総勘定元帳とは?書き方や記載項目・仕訳帳との違いを解説
企業が行ったすべての取引を記載する帳簿、「総勘定元帳」。法人の場合は作成・保管が義務付けられていますが、どのように作成すれば良いのかわからないという経理担当者も多いのではないでしょうか。本記事では、総勘定元帳とは何か?書き方や記載項目・仕訳帳との違いを解説します。
目次
総勘定元帳とは?
総勘定元帳とは、取引の内訳すべてを勘定科目ごとに記入していく帳簿のことを指します。仕訳帳をもとに総勘定元帳に項目を記入していき、勘定科目ごとに記入されている分、取引日や発生原因、残高など取引の細かな部分まで追えるのが特徴です。
総勘定元帳は日々の取引を記録するためではなく、企業の置かれている財務状況の把握を目的として作成されることにも注意しましょう。
総勘定元帳の勘定項目
総勘定元帳の勘定項目は次の5種類に分類されます。
- 資産
- 負債
- 純資産
- 収益
- 費用
この5種類の勘定項目に沿って総勘定元帳を記入していくことにより、企業のおこなった取引の資産や純資産に対する負債、取引によって生まれた収益額や諸費用などを包括的に把握することが可能です。
総勘定元帳の保存期間
総勘定元帳は所得税法により、7年間の保存期間が義務付けられています。企業が申告した通りの税金を納めているかを、税務署の調査官が総勘定元帳などの会計帳簿を使用して確認します。そのため、総勘定元帳などの会計帳簿がきちんと保管されていないと、虚偽の申告をしているのではないかと疑われてしまい、結果として追徴課税が発生する可能性も否めません。
また、7年間の保存期間を守らず総勘定元帳の破棄などをしてしまった場合、過去の取引履歴を確認できなくなったり、税務上での不利益が発生したりすることも考えられます。このことから、総勘定元帳を作成して終わりではなく、7年間の保存期間を守るようにしましょう。
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総勘定元帳と仕訳帳の違いとは?
総勘定元帳と仕訳帳は、勘定項目ごとの帳簿か日付ごとに記録した帳簿かの違いがあります。どちらも複式簿記を使用し、会社法での作成が義務付けられている主要な帳簿である点では同じですが、総勘定元帳は勘定項目に沿って、取引の発生日やその内容、残高を確認できる帳簿です。
一方、仕訳帳はある日におこなわれた取引の内容をすべて確認することができる帳簿となっています。そのため、勘定項目に沿って確認したい場合は総勘定元帳、日付ごとに確認したい場合は仕訳帳が便利である点を把握しておきましょう。
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総勘定元帳を作成するメリットとは?
ここでは、法令遵守以外に総勘定元帳を作成することで得られるメリットについて、ポイント別に解説していきます。
特定勘定項目の現金預金・借入金の状況を確認できる
総勘定元帳とは勘定項目ごとで内訳や残高を管理できるため、特定の勘定項目の現金預金や借り入れ状況を、個別で確認したい場合に便利です。
仕訳帳では取引日に沿って内容を記入していくだけなので、特定の項目のみを抽出して確認したい場合には向いていません。このように、より細かな項目別の情報を得たいときには、総勘定元帳の方が便利といえます。
特定勘定項目の金額の増減を確認できる
特定勘定項目の金額増減を確認しやすいのも特徴といえるでしょう。総勘定元帳によって前期・後期での比較ができるので、金額の増減をわかりやすく把握することが可能です。
たとえば、ガス代が前年度よりも高くなっている場合、どこかに原因が存在します。そこで総勘定元帳を参照することで、どこで前年度に比べて異変が生じたのかを確認することが可能です。
決算書作成時の確認資料として活用できる
決算書作成時に必要となる試算表を作るには、総勘定元帳が必要です。決算整理をするために仕訳をおこなったあとには、総勘定元帳を用いて、貸借対照表や損益計算書などの決算書を作成しなければなりません。
このように、決算時に必要となる書類作成には、総勘定元帳が必要となる場合が多くあります。そのため、総勘定元帳がきちんと作成されていないと、そもそも決算の手続きをおこなえないということになるのです。
税務コンプライアンス強化につながる
先述したように、総勘定元帳は所得税法により7年間の保存が定められているなど、税務調査の際にも必要不可欠な書類の一つです。
総勘定元帳を作成し、しっかりと保存しておくことによって、企業全体の税務コンプライアンスを強化することにも繋がるのはメリットといえます。
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総勘定元帳の書き方・記載項目
実際に総勘定元帳の書き方や、記載する項目についてみていきましょう。取引が発生したあとの総勘定元帳が完成するまでの流れは下記になります。
- 入金伝票や出金伝票を起こす
- 仕訳帳にそれらを記載する
- 勘定科目ごとの勘定口座を作る
- 仕訳帳から総勘定元帳に転記する
総勘定元帳の記載項目
総勘定元帳の記載項目は、次の7つです。
伝票番号 | 仕訳が計上された伝票の番号を記載 |
年月日 | 取引のおこなわれた年月日を記載 |
相手科目 | 該当仕訳での相手科目名を記載 |
摘要 | 取引相手や取引内容を記載 |
借方金額 | 該当する総勘定元帳の資産や費用では、借方金額に記入することで増加を意味し、負債や純資産、収益では減少を意味することになります。 |
貸方金額 | 借方金額の逆の意味になります。たとえば、該当する総勘定元帳の資産や費用では、貸方金額に記入することで減少を意味します。 |
残高 | 取引計上後の残高を意味します。 |
仕訳帳から総勘定元帳へ転記
仕訳帳から総勘定元帳への転記をする場合、次の流れで転記作業をおこないましょう。
- 取引が発生
- 仕訳帳に記入
- 勘定科目ごとの勘定口座を作る
- 仕訳帳に記入した仕訳を総勘定元帳に転記する
たとえば、4月30日に20万円の洋服が売れた場合、仕訳帳から総勘定元帳への転記例は次のようになります。
総勘定元帳/現金
日付 | 相手勘定科目 | 摘要 | 仕丁 | 借方金額 | 貸方金額 | 残高 |
4/30 | 売上 | 洋服 | 1 | 200,000円 | 200,000円 |
総勘定元帳/売上
日付 | 相手勘定科目 | 摘要 | 仕丁 | 借方金額 | 貸方金額 | 残高 |
4/30 | 現金 | 洋服 | 1 | 200,000円 | 200,000円 |
総勘定元帳では勘定科目ごとの転記が必要となるため、「現金」「売上」それぞれのページに記載が必要となります。
相手勘定科目が1つではない場合
たとえば、20万円の洋服を手数料1000円を差し引いた金額で売った場合、総勘定元帳上では「諸口」という勘定科目を使って次のように処理します。
総勘定元帳/売掛金
日付 | 相手勘定科目 | 摘要 | 仕丁 | 借方金額 | 貸方金額 | 残高 |
4/30 | 諸口 | 売掛金回収 | 1 | 200,000円 | 200,000円 |
ここで記載した勘定科目の「諸口」の具体的な内容を参照したい場合には、転記前の仕訳帳の該当部分に戻って確認する必要があります。
健全な企活動のために総勘定元帳を適切に作成・管理しよう
総勘定元帳の書き方や仕訳帳との違い、作成するメリットなどについて解説していきました。税務コンプライアンスを守り健全に企業経営をしていくうえで、総勘定元帳の作成は不可欠といえます。
作成の仕方が分からない場合などには、是非本記事の内容を参考にしてみてください。
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