CRM戦略とは?導入メリットや戦略立案の方法・具体的な進め方を解説!
昨今ビジネスにおいて重要視されているCRM戦略とはどのようなものでしょうか。本記事では、CRM戦略が重要な理由や、CRM戦略のメリット、具体的な進め方を紹介します。最後に企業のCRM戦略の実践事例も記載してありますので、ぜひ参考にしてください。
目次
CRM戦略とは
CRM(Customer Relationship Management)戦略とは、顧客との関係性を維持・管理するための戦略のことです。CRMは日本語で「顧客関係管理」と呼びます。
CRMとは、顧客と自社の関係構築に注目し、良好な関係を築くことで継続的な取引を図る考え方です。この考え方に基づいて戦略を練っていくことを「CRM戦略」といいます。
CRM戦略の一例として、企業は次のような接点を通じて顧客との関係構築を図ります。
- オンラインショッピング
- チャットによるカスタマーサポート
- メール登録フォーム
- SNSプラットフォーム
Webサイトから収集したデータは、CRMツールに蓄積し、分析することで顧客行動の把握が可能です。
CRM戦略が重要な理由
最近ではインターネットの利用が普及し、ユーザーニーズも多様化しています。大量の情報の中からユーザーが自社製品を探し出し、購入してくれることは容易ではありません。こうした状況下で利益を出していくためには、新規顧客獲得だけでなく、いかにリピーターを増やしていくのかが重要です。
リピーターの獲得には、コスト面のメリットもあります。新規顧客獲得には、リピーターとの関係維持より5倍のコストがかかると考えられています(1:5の法則)。そのため、企業のなかにはリピーターとの関係構築を重視し、リピーターからの継続的な売上によって事業を成長させていくケースも存在するのです。
こうした動きの顕著な例が、サブスクリプション型ビジネスの台頭です。商品やサービスに定額料金を支払ってもらうサブスクリプション型ビジネスでは、既存顧客がいかに契約を継続してくれるのかが、安定した売上に直結します。
このように、新規顧客獲得が難しくなった現状や、既存顧客へのアプローチがビジネス成功の鍵を握るようになってきたことにより、CRM戦略の重要性が高まってきています。
CRM戦略を実施するメリット
CRM戦略を実施するメリットは、主に以下の4点です。
- 顧客の潜在的ニーズを見つけられる
- 顧客一人ひとりに合わせたサービスを提供できる
- 顧客サポートが的確にできるため、顧客満足度が高まる
- データドリブンな経営ができる
それぞれ詳しく解説します。
(1)顧客の潜在的ニーズを見つけられる
ユーザーが抱えるニーズには、表面的なニーズと深層的なニーズの2種類が存在します。
表面的なニーズとは、顧客自身が認識しているニーズのことです。「お腹が空いているから、何か食べたい」「疲れているから、マッサージ店へ行きたい」といったものが、表面的なニーズに該当します。
何が必要なのかを顧客が自覚しているため、企業側がニーズを満たす提案をすれば、それが顧客の購買行動へと繋がります。
一方、深層的なニーズとは、ユーザーが自覚していない欲求です。心の奥底にあるものの、それが必要なものだと顧客が気づいていない状態を指します。
例えば、「仕事の生産性を高めたい」という思いに対する深層的なニーズは、「疲れにくいイスがほしい」であったり「タスク管理に優れたクラウドサービスを使ってみたい」であったりします。
こうした深層的なニーズを企業が理解するのは困難です。そこで必要になるのが、CMR戦略を通じた顧客へのアプローチです。CRM戦略では、顧客の購買データや行動分析などをおこなうため、顧客の深層的なニーズを探るのに役立ちます。
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(2)顧客一人ひとりに合わせたサービスを提供できる
最近では個人の好みの多様化が進んでいることから、画一的な商品やサービスを顧客へ提案しても、購買に至らないケースがあります。効果的なマーケティングを展開していくためには、顧客一人ひとりの好みに寄り添ったアプローチが重要です。
CRM戦略を実施すれば、顧客の購買履歴や属性などに基づいた商品・サービスの提案が図れます。既存顧客が契約中のサービスをあまり利用していない状況だとしたら、使い方に関するセミナーへ招待したり、上位版のサービスプランを提案したりすることが可能です。
顧客の現在の状況やニーズを可視化してくれるCRM戦略を導入することで、それぞれの顧客に最適化したマーケティング施策を展開できるでしょう。
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(3)顧客サポートが的確にできるため、顧客満足度が高まる
顧客情報を一元管理することで、顧客の要望や悩みに素早く対応できるのがCRM戦略のメリットです。
過去の購入履歴や問い合わせ内容がデータとして蓄積されているため、社員間で顧客情報を共有できます。問い合わせ頻度の多い内容がある場合には、マニュアルを用意して顧客へ配布したり、よくある質問としてWebサイト上に掲載したりする取り組みも効果的です。
CRM戦略を実施していけば、カスタマーサポートの品質向上も図れるため、顧客満足度アップが期待できます。
(4)データドリブンな経営ができる
データドリブンとは、収集した顧客情報を基に意思決定を下すことです。CRM戦略では顧客データの一元管理が図れるため、蓄積したデータを分析することで効果的なマーケティング施策や事業戦略を立てられます。
顧客行動が複雑になったため、従来のような勘や経験による状況判断や意思決定では、市場の動きに対応することは難しくなりました。また、既存顧客へ適切なマーケティング施策を実施するうえで、過去の購入履歴や属性情報の把握は欠かせません。
データドリブンな経営を実践していくことで、精度の高い顧客アプローチや意思決定が実現できるでしょう。
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CRM戦略立案の進め方
ここからは、CRM戦略の具体的な進め方について見ていきましょう。
(1)ビジョン・目標設定
まずは行動方針を明確にするために、ビジョンや目標設定をおこないます。抽象的な目標ではCRM戦略実施による効果も半減してしまうため、できるだけ具体的な目標設定を心がけましょう。
目標設定の際は、自社が達成したいことを明らかにすると共に、目標達成に必要なアクションを固めます。また、全社一丸となって目標達成を図るためにも、部署間の連携や情報共有の体制を整えておくことも重要です。
(2)ターゲット顧客の決定
ビジョンや目標の設定ができたら、次はターゲットとなる顧客層を特定していきます。精度の高いターゲット分析を図るためには、CRMツールの活用がおすすめです。
既存顧客の年齢・居住地域・性別・Webサイト上の行動傾向などを分析することで、具体的なターゲット層が見えてきます。ターゲット層は、新規顧客と既存顧客に分けて整理しておくと、それぞれに必要なマーケット施策を立てやすくなるでしょう。
(3)カスタマージャーニーマップを作成
カスタマージャーニーマップとは、見込み顧客が商品やサービスを購入し、顧客となるまでのプロセスを旅のようにまとめる手法です。
商品購入に至るまで、顧客の心理状態は大きく変化します。例えば、最初に商品を見たときには「これはなんだろう?」と認知し、詳細を知るにつれて興味や理解が深まっていきます。購入意欲が高まってくると「買おうかな?」と検討段階に入り、購入によって「買えてよかった」と満足した気持ちになるのです。
カスタマージャーニーマップは、購買プロセスの間に顧客がとる思考や行動を想像して整理します。完璧に顧客心理を予測することは不可能ですが、CRMツールなどで収集したデータを活用し、精度の高い仮説を立てる取り組みが重要です。
(4)顧客体験(CX)が良くなるようなビジネスプロセスを設計
CX(カスタマーエクスペリエンス)とは、「顧客体験価値」を意味する言葉です。商品そのものの価値だけでなく、購買に至るまでに顧客が得た体験やメリットなどを含めてCXと呼びます。
CXの向上を試みる場合、意識したいのは顧客の感覚や心理に与える価値です。例えば、同じ品質のコーヒーを提供する2つのカフェがあったとしましょう。味のレベルに差がなくても、お店の雰囲気・店員の接客態度・アクセスしやすさなどに差があれば、顧客の抱く印象はまったく異なります。
このように、顧客の心理や感覚に影響を与える要素を把握し、購買に至るプロセスを気持ちよく体験してもらえる仕組みを作っていきましょう。
(5)KPI設定をする
KPIとは「Key Performance Indicator」の略称で、日本語だと重要経営指標という意味の言葉です。目標達成に必要な道しるべのようなもので、例えば最終的な目標が「売上30%アップ」だとすると、KPIは「商談数を月30回増やす」「成約率を20%アップする」といったものになります。
KPIとして設定されることの多い指標は、以下のとおりです。
- 受注金額
- 受注期間
- 顧客数
- リピーター率
- タッチポイント数
- 商談数
- ユーザー単価
KPI設定後は、常に成果を確認しながらCRM戦略を進めることで、ゴールとの差が可視化できます。過去の購買履歴や売上データから分析し、具体的かつ現実的なKPIを設定するよう心がけてください。
CRM戦略の実践事例
ここでは、CRM戦略を実践する企業の実例を3つ紹介します。
(1)コンビニエンスストアの事例
コンビニエンスストア各社が発行するポイントカードは、代表的なCRM戦略のひとつです。顧客へポイント付与のメリットを提供するだけでなく、会計時にカードを提示してもらうことで以下の情報が蓄積されていきます。
- 購入日時
- 購入者の基本情報(名前・年齢・性別)
- 購入した商品
- 店舗の来店回数
ポイントカード導入のメリットは、カード利用を通じて顧客データを取得できることです。収集した顧客情報を基に分析していけば、新商品の開発やマーケティング施策を効果的に展開できるでしょう。
(2)西武ライオンズの事例
プロ野球球団「埼玉西武ライオンズ」を経営する株式会社西武ライオンズは、2008年当時、12球団の中で最も少ない観客動員数(109万人)でした。そこで、球団改革としてCRMツールを導入し、ファンクラブの会員データを分析し始めます。
目標を「観客動員数の増加」に定め、西武ライオンズは次の施策に取り組みました。
- 駅やデパートでのプロモーション
- メルマガやSNS経由の情報発信
- ファンクラブ会員のデータを用いて、各施策のPDCAサイクルを回していく
これらの施策を展開したところ、観客動員数は右肩上がりで増えていき、2018年には観客動員数176万人と、CRMツール導入前と比べて161%の動員数アップが実現しました。
(3)ロクシタンジャポンの事例
ロクシタンジャポンは、南フランス発祥の化粧品メーカー「ロクシタン」を国内展開する企業です。顧客の多様化により、ECと実店舗双方の顧客データを活かしたマーケティング施策が求められるようになりました。
ロクシタンジャポンが実施したCRM戦略は、実店舗とECサイトで蓄積されていた顧客データの一元化です。バラバラに管理されていたデータを統合することで、それぞれの顧客の購入履歴や行動傾向を正確に把握できるようになりました。
また、顧客データを分析した結果、実店舗とECの両方を利用する顧客(=オムニチャネル顧客)の購入頻度が高いことが判明します。そこで、オムニチャネル顧客を増やす試みとして、メルマガやDMの配信、ECサイトのレコメンド機能の導入などを、顧客属性に合わせて展開していきました。
結果として、オムニチャネル顧客の数を前年比で27%増加させることに成功しています。CRM戦略を通じた顧客データの活用が、成果に結びついた事例です。
CRM戦略を実践して効果的なマーケティングを
CRM戦略とは、顧客との関係性を維持・管理するための戦略のことです。CRM戦略を実施することで、顧客の潜在的なニーズを見つけられたり、データに基づいたマーケティング施策を展開したりできます。
CRM戦略を立てる際は、ビジョンや目標を設定したうえで、ターゲット顧客の決定とカスタマージャーニーマップの作成をおこないましょう。また、購買に至るまでのプロセスを最適化し、顧客体験の向上を目指すことも重要なポイントです。
効果的なCRM戦略を実施し、自社のマーケティング成果の向上を図っていきましょう。
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