デジタル庁とは?発足した目的・理由や具体的な施策・課題を簡単に解説

最終更新日時:2023/04/06

デジタル化

デジタル庁とは

2021年9月にデジタル庁が発足しましたが、その目的や理由は何なのでしょうか。今回の記事では、デジタル庁とは何かの解説やデジタル庁の目的、具体的な施策を紹介します。デジタル庁発足後の課題やデジタル庁発足による効果も記載したのでぜひご覧ください。

福本大一

監修者 福本大一 Chatwork株式会社 DXソリューション推進部|マネージャー 大学卒業後、toC領域のWEBメディア事業で起業。事業グロースに向けたSEO戦略から営業・運用広告に従事し、約2年間の経営を経て事業譲渡。2021年3月からChatworkに入社し、カスタマーマーケティングやアライアンスを経験した後、メディア事業・運用広告事業の責任者としてミッションを遂行する。現在は、DXソリューション推進部のマネージャーとして新規事業領域のセールス・マーケティング・アライアンス・メディア事業を統括。

デジタル庁とは?

デジタル庁とは、デジタル社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進するために、内閣に設置された司令塔です。

要約するとデジタル化を進める官庁であり、実際にデジタル庁の公式noteでは次のように説明されています。

ひとことでいうと、2021年9月に設置される予定の「社会全体のデジタル化を主導する官庁」です。

[出典:デジタル庁「デジタル庁は「行政の透明化」を掲げ、noteでの発信を始めます。」]

デジタル庁が具体的にどのような役割を担ってどのような施策を進めているのかについては後述しますので、デジタル庁はデジタル化を主導する司令塔だと覚えておきましょう。

デジタル庁の創設はいつ?

デジタル庁が創設されたのは2021年9月1日です。具体的には、デジタル庁設置法の施行日が2021年9月1日であり、法に基づいて2021年9月1日に創設されました。

デジタル庁は何省?組織体制は?

デジタル庁の組織体制は、内閣(内閣総理大臣)を主として、デジタル大臣が事務を統括する体制となっており、2023年4月時点では平井卓也氏がデジタル庁の大臣を務めています。

デジタル大臣の任命を受けた副大臣が政策や企画をつかさどり、大臣政務官はそれを助ける役割です。ちなみに、大臣と副大臣、大臣政務官は政務三役と総称されます。

デジタル庁の組織体制で特徴的なのはデジタル監と呼ばれる特別職で、重要事項に対してデジタル大臣への進言や意見の具申をすることが役割です。

また、幹部にCxOを置いているのもデジタル庁の組織体制において特徴的なところであり、2022年4月26日時点の幹部名簿では次のCxOが任命されています。

  • CA(Chief Architect)
  • CISO(Chief Information Security Officer)
  • CPO(Chief Product Officer)
  • CTO(Chief Technology Officer)

デジタル監の下では、戦略・組織グループ、デジタル社会共通機能グループ、国民向けサービスグループ、省庁業務サービスグループの4グループが設置され、それぞれのグループはグループ長と次長が仕切ります。

なお、プロジェクト組成時には必要な専門性に応じて人材プールから人材を配置すると述べられており、つまりプロジェクトベース(適所適材)の人材配置を取っているようです。

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デジタル庁発足の目的や理由とは?

デジタル庁発足の目的は、法令上、デジタル社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進するためです。

基本理念にのっとり、デジタル社会の形成に関する内閣の事務を内閣官房と共に助けるとともに、デジタル社会の形成に関する行政事務の迅速かつ重点的な遂行を図るため、別に法律で定めるところにより、内閣に、デジタル庁を置く。

[出典:e-Gov法令検索「デジタル社会形成基本法第36条」]

また、デジタル庁の創設は当時の菅内閣総理大臣による指示から本格的に始まりました。

2020年9月23日に行われた首相官邸の政策会議「デジタル改革関係閣僚会議」による発言は次のとおりです。

今回の新型コロナウイルスへの対応において、国、自治体のデジタル化の遅れや人材不足、不十分なシステム連携に伴う行政の非効率、煩雑な手続きや給付の遅れなど住民サービスの劣化、民間や社会におけるデジタル化の遅れなど、デジタル化について様々な課題が明らかになりました。

この政権においては、かねて指摘されてきたこれらの課題を根本的に解決するため、行政の縦割りを打破し、大胆に規制改革を断行します。そのための突破口として、デジタル庁を創設いたします。

[出典:首相官邸「デジタル改革関係閣僚会議 議事録」]

つまり、新型コロナウイルス対応で国や自治体のデジタル化の遅れなど、さまざまな課題が浮き彫りになったことがデジタル庁発足の大きな背景(理由)となっています。

なお、デジタル庁の発足などを通じて目指すデジタル社会とは、「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」です。

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デジタル庁が担う役割

デジタル庁が担う役割は、前述のとおり、デジタル社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進することです。

さらに具体的には、次のような取組みを牽引する役割を担っています。

  • 利用者目線で適切にニーズをくみ取ったサービスを提供することによる国民の利便性の向上
  • デジタル基盤やデータ流通環境の整備
  • 行政や公共分野におけるサービスの質の向上
  • デジタル人材の育成・確保
  • 教育・学習の振興
  • 安心して参加できるデジタル社会の実現

デジタル社会の実現に向けて、行政サービスの提供をはじめ、デジタル基盤の整備や人材育成、教育振興など幅広い分野の取り組みを牽引するのがデジタル庁です。

具体的な施策については後述しますので、大枠を把握するための参考としてください。

デジタル庁の具体的な施策

デジタル庁の具体的な施策について、主なものをそれぞれ紹介していきます。

  • 行政サービスを効率的で安全に提供する仕組みの整備・普及
  • 国民向けオンラインサービスの実現
  • 国の情報システムの整備・管理を統一化
  • マイナンバーカードの運用・普及
  • 医療・教育に関わるIT活用の規制緩和
  • シェアリングエコノミーの推進
  • 政府ウェブサイトの標準化
  • 人材の育成

(1)行政サービスを効率的で安全に提供する仕組みの整備・普及

行政サービスを効率的で安全に提供する仕組みの整備・普及が推進されています。具体的には、PCやオフィスソフト、コミュニケーションツール、セキュリティ対策などの業務環境の品質を高め、組織の生産性や情報セキュリティの確保を行う取組みです。

デジタル庁では、標準的な業務実施環境を高い水準でまとめた「ガバメントソリューションサービス」を提供し、順次拡大を予定しています。

(2)国民向けオンラインサービスの実現

国民向けの行政オンラインサービスの実現も図られています。具体的には、子育てや介護、引越しなど暮らしに直結するさまざまな行政手続をワンストップで行えるようにする取り組みです。

例えば、引越しに関するさまざまな手続きをワンストップ化する「引越しワンストップサービス」構想があります。これまでは引越しによって住所が変更すると、住民票や国民健康保険、金融機関、保険会社などに関して住所変更手続きが必要でした。

そこで、引越しポータルサイトによって引越し情報を登録することにより、これらの手続きを一括して行えるような取組みが進められています。

(3)国の情報システムの整備・管理を統一化

国の情報システムの整備・管理の統一化も進められています。基本的な方針を策定してその標準化や統一化を図ることで、効率的なシステム整備を可能とすることが目的です。

統一の範囲は国だけでなく、地方公共団体や準公共部門、独立行政法人が含まれています。

(4)マイナンバーカードの運用・普及

マイナンバーカードの運用や普及も重要な施策として位置づけられています。そもそもマイナンバーは特定の個人を識別するために使われる12桁の番号のことで、現状、社会保障・税・災害対策の3分野で活用されているIDです。

一方、マイナンバーカードはマイナンバーが記載されているのはもちろん、顔写真付きの本人確認書類、オンライン上の印鑑(電子証明書)としての機能もあるプラスチック製のカードを指します。

マイナンバーカードは金融機関やネット証券での本人確認手続き(eKYC)に利用されているほか、自宅で確定申告ができるサービス(e-Tax)やコンビニで住民票の写しなどを取得できるコンビニ交付サービスの利用も可能です。

2024年度末までに運転免許証との一体化を開始したり、2022年度中には電子証明書をスマホに搭載したりする施策も進められています。

(5)医療・教育に関わるIT活用の規制緩和

医療や教育にかかわるIT活用の規制緩和も行われています。医療分野においては、オンライン診療やオンライン服薬指導、電子処方箋などの医療DX基盤を構築し、利用者本位の実現を図ることとされました。

教育分野においてもIT活用を促進しており、具体的には1人1台のIT端末をすべての児童生徒が持ち帰って活用できるよう整備を進めます。

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(6)シェアリングエコノミーの推進

シェアリングエコノミーの推進も施策として取り上げられています。シェアリングエコノミーとは、スキルや時間などの無形資産を含む活用可能な資産をインターネット上のプラットフォームを通じてシェアする経済活性化活動です。

具体的には、駐車場や自転車、空き部屋、家事・育児などをシェアするプラットフォームが存在しています。デジタル庁は一般社団法人シェアリングエコノミー協会と連携し、最近ではシェアリングエコノミーの活用検討ツールとして活用ハンドブックを公表しました。

(7)政府ウェブサイトの標準化

政府ウェブサイトの標準化も施策として進められています。2022年5月時点、各府省庁のウェブサイトはデザインやコンテンツ構成などに統一感がありません。

そこでデザインやコンテンツ構成を標準化・統一化することにより、必要な情報に誰もが素早くアクセスできるような取組みが進められています。

最近では、海外政府ウェブサイトの事例調査や各府省庁の現状調査などを行っているとのことです。

(8)人材の育成

デジタル人材の育成と確保も施策として進められています。2013年4月には金融庁から金融リテラシーを向上させることが重要であるという内容が取りまとめられましたが、デジタルリテラシーも重要です。

実際、情報活用能力(デジタルリテラシー)は学習の基盤となる資質として位置付けられており、小学校ではプログラミング教育の必修化などが行われました。

その他、社会人向けのリカレント教育の充実も進めており、「マナビDX」というポータルサイトも公開しています。

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デジタル庁発足後の課題

デジタル庁発足後、デジタル庁はいくつかの課題を有しています。どのような課題なのか確認していきましょう。

2022年末には100%近くを目指すもマイナンバーカード普及率4割

まず挙げられる課題は、マイナンバーカードの普及についてです。具体的には、2022年度末までにマイナンバーカードの普及率は100%を目指していましたが、2023年4月時点で普及率(人口対交付枚数率)は全国で76.4%となっています。

また、マイナンバーカードを健康保険証として利用できる医療機関も当初は2022年度末までにほぼ100%の展開を目指していましたが、これも2023年3月時点で約64.5%程度となっています。

旧姓併記だとワクチン接種証明書を取得できない事態が起きた

デジタル庁は新型コロナワクチン接種証明書アプリを提供していますが、マイナンバーカードの氏名欄に旧姓を併記している人が接種証明書を発行できない事態が起きたことがあります。

2021年12月20日に提供開始されたアプリですが、旧姓が併記されたマイナンバーカードでも発行できるようになったのは翌年の2022年1月21日からでした。

デジタル化の目的とは?改めて考える必要性や得られる効果について

デジタル庁発足による5つの効果

デジタル庁発足による5つの効果を紹介します。

  • 行政手続の迅速化
  • 中小企業に競争力がつく
  • 地方経済の発達
  • 高齢者や障害者もデジタルを活用できるように
  • 情報教育が進む

(1)行政手続の迅速化

デジタル庁によるデジタル社会の推進により、行政手続の迅速化が期待されています。行政機関の窓口で申請書等を手書きで記入し、押印後に窓口に提出。その後、処理が完了して呼び出されるまで待つといった流れも改善が図られるでしょう。

実際、デジタル庁は「スマートフォンで60秒で手続が完結」という目標を掲げて抜本的な改革を推進中です。

(2)中小企業に競争力がつく

デジタル庁の施策により、中小企業に競争力がつくことも期待されます。中小企業向けの施策はいくつかありますが、例えば中小企業等の取引やバックオフィスのデジタル化、EC活用などに関してデジタル化を協力に推進することとしています。

デジタル化・IT化に向けては国からの補助金が用意されており、資金面がネックになっている企業でもデジタル化を推進しやすいような支援が展開されています。

(3)地方経済の発達

デジタル化によって地方経済の発達も期待されています。現状、地方はインフラ整備が不十分であることなどにより、データの収集や活用が効率的にできているとは言えない状況です。

そこでデジタル庁が行っている共通基盤の整備が進むと、地域もこの共通基盤を利用することによってデジタルの実装やデジタル改革を進めやすくなります。

(4)高齢者や障害者もデジタルを活用できるように

社会形成における基本方針に「誰一人取り残されないデジタル社会」が掲げられています。なかでも高齢者や障害者に関する基本的な考え方として挙げられているものは次のとおりです。

② 高齢者や障害者に対してデジタル機器・サービスの利用を支援する場合、機器等の操作方法等とともに、機器等で何ができて、どのような課題を解決できるかを分かりやすく情報共有すること。

③ 障害者を対象とするデジタル機器・サービスのアクセシビリティ確保は、高齢者のフレイル対策11、社会参加に資するのみならず、こどもを含む幅広い国民一般にその利便性が裨益するものであり、新たなイノベーション創出や市場形成に繋がること。

[出典:デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」]

なお、フレイルとは年齢を重ねて心身の働きが低下する状態のことで、フレイル対策はそれを予防・改善するためのさまざまな取組みを指します。

デジタルデバイドによる高齢者の問題とは?原因と今後とるべき対策について

(5)情報教育が進む

情報教育が進み、国民全員が情報リテラシーを高められる効果が期待されています。

デジタル庁が推進する情報リテラシー向上に関する取組みは数多くありますが、一例として挙げると次のとおりです。

  • 小学校におけるプログラミング教育の必修化
  • 社会人向けの実践的なプログラムの開発・拡充
  • リカレント教育を支える専門人材の育成
  • 教育訓練給付における IT 分野の講座充実
  • 職業訓練(離職者訓練や在職者訓練)のデジタル関連分野への重点化

デジタル庁の今後の動きはますます重要になる

デジタル庁は、2021年9月に発足したデジタル社会の形成を強力に推進する司令塔です。これまで課題とされていた行政サービスをはじめ、この記事で紹介した施策の他にもさまざまな施策が進められています。

一部計画どおりに進んでいないものもありますが、すでに一定の効果が生じている部分も見られます。ぜひ、今後もデジタル庁の動きに注目してみましょう。

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