デジタイゼーション・デジタライゼーションとは?違いやDXとの関係を解説

最終更新日時:2022/06/06

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デジタイゼーションとデジタライゼーションの2つは字面が非常に似ており、それぞれの言葉の意味も混同しやすいです。本記事では、デジタイゼーションとデジタライゼーションにおけるそれぞれの具体例や違い、DXとの関係性について解説します。

デジタイゼーションとは?

デジタイゼーション(Digitization)とは、これまでアナログで行ってきた業務をデジタル化することです。

国連開発計画(UNDP)では、デジタイゼーションを下記のように定義しています。

既存の紙のプロセスを自動化するなど、物質的な情報をデジタル形式に変換すること

[出典:総務省「情報通信白書(令和3年)]

デジタイゼーションによって、ITツールやシステムを活用することで、業務の効率化や生産性の向上、コスト削減などを目指します。

(1)デジタイゼーションの具体例

デジタイゼーションは具体的にどんな業務に導入されているのか、ここでは5つの事例を紹介します。

#1: タブレットやスマートフォンなどの導入

多くの企業で、タブレットやスマートフォンなど、モバイル端末を導入するデジタイゼーションが進んでいます。

例えば、営業活動においてタブレットやスマートフォンを活用すると、顧客への参考資料の掲示やプレゼンテーションの際、わかりやすく行えます。

また、オフィス内でしか確認できなかった社内メールも、モバイル端末を使用して外出先から確認と連絡ができるため、リアルタイムにやり取りできます。

タブレットやスマートフォンなどのデジタル端末の導入が進むと、働く場所にとらわれず業務を進められるようになるでしょう。

#2: 業務システムの導入

業務システムとは、経理や人事、販売管理など、企業内で行われている特定の業務で使われるシステムのことです。

業務システムの例は以下の通りです。

  • 会計管理システム
  • 販売管理システム
  • 生産管理システム
  • 人事管理システム
  • 勤怠管理システム
  • 営業管理システム
  • 顧客管理システム
  • 品質管理システム

例えば、発注書や見積書など、Excelで管理していた経理業務に必要な計算を手作業から、業務システムへ移行すると正確でスピーディな処理が可能になります。また各種業務システムの導入によって、データが一元管理できるため、他部署とのデータ共有も可能になります。

編集権限を付与することで、文字化けや入力ミスといったデータクレンジングも行いやすくなります。

業務システムは、種類も多いため自社にあったシステムを導入すると良いでしょう。

#3: Zoom等オンライン会議ツールの導入

新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で、対面においての業務が困難となり、Zoomなどのオンライン会議ツールを使用する企業が増えました。

オンライン会議ツールを使用すると、オフィスにいなくても会議に参加できたり、遠隔地とオンラインで打ち合わせができます。

オンライン会議の導入により出社する必要性も低くなり、働き方改革につながります。また、自然災害が発生した場合でも事業を停止せず継続できるようになるため、導入する企業が増えています。

さらに、遠隔地の取引先に行くこともなくなるため、移動時間や交通費などのコスト削減効果もあります。多くのツールでは、画面共有機能で画像・動画を使用して情報共有が可能なので、対面と同等の情報量を正確に伝えられます。

#4: デジタル広告を使う

チラシやポスターなど、街頭に配布や掲示するアナログ広告もデジタル広告に移行できます。

デジタル広告はアナログ広告よりも、必要としている人に届けやすくなるため、自社製品の効果的なPRができます。さらに、購買意欲があるユーザーの行動データを収集できるメリットもあります。

収集できるデータには、例えば次のようなものがあります。

  • インプレッション:どのくらいの人に何回広告が表示されたか
  • トラフィック:どれだけの人が広告からウェブサイトに訪問したか
  • コンバーション:どれだけの人が広告から商品購入や登録に至ったか

アナログ広告では測定できないデータを収集できるため、幅広い広告戦略が可能となります。

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#5: 電子印鑑を使う

電子印鑑を使うことで、ペーパーレス化だけでなく業務の効率化が図れます。

通常、企業によって承認や決済手続きの流れは決まっており、複数の部署や担当者の印鑑・承認印が必要になります。そのため紙ベースのフローでは、手間と時間がかかるのが課題でした。

自社で使用する印鑑を電子印鑑化することで、大量のPDFファイルが送られてきても連続で捺印できるため、効率よく手続きできます。

書類に不備があった場合でも、再印刷や再出力などの手間や時間的コストも削減できるため、業務フローの簡略化・効率化にもつながります。

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(2)デジタイゼーションの効果

デジタイゼーションの推進によって得られる効果を3つ紹介していきます。

#1: 自動化で作業が効率化される

自動化で作業が効率化されることで、業務プロセス全体でかかる時間を削減して、業務効率化や長時間労働の是正など働き方の改善につながります。

少子高齢化が進む現代では、労働力のある生産年齢人口(15歳から64歳)が2020年の7,341万人から、2040年には5,787万人になるというデータがあります。

[参照:総務省「第1部 特集 データ主導経済と社会変革」]

そのため、企業にとって、労働力の確保と生産性の向上が大きな課題となっています。

自動化により作業を効率化させることで、時間の削減だけでなく1人あたりの生産性をあげ、人手不足の状態でも滞りなく業務を継続できます。

#2: ヒューマンエラーを減らせる

アナログ式のデメリットは、手作業による人的なミスが発生してしまうことです。膨大な量の書類チェックやデータ入力などは、必ず記入ミスやトラブルなどが発生します。

単純作業であれば、AI(人工知能)を搭載したデジタルツールを活用することでヒューマンエラーを減らして正確性を上げられます。

#3: 並列作業で時短が可能になる

並列作業を機械に任せ自動化することで、業務の時短が可能になります。

例を挙げるとパソコンのキッティング作業です。キッティングとはパソコンを使える状態にセットすることです。PCキッティングは1人1台設定する場合、およそ3時間55分かかります。

<PCキッティングの作業時間>

番号手順作業時間
1パソコンの開封2分
2固定資産管理などのシール貼り1分
3ケーブル類を接続して電源を付ける2分
4初期設定15分
5社員に個別設定、専用アプリインストール3時間
6設定後の確認30分
7梱包5分

しかし、3時間30分かかる個別設定から設定後の確認の並列作業を自動化することで、10台分のPCキッティング作業でも、1台分と変わらないスピードで設定できます。

<自動化による並列作業でPCキッティングした場合の作業時間>

番号手順手作業時間自動化
1パソコンの開封2分×10台=20分2分×10台=20分
2固定資産管理などのシール貼り1分×10台=10分1分×10台=10分
3ケーブル類を接続して電源を付ける2分×10台=20分2分×10台=20分
4初期設定15分×10台=150分15分×10台=150分
5社員に個別設定、専用アプリインストール3時間×10台=30時間3時間30分
6設定後の確認30分×10台=300分
7梱包5分×10台=50分5分×10台=50分
合計39時間10分7時間40分

5と6の作業が効率化され、トータルの作業時間が大幅に短くなります。

並列作業をデジタルにすることで、時短だけでなく業務の負担も軽減される効果があります。

デジタライゼーションとは?

デジタライゼーション(Digitalization)は、アナログ処理されている部分をデジタル化して、業務プロセスを変革し、業務効率化や新たな価値の創出を目指すことです。

国連開発計画(UNDP)による定義は次の通りです。

組織のビジネスモデル全体を一新し、クライアントやパートナーに対してサービスを提供するより良い方法を構築すること

[出典:総務省「情報通信白書(令和3年)」]

近年、デジタライゼーションは業務効率化を目的として、さまざまな企業で推進されています。

デジタライゼーションの効果や具体例について見ていきましょう。

(1)デジタライゼーションの具体例

デジタライゼーションの具体例は次の4つです。

  • RPAを用いた業務効率化
  • IoTやロボットを使った業務効率化
  • カメラやセンサーを用いたデータ活用
  • 電子契約による業務のオンライン化

#1: RPAを用いた業務効率化

RPAとは「Robotics Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)」の頭文字をとった言葉です。

人間がパソコンで行っている作業をロボットが代わりに処理することで、自動化を図り、ミス削減・時間短縮などの効果が期待できます。

人手不足解消や生産性向上などを目的にさまざまな企業で、RPAの導入が進みつつあります。

しかし、RPAを導入すれば必ず業務効率化を達成できるわけではありません。RPAの導入を成功させるには、作業内容や業務フローを「見える化」し、現状を把握する必要があります。

業務状況を把握したうえで、何が自動化できるのか、何を自動化したいのかなどの目的を明確化し、段階的に導入することが重要です。

#2: IoTやロボットを使った業務効率化

IoT(Internet of Things)とは、モノのインターネットと呼ばれ、搭載されたモノからデータの収集や解析ができるのが特徴です。

IoTによって、例えば製造現場での生産効率向上、設備機器の故障検知などが期待できます。また、遠隔監視や遠隔制御などもIoTの得意とする分野です。

ビジネス分野ではロボットの利活用も進んでいます。例えば、顧客から質問や問い合わせが来た際に自動で返信する「AIチャットボット」もさまざまなシーンで活躍しています。

AIチャットボットならば24時間365日いつでも対応可能なので、顧客満足度の向上と対応業務の効率化が実現できます。

#3: カメラやセンサーを用いたデータ活用

製造業や飲食店の現場でも、デジタライゼーションが進められています。

カメラセンサーを用いたモニタリングにより、ベテラン職人だけが持つ職人技をデータ化することで、新人や若手職人のデータと比較して技術向上が狙えるでしょう。

飲食店ではクラウド型カメラが防犯以外にも使われています。例えば、顧客の来店時間の計測や動線などセンサーを用いてデータを収集・分析することで、マーケティングに活用できます。

また飲食店の運営面では、データを分析することで、忙しい時間帯には人員を増やすなどの対策を立てられ業務改善につながった事例などがあります。

本部の職員が店舗に訪問する必要がなく、インターネットを活用してカメラで保存された映像をすぐに確認できるため、現場の把握や具体的なアクションを打つ際に役立ちます。

#4: 電子契約による業務のオンライン化

近年、コロナ禍などによって対面による業務が困難になった影響で、電子契約の活用が進んでいます。

対面による紙を使用した書類ベースではテレワークの際、業務の進行を妨げてしまいます。郵送においても、印紙や押印など時間と手間が非常にかかり非効率です。

電子契約で業務をオンライン化することで、遠隔地の企業や人との契約もスムーズに完結できます。

押印も不要で素早く契約締結できるため、対面による契約が難しい時代に電子契約を導入する企業はますます増えていくでしょう。

(2)デジタライゼーションの効果

ここでは、デジタライゼーションがもたらす具体的な効果を4つ解説します。

  • 商品やサービスに変革を起こせる
  • DXの準備ができる
  • コストの削減ができる
  • さまざまな働き方に対応できる

#1: 商品やサービスに変革を起こせる

デジタライゼーションは、アナログで行っていた業務をデジタル化により効率化するだけでなく、ビジネスに変革をもたらせます。企業に変革を生み出すことで競争力が高まり、企業全体の成長へつながると期待されています。

例えば、デジタルツールを導入することでさまざまなデータ収集・分析が可能となり、新たな顧客ニーズを発見できる可能性があります。すでに顕在化しているニーズに加えて、潜在ニーズを掘り起こすことで、新しい商品やサービスの開発につなげられます。

#2: DXの準備ができる

DXを完成させるために、デジタライゼーションは必要不可欠です。

通常、DXは第一段階のデジタイゼーション、第二段階のデジタライゼーションを経ることで実現します。

しかし、場合によってデジタライゼーションが抜けてしまうケースもあります。

  • 顧客からの要望
  • 従業員のITリテラシーの差
  • ワークフローの見直しによる抵抗感

この3つの抵抗感から、デジタル化がスムーズに進まないこともあります。

DXを目指すのであれば部門や部署とコミュニケ―ションを取り、経営者が率先して戦略を立て推進することが大切です。

#3: コストの削減ができる

業務をデジタル化することで、業務効率化だけでなくコストの削減にもつながります。

デジタルツールやシステムを導入することで、さまざまな部分を自動化できるようになるので、残業や休日出勤が少なくなるので人件費削減に役立ちます。またデータを統一することで、誰が操作してもすぐに確認や修正ができることから労力削減や教育コストの削減効果もあります。

他にもペーパレス化によって、インク代、用紙代、プリンター代などのコスト削減効果も期待できます。

#4: さまざまな働き方に対応できる

デジタライゼーションのメリットは顧客だけでなく、社員にもあります。

近年、新型コロナウイルス感染症拡大や働き方改革の推進によって、リモートワークや在宅勤務が推奨されています。

  • Web会議ツール
  • 電子契約
  • チャットツール
  • 勤怠管理ツール
  • タスク管理ツール

これら5つのツールを組み合わせることで、オフィスにいなくてもインターネット環境があれば自宅やコワーキングスペース、観光地でも業務が可能です。

他にもデジタルツールを組み合わせることで、出社する必要性がなくなるので、例えば子育てや介護などで就業機会が得られなかった人材などが、多様な働き方を実現できるようになります。

デジタイゼーションとデジタライゼーションの違い

デジタイゼーションとデジタライゼーションは、ともに「デジタル化」を意味する言葉ですが、細かい点が異なります。両者の違いを以下の表にまとめました。

項目デジタイゼーションデジタライゼーション
目的ビジネスや業務の効率化デジタル化と新しい付加価値の創出
具体例RPAによる自動化

電子印鑑

オンライン会議など

カーシェアリング

サブスクリプションサービスなど

デジタイゼーションは効率性を求めて、業務を部分的にデジタル化する考え方です。

対して、デジタライゼーションはビジネスモデルや戦略全体を含めて、長い期間をかけてデジタル化を推進していきます。

デジタイゼーション・デジタライゼーションとDXの関係

DXを実現するために、デジタイゼーションとデジタライゼーションの2つの工程が必要です。

以下のようなプロセスで取り組むとスムーズです。

  • デジタイゼーションを行い、業務の電子化によって効率性を上げる
  • 業務の効率性が上がり、デジタライゼーションにつながる
  • デジタライゼーションの恩恵を受けて自社のDXが進歩する

通常は、デジタイゼーションから取り組むとスムーズにデジタライゼーションにつなげられます。

ただし、DXを含めた3つのフローは、必ずしも順番通りに実施する必要はありません。各企業の現況を見極め、デジタル化の進展具合によって、最適な施策を打つことが求められます。

デジタイゼーション・デジタライゼーションを経てDX推進へ

デジタイゼーションとデジタライゼーションは似たような言葉でも、意味合いは異なります。ただし、DXの実現においては欠かせない部分です。

2つのプロセスをスムーズに行うことで、業務効率化はもちろん、顧客満足度や従業員満足度の向上にもつながり、競争力が高まることで企業成長も実現できます。

DXの実現を目指すためにも、まずは業務のデジタル化から取り組みましょう。

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