エクセルで生産管理をする方法|メリットやデメリット・生産管理表の作り方

最終更新日時:2023/12/13

生産管理システム

エクセルでの生産管理

表計算ソフトのエクセルは、在庫や製品の品質を保つ生産管理においても強力なツールです。本記事では、エクセルを使って生産管理を行う方法に焦点を絞り、生産管理表の作成方法からメリット、デメリットまで解説します。エクセルを用いた生産管理を導入する際の参考にしてみてください。

エクセルで生産管理をするメリット

生産管理にエクセルを用いることで、操作の容易さや柔軟性の高さなどさまざまなメリットを享受できます。ここからは、エクセルで生産管理をするメリットを詳しく紹介します。

導入や運用の負担が少ない

生産管理をエクセルで行う最大のメリットは、生産管理システムよりもコストを抑えて簡単に運用を始められる点です。

多くの企業ではすでにエクセルが使用されているため、新たなシステムを導入するためのコストや時間が不要です。また、エクセルは使い慣れたツールである場合が多く、新たな研修の必要性が低いため、社員が迅速に操作を習得できます。

これにより、生産計画や在庫管理などの生産管理業務を効率的に、かつスムーズに実施することが可能です。生産管理システムに比べて更新やカスタマイズが容易なため、小さな変更が必要な時でも迅速に対応でき、運用の負担を大きく減らせます。

自社に合わせてカスタムできる

エクセルを使った生産管理の大きな魅力は、自分たちの会社に合わせて容易にカスタマイズできる点です。

一つひとつの企業には、それぞれ特有のやり方や必要とする情報があります。エクセルでは、そうした独自のニーズに応じて、マクロやテンプレートを使って表や計算式を自由に作成・調整することができます。

たとえば、特定の商品の生産スケジュールを細かく管理したり、必要な材料の量を正確に計算したりすることが可能です。また、変更が必要になった際も、自分たちの手で簡単かつ迅速に修正を加えられます。これにより、会社の現状や目指す方向にぴったりと合った生産管理システムを、コストを抑えながら構築とカスタマイズが行えます。

他のツールと連携しやすい

エクセルは多くのビジネスツールと相性が良く、生産管理のデータを他のシステムと簡単にやり取りできる利点があります。

たとえば、売上データを管理している別のソフトウェアから情報をエクセルに取り込むことで、生産計画をより正確に立てられます。また、エクセルで作成した生産スケジュールを会社のカレンダーシステムに転送し、関連する部署と共有することも容易です。

このようにエクセルは橋渡し役として、異なるツール間で情報の一貫性を保ちつつ、スムーズかつ効率的に連携できます。

生産管理とは?目的や工程管理・製造管理との違い、課題を解説

エクセルで生産管理をするデメリット

エクセルによる生産管理にはさまざまなメリットがありますが、デメリットがあるのも事実です。ここからは、エクセルで生産管理をするデメリットを紹介します。

複数人での同時編集ができない

エクセルで生産管理を行う場合、基本的に一つのファイルを複数の人が同時に編集することはできません。

たとえば、2人が同じエクセルファイルを開いている場合、後からファイルを開いた人は「読み取り専用」でしか開けません。そのため、最初に開いた人が作業を終えてファイルを閉じるまで、新たなデータを入力したり、既存のデータを更新したりすることができないのです。

特に大規模なプロジェクトなど複数のメンバーが携わる場合には、同時に編集作業ができず業務効率が落ちてしまう可能性があります。

データやファイルが消失してしまうリスクがある

誤ってデータを上書きしてしまったり、セルなどを削除してしまったりすると、復元が難しいケースがあります。また、データの編集をしている最中にパソコンがフリーズしたり、突然電源が落ちたりすると、その時点までの作業内容がすべて失われてしまう可能性もあるのです。

生産管理のように、正確性が重要となる業務でデータやファイルが消失してしまうと、大きな損失につながります。そのため、エクセルで生産管理を行う際は、定期的なバックアップや適切なファイル管理が必要です。

属人化しやすい傾向がある

エクセルの利用はユーザーのスキルに依存する部分があり、特定の社員が高度な操作スキルを持っていると作業をその社員に任せきりになってしまい、属人化する可能性があります。

また、エクセルは誰がいつどのファイルを編集したのか、最新のファイルはどれなのかなどの把握が難しく、編集作業をする担当者が自然と限定されてしまうこともあるでしょう。

特定の社員が不在の場合は生産管理に支障が出る恐れがあるため、属人化は避けなければなりません。

エクセルで作成できる生産管理表の種類

エクセルで作れる生産管理表には、いくつかのパターンがあります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

バーチャート

バーチャートは、作業のスケジュールを一覧にした管理表です。

エクセルでバーチャートを使った生産管理表を作成するには、行に作業内容を、列に日付を書きます。各作業の開始と終了が把握しやすく、見た目はガントチャートと似ていますが、ガントチャートが進行状況を可視化する管理表であるのに対し、バーチャートは作業に必要な日数の管理に重きを置いている点が異なります。

全体スケジュールの可視化に役立ちますが、タスク同士の関連性や進捗状況がわかりづらい点がデメリットといえます。

ガントチャート

ガントチャートは、生産プロセスの進捗率を可視化できる管理表です。

エクセルでガントチャートを作るには、行に作業内容を、列に日付を書き、作業の進捗状況を横軸で表示します。そのため、全体の進捗がひと目で追跡できるようになります。

しかし、バーチャートと同様にタスク同士の関連性がわかりづらいほか、全体スケジュールの把握には向かない点に注意しなければなりません。

工程管理曲線

工程管理表は、全体の進捗を把握しやすい工程表です。

エクセルで工程管理曲線を作成する時は、計画した生産スケジュールと実際の進捗を記録し、プロジェクトの進行状況を線グラフにして重ね合わせます。

どこまで先行して進めることができるのか(上方・赤線)、どれだけ遅れても許容されるのか(下方・青線)が可視化されるため、「計画」に対する進捗状況がわかりやすいのが特徴です。

工程管理曲線は、バナナ曲線やS字カーブとも呼ばれ、建設現場の工事管理にも用いられています。

グラフ式工程表

グラフ式工程表は、各作業の進捗率や日付、納期を比較しやすい工程表です。

エクセルでグラフ式工程表を作る際は、各作業の工程を時系列に沿ってグラフにします。縦軸に進捗率を、横軸に日時を記載します。これにより作業予定日時や進捗率を把握しやすくなり、プロジェクト全体の流れを視覚化することが可能です。

計画の見直しや調整もしやすくなりますが、作業量が膨大になると情報量が増えてグラフが見づらくなってしまう点に注意しましょう。

ネットワーク工程表

ネットワーク工程表は、各作業の工数や関連性を理解しやすくなる工程表です。

ネットワーク工程表では、作業の関連性が矢印と接点で示されます。作業の流れが可視化されるため、前段階で終えておくべき作業や並行して行える作業がひと目で把握できます。

作業の依存関係とクリティカルパスが明らかになるほか、作業日数なども記載することで、全体の作業にかかる日数を見積もりやすくなるのが特徴です。

これにより、作業の順序や優先順位を明確にし、全体のスケジュール管理をより効率的に行うことが可能です。

エクセルで生産管理する際に用いられる関数

エクセルで生産管理を効率化するために、便利な関数がいくつかあります。

関数の名称詳細
IF指定条件に従って複数の異なる答え(値)を出す場合に使う関数
SUM指定範囲内の数字を合計する関数
SUMIF条件を指定して指定範囲内の数字を合計する関数
AVERAGE指定範囲内の平均値を求める関数
WORKDAY指定休日を除いた稼働日を求める関数
COUNTIF指定条件に一致するセルの数をカウントする関数
VLOOKUP表を縦方向に検索し、値が一致した行のデータを返す関数

たとえば、「SUM」関数を使えば、複数のセルに入力された数字の合計を簡単に計算できます。また、平均値を出したい場合は「AVERAGE」を活用しましょう。在庫の管理には「IF」関数が有用で、特定の条件を満たす時だけ特定の操作をさせることが可能です。

これらの関数は、生産管理の精度を上げるのに役立ちます。

エクセルで生産管理を行う際のポイント

ここからは、エクセルで生産管理を行うための秘訣を3つ紹介します。

運用や表記のルールを設ける

エクセルで生産管理を行う場合、全員が同じ方法でデータを入力・管理するための明確なルールが必要です。たとえば、日付の書式や数字の入力方法を統一し、どこにどんな情報を入れるのか定めるといった基本的なルール作りが重要になります。

明確なルールを設けることで、誰がファイルを見ても理解しやすく、ミスを減らし効率的な作業が可能になります。

情報の共有や更新を徹底して行う

エクセルを使った生産管理では、最新の情報をいつでも閲覧できるように、定期的にデータの更新と共有を行うことが大切です。これにより、チーム全体が作業予定日時や進捗などを理解し、正確な意思決定を行えるようになります。

データが変わった場合はすぐにファイルを更新し、関係者全員と共有する習慣をつけましょう。

バックアップを確保しておく

エクセルでの生産管理においては、データの損失を防ぐためにバックアップを確保することが非常に重要です。

作業のたびにファイルのコピーを取ったり、クラウドサービスを利用して定期的に自動保存する設定にしておくとよいでしょう。これにより、パソコンの故障や操作ミスがあっても、すぐに以前の状態に戻すことができます。

安心してデータを管理するためにも、常にバックアップを心がけましょう。

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エクセル以外で生産管理を行う手段

エクセルを活用すると生産管理が行えますが、「生産スケジューラ」や「生産管理システム」でも生産管理は可能です。ここからは、それぞれの特徴を紹介します。

生産スケジューラを導入する

生産スケジューラとは、生産計画を立てて、リソースや生産量を照らし合わせながら整理するためのソフトウェアです。生産スケジューラの導入により、作業がいつ、どこで、どのように行われるべきかを明確にできます。

生産スケジューラは、エクセルでは難しい複雑な生産ラインの管理も視覚的に把握しやすく、効率の良い生産計画を立てることが可能です。また、変更が生じた場合の調整もスムーズに行えるため、柔軟な生産管理が実現できます。

導入する際は、導入目的の整理や製品の選定を行ったのちに、運用ルールの作成をしてから運用を始めましょう。

生産管理システムを活用する

生産管理システムは、生産計画の立案や工程管理、原価管理などを行えるシステムです。原材料の量や調達タイミング、作業にかかる時間などを可視化でき、いつどれだけ商品が製造できるかもきちんと予想できます。

エクセルよりもたくさんの情報を一度に処理できるため、業務の効率化が図れます。導入の際は、導入の目的や課題を明確にしたうえで、運用開始後の慣れない間のサポート体制を確立してから段階的に運用を始めましょう。

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エクセルを使用した生産管理は企業に導入しやすい

エクセルは企業でよく使われている表計算ソフトで、多くの社員が使い方を知っています。そのため、生産管理に活用する場合でも特別な使い方を新しく覚える必要がなく、すぐに導入可能です。

また、エクセルはすでに多くの企業で導入されていることから、初期費用などのコストを抑えられます。これらの点から、エクセルは多くの企業にとって、生産管理を始めるのにとても便利なツールといえるでしょう。

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ビズクロ編集部
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