人時生産性とは?注目される背景や算出する計算式・向上施策を解説

最終更新日時:2022/08/05

生産性

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働き方改革や労働人口の減少により、注目が集まっている人時生産性。重要な課題となっている生産性向上ですが、人時生産性の向上に必要な施策とは、一体どのような内容なのでしょうか。本記事では、そんな人時生産性について、計算方法や向上施策など詳しく解説していきます。

人時生産性とは?

人時生産性とは、従業員1人が1時間で産出する成果を数値化した指標のことです。粗利益を成果の対象としており、労働量に対して産出した粗利益を可視化できます。飲食業や小売業などにおいて活用されることが多い指標です。

また、人時生産性が高ければ高いほど、少ない労働量で多くの成果を得たことになります。部門別や売り場別など差別化したうえでの測定は、より効果的な分析ができるでしょう。

労働生産性との違い

人時生産性とよく混同される言葉のひとつが、労働生産性です。労働生産性は労働量に対して得られる成果の割合を数値化したもので、成果の対象は生産量や付加価値と、測定する対象が幅広いという特徴があります。一般的には従業員1人当たりの成果を数値化することが多いといわれています。

それに対し、人時生産性は従業員1人が1時間であげる粗利益を表しており、1人当たり1時間の純粋な付加価値が把握できる指標といえます。

人時売上高との違い

人時生産性と似ている人時売上高は、従業員1人が1時間であげる売上高を表しています。成果の対象は粗利益ではなく、純粋な売上高です。つまり、総労働時間に対する売上高によって測定します。

人時売上高は、同業種間での生産性を比較する際や企業規模をはかる際に役立つといわれています。ただ、企業がどれだけの付加価値を産出しているかを正しく測定するには、1つの指標だけでなく、複数の指標を用いることが大切です。

人時生産性が注目されている背景

人時生産性の重要性は高まりつつあるといえます。では、人時生産性が注目されるようになった背景をみていきましょう。

深刻な労働人口の減少

少子高齢化により労働人口は減少し続けています。そのため、少ない労働量で成果をあげるための対策が必要となったのです。総務省統計局によると、2021年の労働人口は完全失業者も含んで6,860万人。

これは、前年に比べ8万人の減少となり、2年連続で減少しています。近い将来、超高齢社会を迎え、労働人口の減少がさらに加速すると予測できる日本では、人時生産性の向上を早急に推進しなければならないのです。

[出典:総務省統計局「第1 就業状態の動向 1 労働力人口」]

働き方改革の推進

数年前から日本の各企業では、働き方改革を推進する動きがあります。働き方改革とは、多様な働き方を可能とするための改革です。長時間労働の解消や正規雇用者と非正規雇用者との格差解消も目的としています。

このように、長時間労働を解消するため、短い時間でいかに成果をあげられるかという工夫が求められています。海外と比較しても生産性が低いとされる日本にとって、人時生産性の向上は最優先で取り組むべき課題ともいえるでしょう。

人時生産性の計算方法

人時生産性は、以下の計算式によって測定します。

人時生産性=粗利益÷総労働時間

その企業や店舗における平均的な人時生産性が測定できます。部門別や売り場別で測定した場合、その枠内における平均値がわかります。

たとえば、5人の従業員がそれぞれ8時間ずつ働いて、粗利益が80万円となったとしましょう。この場合、

人時生産性=80万円÷(5人×8時間)=2万円

となり、従業員1人が1時間当たり2万円の粗利益を産出したことになります。

人時生産性を低下させる5つのロス

日本の労働における生産性が低い理由は、生産性を低下させている以下5つのロスがあるためです。企業や店舗にとって、これらのロスを減らすことが人時生産性を向上させるカギとなるかもしれません。

1.管理ロス

管理ロスとは、生産や発注における管理不足によって各分野に発生する待ち時間のことを指します。突発的に生じたトラブルによって起こる「材料待ち」「指示待ち」「修理待ち」などが挙げられます。

これらのロスは、業務における計画を狂わせる可能性があり、計画の立て直しにも時間がかかってしまいます。そのため、管理部門はこういったロスを発生させないために、万一に備えた綿密な計画を立てる必要があるのです。

2.生産ロス

生産ロスとは、製造現場で発生する損失のことです。生産ロスが発生する原因はさまざまで、以下のようなものが挙げられます。

  • 物品を運搬するために製造の時間が割かれる
  • 不良品を手直ししなければならない

こういった生産ロスは、企業が気づいていないケースも多くみられるため、ロスを可視化するところから始めなければなりません。各業務において、必要以上の時間が割かれていないのかを分析しましょう。

3.編成ロス

編成ロスは、多くの工程を必要とする場面で発生しやすいといえます。ひとつの工程に時間がかかりすぎたり、一部の担当者に負荷が偏ってしまうことで、次の工程に待ち時間が発生してしまうことが挙げられます。そのため、あらかじめ編成ロスが発生しないようなライン編成を検討しましょう。

4.動作ロス

動作ロスは、従業員の作業動作にムダがあることで発生します。現場のレイアウトや従業員のスキルによって左右されることが多いでしょう。そのため、効率的かつ最小限の移動で作業を進められる対策をしなければなりません。

また、従業員それぞれのスキルから適性を見極め、業務を割り当てることも大切です。各従業員に得意な業務を割り当てることで、無駄のない動作が期待できます。

5.自動化置換ロス

自動化置換ロスは、機械やITツールに任せたほうが効率的な業務を、人の手で補っていることによって発生します。自動化置換ロスが発生しているということは、より速くより正確に業務を進められる可能性を潰しているということになり得ます。

自動化を導入しなければ、時間だけでなく人的コストも割かれてしまうでしょう。業務を自動化するにあたって割かれるコストもありますが、この先も削減し続ける時間や人的コストを考えれば、コストを割いてでも自動化によって業務効率化を図るべきといえます。

また、業務の自動化はコスト削減だけでなく、ヒューマンエラーをなくし、質をも高めることが期待できるのです。

人時生産性を向上させるための施策とは?

人時生産性を向上させるための施策を5つ紹介します。

適切な人員配置

適材適所に人員配置することで、各従業員のパフォーマンスや効率を最大化できる可能性があります。そのため、従業員一人ひとりの得意不得意やスキルを分析することが大切です。

特定の業務に関して、不得意とする人材に任せても効率が下がるだけでなく、その人材のモチベーションが低下することも考えられます。

そして、一部の優秀な人材に頼りきってしまい、優秀な人材が削られてしまう可能性もあるのです。現在の業務内容や担当者について見直し、人員配置を改善しましょう。

人件費の削減

人件費の削減は、労働量が減るということになり、生産性の向上が期待できます。ただ、一時的に分母が減って生産性が向上する可能性もあります。人件費を削減したと同時に成果も減ってしまえば、生産性には変化がみられないでしょう。

また、やみくもに給料を減らすことは避けなければなりません。従業員の働きや成果を把握せずに減給すれば、従業員が企業に不満を持ち、モチベーションの低下や離職にもつながるでしょう。

人件費を削減する際は、成果に対して適切な報酬・待遇を与えられているか、人事評価制度を見直す必要があるかもしれません。

RPAの導入

RPAとは、パソコン上でおこなう業務をロボットによって自動化するものです。データ入力やファイルの複製など、定型業務の自動化を得意とします。RPAを導入することで、人の手でおこなうより速く、正確に業務を進められるでしょう。

そして、短い時間でこれまでの何倍もの作業をおこなえます。そのため、業務効率化につながり、定型業務に充てられていた人材を、他の業務に充てられるようになるのです。

業務の効率化

業務のスケジュールを立てたり、無駄な工程がないかを洗い出すことが業務効率化につながるでしょう。ただし、スケジュールを立てる際は、無理のない範囲で検討しなければなりません。無理なスケジュール立ては、残業につながりかねないため、労働時間を増やしてしまう可能性があります。

また、一部の従業員の負担が大きくならないようにすることが大切です。各従業員の特性を見極めて業務を割り当てることで、全員の労働時間を少しずつ改善していけるかもしれません。

業務の見える化

人時生産性を向上させるには、どの業務にどれだけの労働量が発生しているのか、現状を把握することが大切です。現状がわからなければ、改善点も見つかりません。そのため、業務の見える化に取り組む必要があるのです。

業務を見える化するため、業務フローやタイムスケジュールの設定、タスクの進捗状況などを可視化していきましょう。業務量だけでなく、業務の質も把握・改善できるかもしれません。

人時生産性の向上に意識を向けることから

労働人口が減少し続けている日本では、人時生産性を向上させることが重要視されつつあります。現状を知るためにも、人時生産性だけでなく労働生産性や人時売上高など、さまざまな指標を測定することが大切です。

人時生産性を向上させるべく、企業が取り組めることからはじめてみてはいかがでしょうか。

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