DX推進で経営者が担う役割とは?よくある課題や成功へ導く考え方

2022/04/15 2023/05/15

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DX推進で経営者が担う役割とは

近年注目されているDXですが、まだまだ成功事例は多くありません。DX推進を成功させるためにも経営者の協力が必須です。本記事では、そんなDX推進における経営者の役割について、課題や成功に必要な考え方など詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

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DXとは?

DXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略語で、デジタル技術を用いることにより、ビジネスや生活そのものが変容することを指します。

2018年9月に経済産業省が発表した「DXレポート」が皮切りとなり、特にビジネスシーンにおいて、各企業がDX実現に向けて取り組みを実施しています。

デジタルトランスフォーメーションはなぜDXと略される?”X”が指す意味とは

日本におけるDXの現状

2020年に経済産業省がアジア15か国の企業幹部1,560人を対象に実施したDXの恩恵に関するアンケート調査によると、2017年から2020年にかけてDXの推進によって各企業が受けた恩恵は、次のとおりです。

  • 顧客からの評判:13%UP
  • 生産性向上:11%UP
  • コスト削減:12%UP
  • 利益向上:12%UP
  • 新しい製品やサービスによる売上:12%UP

[出典:経済産業省「デジタルトランスフォーメーションに向けた課題の検討〜ITシステムに関する課題を中心に〜」]

この結果から、DXを推進している企業は利益や生産性の向上、そして新製品・サービスによる売上の恩恵を受けていることが見て取れます。

その一方で、DXの推進が思うように進んでいない企業との乖離も大きくなっており、企業のさらなるDXの推進に向けて、多くの課題が残っていることにも警鐘を鳴らしています。

なぜ日本でDXが進まないのか

2021年10月に、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が発行した「DX白書2021」によると、DXに取り組んでいる企業が日本では約56%であるのに対し、米国では約79%と約23%の差が出ています。さらに、DXに取り組んでいない企業は日本で33.9%、米国では14.1%と約20%の大きな差が開いています。

[出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「DX白書2021」]

このように日本でDXが進まない原因として、次の2つが考えられます。

  • DXに対する企業の理解が不足している
  • 既存のビジネスモデルや業務形態からの脱却がなされていない

経済産業省発表の「DXレポート」にある通り、企業はビジネスモデルの変革が急務であるにもかかわらず、日本企業の特に経営者においてDXの正しい理解が不足していることが原因の一つとして挙げられます。

また、DX推進における初期コストの負担や、デジタルツール導入による業務の変化など、既存のビジネスモデルや業務形態からの脱却に抵抗を示す企業も少なくありません。

日本におけるさらなるDXの推進には、企業における経営者のDXの重要性やビジネスモデルの変革の必要性に対する正しい理解が求められます

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DX推進における経営者の重要性

企業のDX推進において、企業における経営者の関与は必須です。

DXを推進する過程において、企業は既存の組織と異なるDX推進を目的とした、新しい組織を発足させる必要があります。経営者は、この新組織の発足を最終決定する役割があるのとともに、既にある組織と新組織の橋渡しの役割も担う必要があります。

また、DXに必要なシステムの構築やデジタルツールの導入などのIT投資を積極的に実施できるか否かもDX成功の鍵を握っており、この予算に関する意思決定も経営者による判断が必要になります。

DX推進において、これらの役割を担う経営者の重要性が高いことは明白であり、DX成功の鍵は経営者の裁量に委ねられているとも言えます。

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DX推進における課題

経済産業省をはじめとする各方面で「DXの推進」が叫ばれている中でも、多くの企業がDXを推し進めていると言えない状況が続いています。ここでは、DX推進における具体的な課題について解説します。

経営陣の理解不足

企業におけるDX推進には、経営陣のDXに対する理解が必要不可欠です。しかし多くの企業で、経営陣のDXに対する理解不足が課題に挙げられています。

DX推進がなされていない経営陣の多くは、DXに対して無知であったり、DXの正しい知識を持っていなかったりします。故に、DX推進に向けた業務システムの刷新や思い切った設備投資などに踏み切れず、DX推進に二の足を踏んでいる状態が継続しています。

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DX人材の不足

DXを推進する際には、企業内でDX人材の確保やそれに伴う新規プロジェクトの発足が必要になります。

しかし、古くからのレガシーシステムに固執している企業も多く、企業内でDX人材を確保できないが故にDX推進が滞ってしまうケースがあります。DX人材が企業内に不足している場合には、DXに深い知識を持ったエンジニアを業務委託で雇用するなどの工夫が必要になります。

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業務の属人化

業務の属人化もまた、DX推進を妨げる要因の一つです。

DXにおけるデジタルシステムは、ルーティン化されていない作業にはあまり効果的ではありません。そのためシステムに属人化された業務手順を盛り込んでしまうと、1からシステムの開発をやり直すことになってしまいます。

さらには、データの統計を取得することも困難になるため、システムを開発してもロスコストを発生させるだけになる可能性があります。DXを円滑に推進するために、業務における属人化の排除は欠かせません。

システムの複雑化

DX推進において、新規システムの導入は必須になるでしょう。その際、既存システムに比べて新規システムがあまりに複雑化していると、従業員のシステム移行が滞り、DXの推進が難航する恐れがあります。

このような事態を抑制するためには、企業はIT人材の確保を徹底することが重要になります。また、DX化に向けて全ての既存システムを排除せず、新規システムに必要な機能だけを新たに開発したり、ローコード開発体制に移行したり、クラウドサービスで一部を補完するなどの、より細かい戦略が求められます。

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DX推進で経営者が担うべき役割

DX成功に向けて、経営者が担うべき役割は数知れません。ここでは、DX推進で経営者が担うべき以下5つの役割について解説します。

  1. 多様な変化を受け入れる
  2. 組織の自律性や文化の構築
  3. 新しい挑戦をする人材の評価を変える
  4. 他社との連携も視野に入れる
  5. 積極的なIT投資

多様な変化を受け入れる

DX推進において、経営者には自社の多様な変化を受け入れる姿勢が必要とされます。これまでの自社における常識に囚われていては、DX推進で新しい価値を創出することはできません。

見方によっては異質と思われる意見や方法に対しても、目を逸らさずに積極的に受け入れていく経営者が企業をDX成功に導いていくでしょう。

組織の自律性や文化の構築

経営者の索引だけでは、DX推進は長続きしません。経営者には、DX推進に向けて自ら先陣を切るとともに、必要に応じて組織のリーダーに必要な権限を譲渡する覚悟が求められます。

各部門ごとにおける組織の自律性や常識に捉われず常にチャレンジして変革を起こそうとする文化の構築は、DX推進のさらなる加速に必要不可欠です。

新しい挑戦をする人材の評価を変える

企業に多くの変化が生じるDXでは、新しいことに挑戦する従業員も出てきます。経営者は、新規に挑戦する人材に不安を与えないように、評価制度の変更が必要です。

新しく策定する評価制度では、新しい挑戦を起こす人材にとって偏るような評価項目は避けるべきです。DXは中長期で変革をもたらすものなので、短期的にわかりやすく成果が出るケースは少ないです。

経営者は、DXによって生まれた新しい価値や成果、会社における意義や目的、重要性なども評価制度に反映して安心してチャレンジできる環境をつくる必要があります。

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他社との連携も視野に入れる

DX推進においては、他社との連携も視野に入れるべきでしょう。たとえば、DX人材の不足によってDX推進が停滞するのであれば、他社と連携して組織のリーダーシップを取れる人材を確保すべきです。

また他社との連携によるDX推進は、組織の懐を広げるチャンスとも捉えられます。現状において足りない人材や仕組みは、常に柔軟な発想で、外部のリソースを活用できないか、あるいは内製でないといけないのかを考える必要があります。

積極的なIT投資

DX推進には、言うまでもなく積極的なIT投資が必要です。ITシステムの構築にかかるコストは高額になることが多いため、権限を持つ経営者の旗振りが肝になります。

経営者は、会社トップの視点から、現状かかるコストだけでなくDX推進後の各フェーズでかかるコストも見据え、DX成功へ向けたIT投資を積極的にしていくべきでしょう。

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DX戦略を成功へと導くために必要な考え方

どんなに熟考してDXの戦略を立案しても、全ての企業がDXに成功しているわけではありません。ここでは、DX戦略を成功へと導くために必要な考え方について解説します。

組織の柔軟性強化

DX戦略において成功の鍵となるのが、組織の柔軟性です。DX推進においては、社内の「肩書き」はむしろ弊害にさえなり得ます。

組織の枠組みや肩書きなどに捉われず、全ての取り組みに対して従業員全員が一丸となれる風通しの良い組織が、DX推進における理想の形になります。

業務全体の標準化

DXを推進する上で必要となる業務全体の標準化も、DX戦略成功における大事な要素の一つです。DX戦略において業務の標準化が成されていれば、各プロジェクトに必要な工数やリソースの把握、目標となる数値を具体的に計算できます。

万が一プロジェクトが失敗に終わった際にも、業務の標準化ができていれば、業務を振り返り次回以降の改善点を探ることも可能です。

アジャイル型組織への移行

企業がDXを導入する際は、スモールスタートを推奨します。アジャイル型組織へ移行することは、DX戦略としても有効です。

アジャイル型組織への移行により、各従業員が戦略変更による業務変更などにもフレキシブルな対応が可能となり、結果として企業におけるDX戦略の成功率向上につながることが理由に挙げられます。

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【注目】DX推進の成功事例3選

DX推進においては、組織としてDXに取り組むこと、そしてDXによる新体制への移行と実施スピードの向上が重要になります。次に挙げる3社の事例は、いずれもこれらを体現しDX推進の成功を成し遂げたものになりますのでぜひ参考にしてください。

株式会社デンソー

自動車部品業界の国内最大手である「株式会社デンソー」は、圧倒的スピードで進む自動車業界のデジタル化に伴い、危機感を持ったDX化に取り組んでいます。

たとえば、社内外から優秀な人材を集めることを目的とした「デンソーデジタルイノベーション室」を設置。DXにおける同社の変革にふさわしい体制を整えることで、新事業への移行と実施スピードの向上を実現しました。

同社のように、ITを活用したビジネス変革への取り組みとして「デジタルビジネス推進室」を設置する企業が増えてきています。しかしそのような企業でも、なかなか軌道に乗れずに暗中模索している企業も少なくありません。

JRCS株式会社

2011年を皮切りに、IMO(国際海事機関)が船舶への電子海図表示装置搭載を義務付けたことをきっかけに、海洋業界はDX化に大きく舵を取りました。

日本の海洋と船舶に深く関わる企業である「JRCS株式会社」は、海洋業界全体におけるDX推進のために「JRCS Digital Innovation LAB」を新設しました。「JRCS Digital Innovation LAB」の新設は、組織や企業にとどまらず海洋マーケット全体に大きなインパクトを与えました。

その後「JRCS Digital Innovation LAB」は、マイクロソフト社と協業し「HoloLens Vision」を利用した「Mixed Reality」を、次世代デジタルソリューションとして海洋マーケットに投入。現段階で存在していない、新たな市場の開拓にも力を注いでいます。

NEC(日本電気株式会社)

NEC(日本電気株式会社)は、DXを推進する企業と積極的にパートナー契約を結び、DX成功をつかんだ企業の一つです。

各々の企業で培ったDXの技術やノウハウを、互いに補填し合うことで双方の企業におけるDXを前進させることで、多くの企業が直面するDX人材の不足やコスト面の問題を乗り越えることに成功しています。

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DX推進には経営者のコミットメントが必須

今回は、DX推進における経営者の役割やよくある課題、そしてDXを成功に導く考え方について解説しました。

DX推進には、経営者のコミットメントが必須です。また個々の組織においても、柔軟性の強化やアジャイル型組織へ移行することで、DX戦略が成功に近づきます。

また、組織にDX人材が不足している際には、企業間で手を取り合うなどの広い視野を持った経営者がDX推進には必要不可欠です。

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