中小企業向けのERP13選|選定ポイントや導入するメリット
近年では中小企業においても導入が求められているERP。しかし、ERPのシステムは、価格帯や機能が幅広いため、自社に合うソフト選びに迷ってしまう方も多いでしょう。そこで本記事では、中小企業向けのおすすめERP13選と選定ポイントを紹介します。
目次
ERPとは?
ERPとは「Enterprise Resources Planning」の略で、企業が持つ資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を一括で管理し、適切に活用するという考え方のことです。
この考え方を実現するためのシステムを指すことも多く、現在では企業の経営戦略に欠かせないシステムとして、ERPを導入する企業が増えています。
▷ERPとは?意味や基幹システムとの違いを簡単にわかりやすく解説
中小企業にERPが必要とされている背景
多くの中小企業では、「会計システム」「営業支援システム」「労務管理システム」など、基幹業務ごとに導入しているシステムで企業が持つ資源を管理している傾向があります。
しかし、ERPは、業務効率化による生産性の向上、人手不足の解消などを実現できるシステムであることから、中小企業こそ導入すべきシステムであるともいえます。
ここからは、中小企業にERPが必要とされている背景を2つ紹介します。
業務効率化による生産性向上
人手不足は、大企業よりも採用に割けるリソースの少ない中小企業において、より深刻化しています。そのような環境で長時間労働などの働き方改革を実現するには、大幅な業務効率化が求められるでしょう。
たとえば、ERPでは、企業が持つ資源を1か所に集約・管理できるため、各基幹業務システムにそれぞれデータ入力を行う必要がありません。手入力の負担を軽減できるのはもちろん、手作業を徹底的に減らすことで、ヒューマンエラーが起きるリスクも低くなります。
負担軽減と正確性向上の両面において、中小企業の業務効率化を叶える実効力のある手段として、ERPの必要性が高まっているのです。
中小企業のグローバル化
近年では、日本経済の内需の落ち込みを懸念した中小企業の海外進出やグローバル化が広がりを見せています。
ビジネスを拡大するにあたっては、経営上の意思決定を迅速に行う場面も増えてきます。ERPによって、企業活動における重要なデータがリアルタイムかつ一元的に閲覧できる環境を整えておくことは、スピーディで的確な経営判断を下すうえで大いに役立つといえるでしょう。
中小企業のERP導入率
中小企業のERP導入率は20%前後といわれており、飲食業界で11%程度、卸売業界で30%程度と業界・業種によって変動します。従業員数が1,001名を超える大企業の約70%がERPを導入している一方で、中小企業でのERP導入率は20%前後と大企業の3分の1以下にとどまっているのが現状です。
[出典:経済産業省「中小企業・小規模事業者のIT利用の状況及び課題について」]
中小企業がERPを導入するメリット
中小企業がERPを導入するメリットは以下の4つです。
- 業務効率の向上
- 人件費の削減
- DXの推進
- 経営戦略の最適化
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
業務効率の向上
ERPを導入することで、各基幹業務システムで管理していた情報を1か所に集約できます。データ入力の手間を削減できたり、1か所で他部署の情報まで確認できたりするなど、業務効率の向上につながります。
各基幹業務システムで孤立していた情報を他システムに移行する手間もなくなるため、データ移行の手間を削減できるだけではなく、データを移行する際のデータ消失や流出といったトラブル回避としても効果的です。
人件費の削減
ERPで社内のあらゆる情報を一元管理できるようになれば、管理業務の担当者を各部署に配置する必要がなくなるため、人件費の削減につながります。少ない人材で管理業務を行えるようになれば、人手不足対策としても効果的です。
ERP導入には初期費用やランニングコストが発生するものの、クラウド型をはじめとする比較的安く利用できるERPも増えており、長期的にみるとERP導入はコスト削減につながるといえます。
DXの推進
IT技術を活用してビジネスに変革をもたらす「DX」を推進する手段のひとつとしても、ERP導入が役立ちます。
ERPによって一元化されたデータはリアルタイムで組織内に共有され、経営状況が可視化されます。そのため、タイムラグのない正確なデータを元にした柔軟な経営判断ができるようになるでしょう。
ERPを活用して迅速な経営判断ができるようになれば、新たなビジネスモデルへの挑戦やよりよい業務プロセスへの改善が期待でき、結果としてDX推進につながります。
▷DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?意味・定義・重要性をわかりやすく解説
経営戦略の最適化
ERPでは企業が持つ資源であるヒト・モノ・カネ・情報を1か所で管理するため、リアルタイムな経営状況をより正確に把握することが可能です。
ERPを導入していない場合、経営戦略を立てる際には各部署から情報を収集しなければなりません。収集にかかった手間や時間は、意思決定の遅れへと直結してしまうでしょう。
一方で、ERPでは集約された情報がいつでも確認できるため、迅速な意思決定が可能となるのです。
中小企業向けERPの選び方・選定ポイント
中小企業向けERPの選び方・選定ポイントとしては以下の4つが挙げられます。
- 導入目的に合った機能があるか
- 自社に適したカスタマイズが可能か
- サポート体制は十分なものか
- 業種に特化したシステムであるか
導入目的に合った機能があるか
自社の導入目的に合った機能が搭載されているかを確認しましょう。搭載機能は、ERPの種類によって異なります。
たとえば、製造業の場合は「受注管理」「生産管理」「在庫管理」などのサプライチェーンマネジメントを効率化するための機能が必須となってくるでしょう。
ただし、搭載されている機能が多ければよいというわけではありません。いくら多機能であっても使わない機能ばかりであれば、コストの無駄につながります。
自社の課題を解決するのに必要な機能を洗い出したうえで、オーバースペックにならないものを選ぶことが大切です。
自社に適したカスタマイズが可能か
当初は必要なかったものの、企業規模が拡大したことで追加機能が必要になるというケースも珍しくありません。そのため、企業の成長や業務の複雑化などに合わせて、機能のカスタマイズが可能かどうかを確認しておきましょう。
もし導入したERPのカスタマイズができないとなれば、新たなERPを導入しなおしたり、外部システムを導入したりするなどの手間やコストがかかってしまいます。導入するERPが自社に適したカスタマイズが可能かどうかを見極めましょう。
サポート体制は十分なものか
ERPの運用を自社のみで定着させようとしても、「データ移行はどうすればよいのか」「どのような運用ルールが必要か」などの疑問点が多く、時間がかかる傾向があります。そのため、ERPの導入時には、ベンダーのサポートが欠かせません。
導入に際してのサポートが提供されているか、トラブル発生時にはどのように対応してもらえるかなど、ベンダーのサポート体制が十分なものかどうかを確認しましょう。
サービスとして提供されているサポート体制だけでなく、実際に利用した企業の口コミ・評価なども確認しておくことをおすすめします。
▷ERP導入にかかる費用相場とは?オンプレミス・クラウドでの費用の違い
業種に特化したシステムであるか
ERPには、アパレル向け・工場向け・食品向けなど、特定の業種に特化したERPも多く存在します。
特定の業界に特化したERPであれば、業界ならではのテンプレートや便利機能が用意されている、あるいは、そのほかの業界特化型システムとの連携がしやすいといったメリットがあります。
自社の業種に特化したERPがあれば、業種特化型のERPを導入することで、スピーディーな導入やより効果的な活用が可能です。
中小企業向けのおすすめERP13選
ここからは、中小企業向けのおすすめERP13選を紹介します。
1.GLOVIA iZ
GLOVIA iZは、経営・会計・人事給与・就業・販売・貿易・生産の7つの基幹業務と、現場業務をつなぐフロント基盤を搭載したERPです。
全社情報を一元化できるため、経営状況の把握に役立ちます。コミュニケーション機能を活用すれば、テレワークをはじめとする柔軟な働き方にも対応可能です。
提供元 | 富士通株式会社 |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
機能・特徴 | 経営、会計、人事給与、就業、販売、貿易、生産、フロント基盤、コミュニケーション機能など |
URL | 公式サイト |
2.マネーフォワード クラウドERP
マネーフォワード クラウドERPは、企業の成長に合わせてシステムを選択できるクラウド型ERPです。債務管理や人事管理、勤怠管理や財務会計など幅広い基幹業務を一元化できます。
機能追加などのカスタマイズ性が高く、他社システムとの連携も可能なため、既存のシステムを活用しやすいという魅力もあります。
提供元 | 株式会社マネーフォワード |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | IPOを目指す企業向け
中堅〜上場企業向け
|
導入実績 | シリーズ累計10万社以上(※2023年10月時点) |
機能・特徴 | 債権管理、請求書発行・送付、管理会計、連結決算、年末調整、財務会計、社会保険事務、債務管理、経費精算、固定資産、個別原価管理、給与計算、マイナンバー管理、請求書受取、勤怠管理、人事管理など |
URL | 公式サイト |
3.クラウドERP freee
クラウドERP freeeは、バックオフィス業務を最適化し、経営の強化を実現するERPです。
業種問わず多くの企業で導入されており、同ツールを提供しているfreee株式会社では、経理や人事労務管理の一元化などが功を奏し、従業員300名に対し、経理1.5人・労務1人体制を実現しています。
提供元 | freee株式会社 |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
機能・特徴 | 経理一元化と月次決算早期化、稟議(ワークフロー)のペーパーレス化、IPO準備・内部統制対応、Salesforce/Kintoneと自動連携、人事労務管理の一元化、リアルタイムな勤怠管理など |
URL | 公式サイト |
4.GEN
GENは、商社向け・アパレル向け・工場向け・サブスク向け・クリエイティブ向け・化粧品&食品向け・メーカー向けと、7種類の業界特化型クラウドERPを提供しています。
たとえば、GEN TARDINGでは在庫管理、出庫管理、進捗管理、支払・買掛管理など幅広い業務が一元化できます。
提供元 | GEN株式会社 |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン |
|
機能・特徴 | ※GEN TARDINGの機能例 在庫管理、出庫管理、進捗管理、支払・買掛管理、商品受入、輸入諸掛按分、棚卸管理、売上管理、出荷管理、請求管理、サブスク管理、入金・売掛管理、受注管理、受注別発注、見積管理、内部統制など |
URL | 公式サイト |
5.IFS Cloud
IFS Cloudは、製造業におけるものづくりDXを支えるグローバルERPです。設計・営業・生産から製造・保守までの全社情報を一元管理できるため、現状の早期把握・迅速な意思決定・収益力向上などのメリットが期待できます。
提供元 | 日本電気株式会社 |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
導入実績 | 207社(※2023年05月時点) |
機能・特徴 | 顧客関係管理/CRM、コマース、会計管理、人材管理、プロジェクト管理、調達管理、生産管理、サプライチェーン管理/SCM、サービスマネジメント、設備資産管理、航空整備など |
URL | 公式サイト |
6.GRANDIT
GRANDITは、さまざまな業種の企業における導入実績を持つERPです。拡張性が高く、業種に応じて最適な機能を搭載したERPを選択できます。
「標準プロセスを導入したい」「精密な予実管理を行いたい」などの目的から最適な機能を選べる点も特長です。
提供元 | GRANDIT株式会社 |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
機能・特徴 | 経理、債権・債務、販売計画、生産計画、在庫、出庫、原価、発注、入庫、受注、出荷など |
URL | 公式サイト |
7.Reforma PSA
Reforma PSAは、クリエイティブ業向けの案件管理システムで、業務効率化に役立つERPです。
IT・Web・広告などの業種に特化した設計のため、販売管理と工数を連携させたプロジェクト収支管理が実現します。必要な機能を必要な数だけ追加でき、コスパにも優れています。
提供元 | 株式会社オロ |
初期費用 | 無料 |
料金プラン |
|
導入実績 | 400社以上(※2023年10月時点) |
機能・特徴 | 販売管理、購買管理、勤怠管理、経費管理、経営分析・アウトプット、共通管理機能、プロジェクト管理など |
URL | 公式サイト |
8.クラウドERP ZAC
クラウドERP ZACは、案件・契約・プロジェクト単位で業務を進行する業種に最適なERPです。
ベンチャー企業から上場・大手企業まで900社以上と幅広い企業で導入され、タイムリーな損益管理、正確な売上予測、一元管理による業務効率化などに役立てられています。
提供元 | 株式会社 オロ |
初期費用 | ZAC初期設定費用:10万円 導入支援費用:要問い合わせ |
料金プラン | ライセンス費用:要問い合わせ 保守費用(データセンター利用料):要問い合わせ |
導入実績 | 900社以上(※2023年10月時点) |
機能・特徴 | 予定表、コンタクト管理(CRM)、文書管理、販売管理、勤怠・工数管理、購買管理、経費管理、工程管理、在庫管理、経営モニタリング、内部統制など |
URL | 公式サイト |
9.OBIC7
OBIC7は、会計管理・人事管理・給与管理・就業管理・販売管理・生産管理・経営分析の7つ機能を搭載したERPです。
会計管理機能を中心に充実した機能は、業務効率化や生産性向上に役立ちます。各システムとの連携や拡張性にも優れており、企業規模や目的に合わせた活用が可能です。
提供元 | 株式会社オービック |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
導入実績 | シリーズ累計20,000社以上(※2018年12月時点) |
機能・特徴 | 会計、人事、給与、就業、販売、生産、経営分析など |
URL | 公式サイト |
10.Oracle NetSuite
Oracle NetSuiteは、日本だけでなく世界での導入実績を持つERPです。業務プロセスの標準化・企業の成長促進・時間やリソースの計画的な確保などに役立ちます。
拡張性にも優れているため、企業の成長に合わせて機能を追加したりカスタマイズしたりすることも可能です。
提供元 | 日本オラクル株式会社 |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
機能・特徴 | 財務会計管理、受注管理、生産管理、サプライチェーン管理、倉庫管理/フルフィルメント、プロキュアメント、人事管理(HCM)など |
URL | 公式サイト |
11.Infor SyteLine
Infor SyteLineは、中堅組立製造業向けに提供されているERPです。複雑な生産プロセスの簡素化・自動化に役立ちます。
製造業に特化したERPのため、製造業に欠かせない広範囲の機能が標準搭載されている点も魅力です。
提供元 | Infor (US), Inc. |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
導入実績 | 世界60,000社以上(※2023年10月時点) |
機能・特徴 | 計画機能、製品設計、受発注、資材在庫管理、MRP/APSを含む生産計画、個別製造/量産/プロジェクト/繰返/カンバンを含む製造・現場管理、工程実績、品質、原価管理、会計管理など |
URL | 公式サイト |
12.SAP Business One
SAP Business Oneは中小企業向けのERPで、情報管理や内部統制の強化に役立ちます。
各プロセスの連携・合理化を支援し、企業の成長に合わせてカスタマイズできる拡張性の高さが特徴。インサイト分析の精度向上にも活用でき、的確な意思決定が可能となります。
提供元 | SAP SE |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
機能・特徴 | 財務管理、販売・顧客管理、購買・在庫管理、ビジネスインテリジェンス、分析とレポート、業種別の機能、モバイル、インメモリープラットフォームなど |
URL | 公式サイト |
13.Clovernet ERPクラウド
Clovernet ERPクラウドは、販売管理・会計業務・勤怠給与業務の効率化を実現するERPです。バックオフィス業務の工数を大幅に削減できます。
必要最小限の機能を組み合わせながらの段階的な導入が可能で、検討から導入までの支援サポートも提供されています。
提供元 | NECネクサソリューションズ株式会社 |
初期費用 | エコノミー:無料 スタンダード:33,000円(税込) |
料金プラン | エコノミー:8,250円(税込)~ スタンダード:16,500円(税込)~ |
機能・特徴 | 受注管理、売上・納品管理、発注管理、仕入・検収管理、入出金管理、EDI、プロジェクト別収支管理、在庫管理、承認ワークフロー、複数倉庫管理、会計基本、資金繰表、消費税申告書、CF計算書など |
URL | 公式サイト |
中小企業がERPを導入する際の注意点
中小企業がERPを導入する際の注意点は以下の3つです。
- 導入目的を明確にする
- 対象業務の範囲を明確にする
- ベンダーに頼らない運用体制を構築する
導入目的を明確にする
導入目的が曖昧だと、必要なERP機能の見極めもできません。その結果、最適なERPを選定できず、導入後の十分な効果も得られなくなってしまいます。
まずは、自社の業務における課題の洗い出しからはじめ、「達成したい目標」「解決したい課題」から、導入目的を明確にしておくことが大切です。
対象業務の範囲を明確にする
ERPは複数の部署を横断して導入することで、より高い効果が得られるようになります。しかし、対象業務の範囲を決めずに「全社的に導入しよう」と曖昧に進めてしまうと、運用が定着しないだけでなく社内の混乱や不満を招く可能性があります。
事前に対象業務を決め、ERPのどの機能をどう活用するのかを明確にしておきましょう。また、スモールスタートで導入し、活用方法を改善しながら全社的に導入範囲を広げていくことで、混乱を抑えたスムーズな導入が実現します。
▷【2023年最新】おすすめのERP徹底比較!大企業・中小企業向けで紹介!
中小企業もERPの導入を検討していこう
ERPは大企業だけでなく、中小企業での導入も進んでいます。ERPは業務効率化・人件費削減・DX推進など、中小企業が抱えるさまざまな課題の解決に役立つツールの一つです。
ただし、ひと口にERPといっても、搭載機能も違えば、特化型のシステムもあるなど、さまざまな特徴の違いを見極めなければなりません。ここでご紹介した選び方を参考に、自社に合ったERPを導入し、課題解決や企業成長を実現しましょう。
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