在宅勤務手当(テレワーク手当)とは?必要性や支給額の相場について解説

在宅勤務手当とは、在宅で勤務する社員のために用意された手当のことです。テレワークの導入が進む中、実際に制度を取り入れたり、支給を検討する企業も増えています。本記事では、在宅勤務手当について、必要性や支給額の相場などを詳しく解説し、具体的な事例も取り上げます。
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在宅勤務手当とは?
在宅勤務手当とは、在宅での労働環境を整備するための手当のことです。
新型コロナウイルスの世界的な流行により、従業員にオフィスではなく、在宅で勤務させる企業が増えました。オフィスには仕事を行うための環境が整っていますが、在宅の場合には必ずしもそうではないケースもあります。
在宅勤務手当は、在宅での労働環境の整備のために企業から支給される金銭または現物のことで、テレワーク手当とも呼ばれています。
在宅勤務手当の支給は義務ではない
在宅勤務手当の支給は企業に課された義務ではありません。在宅勤務を行う企業もあれば、そうでない企業もあるでしょう。在宅勤務手当を支給するか否かは、原則として経営者の判断に委ねられています。
ただし、働き方改革やワークライフバランスの取り組みが奨励されていることもあって、ここ最近は多くの大手企業や有名企業が在宅勤務手当の支給を行っています。
在宅勤務手当が課税対象になるケースとは?
在宅勤務手当は、課税対象となるケースと課税対象とならないケースがあります。
2021年1月に『在宅勤務にかかる費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)』が国税庁から発表され、在宅勤務手当の取扱いについて詳しく説明されました。
在宅勤務に必要な費用として、その費用の実費相当額を精算するかたちで企業が従業員に対して一定の金銭を支給しているケースでは、従業員に対する給与所得として取り扱う必要はありません。
この費用は、業務を行うために必要となる、言わば経費を精算したものとして取り扱われるため課税対象とならないのです。
一方で、企業が従業員に対して毎月5,000円を渡すケースなど、使途や使用金額を問わず、後日精算もしないかたちで金銭を支給しているケースでは、従業員に対する給与所得として取り扱われます。したがって、このケースでは住民税・所得税の課税対象となります。
[出典:国税庁「在宅勤務にかかる費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」]
在宅勤務手当の必要性
なぜ在宅勤務手当が支給されるようになったのでしょうか。ここでは、在宅勤務手当が支給されるようになった背景を説明していきます。
増加する在宅勤務
新型コロナウイルスの流行によって、政府は2020年4月に1回目の緊急事態宣言を発出、2回目以降は人が密集しやすい都心部を中心として同宣言の発出やまん延防止等重点措置が適用されました。
これに伴い、緊急事態措置及びまん延防止等重点措置が実施されている区域に属する都道府県は「出勤者数の7割削減」を目指すこととされ、在宅勤務(テレワーク)を徹底するよう呼びかけが行われました。
その結果、様々な企業で在宅勤務の導入が進みました。しかし、在宅勤務が導入されても、必ずしも自宅の労働環境が整っているわけではありません。そこで、福祉の向上を図ることを目的として、自主的に在宅勤務手当を支給する企業が増えました。
必要となるネットワーク環境
現代の企業では、インターネットを使わずに業務を遂行するのは難しいでしょう。在宅勤務でも同じことが言えます。つまり、在宅勤務であってもインターネット環境を欠かすことはできません。
しかし、プライベートな空間である自宅にインターネット環境があるとは限りません。そこで企業は、インターネット環境の整備をサポートするために、在宅勤務手当の支給に踏み切ったのです。
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設備導入に必要な初期費用と維持費
ネットワーク環境を整えるためには、初期費用と毎月の維持費が必要となります。インターネット環境を整えるためには新たにWi-Fiルーターを購入・契約する方法や、スマートフォンのテザリング機能を利用する方法などがあります。どちらにしても継続的な維持費がかかります。
また、在宅勤務を始めるために、PCや関連する機材を新たに購入する従業員もいるでしょう。業務で利用しているにもかかわらず、その費用を従業員が払うのは大きな負担になってしまいます。在宅勤務手当は、このような従業員を支援するためにも必要性が増しているのです。
在宅勤務手当の支給方法
在宅勤務手当の支給方法には、「現金支給」と「現物支給」があります。以下では、それぞれについて解説していきます。
現金支給
一般に、在宅勤務手当は現金で支給されるケースが多いです。支給方法としては、給与に上乗せして一定額を支給するものです。
在宅勤務に必要となった費用を従業員ごとに算出するのは難しく企業側で膨大な手間がかかることから、一律で一定額を支給する実務が定着しています。
なおこの場合、前述の通り、在宅勤務手当は給与所得としてみなされるので課税対象となります。
現物支給
在宅勤務手当を、パソコンや通信機器など、現物で支給するケースもあります。顧客情報などをネットワーク上でやり取りすることが多い企業は、セキュリティの観点から、現物で支給する傾向にあります。
現金支給で在宅勤務環境を整備しようとすれば、従業員自ら機材を購入しなければなりません。この場合、従業員ごとに労働環境が異なるので、特定の従業員がセキュリティの脆弱なネットワークを利用していると、会社全体の業務に支障をきたすリスクが高くなります。
そのため、会社側が認めた電子機器類を一律で現物支給したほうが、従業員の労働環境の質を一定に保つことができるようになるのです。
在宅勤務手当の支給額の相場
在宅勤務手当を導入する企業が増えているものの、その支給額は各社によって異なります。2020年12月、人材紹介を行っているエンワールド・ジャパン株式会社は、コロナ禍における従業員サポートに関する調査結果を公表しています。
調査(対象企業269社)の結果、全体の33%(「毎月、支給している」「一時金(単発)を支給した」「備品の金額に応じて支給した/している」の合計)が何らかの在宅勤務手当を支給していることが示されました。
中でも、毎月在宅勤務手当を支給している企業の支給額の相場は、3,000円以上5,000円未満が38%で最も多く、次いで5,000円以上10,000円未満が37%、10,000円以上30,000円未満が10%、3,000円未満が15%となっています。
[出典:エンワールド・ジャパン株式会社「在宅勤務における企業の従業員サポート調査」]
在宅勤務手当を導入するメリットとは?
在宅勤務手当を支給することで、企業側にはどのようなメリットがあるでしょうか。ここからはそのメリットについて解説していきます。
多様な働き方の促進
従来の代表的な働き方と言えば、朝の満員電車に乗ってオフィスに出勤して、終業時間まで勤務するのが一般的でしょう。
しかし、近年では、そうした働き方に限らず、多様な働き方の実現が目指されています。在宅手当を支給することによってテレワーク環境が整い、自宅やカフェなどさまざまな場所で働くことができます。
また、従来の働き方では育児や介護などで離職を余儀なくされていた人材も、在宅勤務という働き方を実現できれば長く働き続けられます。
この意味で、在宅勤務手当によるテレワークやリモートワークの推進は、働き方の多様化を促進する一つの手段となりうるのです。
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経費の削減
オフィスに出社しない働き方が定着すれば、通勤手当の支給は不要となります。不要となった通勤手当を在宅勤務手当に振り替えるだけなので手間もかかりません。
遠方や郊外から出勤している従業員は、通勤手当が毎月数万円かかっているケースも多いでしょう。前掲の調査による在宅勤務手当の相場が10,000円以内ということを考えると、通勤手当を支給するよりも、在宅勤務手当を支給する方が出費が少なくて済みます。
従業員のモチベーションアップ
多様な働き方を認めることは従業員のモチベーションをアップさせることにつながるでしょう。従業員一人ひとりが希望する働き方で仕事ができるようになれば、働きがいも増すはずです。
しかし、ここまでみてきたように在宅での勤務にも当然費用がかかります。従業員の負担を減らすためにも在宅勤務手当を支給して、多様な働き方を推進し、その結果として従業員のモチベーションをアップさせることが企業の成長にもつながるのです。
従業員の業務効率アップ
従業員の業務効率は環境に大きく依存します。たとえば、安定したネットワーク環境がある職場では、従業員の業務効率は高くなり、逆に不安定なネットワーク環境の職場では業務効率が落ちます。
在宅での業務も同様です。在宅勤務手当を支給することで、ネット回線をはじめ、在宅でも安心して働ける環境が整うことで従業員の業務効率も確実に向上します。
企業のブランドイメージ向上
働き方改革の推進が求められている昨今の社会において、在宅勤務手当を支給して積極的に在宅勤務を導入している企業は前向きに評価されます。
在宅勤務手当を支給していることを情報開示を通じて積極的にアピールすれば、働き手に優しい企業として、企業のブランドイメージも向上します。
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在宅勤務手当を導入する際の注意点
在宅勤務手当を導入する際には、いくつか注意したいことがあります。以下では、導入の際の注意点について解説していきましょう。
明確な支給ルールを設ける
在宅勤務手当を支給する場合には、明確な支給ルールをあらかじめ定めておく必要があります。支給ルールを定めずに在宅勤務手当を支給してしまうと、そこが不正の温床となりかねません。
明確な支給ルールを設け、厳格に運用することが、在宅勤務手当を導入する際の必須要件となります。
課税対象の仕組みの説明が必要
在宅勤務手当は、一定の額を定期的に支給しているケースでは給与所得とみなされ課税対象となります。一方、在宅勤務手当であっても実費精算とすれば経費となるため課税対象とはなりません。
多くの企業が在宅勤務手当について一定額を定期的に支給しています。これは、従業員一人ひとりの実費精算には手間がかかるという事情があるからです。
しかし、こうした事情を理解している従業員は多くありません。在宅勤務手当を支給する場合には、きちんとその仕組みについて説明を行い、従業員の理解を促しておく必要があります。
支払い済みの在宅勤務手当がある場合は要注意
在宅勤務手当に関して明確な指針を国税庁が示したのは2020年5月のことでした(前出:「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」 )。
この指針が出る以前から在宅勤務が推奨されていたため、すでに在宅勤務手当を支給済みという企業も多かったはずです。支払い済みの在宅勤務手当については、すでに説明したように、その支給方法によって課税対象となるか、非課税かが決まります。
したがって、指針に照らして、従業員ごとに在宅勤務手当の支給状況を確認し、誤っていた場合は都度修正が必要となります。在宅勤務手当の支給額に応じて、所得税・住民税の額が変わってくるため、専門的な知識を持った税理士や社会保険労務士の力を借りるのも良いでしょう。
[出典:国税庁「在宅勤務にかかる費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」]
在宅勤務手当の導入事例5選
最後に、在宅勤務手当を導入している実際の企業事例を確認していきましょう。
1.富士通株式会社
2020年7月、富士通株式会社は「Work Life Shift」という新しい働き方のコンセプトを発表しました。その後、2021年10月にはその続編となる「Work Life Shift2.0」を続けて発表しています。
富士通株式会社は、通信料・光熱費・デスク・イスなどのテレワーク環境整備費用補助として、一人あたり月額5,000円を支給するスマートワーキング手当を2020年7月給与より開始しています。
通勤定期券を廃止する代わりとして、約8万人の国内グループ従業員について在宅勤務を標準とした働き方への移行を目指しています。
スマートワーキング手当は、定額での支給となるため税務上は給与所得として取り扱われるものではあるものの、在宅勤務を行う従業員の負担感を軽減する取り組みです。
2.note株式会社
2011年に創業し、デジタルコンテンツの企画・制作・配信を行っているnote株式会社は、もともと職種に応じてリモートワークを導入するなど、先進的な働き方を実践してきた企業です。
note株式会社は2020年3月26日から全社員原則在宅勤務となり、同年6月1日からは在宅勤務推奨という勤務形態をとっていました。
その後、同年7月1日からは在宅勤務をベースとしたフレキシブル出社制度へと移行して現在に至っています。フレキシブル出社制度とは、従業員一人ひとりが勤務スタイルを自由に選択できる制度です。
同社は2020年5月から、全従業員を対象とした在宅勤務手当を導入しています。同時に、就業環境整備を目的として希望者にオフィスの椅子を配送する取り組みも実施しました(2020年6月で終了)。
在宅勤務手当は雇用形態にかかわらず500円×出勤日数分を半年ごとに支給しており、半年間で6万円が上限となっています。2020年7月のフレキシブル出社制度移行後も、在宅勤務手当の支給は続いています。
3.株式会社メルカリ
株式会社メルカリは、2020年2月19日より原則在宅勤務を開始しました。もともと、メルカリ株式会社はオフィス勤務を原則としており、リモートワークは禁止されていました。
しかし、2020年7月1日からは、新しいワークスタイルの確立を目指し、「メルカリ・ニューノーマル・ワークスタイル」を試験的に導入し、2021年9月からは、多様な働き方を自由に選択できる「メルカリ・ニューノーマル・ワークスタイル “YOUR CHOICE”」を開始しています。
在宅勤務開始後の2020年4月に、株式会社メルカリは在宅勤務手当(半年分で6万円)を支給しました。自宅での勤務環境構築やオンライン・コミュニケーション(チーム・ビルディング)などを支給目的としています。
4.株式会社LINE
株式会社LINEは、緊急事態宣言発出後、直接雇用者に対して、サポートとして月額5,000円の新型コロナ対応手当を支給しました。
在宅勤務手当としてだけではなく、感染拡大防止のためのマスクや消毒液といった衛生用品の購入もできるというものでした(緊急事態宣言の解除に伴い、本制度は現在終了しています)。
2020年6月から出社と在宅勤務を組み合わせたスタイルに移行していた株式会社LINEは、その後も、新型コロナウイルスの収束を見越して、出社以外の働き方の検討を重ねています。
2021年には、部署ごとに勤務ルールを作る新たな勤務制度「LINE Hybrid Working Style」を同年10月から導入することを発表しており、オフィス出社と在宅勤務の比率を各部署が決めるとともに、勤務地の制限が緩和されています。
5.株式会社カオナビ
企業の人材情報をクラウド上で一元管理できる人材管理システム(カオナビ)を提供している株式会社カオナビは2020年4月に、「在宅勤務支援金」という形で1人あたり5万円を在宅勤務手当として一括支給しました。
従業員が必要とする就労環境を自由に整備するための支援金です。実費支給ではないため課税対象になるものの、従業員が使途を自由に選べることが特徴です。
在宅勤務手当はテレワーク時代に必要な制度
働き方の多様化を実現するためには、在宅勤務をはじめ、様々な働き方を自由に選択できることが重要です。在宅勤務手当は、そのような社会を実現するために不可欠な制度であると言えるでしょう。
新型コロナウイルスの世界的な流行によって従来とは異なる働き方が普及しつつあります。これを機に、新しい働き方の一つとして在宅勤務を導入してみてはいかがでしょうか。
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