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中小企業のDX推進を進めるには?進まない課題やDX化を成功させるポイントを解説

2022/04/11 2023/04/05

DX

DX

中小企業におけるDX

中小企業においてDX推進が重要な理由はどこにあるのでしょうか。本記事では、中小企業でDX推進が必要な理由やDXへ導くポイントを解説します。中小企業のDX成功事例や具体的な実現の流れも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

福本大一

監修者 福本大一 株式会社kubellパートナー  アシスタント事業本部|ユニット長 大学卒業後、toC領域のWEBメディア事業で起業。事業グロースに向けたSEO戦略から営業・運用広告に従事し、約2年間の経営を経て事業譲渡。2021年3月からChatwork株式会社(現:株式会社kubell)に入社し、カスタマーマーケティングやアライアンスを経験した後、メディア事業・運用広告事業の責任者としてミッションを遂行する。現在は、DXソリューション推進部のマネージャーとして新規事業領域のセールス・マーケティング・アライアンス・メディア事業を統括。

中小企業でDXが進まない現状と課題

DXとは、デジタル技術を使って既存のビジネスモデルや業務の変革を目指す考え方のことです。単なるデジタル化とは違い、業務効率化にとどまらない業務プロセス、ビジネスモデルそのものの変革を目的としています。

しかし、中小企業におけるDXはなかなか進みにくい現状があります。まずはその理由と課題について以下の3つを順に解説します。

  1. アナログな文化や価値観が蔓延っている
  2. IT人材が不足している
  3. DXへの理解が足りない

(1)アナログな文化や価値観が蔓延っている

中小企業でDXが進みにくい最も大きな理由として、アナログな文化や価値観が定着していることがあげられます。

これまでのやり方で問題ないと思う従業員、なんとなくデジタル化への抵抗がある従業員などが多ければ、なかなかデジタル化を含むDXの推進は困難です。

未だに多くの中小企業では、紙による書類の管理やFAXの利用書面の契約におけるハンコ文化といったかつてより続くビジネスにおける慣習が根強く残っていることが何よりも中小企業のDX推進を阻害している原因と言えるでしょう。

(2)IT人材が不足している

中小企業では、IT人材が不足しやすいこともDXが進みにくい大きな一因です。デジタル技術の発展速度に反して、IT人材はなかなか育っておらず、IT人材不足は企業規模の大小を問わず多くの企業で叫ばれています。

容易には確保できないIT人材を確保するため、社内で育成する、中途採用で人材を確保する、アウトソーシングによる外部リソースで確保するなど、IT人材不足を解消するための工夫が必要となるでしょう。

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(3)DXへの理解が足りない

中小企業においては、経営層や従業員のDXへの理解が足りないというケースも少なくありません。単なるデジタル化、デジタルツールの導入だと思っている人も多いでしょう。特に、経営層がDXに対する理解が足りず、重要性や必要性を理解していないという場合は推進が困難です。

また、DXによって何を成し遂げたいのか、どのように変革を進めたいのかなど、明確な目標が定まっていないと、中途半端に終わってしまう可能性があります。まずは、経営層が率先して意識を変えていくことが重要です。

DXがもたらすメリット・デメリットとは?具体例を用いてわかりやすく解説

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中小企業こそDX推進が必要な5つの理由

DX推進は、中小企業でこそ必要とされています。ここでは、その理由を以下の5つに焦点を当てて解説します。

  1. 生産性を向上させるため
  2. 企業競争力を付けるため
  3. 優秀な人材を確保するため
  4. レガシーシステムから脱却するため
  5. 市場全体でデジタル化・IT化が進んでいるため

(1)生産性を向上させるため

日本の生産年齢人口、すなわち労働によってモノやサービスを生み出せる国民の人口は、1995年をピークとして減少の一途を辿っています(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和4年推計)」より)。今後も少子化・高齢化により、日本の労働人口はますます減っていくでしょう。

労働人口が減少する中では、少ない労働力で現在と同等、あるいは今以上に生産活動を行うために生産性の向上が不可欠となります。

生産性を向上させるためには、デジタル技術を使って業務全体を変革するDXの考え方が非常に重要です。自動化が可能な業務はロボットやAIに任せ、人にしかできない重要な業務にリソースを集中させる必要があるでしょう。

業務効率化はもちろん、人にしかできないクリエイティブな仕事への時間を増加させ、さらなるビジネスの発展にも大きく貢献します。

(2)企業競争力を付けるため

企業競争力とは、ある企業が市場において競合他社よりも高い収益をあげたり、シェアを拡大したりする力のことを指します。他社より業績を上げて勝ち抜き、生き残る力とも言えるでしょう。特に中小企業においては、この企業競争力が今後の変化の激しい世の中で生き残っていくためには非常に重要です。

DXの実現によって、ビジネスモデルの刷新やマーケットの変革など、通常ではなかなか考えられないスピードで環境等が変化することはもはや現代においては珍しくありません。動画配信サービスやフードデリバリーサービス・配車サービスなどのビジネスモデルの変化は記憶に新しいでしょう。

つまり、DX推進による新たなビジネスモデルを駆使した企業が増えてくれば市場は激化するため、対抗するためにも同様にDXを推進し、企業競争力を高めてサービスの改善や経営戦略の改革が必要になるのです。

(3)優秀な人材を確保するため

最新のデジタル技術やシステムの導入は、前項で説明した競争力の向上やサステナビリティの向上を通して、企業価値の向上につながります。企業価値の向上は、従業員のモチベーションをアップさせ、帰属意識や貢献意識の高まりが期待できます。

また、サービスがDX推進によって成長すれば、市場における知名度も向上し、自社にマッチした優秀な人材を確保できるような採用活動にも貢献します。自社にマッチした人材を採用できれば、従業員の離職率が低下し、リソース不足も解消されるでしょう。

(4)レガシーシステムから脱却するため

既存のシステムのうち、長期にわたって刷新されていないシステムのことをレガシーシステムと呼びます。レガシーシステムをそのまま使い続けていると、不正アクセスによる情報漏洩やデータ消失などのトラブルが起こる可能性が高いです。

また、レガシーシステムは運用が属人化しているケースが多く、担当者の退職によりブラックボックス化してしまうことも珍しくありません。

政府は、この問題を「2025年の崖」と呼称し、DX推進をしないままこのようなレガシーシステムを使い続ける際のリスクについて警鐘を鳴らしています。

特に、中小企業の場合は、大企業と比較するとIT人材や資金の確保が難しいため、できる限り早い対策を行い、後々から大きなリソースが必要になるようなケースは避けることが重要だと言えるでしょう。

(5)市場全体でデジタル化・IT化が進んでいるため

日本は海外と比べてDX化が遅れている現状があるものの、様々な企業でDXの取り組みが加速しているため、アナログからデジタルへの移行が進んでいます。

業界や職種に限った話ではないため、いつまでも従来のアナログ手法で進めていると取引きを行う上で支障がでてしまうこともあります。正常なやり取りができなくなることで、取引先に手間を取らせてしまうケースもあります。

顧客・取引先間のやり取りをスムーズに実施するためにも、中小企業においてはDX化が求められているのです。

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中小企業がDXを導入する5ステップ

ここからは中小企業が実際にDX推進を掲げて進めていく際の方法を5つのステップで解説していきます。

  • Step1:現状分析をする
  • Step2:DX推進の枠組みを構築する
  • Step3:組織を整える
  • Step4:戦略とロードマップを描く
  • Step5:システムを構築する

Step1:現状分析をする

まず最初のステップは、自社の現状分析をすることです。DXを導入する上で自社がどのような状態であり、どんな課題があるか把握しなくてはなりません。

このとき、経営層が認識している自社の課題だけでなく、営業部門、開発部門、デジタル・IT部門など、各部門の現場から課題を吸い上げることが重要です。

Step2:DX推進の枠組みを構築する

現状分析が済んだら、DXを推進していくための枠組みを整えていきます。まずは、経営層やマネジメント層の協力・バックアップを仰ぎましょう。

その後、経営層からDXによってどのような状態を目指すのか、なぜDXを進めることが重要なのか、どのような課題を解消していくのかなど、ビジョンを社内全体で共有することが重要です。

また、DX推進は経営層やマネジメント層、一部の担当者だけで行うものではありません。社内一丸となってDXを推進できるように、従業員一人ひとりの意識を変えていくことが大切です。必要に応じて、研修や説明の機会、マニュアルの整備等の実施を行うと良いでしょう。

Step3:組織を整える

DX推進は社内全体で行うものですが、率先して計画を立てたり、取り組みの優先順位を決定するチームは必要です。

ただし、デジタル・IT技術を中心とした取り組みだからといって、安易にIT部門に丸投げするのは避けましょう。日頃から業務負荷が高くなりやすい部門のため、思うように進まない・業務過多につながる可能性があるためです。

必要に応じて外部から人材を招いたり、部門間で連携したりしながら、柔軟かつスピーディーに対応できる組織作りを心がけましょう。そして、DX推進チームが主導し、社内の各部門や外部と連携して推進できるような体制を整えていきます。

DX推進を成功させる組織とは?組織変革のポイントや成功事例を解説

Step4:戦略とロードマップを描く

課題やビジョンが明確になり、組織体制が整ったら、いよいよ実践的な戦略を考えていきます。このとき、目指したいゴールやビジョンに向けたロードマップを描くことが重要です。

ロードマップは数カ月程度〜1、2年の短期的なものだけでなく、5年後・10年後、さらにその先までを見据えた長期的な視点も含めて描くことが重要です。

また、ロードマップを策定する際には、以下3つの軸が必要だとされています。

  • マーケット…市場のトレンドや全体的な流れ、ニーズ、市場規模など
  • 機能…商品やサービスに実装が期待される機能、またその予定
  • 技術…研究開発、新規事業創出などに必要な技術や人材、設備など

ロードマップを作成する際は、費用対効果はもちろん、実施項目の優先順位を見極めることも重要です。

例えば、長引くコロナ禍や働き方改革の推進といった背景によって、テレワークの環境整備などは優先順位のトップに位置付けられるべきでしょう。

そのため、業務効率化のための各種デジタルツールの導入を検討する場合には、テレワークの実現に必ず必要なツールの導入・運用は優先順位が高くなります。

DX推進には不可欠なビジョンとロードマップ策定の重要性について

Step5:システムを構築する

ロードマップが作成できたら、実際に各種デジタルツール、ITシステムを導入していきます。社内の課題解決、ビジョン達成のために必要なツールを正しく選定・導入し、社内システムを改善・構築していきましょう。

例えば、勤怠管理システムや経費精算システム、ビジネスチャットツールは最もわかりやすく、導入しやすいツールの一つではないでしょうか。導入の際は、IT部門やDX推進チームに任せきりにしないことが大切です。

各事業部門が積極的に関与し、実務に沿ったシステムの導入・運用ルールの構築を徹底しましょう。ただし、部門ごとにシステムが分断されないよう、DX推進チームが横断的に主導することが必要です。

また、既存のシステムやルールに拘らず、DX推進の障壁となるような場合は潔く決別し、新たなシステムとルールの構築を推進しましょう。

DX推進はどう始める?進めていく手順や成功させるためのポイント

DX推進にシステムの内製化は必要?メリット・デメリットや進め方を解説

中小企業でのDX導入を成功させる4つのポイント

中小企業でDX導入を成功させるための4つのポイントを解説します。

  1. 事業目標を明確化する
  2. 経営者・業務部門・IT部門が協力して進める
  3. スモールスタートで始める
  4. 必要に応じて外部リソースも活用する

(1)事業目標を明確化する

DXを推進するのは、デジタル技術やIT技術を使って既存のビジネスモデルや業務プロセスを変革するためです。

そのため、まず事業目標を明確にし、3年後、5年後、10年後にどうなりたいのか具体化する必要があります。事業目標を設定するにあたっては、市場の動向や消費者の購買行動・価値観の変化などを参考にしつつ、自社のミッションなども改めて考えながら行うべきでしょう。

(2)経営者・業務部門・IT部門が協力して進める

DX推進では、経営者とIT部門のみが躍起になっており、現場の業務部門にまでビジョンや重要性、必要性が共有されていないケースもあります。特に、あまりに急激な変化を合理性だけで推し進めようとすると、現場の反発が起こる可能性もあるでしょう。

経営層やIT部門、推進チームなどは、従業員全体にDXの重要性や必要性、持続可能な成長について正しく理解を得る必要があります。研修や説明会の開催、実務にメリットが大きい業務効率化に関わる部分から理解を求めるなど、社内に浸透するような工夫が必要です。

DX推進で経営者が担う役割とは?よくある課題や成功へ導く考え方

(3)スモールスタートで始める

突然、社内全体で急激にDXを進めるには莫大なコストも手間もかかります。もちろん多くの会社では、そのようなリソースは用意できず、さらに、急激な変化には反発がつきものです。

そのため、特に中小企業のDX化においては少額投資、小さな変化から始める「スモールスタート」が肝心です。日々の業務に密着したところから、少しずつ始めていきましょう。

(4)必要に応じて外部リソースも活用する

スモールスタートとも重なりますが、中小企業では大企業と比べて圧倒的に人材や資本のリソースが少ないことがボトルネックになりがちです。そこで、必要に応じて外部リソースを活用しましょう。

すべてを自社内で完結させる必要はありません。自社で活用できるリソースは活用しつつ、ITツールのベンダーや自治体の補助制度、コンサルティングサービスや専門人材のアウトソーシングなどを賢く活用しましょう。

なぜ多くの企業はDX推進に失敗するのか?その理由や成功の秘訣とは

中小企業におけるDXの成功事例5選

最後に、中小企業のDXの成功事例を5つご紹介します。ぜひ成功事例から具体的なイメージを想起させ、必要な成功の秘訣を探ってもらえればと思います。

(1)上総屋不動産株式会社

地域密着型で賃貸業・管理業を営む不動産会社の例です。不動産会社の性質上、新規問い合わせからクレームまで毎月の電話対応が1,500件程度あり、従業員のリソース不足や取次ミスの発生が大きな課題でした。

そこで、顧客対応・管理システムを導入。1日の着信回数や時間帯、問い合わせ内容を分類してデータ化し、適切な担当者へスムーズに取り次げるようになりました。従業員にとっても、顧客にとっても大幅なストレス減につながっています。

(2)株式会社日東電機製作所

日東電機製作所は、電気機械器具メーカーです。日東電機製作所のDXでは、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を設計部門に導入することで、人的リソースをより高度な業務に集中させることに成功しました。

例えば、データを印刷してハンコを押すといった単純作業は、人が行わなくてもRPAに処理手順を登録すれば簡単に実行できます。これにより、1ヶ月あたり約20時間ものリソース削減に役立ち、より高度な作業に人的リソースや時間を割けるようになりました。

(3)株式会社ウチダ製作所

株式会社ウチダ製作所は、大手自動車メーカーにプレス加工部品の製造・販売を行っている金型メーカーです。金型メーカーは、2002年からどんどん廃業が進んでおり、業界全体での零細化が進んでいました。しかし、高難易度のプレス金型は供給が不足していることに気づいたのです。

そこで、地域のプレス加工金型メーカー、IoTデバイスメーカーなどと連携して企業連合を作り、「金型共同受注サービス」を開発。製造設備にIoTデバイスを取り付け、設備の稼働状況をクラウド上で把握することで各メーカーの仕事量を把握し、依頼があった際に最適なメーカーへ業務を割り振れるような体制を実現しました。

(4)株式会社日東電機製作所

株式会社日東電機製作所は自動車部品や弱電部品などの生産を中心に手掛けている企業です。「精密加工技術」「ロボット・システムインテグレーション」「センシング・制御・計測評価」の業務を展開し、それぞれをDXの中心としています。

技術者の気づきを支援するAdvanced Control(R) ―加工エンジニアリングプラットフォーム―の開発に成功し、機械加工に必要なノウハウの効率的な収集に成功しました。

また、2030年を目標に同社の技術を磨いてさらなるDX推進に取り組まれています。

(5)株式会社リョーワ

株式会社リョーワは油圧装置の修理・メンテナンス・販売などを展開している福岡県に拠点を置く企業です。「脱油圧化による油圧装置の減少」「人口減少による日本市場の縮小」を経営課題として位置づけてロードマップを策定しました。

ロードマップにはDX化への流れが記載されており、海外拠点とのグローバル開発の効率化や新業務システムとのデータ連携などに関する計画が盛り込まれています。

一元的な業務の効率化ではなく、働きやすい環境の整備・新たなビジネスの創出などのDXを推進しています。

中小企業のDX成功事例10選!事例から学ぶ成功のコツや注意点を解説

中小企業においてDX推進は重要な今後の課題

中小企業におけるDX推進は、今後も企業が持続的に成長を続けるための重要な課題のひとつと言えます。現状では企業風土や人材不足、理解不足などの課題がまだまだ根強く残っていますが、ひとつずつ解消しながら少しずつDXを進めていかなければなりません。

本記事で解説したDXの重要性や推進するステップ、注意点、成功事例を、ぜひ自社のDX推進に役立てていただけると幸いです。

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