまうこともあるでしょう。これらの作業環境による業務効率の悪化を懸念して、テレワークを実施しない企業もあるのです。

6.価値観・風習による導入の妨げ

先にもお伝えしましたが、経営者や経営層が、テレワークの実態や業務のシステム化によるメリットを理解しようとせず、紙媒体による業務や「対面式」のコミュニケーションにこだわっている場合も、組織のテレワーク化は進みません。

テレワークの実践には、システムの導入、ノートパソコンの調達など、相応のコストを要するため、経営者層のコミットメントは必要不可欠といえるのです。

テレワークが進まないときの解決方法

では、テレワークが進まないときはどのようにして解決すればよいのでしょうか。その解決方法は以下の5つがあります。

  • システム・ツール導入による電子化
  • 業務別によるテレワークの導入
  • 社員へテレワークの導入・ルールを教育
  • コミュニケーションが取れる場所を作る
  • 企業風土の改善

それぞれについて詳しく解説します。

1.システム・ツール導入による電子化

システム・ツールの導入による電子化をすることで、テレワークが進む可能性が高くなります。テレワークを進める際、システムやツールの導入は非常に重要です。

コミュニケーションを円滑に進めるためのチャットツールやWeb会議ツール、業務を滞りなく進めるための業務管理ツールなどがあります。

これらのシステムやツールを導入することで、テレワークでもオフィスワークと同様に仕事を進めることができるようになります。

2.業務別によるテレワークの導入

全社的にテレワークを導入できない場合は、業務別にテレワークを導入するのも一つの手段です。

これまでテレワークを実施したことがない企業がテレワークを導入しない理由には、テレワークに対するネガティブな意識や不安があるというケースもあるでしょう。

そのような企業は、試験的に「営業部」や「人事部」など、業務や職種別でテレワークを導入することによって、テレワークのメリットやデメリットの実情を理解することができます。

経営層が難色を示している場合においても、多くのメリットが実際に確認できれば、良い説得材料となり得るため、全社的に広げられる可能性も高くなるでしょう。

3.社員へテレワークの導入・ルールを教育

テレワークを進めるには、社員へテレワークの導入・ルールを教育することが重要です。

テレワークでは、セキュリティ対策や業務管理など、オフィス勤務時以上の徹底した自己管理が、従業員一人ひとりに求められることになります。

テレワークにおける生産性を確保するための目業管理や業務管理におけるフローの策定、ルールの整備に関しては、しっかりと事前準備を行い、周知を徹底しましょう。

4.コミュニケーションが取れる場所を作る

コミュニケーション不足に対する心配は、テレワークの最も大きな課題ともいえるでしょう。

オフィスワークの場合は、仕事の合間にちょっとした雑談をしたり、その流れで業務のアドバイスや不安点の共有といったコミュニケーションが、ある意味、自然に発生する環境です。

一方のテレワークでは、気軽な相談や雑談をするのが難しくなり、最悪の場合、孤立感や孤独感が大きなストレスとなってしまったり、人間関係を悪化させる原因になってしまったりすることがあります。

このような事態を防ぐためにも、チャットツールやWeb会議ツールを活用してコミュニケーションが取れる環境を整えるだけでなく、ミーティングの頻度をルール化するなどの体制づくりも必要となります。

5.企業風土の改善

企業風土そのものがテレワークに意欲的でなければテレワークは進みません。そのような企業は企業風土を改善し、テレワークが進みやすいようにする必要があります。

このような企業風土や文化の変革は、経営層の積極的なコミットメントが有効であると考えられます。

経営層が、率先してテレワークを実践し、メリットをメンバーへと共有することで、少しずつテレワークのメリットが浸透し、周囲の目がない状況でも、従業員同士の信頼関係が保てるような企業風土が根付いていくと考えられます。

段階を踏んだテレワークの導入が大切

本記事では、日本企業でテレワークが普及しない理由について解説し、またテレワークが進まないときの解決方法についてもご紹介しました。

テレワークに対する不安や懸念が大きい場合においては、範囲を限定するなど、段階を踏んだ導入により、メリットや必要性への理解が進むこともあります。

これからテレワークを導入する企業や導入しているがなかなか浸透しない企業は、まずはテレワークが促進できる企業風土の改善、スモールスタートによる設備の導入から始めてみてはいかがでしょうか。

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