稟議書とは?書き方や必要な項目・目的別のテンプレート・例文を紹介
承認者に事案の必要性を理解してもらう「稟議書」。採用や新規企業との契約など、自身の権限では決定できない事案について上層部からの承認を得るために作成されます。本記事では、稟議書とは何か、稟議書に必要な項目や書き方を、目的別のテンプレート・例文と併せて紹介します。
目次
稟議書とは?
稟議書とは、自分の権限では決定できない事案について、会社の上層部から承認を得るために作成する書類です。具体的な提案や必要な措置を上司に理解してもらうための手段であり、しっかりとした根拠や明確な目的を示す必要があります。
「稟議」は「決裁」「起案」「回議」などと混同されることがありますが、それぞれ意味が異なります。違いを詳しく見ていきましょう。
決裁との違い
決裁とは、提案や報告に対して、決裁者が最終的な意思決定を行うことを意味します。決裁により、提案された内容が実行に移されることが許可されます。
稟議と決裁の大きな違いは、稟議が提案の共有や承認を行うプロセスであるのに対し、決裁は最終的な採否を決める行為である点です。稟議書は議論や検討を促すためのスタートラインとして機能し、決裁はそのゴールと言えるでしょう。
▷稟議と決済の違いとは?それぞれの意味や目的・効率化するためのポイント
起案との違い
起案とは、新しいプロジェクトや方針、改善提案などの原案を文書にする行為を指します。あるアイデアや提案を具体的な形にし、組織内での検討や議論のための基盤を築くことが目的です。
起案はアイデアや計画を「形にする」ことであり、稟議は形にされた提案を「実行に移すための承認を求める」ことです。つまり稟議は、起案したアイデアが組織内で承認されるためのプロセスと言えます。
回議との違い
回議とは、組織内での意思決定過程において、重要な文書や提案を関連する部署や担当者間で順番に回覧し、意見や承認を求める手続きです。各関係者が文書に対してコメントを付けたり、修正を加えたりできるため、多角的な視点からの検討が可能となり、より総合的な意思決定が行われます。
稟議と回議はよく似ていますが、一般的には、回議は複数の関係者の意見を集約することを目的とし、稟議は承認を得ることを目的としています。回議は稟議のプロセスの一部として捉えられるでしょう。
稟議書が活用される場面
会社によって異なるものの、稟議書が活用される場面として挙げられるのは以下のとおりです。
- 新たなシステムの導入
- 備品の購入
- 出張
- 人事採用
上記の例から分かるように、稟議は費用が発生する場面で活用されます。なお、費用が大きい場合には承認者も増える傾向があり、承認までのフローが長期化する場合があります。
稟議書の必要性|作成するメリットについて
稟議書の作成は、明確な意思決定のプロセスを確立するうえで非常に重要です。ここでは、必要性や作成するメリットを紹介していきます。
事案について部署間で共通認識を持てる
稟議書を利用することで、組織内で事案についての共通認識を持て、それぞれの部署がどのように関与しているのか、その事案からどのような効果が期待できるのかが明確になります。共通の理解があることで、部署間の連携が取りやすく、効率的な意思決定と迅速な問題解決ができることがメリットです。
承認を得るための会議が不要になり会議開催の手間を省ける
稟議書を作成することにより、事案に対する合意や承認を得るために必要な会議の手間を大幅に削減できます。通常、多くの関係者の意見をまとめるためには、長時間の会議が必要です。しかし、稟議書ではその内容が文書化されており、関係者は空いた時間を活用して効率的に意思決定を行えるのです。
意思決定のプロセスが明確になる
稟議書を用いることで、意思決定のプロセスが可視化され、どの決定に誰の承認が必要かが明確になります。責任の所在が一目瞭然になるため、組織内での混乱を防げるでしょう。稟議書は、組織の透明性と効率性を高める重要な役割を果たします。
稟議書のデメリット
稟議書の作成には多くのメリットがありますが、一方でいくつかのデメリットも存在します。
稟議書を作成する手間が増える
稟議書を作成する際には、しばしば手間がかかります。特に、不慣れな人が書類を作成する場合、時間を要することになるでしょう。
しかし、企業において重要な事案の合意や承認を文書で記録しておくことは、後々の内部監査や内部統制の観点から見ても非常に重要です。文書として残すことで、誰がいつどのような決定を下したのかが明確になり、将来的な責任追及や評価の参考になります。
責任の所在があいまいになりやすい
稟議書の承認プロセスに複数の関係者が関与する場合、最終的な責任の所在があいまいになりやすいことがデメリットです。特に、多くの部署の責任者が署名をすると、どの部署がどの部分に対して責任を持つのかが不明瞭になり、組織内での責任逃れの原因になりかねません。
稟議書は意思決定の透明性を高めるツールであるべきですが、承認権限が分散していると、その機能を十分に果たせないこともあるのです。
承認を得られる稟議書の書き方のコツ
ここからは承認を得やすくなる稟議書の書き方のコツについて紹介していきます。
不要な情報は省き内容を分かりやすくまとめる
稟議書を作成する際には、箇条書きや図表を活用して内容を分かりやすくまとめ、不要な情報は省きましょう。読む人が重要なポイントをすぐに把握できるようになります。
また、事案を整理する際には「5W2H」(Who, What, When, Where, Why, How, How much)を用いることが効果的です。稟議書の目的や必要性、期待される結果とその実施計画が、一目で分かるように整理されます。
▷5W2Hとは?意味や例文・ビジネスにおける活用シーンを徹底解説
専門用語は避け誰が読んでも理解できる内容にする
稟議書を書く際には、専門用語を避け、誰もが理解できる平易な言葉を選びましょう。異なる部署や専門外の人々も含め、すべての関係者が文書の内容を容易に理解できるようにするためです。
専門用語を一般的な言葉に置き換えることで、稟議書の透明性が高まり、意思決定過程での誤解を防げます。結果として、円滑なコミュニケーションが促され、稟議書の目的である迅速な承認プロセスにつながるのです。
稟議書フォーマットを活用する
もし組織内に特定の稟議書フォーマットが設けられていない場合、インターネット上で提供されている稟議書テンプレートを活用することをおすすめします。標準的なテンプレートであれば、必要な項目を漏れなく記載できるでしょう。
フォーマットを用いることで、書式に沿って記入できるだけでなく、提出される稟議書の一貫性が保たれ、承認者が書類を評価しやすくなります。
稟議書に必要な基本項目
稟議書のフォーマットは会社によって異なりますが、記載する項目は共通しています。ここでは、稟議書に必要とされる基本的な項目を紹介していきます。
作成日
稟議書には、その文書を作成した日付を明記することが不可欠です。この「作成日」は、提案された内容がいつのものであるかを示し、承認のプロセスを追跡しやすくするために重要な役割を果たします。
起案部署・起案者氏名
稟議書には、その文書を起案した部署と起案者の氏名を記載することが必要です。提案の起点となる部門と担当者が明確になり、質問やフォローアップが必要な場合にすぐに連絡を取れます。また、誰がこの提案をしたのかが記録されることで、透明性と責任の所在が保たれます。
件名・タイトル
稟議書には、その内容を簡潔に示す件名やタイトルを記入することが重要です。タイトルを見ただけで何についての稟議であるかを理解できれば、関係者が必要な情報を迅速に把握しやすくなるでしょう。また、後で文書を参照する際にも、必要な情報を素早く見つける手助けとなります。
稟議内容
稟議書の核心となるのは稟議内容です。ここには、具体的な提案や要求事項を詳細に記載します。目的、背景、実施計画、予算、期待される効果などが必要な情報です。この部分は、承認者が判断を下すための主要な情報源となるため、明確で具体的な記述が求められます。
決裁者所見
稟議書には、決裁者が自らの意見や疑問を記入するための特定の項目を設けましょう。このセクションには、決裁者が提案内容に対して持つ見解や懸念事項が明記され、意思決定プロセスの透明性を高めるのに役立ちます。
決裁者の意見が文書化されることで、提案の改善点が明らかになるだけでなく、コミュニケーションの橋渡しとしても機能し、全体の決定過程をスムーズに進められるでしょう。
▷【例文つき】採用稟議書とは?必要性や承認される書き方と作成のポイント
【目的別】稟議書のテンプレート・例文
ここでは稟議書のテンプレートと併せて例文を紹介していきます。
購買稟議書
購買稟議書では、購入予定の商品やサービスの詳細、起案理由(必要性)、予算、発注先、期待される効果などを記載します。承認者が提案内容の価値と必要性を迅速に判断できるよう、各項目を明確にし、理由や目的が理解しやすいように具体的な説明を加えることが重要です。
契約稟議書
契約稟議書は、契約の内容、受注先、取引開始予定日、および契約に関わる金額などを明記する必要があります。また、契約の目的とその契約が組織にとってなぜ重要なのかについての説明も含めることが望ましいです。これらの項目を具体的かつ簡潔に記載し、契約の重要ポイントを強調することで、意思決定者は判断を下しやすくなります。
採用稟議書
採用稟議書では、採用を提案する候補者の詳細、配属先、採用理由、および採用によって期待される効果を明確に記述します。また、給与やその他の雇用条件も詳細に説明することが重要です。記述の際、どのようにその採用が組織の目標達成に寄与するかを強調することで、承認を促せます。
簡潔で分かりやすい稟議書を作成しよう
稟議書を作成する際は、内容の明確さが重要です。基本項目をしっかり記載することはもちろん、箇条書き・図表を活用し整理された情報や平易な言葉づかいを意識し、誰もが理解しやすい文書を作成しましょう。
稟議書の効果的な使い方を身につけることは、組織全体のコミュニケーションの質を向上させ、よりよい業務運営につながります。
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