DX認定制度とは?概要や取得メリット・申請時のポイントについて解説

2022/5/12 2022/06/06

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DX認定とビジネスパーソン

政府は2020年11月から、企業のDX推進を支援するための「DX認定制度」を開始しています。本制度によって、これまで多くの企業が認定を受けています。この記事では、DX認定制度の概要や取得における6つのメリット、申請時のポイントや注意点を紹介します。申請書類を作成する中で自社の課題を洗い出せるので、申請を前向きに検討することをおすすめします。

DX認定制度の概要について

Society5.0」をご存じでしょうか?内閣府の科学技術基本計画第5期(2016年4月~2021年3月)で提言されている、日本が目指すべき未来社会のことです。

その中では、もっとも原始的な狩猟生活によって営まれる社会を1.0とし、次を農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、情報社会(Society4.0)と進化したその先にある未来社会をSociety5.0と定義しています。

Society5.0で目指している社会は次の通りです。

サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)

[出典:内閣府「Society 5.0」]

これは、先端技術の活用によりあらゆる業界で新たな価値が生み出され、誰もが快適に生きることのできる、まさにDX(デジタルトランスフォーメーション)が実現した社会です。

そのような方針を実現させるために定められた法律が「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」(2020年)です。

この中で、情報処理システムの高度利用を促進するための仕組み作りについて必要性が明記されており、それに基づいて作られたのが「DX認定制度」です。この制度では、国が認めるレベルのDXへの取り組みを行う企業には認定ロゴマークを使えたり、税金面での優遇措置が利用できたりするメリットが設定されています。

この制度について、少し掘り下げてみましょう。

[出典:経済産業省「「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」(令和元年法律第67号)が施行されました」]
[出典:経済産業省「DX認定制度の概要及び申請のポイントについて」]

(1)DX認定制度ができた背景

上述のように、2016年の段階で、日本政府はSociety5.0という形でDXの進んだ社会のイメージを持っていました。しかしDXへの取り組みはなかなか進みませんでした。経済産業省が発表した「DXレポート2」によると、2020年の段階で9割以上の企業がDX未着手もしくは始めたばかりの状態と言われています。

DXは必ずしも、すぐに形にできるものではありません。昔ながらのシステム(レガシーシステム)ではデータの採取や活用が困難であったり、2025年までにはサポートが終了してしまうようなシステムの上に業務が成り立っていたり(「2025年の崖」)、場合によってはまだデータ化そのものが進んでいないこともあります。

この状態から、データをデジタル化しシステムに埋め込むステップ(デジタイゼーション、デジタライゼーション)や、従来システムから先端システムへの移行(マイグレーション)といったステップが必要となる場合があります。

2025年の「崖」と表現されるように、このままDXがその準備すらも進まなければ、2025年以降12兆円/年の損失を生むとも推定されており、待ったなしの変革が求められています。

こうした背景の中、DXへの取り組みに対する動機づけと促進の目的で、2020年にDX認定制度がスタートしました。

経済産業省では企業のDX化の段階を「DX-Excellent企業」「DX-Emerging企業」「DX-Ready(DX認定事業者)」、「DX-Ready以前」の4つにわけています。DX認定は、DX-Readyの状態、つまり、DXを通じて成長する準備のできた企業を増やしていくための制度と言えます。

[出典:内閣府「第5期科学技術基本計画レビューとりまとめ(案)」]
[出典:経済産業省「D X レポート 2中間取りまとめ(概要)」]

(2)申請から取得までの期間

DX認定申請を行うと、その後は受理した順に審査が行われます。結果通知までの期間は60日とされていますが、これは土日を含まない日数なので2か月という意味ではありません。

祝日を無視すると60営業日は12週間ですから、約3か月かかることになります。申請の集中などにより更に1か月かかることを見越し、予定を組む際は4か月と考えておくことが薦められています。

[出典:独立行政法人情報処理推進機構 (IPA)「DX認定制度 申請から認定取得までの期間について」]

(3)手続や資格の維持にかかる費用

申請手続きや認定に際し、費用は掛かりません。また、2年ごとの更新が必要ですが、その際も費用が発生することはありません。

(4)結果通知方法

認定の結果は、事務局からメールで通知が届きます。また、認定後はIPAの認定制度HP上にてDX認定事業者一覧として公表が行われます。

DX認定制度を取得する6つのメリット

DX認定を取得するにあたり、企業にはそれなりの動機付けが必要です。本制度により以下の6点についてメリットがあると考えられます。

(1)DXに必要な論点や情報の整理ができる

DX認定を受けるには、事業が「デジタルガバナンス・コード」に定める基準に沿っていることを示す必要があります。この基準では、ビジョン、ビジネスモデル、組織、達成度を測る指標などが求められます。

これらは会社がDXを推進するにあたって通らなければならない道でもあります。つまり、DX認定を目標にすることで、DX化を進めるにあたって必要なアクションや押さえるべき論点を社内で共通認識化できるというメリットがあります。

(2)企業価値やブランド力を向上させられる

一般論として、認定制度のメリットのひとつとして、定義を揃えることができるという面があります。

DXの場合、「DXとは何か?」と問われた時に、日本はまだまだ人によって回答が異なり、また受け取り手によって解釈が変わるという現実があります。

このような状況下において、認定制度は、ステークホルダーと前提を揃えたコミュニケーションを行うことに役立ちます

自社がDXを戦略に取り込んだ将来有望の企業であることを、多くのステークホルダーに対して分かりやすく示すことができ、その結果企業価値やブランド力を向上させるというメリットがあります。DX人材の獲得を目指す時にも、アピール材料になることが期待できます。

(3)ロゴマークを使用できる

本制度では、DX認定企業であることを示すロゴマークが設定されています。会社のHPや製品、名刺などにロゴマークを入れることができ、会社のアピールにつながると考えられます。

(4)DX投資促進税制が使える

DX投資を促進する目的で、DXの実現に必要なクラウド技術を活用したデジタル関連投資に対し、税額控除(5%または3%)又は特別償却30%を措置するという優遇措置が設定されています。DX認定を受けると、この優遇措置を受けることができるメリットがあります。

控除率は基本的に3%ですが、特定の基準を満たす場合に5%になります。また、特別償却とは、特別に減価償却費を投資額の30%とすることができるという意味です。企業は税額控除か特別償却のいずれかを選択することができます。

[出典:経済産業省「令和3年度(2021年度)経済産業関係 税制改正について」]
[出典:国税庁「No.5924 デジタルトランスフォーメーション投資促進税制(情報技術事業適応設備を取得した場合等の特別償却又は税額控除)」]
[出典:税理士ジェイピー「特別償却とは?【特別控除とどちらが有利かやメリット、計算方法も徹底解説】」]

(5)DX銘柄の応募資格など経済産業省からのインセンティブがある

経済産業省では、企業価値や競争力の向上のため、東京証券取引所と共同で、優れたDXの取組を行っている企業を「DX銘柄」として選定しています。

2021年からはDX認定企業であることがDX銘柄に指定される条件となりました。東証上場企業であれば、DX銘柄に指定されることにより、企業価値やステークホルダーの関心を向上させる効果が期待されます。

(6)中小企業は金融支援措置を受けられる

中小企業については、以下の金融支援措置が設定されています。

#1: 日本政策金融公庫による融資

日本政策金融公庫はIT活用促進を図る企業の支援のため、「IT活用促進資金」を設けています。DX認定を受けている中小企業は、2億7千万円まで、優遇された特別利率で融資を受けることができます。

[出典:日本政策金融公庫「IT活用促進資金」]

#2: 中小企業信用保険法の特例

中小企業者は、IT技術の戦略的な利用に必要となる設備資金等について民間金融機関から融資を受ける際、普通保険等とは別枠での追加保証や保証枠の拡大が受けられます。

DX認定を受けるための条件

DX認定を受けるには、デジタルガバナンス・コードに記されている基準を満たさなければなりません。

デジタルガバナンスコードとは

経済産業省の資料に記載されているデジタルガバナンス・コードの説明は下記の通りです。

デジタルガバナンス・コードとは、あらゆる産業でデジタル技術の活用が加速的に進む時代変化の中で、持続的な企業価値の向上を図っていくため経営者に求められる企業価値向上に向け実践すべき事柄を取りまとめたものです

[出典:経済産業省「デジタルガバナンス・コード 実践の手引き」]

内容は、次の4項目から構成されています。

  1. ビジョン・ビジネスモデル
  2. 戦略
  3. 成果と重要な評価指標
  4. ガバナンスシステム

各項目には、基本的事項、望ましい方向性、取組例が示されています。DX認定制度では、この「基本的事項」が要求を満たすレベルかどうかが問われています。なお、「望ましい方向性」と「取組例」はその先のDX銘柄選定の際の基準となります。

DX認定制度申請の手順

DX認定の申請は、以下の手順で行います。

(1)「申請のガイダンス」を読む

申請は、独立行政法人情報処理推進機構 (IPA)が公表している「申請のガイダンス」に従って行います。したがって、申請手順はまずこのガイダンスを熟読することから始まります。

「申請のガイダンス」には、制度の概要、申請に必要なもの、申請方法や認定までのプロセス、更新などの認定後の手続きなどが解説されています。

「申請のガイダンス」はこちらから閲覧、もしくはIPAのホームページの「DX認定制度FAQ」のリンクからアクセスできます。

(2)「認定申請書」と「申請チェックシート」をダウンロード

認定の手続きとして、認定申請書と申請チェックシートが必要です。この2つはセットで提出しなければなりません。

両方とも、IPAのホームページ「DX認定制度 Web申請受付中!」からダウンロードできます。

認定申請書はWordファイル、申請チェックシートはExcelファイルです。それぞれ書式を崩さないように記入しましょう。

(3)設問に回答

認定申請書と申請チェックシートに記載されている設問に回答を記入します。

回答の書き方、記入の際の注意事項、記入例などは、IPAのホームページ「DX認定制度FAQ」に1問ずつ詳しく記載されているので、ご参照ください。

なお、設問によっては添付資料が求められる項目もあります。「申請のガイダンス」に詳細が記載されているので、こちらもご参照ください。また、これらの文書に社印の押印は不要とされています。

(4)「DX推進ポータル」で申請と書類の提出

作成した申請書、申請チェックシート及びこれらに付属する資料は、専用のポータルサイト「DX推進ポータル」を使って提出します。

このポータルサイトでは、自社の取り組み状況を他社と比較できるベンチマーク機能もあります。ベンチマークは自社の位置づけを知り、社内の認識合わせに活用できるツールとして提供されています。申請準備の初期段階や、戦略の見直しを行う際などに実施しておくと良いでしょう。

DX推進ポータルの使い方については、マニュアルがポータルサイト内にあるのでご参照ください。

[出典:独立行政法人情報処理推進機構 (IPA)「DX推進指標 自己診断結果入力サイト」]

DX認定制度の申請時のポイントや注意点

DX認定の申請にあたって留意すべき特記事項は以下の2点です。

(1)補足資料を用意する

DX認定の申請を行う際には、様々な補足資料の添付が求められます。この資料作成にも工数がかかりますので、申請のスケジュールを組む際は申請手続きの全体像を把握したうえで効率的な分担を考慮する必要があります。

(2)GビズIDを取得する

上述のように、申請はDX推進ポータルを経由して行われます。ポータルサイトを活用するにはGビズIDを取得する必要があります。GビスIDを取得していると、このポータルサイトの利用だけでなく、Web経由の様々な行政手続きに利用できます。手続きについては「gBizIDへようこそ」をご参照ください。

注意点としては、ID取得にかかる時間が挙げられます。まず、印鑑証明が必要なので、それを入手しなければなりません。申請書に書く内容と印鑑証明の記載事項が異なっていると受理されないようです。

また、印鑑証明を含む申請に必要な文書の送付は郵送で行うため、その時間もかかります。書類の受理から審査が終わるまでの期間は基本的に2週間以内とされています。合計すると、3週間程度と考えておく方がよさそうです。

また、申請には携帯電話が必要です。申請書に記入した携帯電話の番号に、システムへのログインに必要なパスコ―ドが届きます。流れとしては、審査に通ると登録したアドレス宛に通知メールが届き、そのメールにあるアドレスをクリックすると携帯電話にパスコードが届くという段取りです。

DX認定を受けている企業事例

DX認定を既に受けている企業の一覧は、DX推進ポータルサイト「DX認定制度 認定事業者の一覧」から閲覧可能です。ここから各社の申請書をダウンロードして、どのような事例があるか調べることができます。

<DX認定事業者の事例>

  • レンゴー株式会社(IoT、AI技術を活用した品質・サービス向上の取り組みなど)
  • 株式会社ジーユー(サプライチェーンの仕組みの強化など)
  • 株式会社七十七銀行(デジタル・非対面チャネルの推進に伴う組織改革など)
  • 伊藤忠食品株式会社(デジタルサイネージ・オンライン展示会・デジタルギフトの取り組みなど)
  • 株式会社ベルシステム24ホールディングス(音声データのテキスト化、AI活用によるチャットボットの利用拡大や顧客ニーズの分析など)

メリットや工数を踏まえてDX認定制度の申請へ

DX認定制度は、本格的なDX実現の手前の段階から活用できます。本制度を利用する過程で、自社が抱えている経営課題を整理でき、全社でDXの必要性や定義の共有を図ることもできます。

DXは今後の企業活動に欠かせない要素のひとつです。このような制度を活用しながら社内環境を整え、DXの実現を目指しましょう。

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