テレワーク中の通勤手当の扱いや支給方法とは?実費精算や規則変更の注意点
昨今、導入が進んでいるテレワーク。テレワークでの勤務に移行する場合、通勤手当の扱いがどのように変わるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。本記事では、テレワーク中の通勤手当の扱いについて、支給方法や注意点などの観点から詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
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テレワーク中の通勤手当の扱いとは?
コロナ禍においてテレワークの導入が進み、一時的な移行も含めて完全在宅勤務を実施する企業が増えています。
一般に、企業は従業員に対して通勤手当を支給していますが、完全在宅勤務であれば通勤が不要となることから、通勤手当を支給する必要性がなくなります。
在宅勤務手当を導入した富士通株式会社は、通勤手当の支給を廃止するなど、新しい働き方の一つとして在宅勤務が導入されたことに伴い、通勤手当の廃止・減額なども行われつつあるのが現状です。
通勤手当の支給は義務ではない
労働基準法をはじめとする法律に、通勤手当を支給しなければならないという規定はありません。つまり、通勤手当の支給は会社の義務ではないのです。
会社勤めをしている場合、通勤手当の支給を受けている人が多いことから、この支給は会社の義務であると、誤って認識されているケースが少なくありませんが、通勤手当の支給は法律で定められたものではありません。
したがって、通勤手当を支給するか否か、またはどれだけ支給するかについては、会社側で自由に決めることが可能です。
一般的に、通勤手当の支給額については、就業規則で具体的な条件が定められています。就業規則に通勤手当の支給を定めている場合、就業規則は労働者との契約の一部とみなされるため、会社側は契約を履行(通勤手当を支給)する必要があります。
基準内の通勤手当は非課税
すでに説明したように、通勤手当の支給は法律で規定されているわけではありませんが、福利厚生の一環として支給している会社が多数です。
厚生労働省が2,019年に実施した「就労条件総合調査」を見ても、92.3%の企業が通勤手当などを支給していることがわかります。
この手当は従業員の給与所得と見なされ、住民税・所得税の課税対象となりますが、一定の限度額までは課税対象になりません。つまり、限度額を超えない通勤手当については非課税となります。
[出典:厚生労働省「就労条件総合調査」(36 産業・企業規模、手当の種類別支給企業割合)]
テレワーク中に通勤手当を支給する際の2つの方法
テレワーク中に通勤手当を支給する場合、主に二つの方法があります。出社した日数分を支給する方法と、実費精算での支給です。ここでは、それぞれの方法について解説します。
1.出社した日数分だけ支給
出社した日数分を支給する場合、あらかじめ1日あたりの一定額を交通費として定め、そこに通勤した日数をかけて計算します。通勤手当に支払義務はないため、金額は企業側が自由に設定できます。
よってもし従業員が定額以上の交通費を支払っていたとしても、会社がそれに応じる義務はありません。例えば、1日あたりの交通費を2,000円と定め、1か月あたりの勤務日数が20日というケースでは、40,000円(2,000円×20日)を支給することになります。
一般に、出社した日数分を支給するケースでは、実際の交通費よりも多く企業側が支払うケースが多いため、1か月あたりの支給額に上限を定めている会社が多数です。
前述の例について、通勤手当の上限を月額30,000円に定めている場合で見てみると、一か月の交通費(40,000円)は限度額を超えているため、10,000円は自己負担することになります。
2.実費精算として支給
実費精算での支給をする際、場合によっては通勤手当の支出を抑えることも可能です。ただし、従業員による申請が必要なため、手続きの負担は増えるでしょう。
また、実費精算する際は、従業員が先に交通費を負担することになるので、事前に通勤手当が支給されるケースと比較すると、福利厚生の観点で従業員の不満の声が出るかもしれません。
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テレワーク中に通勤手当の全額支給が必要なケース
テレワーク中であっても、通勤手当の全額支給が必要なケースもあります。原則として通勤手当は、就業規則に基づいて支給されます。
したがって、就業規則に通勤手当を全額支給することや、定期代として実費支給する旨が定められているケースでは、通勤手当を全額支給しなければなりません。
しかし、通勤手当について、就業規則に定められていないケースでは、テレワーク中の通勤手当を全額支給する必要はありません。
テレワーク中の通勤手当が毎月変動する場合の社会保険料の扱い
テレワークに移行すると、通勤手当が毎月変動するケースもあるでしょう。その場合は、社会保険料の取り扱いが問題となります。
稼働や能率の実績に関係なく、月単位で一定額が継続して支給される報酬は、固定的賃金と呼ばれ、社会保険料を算定する際の根拠となります(厚生年金保険法第3条1号)。
通勤手当が月額支給からその他の支給方法に変わるケースでは、社会保険料も変動します。
次に、テレワーク中の通勤手当が毎月変動する場合の社会保険料について説明します。
月額支給から日額支給になった場合
原則として社会保険料は、労働の対価だけではなく、家族手当・住宅手当・通勤手当など、月単位で継続して支払われる報酬(固定的賃金)に基づいて計算されます。
この社会保険料を算出するための基準となる金額を、「標準報酬月額」と呼んでいます。標準報酬月額は、通勤手当を含む4月から6月までの平均給与をもとに決定され、その年の9月から1年間、適用されることになります。
ただし、報酬(固定的賃金)に変動があったり、通勤手当が月額支給から日額支給になった場合などで要件に該当すれば、標準報酬月額の改定対象となります。ここでの要件とは、以下のとおりです。
(1)昇給または降給等により固定的賃金に変動があった。(2)変動月からの3か月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。
(3)3か月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である。
[引用:日本年金機構「随時改定(月額変更届)」より]
これら3つの要件をすべて満たしているケースでは、標準報酬月額が改定されます。
例えばテレワーク前の通勤手当が60,000円(月額支給の定期代)で、テレワーク中の通勤手当が20,000円(1日1,000円で20日間出社)となったケースを考えてみましょう。
3か月間、同様に20日間出社したと仮定します(平均出社日数は一か月辺り20日)。この場合、月額支給から日額支給に変更されているので(1)の要件を満たしています。
また、平均月額に該当する標準報酬月額は20,000円となりますが、この場合、標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じることになり、(2)の要件も満たします。
今回、支払基礎日数は17日以上であるので、(3)の要件にも該当することになり、固定的賃金の改定に該当すると見なされます。
このように、3か月間の固定的賃金を平均して標準報酬月額を算定し、2等級以上の変動があれば、社会保険料の金額が算定されることになります。
つまり、今回説明したケースでは、通勤手当を基礎にして標準報酬月額が改定されることになります。
月額支給から実費精算になった場合
通勤手当が月額支給から実費精算になった場合も、要件に合致する場合は、標準報酬月額を算定し直して、社会保険料を算出することになります。
テレワーク中に通勤手当の廃止や規則を変更する場合の注意点
テレワーク中に通勤手当の廃止や規則を変更する場合、企業側が注意しておくべきポイントがあります。ここでは、そのポイントを3つご紹介します。
就業規則の内容を確認する
原則として、通勤手当は就業規則に基づいて支給します。したがって、就業規則の内容によって、テレワーク中に通勤手当の廃止や変更をする際の手続きも変わってきます。
一般に、企業では就業規則で、通勤手当について「通勤に要する費用として支給する」とだけ定められているケースが多数です。
このような場合には、テレワークに移行することで通勤手当を必要としなくなった際にも、就業規則を変更することなく通勤手当を見直すことが可能です。
しかし、定額支払いの定めがあるケースでは、通勤手当の廃止や見直しをする際に、就業規則の変更が求められます。この場合、通勤の有無にかかわらず、通勤手当を支払う旨の規定があると解釈できるからです。
就業規則の変更には、従業員からの意見を聴取したうえで、労働基準監督署に届け出る義務があることも知っておきましょう。
実費精算での支給を検討する場合は、定期割引率に注意する
テレワークを導入すると、従業員の通勤日数が減るため、経費削減を目的として通勤手当の廃止や変更を検討するケースが多く見られます。
その際、実費精算での支給に変更するケースも多いでしょう。実費精算で支給する際は、定期券の購入費用と比較することも忘れてはなりません。
定期券には割引制度が設けられているため、実費精算よりも定期代を支給するほうが支出が少なくなる場合もあります。
一般に、実費精算の方が経費が削減できると思われがちですが、そうでないケースもあるので、実費精算を検討する際は定期割引についても念頭において比較しましょう。
年金が減ってしまう可能性を考慮する
すでに説明したように、社会保険料は標準報酬月額に基づいて計算されます。そのため、通勤手当を廃止したり変更したりすると、最終的に従業員が将来、受け取れる年金額が減る可能性があります。
従業員にとって、標準報酬月額が下がることは、月々の負担が減って手取りが増えることに繋がります。しかしながら将来、年金として受け取る金額が下がる可能性がある点にも留意すべきでしょう。
こうしたことを踏まえながら、通勤手当の廃止や変更を検討しなければなりません。
テレワーク中に在宅勤務手当を支給する場合は?
テレワーク中に、在宅勤務手当を支給するケースもあるでしょう。近年では、テレワークを導入するにあたって、通勤手当を廃止して在宅勤務手当を支給する企業も増えてきています。以下では在宅勤務手当について詳しく解説していきます。
在宅勤務手当とは
在宅勤務手当とは、在宅での労働環境を整備するために支給される手当のことをいいます。オフィスには、業務に必要な環境が整備されていますが、在宅勤務となったとき、労働環境が整っていないケースも少なくありません。
そこで従業員に在宅勤務手当を支給し、従業員の労働環境の整備に役立ててもらおうと、在宅勤務手当を支給する企業が増えています。
▼ 在宅勤務手当の解説記事はこちら ▼
在宅勤務手当の課税対象
テレワーク中の手当は、課税対象となるケースとならないケースがあるので注意しましょう。昨今、在宅勤務手当を支給する企業が増えたことから、国税庁では2021年1月に「在宅勤務にかかる費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」を公表しています。
このなかで説明されているように、実費相当額を精算するかたちで在宅勤務手当を支給するケースでは課税対象とはなりません。一方で、定額で在宅勤務手当を支給するケースでは、従業員に対する給与と同様に取り扱われるため、課税対象となります。
通勤手当との違い
通勤手当についてはすでに説明したように、一定の額までは課税されません。一方、テレワークにおいては、さまざまな条件のもとでその適用が決定されます。
例えば、通話明細書より確認のできる、業務で使った通話料については非課税です。また、インターネット接続に関する基本使用料やデータ通信料についても、所定の算式で算出した金額については課税する必要がありません。
この基準はそれぞれの項目によって異なりますが、これらは国税庁が2,021年に公開した資料、「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」 の中で丁寧に説明されています。
[出典:国税庁 「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ 」 ]
テレワーク中におすすめの非課税手当
最後に、テレワーク中におすすめの非課税制手当について説明していきます。
非課税手当の種類
原則として、全額が無条件に非課税となるような手当はなく、一定の条件下で非課税対象となりえる手当には、以下のようなものがあります。
- 在宅勤務手当
- 事務用品等
- 環境整備に関する物品
- 消耗品等
- 電気料金
- レンタルオフィス など
例えば、テレワークで使う事務用品や自宅に設置する間仕切りや机・椅子、空気清浄機など、企業が所有するものを従業員に貸与する場合には非課税となります。
しかし、これらを従業員に直接、現物支給した場合は課税対象となるなど一定のルールがありますので、前述の「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」などで確認のうえ、検討しましょう。
おすすめの非課税手当
従業員目線では、給与の手取りが多い方が良いと考えるものですが、そのような側面から効果の高い非課税手当は、やはり通勤手当となるでしょう。
ほかにも例えば、テレワークのための消耗品や電気料金、通信費などの一部が非課税になるケースもあります。また、テレワークをするためのレンタルオフィスの利用料などもこれに該当します。
テレワーク時の食事に関しても、複数の条件を満たしていれば、食券支給という形で非課税になる場合もあり、さまざまな手当てを受けられる可能性があります。
[出典:国税庁 「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ 」 ]
テレワーク中の通勤手当の扱いについて理解を深めておこう
2022年現在、テレワークの導入が進んだ結果、通勤手当の取り扱いを変更する企業が増え、この手当を廃止して、在宅勤務手当を支給するというケースも少なくありません。しかし通勤手当の廃止や変更は、基本的に就業規則の変更を伴うものです。
通勤手当の見直しは、従業員の給与や将来の年金支給額に影響を与える可能性も否めません。したがって、企業側もそれを理解して対応する必要がありますし、テレワーク中の通勤手当の扱いについて、理解を深めておきましょう。
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