DXに役立つ補助金・助成金とは?種類や申請方法などわかりやすく解説
DXの推進にはIT投資のための資金が必要になるので、補助金や助成金の利用がおすすめです。近年は、デジタル化や事業改革、コロナ対策などに関するさまざまな補助金・助成金があります。本記事では具体的な種類、交付までの流れやメリット、申請時の注意点について解説していきます。
目次
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
DXは「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」の略称で、「デジタル技術を活用して人々の生活を豊かにすると同時に、企業変革によって生産性向上・業務効率化・新たなビジネスモデルの構築などを行っていくこと」です。
DXは経済産業省も推進している施策です。しかし、実際にデジタル技術を導入しているものの、ビジネス変革に繋がっている企業は少ないのが現状で、それが日本企業の課題として指摘されています。
中でも多くの企業は、既存システムの維持や保守に多くの資金や人材を費やしているため、戦略的なIT投資ができていない状態です。
このような状態を少しでも解決すべく、DX導入に利用できる補助金や助成金が多く登場しています。
DX推進に利用できる補助金・助成金について
DX導入に利用できる制度には、「補助金」と「助成金」があります。似ている言葉ではあるものの、両者は違うものです。それぞれどのような違いがあるのかを理解しておくと、補助金・助成金の申請がしやすいでしょう。
補助金と助成金の違い
補助金と助成金はどちらも申請許可が下りた個人・企業に対して、資金的サポートが行われるものです。助成金と補助金の大きな違いは「予算などの制約があるか」どうかです。
補助金は国や地方自治体の予算による制約があるため、その範囲内で資金的サポートが行われます。一方、助成金は適用要件を満たせば、大半の申請者は助成を受けられます。
下記で補助金と助成金について詳しく説明をしていきます。
補助金とは
補助金の特徴は、「予算」や「採択件数」が決まっているほか、助成金と比べて審査が厳しいという点が挙げられます。
国や地方公共団体が提供している資金サポートで、申請したからといって必ずしも受給できるものではありません。
申請をしても採択されなければ受給できないため、補助金を受給したい場合はしっかりとした書類を用意することが必要です。
補助金によって、目的や対象、仕組みはさまざまです。例えば主な目的としては「新規事業の立ち上げ」「IT化」「事業承継」「設備投資」「販路拡大」などがあり、種類が豊富である上に補助額の幅が広いのが特徴です。
ただし、補助金は応募期間が数ヵ月と短い上に、採択されたとしても支払われるまでに時間がかかるケースがほとんどです。時間がかかる理由は、補助金は原則的に事後払いのため、事業を実施して検査を受けた後に受け取るという流れになるためです。
助成金とは
助成金は主に厚生労働省が提供しており「雇用の増加」や「人材育成」を目的とした資金サポートです。
予算による採択件数の制約がある補助金とは異なり、助成金は条件を満たしていれば原則的に受給できるのが特徴です。
募集期間は定まっていないものの、助成金は人気が高く、受付期間が早く終わってしまう場合もあるため、早めの申請が必要です。
DX推進に利用できる補助金・助成金の種類一覧
DX推進を行う上では、多くの場合デジタルツールやシステムに投資を行う必要があります。補助金や助成金を活用することにより、金銭的負担を減らすことが可能です。
DX推進に利用できる補助金・助成金はどのようなものがあるのか、各補助金・助成金の内容について簡単に紹介していきます。
【DX推進に利用できる補助金・助成金の種類】
- IT導入補助金
- 事業再構築補助金
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
- 成長型中小企業等研究開発支援事業
- 中小企業デジタル化応援隊事業
- 小規模事業者持続化補助金
1.IT導入補助金
ITツールの導入に利用できる補助金で、導入経費の一部が支給されます。
業務の効率化や売上向上を目的としており、中小企業や小規模事業者を対象としています。
補助金対象経費は下記のとおりです。
- ソフトウェア経費
- クラウド利用料
- 導入関連費
- ハードウェア購入費等(特定の補助枠を使用する場合)
制度の概要 | ITツール導入事業者へのサポート |
対象 | 中小企業・小規模事業者 |
条件 | 資本金・常勤の従業員数(業種により条件が異なる) |
補助金額 | A類型(30万〜150万未満)B類型(150万〜450万以下)デジタル化基盤導入類型(5万円~350万円)複数社連携IT導入類型(5万円~350万円、50万円×参画事業者数 など) |
補助率 | A類型(1/2以内)B類型(1/2以内)デジタル化基盤導入類型(5万円~50万円以下:3/4以内、50万円超~350万円:2/3以内)複数社連携IT導入類型(2/3以内〜3/4以内) |
[出典:「IT導入補助金2022」]
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2.事業再構築補助金
事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の流行による社会変化に対応するために設定された補助金です。
新型コロナウイルス感染症などの影響によって、売上が減少している中小・中堅企業のうち、「思い切った事業再構築に意欲を有する企業」が補助金の対象となります。
「通常枠」に加えて、「大規模賃金引上枠」「回復・再生応援枠」「最低賃金枠」などがあります。
制度の概要 | ポストコロナ・ウィズコロナ時代に対応した新規事業の展開や事業転換を支援 |
対象 | 中小企業等・中堅企業等 |
条件 | 新型コロナウイルス感染症によって売上が10%以上減少していることなど |
補助金額 | ・通常枠(100万〜8,000万円)・大規模賃金引上枠(8,000万円超~1億円)・回復・再生応援枠(100 万円~1,500万円)・最低賃金枠(100 万円~1,500万円)・グリーン成長枠(中小企業者等:100万円~1億円 中堅企業等 :100万円~1.5億円) |
補助率 | ・通常枠 中小企業者等:2/3(6,000万円超は1/2) 中堅企業等:1/2(4,000万円超は1/3)・大規模賃金引上枠 中小企業者等 2/3 (6,000万円を超える部分は1/2) 中堅企業等 1/2(4,000万円を超える部分は1/3)・回復・再生応援枠 中小企業等 3/4 中堅企業等 2/3・最低賃金枠 中小企業者等 3/4 中堅企業等 2/3・グリーン成長枠 中小企業者等 1/2 中堅企業等 1/3 |
[出典:「事業再構築補助金」]
3.ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
中小企業や小規模事業者の生産性向上を目的とした補助金です。
業種ごとに資本金や従業員の条件が設定されており、成長や収益の伸びが期待できる事業者が対象になります。
財務基盤が健全で、企業規模が小さい場合は審査が通りやすい特徴があります。
制度の概要 | 生産性向上を支援 |
対象 | 成長や収益が見込める中小企業・小規模事業者 |
条件 | 資本金・従業員数(業種により条件が異なる) |
補助金額 | ・一般型 通常枠:750万円~1,250万円 回復型賃上げ・雇用拡大枠:750万円~1,250万円デジタル枠:750万円~1,250万円グリーン枠:1,000万円~2,000万円・グローバル展開型:3,000万円 ・ビジネスモデル構築型(支援者向け):100万円~1億円 |
補助率 | ・一般型 中小企業:1/2 小規模事業者等 :2/3回復型賃上げ・雇用拡大枠:2/3デジタル枠:2/3グリーン枠:2/3・グローバル展開型 中小企業:1/2 小規模事業者等 :2/3・ビジネスモデル構築型 大企業: 1/2 それ以外の法人:2/3 |
[出典:「ものづくり補助金総合サイト」]
4.成長型中小企業等研究開発支援事業
補助金の中でも少し特殊で、企業単独では申請ができず、中小企業を中心とした共同体を作って申請を行う必要がある補助金です。
ものづくりの技術基盤を高めることを目的とした支援事業で、研究開発や販路開拓に関する支援を行います。
e-Rad(府省共通研究開発管理システム)でのみ申請を受け付けています。
※本事業(令和4年度分)の〆切りは2022年5月9日まで
制度の概要 | ものづくり基盤技術及びサービスの高度化 |
対象 | 中小企業を中心とした共同体 |
条件 | 中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針に記載された内容に関する研究開発 |
補助金額 | 単年度あたり4,500万円以下、2年度の合計で7,500 万円以下、3年間の合計で9,750万円以下 |
補助率 | 1/2以内~2/3以内 |
[出典:「成長型中小企業等研究開発支援事業」]
5.中小企業デジタル化応援隊事業
他の補助金とは異なり、補助金の交付が行われるのではなく、企業がIT専門家(個人・法人問わず)に相談を行った際の費用を事務局が一部負担するという支援事業です。
対象となる事業は、中小企業などがデジタル化を推進する際にかかるものです。デジタル化の具体例としては、テレワーク、Web会議、クラウドファンディング、オンラインイベント、RPAなどの導入が該当します。
DX推進を促す支援事業で、補助される金額はIT専門家に支払う謝金のうち、1時間当たり最大3,500円(税込)です。この金額を上回った分は企業が負担するかたちになります。また、企業は1時間当たり最低500円(税込)の実費負担が必要になります。
※第二期分は2022年2月28日をもって終了
制度の概要 | DX推進を支援 |
対象 | 中小企業・小規模事業者 |
条件 | 中小企業デジタル化応援隊事業事務局に申請を承認されたユーザー |
補助金額 | 1時間あたり最大3,500円(税込) |
補助率 | - |
[出典:「第二期中小企業デジタル化応援隊事業」]
6.小規模事業者持続化補助金
小規模事業者等の販路開拓と、それに伴う業務効率化の取り組みにかかる経費の一部を補助する制度です。
「一般型」と「低感染リスク型ビジネス枠」があり、後者は対人接触機会の減少や事業継続を両立させるための新たなビジネス・サービスを補助する支援です。
制度の概要 | 小規模事業者等の販路開拓や生産性向上 |
対象 | 小規模事業者等 |
条件 | 小規模事業者であることなど |
補助金額 | ・一般型上限200万円・低感染リスク型上限100万円 |
補助率 | ・一般型2/3または3/4・低感染リスク型3/4 |
補助金・助成金を利用するメリット
補助金・助成金を活用するメリットは下記の2つが挙げられます。
- 資金が手に入る
- 今後融資が受けやすくなる
1.資金が手に入る
DXを推進していく際には、ITツールやシステムなどの導入によって、ある程度のまとまった投資予算を用意する必要があります。
しかし、多くの企業はレガシーシステムの保守・運用に多くの予算を投入しているため、新しいデジタル技術に対する予算を割きにくいのが現状です。
補助金や助成金を活用することにより、新しいデジタル技術に対する投資を行えるため、DX推進によって生産性向上・業務効率化を図りやすくなります。
また国や自治体から受けた補助金や助成金は、金融機関からの融資とは違い、返済義務がありません。DXに向けて、集中的に事業を推進できる点は、大きなメリットとなるでしょう。
2.今後融資が受けやすくなる
補助金や助成金を受けるためには、事業計画などに関するさまざまな書類が必要になります。審査を通過した事業者しか補助金や助成金を受けることができないため、採択されたということは国や自治体から事業の方向性や成長性を認められたということになります。
よって、補助金などの交付が決まった企業は国や自治体から優良企業と見なされたと言えるため、金融機関からも融資を受けやすくなります。
補助金・助成金を申請する5つのステップ
補助金や助成金の申請を考えている場合は、下記の5つのステップで進めていく必要があります。
- 補助金・助成金について調べる
- 必要書類の準備・応募
- 交付手続きをする
- 事業をスタートさせる
- 実績を報告する
それぞれのステップに合わせた申請方法・手順を詳しく解説していきますので、参考にしてみてください。
1.補助金・助成金について調べる
まずはどのような補助金や助成金があるのかを調べましょう。補助金や助成金は受付期間が短い場合が多く、すぐに終わってしまう支援もあります。
どこで調べたらいいかわからない場合は、経済産業省・中小企業庁が運営を行う中小企業向け補助金・総合支援サイト「ミラサポplus」を確認しましょう。
ミラサポplusでは支援制度の検索や支援者・支援機関の検索、実際の経営事例などをチェックできます。
国が運営しているという点からも安心できる上に、補助金や給付金の申請やサポートを行う目的で運営されているWebサイトなので、有益な情報が見つけやすいという特徴もあります。
2.必要書類の準備・応募
自社が受けられそうな補助金・助成金が見つかった後は、条件に合わせて必要書類の準備を行いましょう。
早めに応募したからといって採択率が上がるわけではありませんが、前述したように補助金・助成金は申込期間が短いケースが多いので、申請のタイミングが重要になります。
申請書の作成や必要書類の準備には多くの時間を要するため、余裕をもって準備に取り掛かったほうが良いでしょう。
3.交付手続きをする
審査によって採択された場合は事務局から通知が届きます。通知が届いた場合は正式に交付を受けるために、「交付申請」を指示された窓口から行う必要があります。
4.事業をスタートさせる
交付が決定した後は、実際に事業を進めていきます。実施途中に、やむを得ない事情で事業の変更を行う場合は別途での手続きが必要です。
実施中は、経費や経営状況・経過報告など細かい報告書の作成が必要になるので、補助金などの対象となる経費の領収書や関連書類は大切に保管しておきましょう。
5.実績を報告する
事業を実施した後は、実績を報告して補助金などを受け取る手続きに進みます。実績報告の状況に合わせて補助金額が決定し、交付されるというかたちです。
補助金・助成金の支援を受けた場合、事業終了後も5年間は関係書類の保管を行う必要があるため、補助金・助成金に携わる書類は大切に管理しましょう。
補助金・助成金申請時の注意点
多くの魅力がある補助金・助成金ですが、申請を行う際には下記の3つが注意点として挙げられます。
- 必ずもらえるわけではない
- 募集期間が短い案件がある
- 事業が終了後に交付される場合もある
それぞれの注意点について詳しく解説をしていきます。
1.必ずもらえるわけではない
助成金の場合は条件に該当すれば受給ができますが、補助金の場合は必ずもらえるわけではないという点を念頭に置いておきましょう。
採択されるために入念な書類の準備が必要ではあるものの、採択されなかった場合はこの時間が無駄になってしまいます。
業務を疎かにして関連書類・申請書類作りを行い、採択されずに経営が悪化したということにならないように注意しましょう。
補助金は必ず受給できるわけではないという点を認識した上で、既存の業務と並行し、必要であれば外部の専門家のサポートを得ながら申請書類・必要書類の準備を行うようにしましょう。
2.募集期間が短い案件がある
ここまで何度か触れてきたように、補助金・助成金は募集期間が短い案件が多い点には留意が必要です。
条件に該当する補助金や助成金があることを知り、調べてみたところすでに募集が終わっていたということは避けたいところです。
補助金や助成金の活用を検討している経営者や担当者は、日頃からアンテナを張って募集が行われていないかチェックしておきましょう。
3.事業が終了後に交付される場合もある
補助金は原則的に、事業が終了し検査が行われた後に交付されます。実際に資金を受け取れるタイミングが遅いという点は、事前に理解しておきましょう。
さらに事業を実施して報告した実績内容によっては、助成金・補助金が少なくなる場合もあります。
申請したからといって、必ず満額がもらえるというわけではない点には気を付けるようにしましょう。
補助金・助成金を利用してDXの導入を進めよう
補助金・助成金の活用はDX推進を行う上で、資金面において大きなメリットがあります。
ただ、補助金などを受けるためには申請書や関連書類の準備などが必要である上に、採択されなければ意味がありません。
事業をより良い方向に導くためにも、助成金や補助金の内容をしっかりと確認し、応募要件に当てはまるものは活用していきましょう。
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